理科おじさん

2009年10月29日 (木)

新型インフルエンザ

2009年10月21日付けで「インフルエンザ」という記事を崩彦俳歌倉のカテゴリーで書きました。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-6801.html
ここです↑

◆その中で、インフルエンザウイルスの「形」について触れました。
調べてみたところ、朝日新聞の6月15日付けの記事が頭の中にあったようです。

新型インフルウイルス、実は細長いインゲン形(2009年6月15日)
 新型の豚インフルエンザのウイルスは細長いインゲンのような形をしていることが、東京大医科学研究所の河岡義裕教授らの研究でわかった。米疾病対策センター(CDC)が流行後に公表した電子顕微鏡写真は球形だったが、撮影前の遠心分離器による処理でちぎれたウイルスの断片をとらえていたという。15日付の英科学誌ネイチャー(電子版)で発表した。
 ウイルス以外の物質を取り除くため、CDCは遠心分離器にかけていたが、河岡さんらはかけずに撮影したところ、長さ1千分の1ミリほどの細長い形をしていた。遠心分離器にかけると、ウイルスの大部分が不純物と一緒に除去され、残った断片が球状に写ったという。
 他の種類のインフルエンザのウイルスには球形や細長い形など、さまざまなタイプが知られる。
(後略)

こういう記事で、写真もついていました。
新聞社のサイトですのでリンク切れになる可能性はありますが、その記事へのリンクです。
http://www.asahi.com/science/update/0615/TKY200906150017.html

◆ところで、私が定期購読している雑誌「化学」の11月号で「新型インフルエンザ教養講座」という特集が組まれています。
この特集の中に「H1N1新型インフルエンザの姿」というページがあり、そこに新型インフルエンザウイルスの走査型電子顕微鏡写真と透過型電子顕微鏡写真が掲載されています。
また、「インフルエンザウイルスの基礎」という解説があって、どのようにして感染するのか、というような基本的な解説もあります。

「化学」は化学同人という出版社の雑誌ですが、ウェブ上で記事がある程度読めます。
下のURLは化学同人のホームページ中の、月刊「化学」11月号のページです。
http://www.kagakudojin.co.jp/kagaku/200911.html?200911&11

ここで、「電子ブック」という形で記事が読めます。上に書いたウイルスの形や、基礎に加えてワクチンの話なども読めますので、関心がおありでしたら読んでみてください。

◆ところで、新型インフルエンザウイルスの形の話に戻りますが、野田岳志氏と河岡義裕氏による「化学」の記事によりますと。

(前略)一般的なA型インフルエンザウイルスは、直径約100nmの球状あるいは太さ約80nmのフィラメント状構造を示す。ヒトから分離されたH1N1新型ウイルスの形態はフィラメント状を示すが、これはこのウイルス特有の特徴ではない。一般に、ヒトや動物から分離された直後のA型インフルエンザウイルスはフィラメント状であるが、培養細胞などで継代を重ねると球状粒子に変化することが知られている。しかし、ウイルスの形態とウイルスがもつ増殖性や病原性、あるいは個体から個体への伝播力との関連については、まったく明らかにされていない。(後略)

ということでした。
NHKなどのテレビニュースでは、球形の写真が使われていますが、間違いということではなく、培養下での姿ということになるのでしょう。「新鮮な」ウイルスはフィラメント状であるということです。

◆以上、私の中で引っかかっていたことをご報告します。

2009年10月20日 (火)

逆ポーランド記法電卓

前の記事で、ウィンドウズが持っている電卓の出し方を書きました。これは使い勝手がいいのでぜひ使ってください。パソコンが電卓になるなんて面白いし。

で、思い出して、ちょっぴり自慢話。
私のパソコンのデスクトップには自作の電卓へのショートカットがありまして、それをクリックすると、こんな画面が出てきます。
Rpn1
よく見てください。変でしょ。「=」キーがない!
でもこれで、計算ができるんですねぇ。

この電卓、逆ポーランド記法電卓といいまして、コンピューターのCPUなんかの動きとよく似ているのです。
詳しいことは私のホームページで読んでください。ここです↓
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/freestdy/RPN_CALC/RpnCalc.htm

ここから、プログラムをダウンロードできますが、慣れない方には使い勝手が悪いでしょうからお薦めはしませんが。
とっても古いプログラム遊び人間の「こだわりの逸品」で~す。

海のpH

 2009.10.14の朝日新聞に「日本近海、酸性化進む CO2溶け込み生態系に影響も」という記事がありました。
 この記事では、海の「pH」が低下しているとのことです。

 「紀伊半島沖の北緯30度では、過去26年間に表面海水のpHが約0.04低下していることが分かった。」とあります。
 また「産業革命以降の約200年におけるpHの低下が推定0.1とされる」とか「現在の海水はpHの値が約8.1だが、CO2排出量が中程度で推移してゆくシナリオの場合、今世紀末には今よりpHが0.2低下して7.9程度に、最悪のシナリオでは今より0.4低下して7.7にまで酸性化が進むことが分かった。」

といった記述もなされていました。
普通「正比例」という感覚は誰にでもあります。ところが、pHの場合、正比例感覚でとらえると間違った理解になりますので、ちょっとだけ、お話ししたくなりました。

