理科話

2011年5月19日 (木)

3世代

朝日新聞の夕刊に、[彩・美・風]というエッセーがあります。その5月11日の分に大竹昭子さんが次のような文章を書いておられました。

   

過去へ連れゆく写真の力
 母方の親戚一党が客間に勢ぞろいし、記念撮影した写真が残っている。大正末期に祖父の家で撮られたもので、写真屋さんがきたらしく、みんなしゃちこばって前を向いている。いちばん端で白い産着に包まれ若い男性の腕に抱かれているのは、赤ん坊のときの母である。
 この写真を最初に見たのはいつだっただろう。まだ小学生のころではないか。「これだれ?」と尋ねて、「お母さんよ」と母が答えたとき、とても困惑したのを覚えている。
 だれの場合でも、ふにゃふにゃだったころの写真を見せられれば驚く。だがその写真に感じた違和感は、それよりももっと奥深い、自分の実存が危うくなるような感覚だった。お母さんが赤ん坊だったら、私はどうなるの? という理屈にならない問いが湧いてきたのだった。
 この赤ん坊が大きくなって、結婚し、私を生んで育てたということは、頭でわかっていた。でもそんな説明では、そのときの理不尽さは消えなかった。
 子供にとって、母親は生まれたときから母親である。いま自分がここにいるという根拠は、母が母であるという事実によって保証されている。
 その母が生まれたばかりの赤ちゃんで写っているのが、なんとも居心地が悪い。どこかの見知らぬ赤ん坊のようだ。本当にこの子が大きくなって私を生んだのだろうか。そう思うと、ひとつ歯車がちがえば、自分がこの世に存在しなかったような不安が頭をもたげてきた。それは母が「私が赤ちゃんだったころにね」と口で言ったときとはちがう、実に奇妙な感覚だった。
 写真は過去のある一点に見る者を連れて行く。そのとき私は、自分が生まれるという筋書きが、まだどこにも書かれていなかった時点に、引き込まれたのだろう。写真がはらんでいる時間の恐ろしさにうろたえたのだ。

◆自分の母親が赤ん坊だったという写真に困惑し、「自分の実存が危うくなるような感覚」を覚えていらっしゃいます。
 「ひとつ歯車がちがえば、自分がこの世に存在しなかったような不安」と言っておられますが、私のようなタイプの人間には、当たり前のことのように思えます。私が今ここに存在しているということは、全く単なる偶然に過ぎないと思っています。たまたま、こうして生まれてきましたが、別に私が生まれなければならない必然性などどこにもないと思われます。
 「ひとつ歯車がちがえば、自分がこの世に存在しなかった」というのはごくごく当たり前なんですけどね。
 どうも、私にはそういうタイプの感性がない。
 もう少し別のところに大いなる驚きを覚えるたちです。

◆生物は子孫を残さなければならない。
 話を動物に限っておきましょう。話が拡大しすぎないように。
 動物の成体が現実体として今ここにあるとします。
 この動物が子孫を残すためには可能体としての生殖細胞を持っていなければなりません。
 動物は現実体として生きながら可能体としての生殖細胞を保有して、「2世代」が重なり合って同時に生きています。
 さて、ヒトは哺乳類です。ですから、子を子宮の中で育てます。

 想像してみてください。
 お腹の大きな妊娠中の女性。その女性の子宮の中には「子」が成長中です。その「子」はすでに現実体ですね。出生前ですが個体性は当然持っています。そしてその「子」の体内にはその「子」にとっての可能体である生殖細胞があるのです。
 どうでしょう、3世代が重なって同時に生きているのですよ。
 こういう事実こそ私にとってくらくらするほどの驚きをもたらします。
 女性は妊娠中に、自分の孫までを重ねて、3世代の同時存在として生きているのです。
 男性にはそういうことはありません。あくまで2世代の重なりしかありません。

 すごくありません?想像したことありました?3世代が重なっているなんて。

 もし、自分のおなかの大きな祖母が母を妊娠中だったという写真があったらすごいですね。
 祖母がいて、その体内に母がいて、その胎児である母の中に将来自分になるべき卵細胞がある。
 女性って、やっぱり男性をはるかに超える存在ですね。

◆ちょっと発生学の本を開いてみましょう。
発生学アトラス」Ulrich Drews 著、塩田浩平 訳、文光堂、1999年

原始生殖細胞(始原生殖細胞)の遊走
 第4週に、原始生殖細胞が、卵黄囊から背側腸間膜を通って未分化な性腺原基へ移動する。これらの細胞は、遊走しながら有糸分裂によって増殖する。

胚子期の生殖細胞
 卵祖細胞の数は、胎生5カ月に最大(700万)に達する。この時期まで増殖した後、卵祖細胞が第1減数分裂をはじめる。卵細胞の周囲に卵胞細胞ができて原始卵胞が形成された後、第1分裂が停止する。原始卵胞にならなかった卵祖細胞は、死滅する。精巣の原基では、原始生殖細胞が精祖細胞として精巣索の中へ取り込まれ休止期に入る。

出生時の生殖細胞
 卵巣では、卵細胞が原始卵胞の中にあって、第1減数分裂の前期(網糸期)で停止している。精巣では、精祖細胞が、緻密な精巣索の中で、減数分裂をはじめる前の状態で停止している。

思春期における分化
 卵巣には、なお4万個の卵細胞がある。各月経周期ごとに、数個の卵細胞が分化をはじめる。対合していた染色体が伸びる(ランプブラシ染色体)。胚が発生をはじめるのに必要なmRNAが転写され、卵細胞の細胞質に蓄えられる(母体因子)。第1減数分裂が排卵直前に完了し、第1極体が放出される。すぐに第2減数分裂がはじまるが、それも分裂中期で停止する。この段階で排卵が起こる。精巣では、思春期になってから、精祖細胞が再び増殖をはじめる。一定回数の有糸分裂を経た後に減数分裂と精子への分化がはじまる。
 {ブログ著者註:精祖細胞は6回の有糸分裂を行ってから減数分裂をします。4回目の有糸分裂をした精祖細胞の一部は、精子発生過程から外れて、再び休止期の精祖細胞に戻ります。これによって、精子発生の幹細胞がなくならずに一定数が保たれるのです。}

受精
 卵細胞に精子が接すると、第2減数分裂中期のブロックが解除される。その結果、引き続き第2分裂が進行し、第2極体が放出される。

接合子
 男性前核と女性前核ができた後、それらが互いに融合して新しい接合子ができ、ここに胚の発生がはじまる。

 いかがでしょう?
 生殖細胞というものは生物にとって、とてつもなく大事なものです。発生中の激しい増殖や分化の嵐から生殖細胞を隔離して「なににもならない」という形で生殖能力を確保します。
 現在の生殖医療と称するヒトの行為に大きな疑念を持ちます。やれることと、やっていいことはちがうだろ、といいたい。38億年もの「継続」を果たしてきた生物の生殖に、思い上がってうっかり手を出すと、生物としての大きな打撃・しっぺ返しをくらうことになるのではないかと危惧します。

 女性の場合、胎児でいるうちに減数分裂を途中まで進めてから停止させ出生を迎えます。まだ減数分裂の後半が残っているとはいえ、その卵細胞が授精すれば次世代になり得るという意味で、ある種の個体性がすでに卵細胞にはあります。
 男性の精祖細胞は、分裂して増えてから更に減数分裂して個々の精子になりますので、精祖細胞の時点ではまだ個体性はないと言っていいだろうと考えます。
 ですから、「妊娠中の母親の体内の胎児が既に持つ可能体としての次世代」といっても、その胎児が女児か男児かで、3世代目の個体性のあり方には大きな違いがありますね。
 女児を妊娠した時に3世代のオーバーラップが際立つわけです。
 つくづく女性ってすごい存在です。男にはどうしようもない。絶対に太刀打ちできない現実です。

◆こういうことに、私はくらくらし、めまいのような感動を覚え、もしほんの一端でもその感動を生徒に伝えることができれば、と生物の授業をしていたのです。

◆派生的に書きたいことがまだいくつかありますが、長くなりました。ここでいったん切ります。

2011年5月 6日 (金)

「春のばくはつ」がひとだんらく。

以前にも平年気温の変化をグラフ化したものをお目にかけたことがあります。
今回は、エクセルのセルの色で変化のようすを見てみました。
Coloring3_2 毎日0.1℃変化するのが通常なので、ある日の平年値から前の日の平年値を引いて、差が±0.1℃のときはセルに着色しませんでした。
(年間のピークと谷底のではその前後で0.1℃の意味が変わってしまいますが、ちょっと緩やかに考えてください)。

0.2℃上昇の時はピンク、0.3℃上昇の時は赤で塗りました。
0.2℃下降の時は薄いブルー、0.3℃下降の時は濃いブルーで塗りました。
前日と変化がない場合は、薄いグレーにしてあります。
{VBAでマクロプログラムを書いて、さっと走らせただけです。}

1,2月は変化のない日も多かった。
2月の下旬から3月中旬は毎日0.1℃の上昇が多くなります。

そして春分を過ぎた頃から4月の終わりまで、ほぼ毎日のように0.2℃上昇しました。「ぐんぐん」暖かくなる。
途中に0.3℃の上昇という日も、何回かありました。
これを表題で「春のばくはつ」と表現しました。

5月に入って、一段落です。最低気温は0.2℃の上昇も多いのですが、最高気温の方は0.1℃上昇が多いですね。

6月は東京では梅雨のせいでしょうか、気温上昇は鈍くなります。

7月、また0.2℃の上昇が増え、8月のピークに至ります。
8月はセルの色が変化なしのグレーか、0.1℃の無色ですね。

9月以降についてはご自分で「鑑賞」してください。

言い忘れましたが、このデータはもちろん私が住んでいる東京でのものです。
他の地域については、気象庁のサイトから平年気温のデータをとって、自分で処理をして下さい。

立夏

今日5月6日は「立夏」です。
テレビで朝から「暦の上では今日から夏」というような言葉が聞かれました。
「暦の上では」という言い方は、「暦」を旧暦のようにとらえているのではないでしょうか。
あるいは、「実感とは違うが」というニュアンスを持たせている。
でもね、私はよく言うことですが、太陽暦なんですよ24節気は。
24sekki
これをご覧ください。
「神の目」で太陽系を地球の北極が向いている方向から見おろしたと思って下さい。
1年間で1周しますね。360度回る。
それを45度ずつに区切ってみました。
太陽を中心として反時計回りに地球は回ります。
春分の位置を角度0にとります。

そうすると、春分の反対側は秋分。
どちらも「昼と夜の長さが同じ日」と単純化しておきます。
90度の位置には夏至と冬至。昼が一番長い日と短い日。
この命名には全く異論なしですよね。

今日は、夏至の手前の45度という位置まで来ました。
名前を何としましょうか?夏至の手前の45度。それなら夏の入り口=立夏、でいいですよね。
同様にして、秋分の手前45度なら立秋。冬至の手前45度なら立冬。春分の手前45度なら立春。

ね、一年間で一周するうちのどこまで進んできたかを45度ずつに切って名前をつけるとすれば、まことに適切な命名ですね。
太陽暦そのものなんですね。これ。

ただ、45度区切りは少々粗い。
さらにその45度を3等分して15度ずつに切ったのが二十四節季。
そうなると、名前がね、足りませんね。
で、その切り方を考案した地域の気候に沿った名前をつけることになったわけです。
そうなると、地球と太陽の位置関係、という天文学的な話から、地球上のある地域の気候というローカルなものになって来たわけですね、命名が。
その結果、気候の異なる地域でも同じ命名を使うことになり、季節感とのずれが生じるようになってきて、「暦の上では」という枕詞がつくようになってしまった。

ということですので、地球が太陽の周りを公転している、その位置を知る言葉として利用すればよいのです。

おっ、今日は立夏だ、春分からもう8分の1周したんだなぁ

ってね。

2011年4月 4日 (月)

ろうそくの光の分光

0318_14rousoku1 2011.3.18
前の記事で、ろうそくの炎を見ているうちに、思い出したこと。
ろうそくの炎の真後ろにCDを立てて炎の側から見ると、実にすごいんです。
写真右端にろうそくの炎。
CDの微細な凹凸に反射して分光されています。
0318_14rousoku2
いろいろと位置を変えて眺めるとものすごききれい。
夢中になってろうそくを倒さないようにだけは注意していただくとして、これは素晴らしい光景なんです。お勧めします。
「理科おじさんの部屋」というのでやった実験から一枚写真を引っ張ってきました。
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/12th/sci_12.htm
Img006
ろうそくの炎とCDの中心を結ぶ直線上でみるとこうなります。
見ていて飽きないですよ。

0318_14led
LEDのポケットライトを当てるとこうなってしまいます。単調ですね。RBGの混合なんだということが良く分かります。
ろうそくの方は、熱による放射ですから連続スペクトルになるんですね。

2011年3月15日 (火)

計画停電

◆私は東京の大田区の南端に住んでいるのですが、計画停電が実施される中で、自分の住んでいる地域が何グループなのか未だに判然としていません。東電のホームページを見ても、これが正しいバージョンです、という電力会社自身がオーソライズした表がないのです。あいまいなものが掲載されたままです。
私自身は、計画停電は必要だと考えていますし、年齢的に戦後の電力事情の窮乏中に幼い時代を過ごしたものですから、毎夕定期的に停電になるなどという経験もあります。停電自体にはそう驚きもしませんが、東電自身が、やってみなけりゃどこが消えるかわからないなどといういい加減な事態であることにはうんざりします。
グループ分けして、ローテーションを組んで、毎日1,2回、3時間位我慢するということは全く構いません。
ただ、その基礎データを会社自身が保有していないということに、あきれ驚くものです。どういう経営をしてるんでしょうね。自分の会社の商品をどこにどう売っているのか分からないなんて、そういう商売ってありなんですかねぇ。

というわけで、苛立たされてしまうわけですが、計画停電というものが必要だという事情はかなりよく分かっているつもりですので、私の理解する範囲をお伝えしましょう。

◆先ずは、たとえ話です。
完全に真っすぐな道を自動車を運転しているとします。(カーブがあると話がややこしいので)。上り坂下り坂はあるものとします。
時速50kmを維持して走らなければならないとしましょう。すると、速度計を見ながらアクセルを一定の深さに踏み込んでその速度を維持することになりますね。
そのとき、車が上り坂にさしかかりました。当然アクセルの踏みこみが一定のままだとスピードが落ちますね。ですから、時速50kmを保つためにアクセルを少し踏む込むことになります。
逆に下り坂にさしかかったときに、アクセルをそのまま踏んでいては速度が増してしまいますからアクセルを緩めます。
時速50kmで走ることを要請されているくらいなら充分アクセルワークで対応できますね。
時速100kmを維持するのもそう難しくはないでしょう。
けれど、スポーツカーでもない限り、時速150km位を維持しろと言われたら、ぎりぎりじゃありませんか?
上り坂にさしかかって、スピードが落ちる、アクセルを踏み込まなければと思っても、もうアクセルの踏みこみようがない。
どうしようもなく、スピードは落ちていく。
こうなりますね。

◆実は電力供給というのはこれに似た話なのです。

計画停電に被災地 「被災状況の考慮不足」と東電陳謝
2011年3月14日23時7分
 ・・・
 電力はガスや水と違い、タンクなどに大規模にたくわえることができない。このため、需要分だけ常に供給する態勢をとる必要がある。需要が供給を上回ると、安定した電力を送れず、送電が不安定になることがある。
 ・・・

こんな記事がありました。
電力は貯えられないのです。
電池じゃ容量不足。
実用化できているのは、揚水発電くらいかな。
水力発電所で、水を落として発電するのと逆に、外から電気エネルギーを注ぎ込んで発電機をモーターにして水をくみ上げるんですね。で、ダムに水を貯める。電気エネルギーを水の位置のエネルギーに変えて貯えるのです。
他に、空気圧に変換して貯えようとか、回転する重い円盤のエネルギーにして貯えようとか、超電導コイルに貯えようとか、いろいろ原理的には可能な方法もありますが、大規模な電力貯蔵は現在は出来ないのです。

需要に対して電力を不足させるわけにはいかない、作り過ぎても貯えられない。
上のたとえ話の、水平でも上り下りでも、一定のスピードで走り続けなければならない自動車と同じような状況なのです。
自動車のたとえ話では、上り坂にさしかかるとエンジンに負荷がかかって、回転数が落ちますね。で回転数を上げるためにアクセルを踏んだ。

発電所ではどうなのか。ものすごく簡単化してしまうと、同じこと。
電力需要が増えると、その負荷が発電機にかかって、回転数が落ちるのです。
発電機の回転数が落ちないようにするには、タービンに送り込む水蒸気の量を増やすしかない。火力発電でも原子力発電でも。
ある意味で、アクセルを踏むんですね。
電力需要が減ったら、そのままだと発電機の回転数が上がってしまいますから、発電機に送り込む水蒸気のエネルギーを減らすしかない。
こうやって、発電機にかかる負荷を監視しながら、1秒間に50回という回転を維持し続けるというのが発電所の使命なのです。
たとえ話にあったように、ゆとりがあれば問題はない。ところが発電機の能力の限界近くで運転している時に負荷が増えると、もうフォローできなくなってしまいます。発電機の回転数が維持できず、電圧が落ちます。

これを避けたいんですね。発電余力を持っていないと需要に対応できなくなる。
常に余力を持っていなければならない。
原子力発電を一定のレベルに保ちベースとする。火力発電で需要の変動に応じる。さらに揚水発電で緊急事態に対応する、というような「常に余裕を保持する」仕組みにしていたのです。

それが原子力発電所を失った。余力がなくなってしまった。
そこで、限界に達しないように、計画的に停電を行って、需要が発電能力の限界を超えないようにしようとしているのです。限界を超えてしまうと、全部アウトになってしまうのですね。

こういうことを知っていいますから、計画停電ということ自体は私は充分に理解するものです。

◆この知識。どうして得たか。
理科教師としては、手回し発電機など使った授業をします。豆球をつないで、手回し発電機を回すと、豆球が光ります。ぐんぐん回すと明るく輝いて、やがて豆球が切れます。その瞬間、手回し発電機の負荷が消滅します。
手回し発電機で電気分解をします。スイッチOFFのときは軽く回ります。ところがスイッチONにして電気分解を始めると途端に発電機が重くなります。
自転車の発電機もそうですね。結構ペダルが重くなる。

こういうスケールは理科教師の守備範囲。
工業高校に勤務していた頃、電気科の先生と話をしていて、電力需要の増加は発電機への負荷という形で知ることができる。これを検出して回転数を一定に保つんですよ、と伺って、一瞬で「あ、そうか」と理解してしまった。
理科教師は「原理」には結構強い。ですが、「技術」には疎い。
世の中のいろいろな技術の中味を知るたびに、その原理は分かるものだから、技術というもののすごさもよく分かる立場ではあるのです。

◆東電さん、しっかりしてくださいよ。
私たちの生活に必要なエネルギーの多くを作ってくれているんだから、頼りにしているんです。
このところの対応は、技術者としては悲しいものがありますよね。
技術者としての誇りをもって、しっかりお願いします。
頼みますよ。

2011年2月 8日 (火)

反射を抑える

今朝、アサヒコムでこんな記事を見かけました。

腕時計の反射、99%カット セイコー、文字盤見やすく
                       2011年2月7日19時57分
 セイコーウオッチは3月11日、光の反射を約99%抑えるガラスコーティングを施した「セイコーブライツ」シリーズのソーラー電波クロノグラフを発売する。太陽光や照明の下でも文字盤の視認性が良くなった。希望小売価格は税込み10万5千円。

別に宣伝する気は毛頭ありません。
反射光を99%カットした。だから時計を読みとるときにギラギラしなくて視認性が良くなった。
なるほど。そうでしょうね。

それだけですか?
反射光をカットした。ふむふむ。
じゃあ、反射が減った分、どこへいったのでしょう?
おそらく透過するのですね。
そして太陽電池に吸収される。
つまり太陽電池に当たる光を増やした、ともいえるのだろうと思いますよ。
「ソーラー」って書いてある。文字盤が太陽電池なのでしょう。ですから、反射で光が逃げずに入ってくる分、発電量が増えるのではありませんか?

そんな「深読み」をしてみました。

2011年2月 3日 (木)

再度「空振」について

●毎日新聞に下のような記事がありました。

新燃岳噴火:4回目の爆発的噴火 鹿児島・霧島で、窓ガラス割れ92歳けが
・・・
 同気象台によると、新燃岳から南西約3キロにある鹿児島県霧島市湯之野の空振計では458パスカルを観測。1月26日以降の最大値は同28日の81・8パスカルで、今回はその5・6倍になる。同気象台の上之薗正利防災調整官は「溶岩ドームでふたをされて火山性ガスが蓄積したため圧力が高まり、かなり強い空振を伴う爆発的噴火となった。今後、更にマグマが供給されると、再びドームが吹き飛ばされて強い空振が起きる恐れがある」と注意を呼び掛けている。
==============
■ことば:「空振とパスカル」
 噴火に伴う空気中の圧力変化によって空気の振動が波のように伝わる現象が空振。パスカルは圧力を表す国際統一単位。秒速1メートルで動く1キログラムの物体を秒速2メートルにするのに必要な力(1ニュートン)が、1平方メートルに加わる圧力が1パスカル。その100倍が1ヘクトパスカル。気象庁火山課によると、人が音による空振を感じるのは10パスカルからとされ、数百パスカルになるとガラスが割れることもあるという。
毎日新聞 2011年2月1日 東京夕刊

間違ってはいませんけどね、この「ことば」という解説を読んで、どのくらいの方が「ああそうか」と納得するのかなぁ。既にわかっている人には不要の説明だし、ご存知ない方にはおそらくこの説明は混乱を増幅するだけではないのでしょうか。
マスコミの「報道力」「科学力」が問われますね。

●で、まぁ、すっきり分かるかどうかは自信ないですけれど、話の筋道をクリアにしておきたいと思います。

◆まずは、ニュートンの「運動の法則」から。
 多くの方がご存知だと思います。標準的な表現は

第一法則(慣性の法則)
 外的な力が加わらない限り、物体は静止或いは等速直線運動を続ける.
第二法則(運動法則)
 物体の加速度は、加えた力に比例し、その質量に反比例する.
第三法則(作用・反作用の法則)
 物体が互いに力を及ぼし合うときには、同一直線上で互いに逆向き・同一の大きさの力が働く.

こうですね。くだいて表現すると(私の物理授業での表現)

1:「力が加わらない場合、物体の運動状態は変わらない」
 止まっていたものは止まったまま。動いていたものは、そのまま真っすぐ等しい速さで進み続ける。
2:「力が加わると、物体の運動状態が変わる」
 止まっていたものが動きだしたり、真っすぐ等しい速さで動いていたものが、減速したり(止まったり)、加速したり、進む向きが変わったりする。
3:「力は単独では働かない」
 押せば押し返され、引けば引き返される。

少しは「砕けた」でしょうか。
さて、この第2法則を式で書くと{本当はベクトルですがここでは無視}
   F=ma
この式で力を定義することができるのです。
・定義:1[kg]の物体に作用して、1[m/s^2]の加速度を生じさせる力を1ニュートン(N)という。
{これが、毎日新聞の記事にあったものですね。}

・ kg、m、sはそれぞれ別個に独立に決めることのできる基本単位です。
それに対して、加速度という量は[m/s^2]という組立単位です。
これに質量がかかるので
力の単位は  [kg・m/s^2]
という組立単位で表されます。
ただ、国際単位系でも力には「ニュートン(N)」という固有の名前を与えることが認められています。

・圧力というものは、力そのものではなく、単位面積にかかる力という量です。
同じ力で押しても、押す面積が小さければ圧力は大きくなり、面積が大きければ圧力は小さくなるのですね。
そこで
1Nの力が1m^2に及ぼされる時の圧力を「1パスカル(Pa)」と決めました。
基本単位で表すと圧力の単位は
   [N/m^2]=[(kg・m/s^2)/m^2]=[kg/(m・s^2)]
という見慣れぬ組立単位になりますがこれでいいのです。
ただ、ここでも「パスカル(Pa)」という固有の名前を与えることをSIでは認めていますので、圧力の単位はPaだといっていいのです。

●ここまでを前提として前回の議論に入れるというのが正式な道筋ですが、めんどくさいですものね。
9.8N≒10N=1kgf
1N≒0.1kgf

こういう換算で身近なキログラム重(kgf)に引き寄せて考える方が楽でしょう。

そうすると、1Pa=1N/m^2=0.1kgf/m^2

1気圧=1013hPa=101300Pa/m^2=10130kgf/m^2

何と、1平方メートルに10トンですよ。1気圧ってすごいんですね。

今のところ一番強かった空振の圧力が458Paですから
   458Pa=45.8kgf/m^2
だったのですね。

気圧単位で話すと
1気圧=101300Paから
   458Pa≒0.005気圧
ということになります。
これでガラスが割れるんですね。

●ところで、昨日(2/2)の夜のNHKニュースだったと思いますが、新燃岳の爆発の瞬間に、山頂から「衝撃波」が広がって行く映像が見られました。
噴火口から瞬間的に音速をこえる速さで噴火が起きるんですね。音速をこえると衝撃波が発生します。
そこでは空気が圧縮され密度が高まり、屈折率が変わるので、無色透明な空気のなかでも爆発の鋭い衝撃波面は見えるのです。

爆発直後はこの衝撃波面はすごく密で、鋭いものですが、広がって行くとエネルギーを失って広がり、速度も落ち、やがて「大きな音」になります。

2月1日の4回目の爆発的な噴火を知らせるNHKのニュースで確かこういっていました。

「爆発的噴火から22秒後、火口から8km離れた地点のカメラが衝撃波で揺れました。」

   8000m/22s=363.6m/s

ですね。
普通、音速は340m/s っていいませんか?
気温15℃で約340m/s です。
気温は15℃よりは低かったでしょうから、この時の340m/s弱だと思われます。

空振=衝撃波が音速を超えていた、ということが実感できましたでしょうか。

●超音速ジェット機が超音速のまま低空を飛行しますと、衝撃波面が超音速で地面を横切って行きます。すると、地上の人は「爆発音」を聞き、家のガラスなどが割れたりします。これをsonic boom(ソニック・ブーム)といいます。

今回の爆発的噴火でガラスが割れた事故は、火山爆発の超音速の衝撃波による破壊的なソニック・ブーム現象であった、といえると思います。

まだこれからも起きるかもしれません。ガラスをテープで補強して、たとえ割れても飛散しないようにするなどの対策が必要ですね。

2011年2月 2日 (水)

新燃岳

●宮崎、鹿児島県境の霧島連山・新燃岳での噴火が続いています。毎日ニュースが入ってきますが、その中で、ちょっと理科的に解説した方がいいかな、と思われることがありますので取り上げてみました。

空振(くうしん)」です。
一般的な解説としてはウィキペディアがあります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%BA%E6%8C%AF

空振(くうしん)は、火山の噴火などに伴って発生する空気の振動のうち、人間の耳で直接聞くことが難しいもの。人間の耳に聞こえる振動は爆発音と呼ばれる。
火山が爆発的な噴火を起こすとき、火口において急激な気圧変化による空気の振動が発生し衝撃波となって空気中を伝播することがある。火口から離れるに従って減衰し音波となるが、瞬間的な低周波音であるため人間の耳で直接聞くことは難しい。空振が通過する際に建物の窓や壁を揺らし、窓ガラスが破損するなどの被害が発生することもある。

今日のニュースでは

新燃岳、続く爆発的噴火 発生の頻度高まる(アサヒ・コム 2011年2月2日11時7分)
 宮崎、鹿児島県境の霧島連山・新燃岳(しんもえだけ=1421メートル)で2日午前5時25分と同10時47分、爆発的噴火があった。1月27日に52年ぶりに発生して以降6、7回目。この噴火の約6時間前の1日午後11時19分には5回目の爆発的噴火もあった。1日に続き同日中に2度の発生となった。発生の頻度が高くなっており、気象台は引き続き、噴石などに注意を呼びかけている。
 福岡管区気象台などによると、いずれの噴火でも、火砕流は確認されていないという。5、6回目の噴煙は火口から2千メートル上空に上がって雲に入り、火山が爆発したときに噴火の衝撃波が空気に伝わる「空振(くうしん)」も確認されたが、被害の報告はないという。
気象台によると、空振の大きさは新燃岳から南西約3キロの湯之野観測点で5回目のものが185.5パスカル6回目が299.6パスカル7回目が86.5パスカルだった。
これまで最も大きかったのは1日早朝に確認された4回目の爆発的噴火で起きた空振の458パスカル。この空振では、降灰被害などが少なかった新燃岳から南西側約5キロにある鹿児島県霧島市の病院やホテルなどで約300枚のガラスが割れるなどの被害が出た。

聞くことはできないけれど、空気の振動であるはずですが、「パスカル」という単位で強さが示されていますね。パスカルってどこかで聞きませんか?そう、気象情報で、気圧の単位として「ヘクトパスカル」という言葉をよく聞きますね。

空振という空気の振動が気圧と同じような単位で示されていますね。
爆発というのは「急激な体積の膨張」ですから、接していた空気は爆発の際に「圧縮」されるんですね。それが波として伝わってくる。そして、物体に当たると、その物体を押すんですね。そうすると、物体には圧力がかかる。ですから、空振を圧力の単位ではかることができるのです。
音だって、振動するものが空気を押したり引いたりして、その圧力変動が波として伝わってきて、音が当たった物体に圧力を及ぼすのです。ですから、空気の圧力で耳の鼓膜は押したり引いたりされて、音が聞こえるのですね。
じゃあ、音もパスカル単位で測れるの?
そうなんですね。音圧といって、音の強さも圧力単位のパスカルで測れるのです。

●まず、パスカルって何だ?から。
定義としては
Pascal
1パスカル(Pa)は、1平方メートルの面積に1ニュートン(N)の力がかかっている、という圧力です。
まだピンときませんね。ニュートン(N)ね。
Kgf
1kgの物体を地球が引っ張る力が9.8N(約10N)です。なんとなくイメージがわきましたか。
1m四方の板の上に1kgの物体が載っていると9.8Paなんですね。
Pa2kgf
逆にいって、1Paはというと、1m四方の板に100gのおもりが乗っている程度ですので、ずいぶん小さな単位なんですね。

●さてそうすると、4回目の爆発の空振は458Paだったということですから
458pa
1m四方の板の上に46.7kgの物体が乗っているのと同じということになります。
これだと、ガラスが割れますね。
体重50kg弱の人が1m四方のガラスに乗ったら、強化ガラスでなければ、割れそうですね。
実際に、ガラスが割れてけが人が出ました。300枚ものガラスが割れたとあります。
さもありなん。
いかがでしょう?空振の強さが実感できましたでしょうか?
大ざっぱな話、パスカルで表示された数値を10で割ると、1メートル四方に乗った物体の重さのキログラムでの数値になります。(大ざっぱにですよ)
458÷10≒46 でしょ。

5回目が約20kg、6回目が約30kg、7回目が約9kgと見積もると、ガラスは何とか耐えられるかもな、と思えます。(1平方メートルにね)。

ニュースを聞く時の参考にして下さい。

●1気圧って?
Atm
1気圧は101325Paです。
これを、1013.25×100Paと変形します。
キロとかセンチとかミリとかメガとかギガとかいう接頭辞をご存知でしょう。
ヘクト(h)という接頭辞は「100」を表します。
そこで、1013.25×100Pa=10313.25hPa
となるのですね。
普通、キロ、メガ、ギガ、テラと1000倍ずつで接頭辞を変えているのに、なんでここでは100倍のヘクトが出てくるのかな?
実は、昔は気圧をミリバール(mb)という単位で測っていたんですね。バールはcm、gなどを使ってあらわした圧力単位でした。それが現在のSIという単位系になった時、パスカルが標準になったのですけれど、気圧の数値を変えたくなかったんですね。
1気圧=1013mbだったので、数値が変わらないように
1気圧=1013hPaにしたのです。

{気象を離れて、自然科学的には、1気圧は0.101325MPa(メガパスカル)として扱うことが一般的です。}

●ところで音もパスカルで測れるんですか?
そうなんですね。
音も物体に圧力を及ぼしますので、当然その圧力はパスカルで測れるんですね。
とはいっても、音が及ぼす圧力は小さい。鼓膜が揺れる程度。
通常の会話の音声で桁として100分の1パスカル程度です。
空振で記録されている100パスカルの桁になると、もう、人間が音として聞くことのできる限界の圧力になります。鼓膜が破れますね。
Onatu
理科年表から表を作ってみました。
ジェット機の騒音で10パスカルの桁ですものね、想像がつくでしょう。

●朝日新聞の鹿児島版にこういう記事がありました

「爆発音 けた違い」 空振被害の霧島(2011年02月01日)
大きな爆発音と空振が朝の温泉街を襲った。新燃岳が活発化して4回目の爆発的噴火。1日、火口からほど近い霧島市の山あいの地区では公共施設やホテル、民家などで相次いで窓ガラスが割れ、一連の噴火活動による直接の影響で初めてのけが人も出た。住民は驚きと不安を口にした。
 新燃岳火口から約11キロ離れた霧島市霧島田口にある霧島市霧島総合支所では、1階の窓ガラスが1枚割れた。
 近くにある霧島公民館では1階の会議室や和室などの窓ガラス3枚が割れ、トイレの1枚にひびが入った。霧島公民館に勤める嘱託職員の西さんは出勤前に自宅で爆発音を聞いた。「これまでとは、けた違いに大きな音でびっくりした」
 そばの美容院でも縦1・5メートル、横1メートルの窓ガラス2枚が割れた。経営者の小園さんは「こんなに大きな音は初めて。今後のことを考えると怖い」と顔をこわばらせた。
・・・後略

まさしく、通常聞く音とは「音圧」の「桁」が違うのですね。
こういう時は数値そのものより、「桁」で物を考える習慣をつけると、かえって分かりやすいんですよ。

いかがでしたでしょうか?

2011年1月26日 (水)

鉄は打てば熱くなる

2011年1月24日 (月)に「かかし先生の試験問題」というのを書きました。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/cat22454470/index.html

金箔づくりで、金の小片を紙に挟んで次々と重ね、ブロック状にして機械で叩き延ばします。すると発熱するのです。

この問題、ミクロに見ると厄介です。熱が実際に発生しているのはどの場所なのか、それはわかりません。機械の槌が当たる場所なのか、紙と金の接触面なのか、金の内部なのか・・・
測定結果があるわけではないので、これはとても議論できません。
この場合、全体として出来事を眺めて下さい。

●槌が運動エネルギーを持って、金+紙のブロックに衝突する。一瞬停止し、槌は引き上げられ、また機械の力で運動エネルギーを与えられて、金・紙ブロックを叩く。これが繰り返されているわけです。
この機械の消費するエネルギーは機械自身の摩擦や振動などにも費やされるでしょうが,
それはこの議論には関係ないので無視。槌の運動に使われたと考えましょう。
さて、槌の持っていた運動エネルギーはどうなったか、という問題です。
外見的にはその運動エネルギーは消えました。
消えた結果、別の形のエネルギーに変わったのです。
電気?いえいえ。光?いえいえ。
熱エネルギーですね。
槌という物体の目に見える運動が、衝突によって金・紙ブロックを構成する原子たちのナノレベルでの運動を激しくしたのです。
原子の運動が激しくなる=熱が発生するということですね。
もし、金・紙ブロック全体に均一に熱が発生したとしても、金は温まりやすく、紙は温まりにくいですから、金が強く「熱く」なるのですね。

●いつだったか、正月のニュースで刀鍛冶の初打ちのシーンを見ました。
まず炉に火を入れるのですが、その点火に用いる「火」はどのようなものだったか。
ニュースでは何も言っていませんでしたが、見ていた私はストンと納得してしまった。
刀匠は片手で使う槌で、もう一人は両手で重い槌をふるって、金床の上で短い鉄の棒を交互に叩くんですね。
しばらくそれを続けると鉄の棒は熱くなるので、火のつきやすい付け木のようなものに点火し、それを紙に移し、炉の炭に移すというような手順で炉に火入れをしていました。
「鉄は熱いうちに打て」とよくいいますが、この場合は「鉄は打てば熱くなる」なんですね。
刀匠たちが消費したエネルギーは槌の運動エネルギーとなり、それが鉄の熱エネルギーに変わったのです。
Strike while the iron is hot. がもとの諺}
{Strike, so the iron becomes hot. かかしさんが理解した事実}

金箔を作るのと同じですね。
金箔の場合は薄くすることが目的で熱の発生は副次的な現象。
刀鍛冶の火入れでは、発熱させることが目的で、鉄棒の変形は副次的なこと。
それだけのことです。
同じ出来事なのです。

エネルギーの変換が起こったということが見て取れるようになると世界が広がりますよ。

●乾布摩擦とかいうのはこのごろはやらないのかな。
でも、摩擦熱というのは有名ですね。
摩擦というのはマクロな物体同士の表面での出来事です。
机の上に物を置いて押しつけて動かすと両者の接触面に熱が発生するのですね。

「力を加えて動かす」ことを「仕事をする」といいます。

・チョロQをつまんで、力を加えて後ろへ引くという仕事をチョロQにしてやると、その仕事はチョロQ内部のゼンマイバネを巻き上げるという形で、バネの変形のエネルギーになって「貯えられ」ます。
で、チョロQを放すと、バネにたくわえられたエネルギーが解放されて、チョロQがダッシュします。
・ゴム動力の飛行機のプロペラを指で回すと、力を加えて円周上を押していくことになり、仕事をします。
その仕事は、ゴムの変形として貯えられて、解放されると、飛行機を飛ばします。
・びっくり箱の蓋に力を加えて閉じるという仕事をすると、バネの変形のエネルギーとして貯えられます。
開けた人はそのエネルギーが解放されて人形が飛び出してきてビックリするわけです。
・滑り台に登るには重力に逆らって登るという仕事をして、高いところにあるという「位置エネルギー」を貯えます。斜面に乗って手を放すと、位置エネルギーが運動エネルギーに変わって滑り降りてきます。
・夜間に余った電気エネルギーで、発電機を逆回ししてモーターにして水をダムにくみ上げるという仕事をすると、水の位置エネルギーの形で電気を貯えられます。昼間、水を落として発電機を回すと電気エネルギーが得られます。

さて、上では、してやった仕事がエネルギーとして貯えられる例を見ましたが、もし、そのように貯えられていなかったらどうなるのか?
そういう時には熱が発生しているのです。

身近なところで
ゼムクリップなどの針金を、同じ場所で繰り返し折り曲げていると、やがて鉄がもろくなって折れます。このとき折れ口に触るとやけどするほど熱くなっていますよ。
摩擦熱もその例なんですね。

電子レンジではマイクロ波の電波のエネルギーが外見上消えます。
よく水分子が摩擦して発熱、と説明しますが、それはない。
水分子には「表面」というものがない。摩擦のしようがない。摩擦はマクロな物体の表面での出来事ですからね。
マイクロ波が水分子をまとめて揺さぶるんですね。その揺さぶりが個々の分子の運動エネルギーの増加になり、発熱として現れるのです。

●冗舌になりました。こんなところで了解していただけたでしょうか。
試験問題は自己採点でどうぞ。
おお思ったとおりだった。まあいい線いってたな。ちょっとまずったかな。見当はずれだった。
大雑把に採点してみて下さい。

金箔が青く透けて見える話↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-59d4.html
2009年10月15日 (木)「金箔」

金属箔の話しなど↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-a94c.html
2009年12月21日 (月)「おまけ」

是非ご覧ください。

2011年1月24日 (月)

かかし先生の試験問題

●次の文章を読んで、質問に答えよ。

金沢箔 輝く職人技:1万分の1mmに宿る伝統(朝日新聞 2011.1.4)
 1万分の1mmの薄さ。かざすと光が透けて見えた。金箔の全国シェア99%を占める金沢箔の技を求め、地元金沢を訪ねた。
 金箔は、純金に微量の銀と銅を加えた合金を、何度も打ち延ばし、薄くして製造する。
 伝統工芸士の熱野さんは箔打ち48年。薄い合金の小片を、19cm四方の「箔打ち紙」と呼ばれる紙と紙の間にはさみ。これを1800枚重ねる。厚さ約6cmのその束を牛革の袋に入れ、1分間に700回連打する機械でたたく。束を握って、まんべんなく当たるように打つ場所を微妙にずらす熱野さんの手の動きが肝だ。
 たたいては冷ます作業を2日間で20回ほど繰り返すと、千分の1mmだった薄さが1万分の1mmに。大正時代に箔打ち機が発明されるまでは、槌でたたいて延ばしていた。「熱を帯びて、金の表面はプチプチと泡立つ。細かい泡がたくさん出てきたらいい按配やわ」と熱野さん。
・・・
10円玉の大きさの金をたたくと、3.75畳分まで延ばせる。
・・・

問い:記事を読むと、金の小片を叩くと発熱するらしいことが分かる。なぜ「叩くと発熱するのか」?。自分自身の考えを述べよ。

ハイ、答えは後回し。しばらくご自分で考えて下さい。

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