◆高校の化学で「pH」「水素イオン濃度指数」というのを多くの方が学ばれたと思います。
「指数」というところに注目して下さい。水素イオンの濃度は非常に広範囲にわたって変化するので、濃度の数値をそのまま使ったのでは、煩わしくって仕方ありません。こういうときに科学でよくやる手が、「桁」で表示するということです。数学的には「常用対数」といいますが、要するに「桁」なんです。
 どうせ、とても希薄な水素イオンの濃度を扱いますので、小数点以下かなり下の方の数値を扱わなければなりません。そうすると、常に「小数点以下○○桁目から数値が始まる」ということになります。これは対数をとったときに「マイナスの記号が常につく」ということです。どうせいつでも「小数点以下=マイナス記号」がつくのなら、めんどくさい、やめちゃえということで「マイナス1」をかけておきます。そのようにして、濃度の桁を示す数値をプラスの値で示すのがpHです。
 一応、pHの定義を書くとこうなります。

Ph


 水素イオンの濃度を扱っています。すると、水素イオンが希薄だと、小数点以下の0が増えます。ですから、pHとしては数値が大きくなります。逆に水素イオンが濃くなって1に近づいていくと、小数点以下の0が少なくなりますので、pHの値は小さくなるのです。

 また、桁を示す数値ですから、数値が1減ると、水素イオンの濃度が10倍濃くなります。2減ると、10×10=100倍濃くなります。

 

では、pHの値が「0.04」小さくなったというと、水素イオンの濃度では何倍になったのでしょう?
数学をすることはここでの目的ではないので答えだけ言ってしまうと「10の0.04乗倍」濃くなるのです。

 さて、ウィンドウズの「すべてのプログラム」>「アクセサリ」>「電卓」と進んでください。電卓が表示されたら「表示」メニューから「関数電卓」をクリックすると、びっくりするほどの高級関数電卓が使えるようになります。(必要ならデスクトップあたりにショートカットを作るといつでも好きな時に使えますよ。)

この電卓で「10」「x^y」「0.04」「=」と押していただくと「1.0964781961431850131437136061411」とでます。
こんなにいっぱい数字があっても仕方ない。「1.10」くらいで十分でしょう。

pHの値が0.04低下すると、水素イオンの濃度は1.1倍濃くなるのです。
生物の微妙な活動の中で、1.1倍というのは小さな変化ではありません。
指数が0.04と小さいからといって、大したことはない、とは思わないでください。

産業革命以来の200年では、指数が「0.1」変化しましたから、実際の濃度変化は「10^0.1=1.26」倍です。
0.2の変化なら、1.58倍
0.4の変化なら、2.51倍
水素イオンの濃度が濃くなるのです。

最悪のシナリオの場合、2.5倍も水素イオンが濃くなる、これは辛い。生態系に大きな影響が出るでしょう。海水中のカルシウムイオンを炭酸カルシウムにして殻や構造物を作る生物にとっては大きな痛手になります。

変化は待ったなしです。

Phscale
いちいち計算するのが面倒でしたら、グラフを見てください。
このグラフで横軸は指数の値の変化です。縦軸はその時の水素イオン濃度が何倍変化するかという数値です。「1変化すれば10倍」をフルスケールにしてあります。
グラフは直線ではありません。日常的な正比例感覚ではとらえられないのです。
指数関数といって、始めの方は変化が小さく見えますが、右の方へ行くとぐんぐん大きくなってしまうのです。

◆記事の終わりの方を引用します。

 現在の海水はpHの値が約8.1だが、CO2排出量が中程度で推移してゆくシナリオの場合、今世紀末には今よりpHが0.2低下して7.9程度に、最悪のシナリオでは今より0.4低下して7.7にまで酸性化が進むことが分かった。
 海水のCO2濃度を調節する装置を使って人工的に酸性化させた海水で生物を飼育する実験では、今世紀末の海水では食用のウニや巻き貝などの成長率が2~4割落ちるといったデータがある。
 研究チームは「海水のpHの低下が日本近海でも加速しつつあることが確認できた。いますぐに生物に影響が出るレベルではないが、100年後には日本の沿岸にすむ生物に何らかの影響が出ることになるだろう」としている。
     ◇
 〈海洋の酸性化〉 大気中のCO2が増えると海水のCO2濃度も上昇し、その影響で海水のpHの値が低下する。現在の海水はpHが約8.1の弱アルカリ性だが、酸性化が進むとpHの値が7(中性)に近づく。将来、貝類やサンゴなどの生物は殻や骨格を作りにくくなる恐れがある。人類が大気中に放出するCO2の3割は海が吸収するとされ、世界の150人を超す科学者は今年1月、海洋酸性化に伴う生態系の破壊を警告する宣言を発表した。

無限に大きな海、という気分で、何でも海に捨てたり吸収させたりしてきたのですが、人間活動の規模は、その海にまで影響を与えそうなのです。とんでもないことが起きつつあるようです。

2009年10月15日 (木)

金箔

理科教育関連の雑誌に、金箔を透かして見ると何色に見えるでしょう?というような問題が出ていました。これはもう、百聞は一見に如かず。見るっきゃない。

◆20年以上も前でしょうか、日本画の画材屋で純金箔を見つけて私費で買って教材として使ってきました。
透明なアクリル板に挟んで周囲をセロテープで固定し封をして、生徒に見せたものです。
化学の授業としては、金属の性質の授業で教室へ持ち込みます。電気を良く通す、熱を良く伝える、展性・延性がある、金属光沢がある。こんな性質を、自由電子との関連で説明するわけですが・・・。
金は特に電気伝導度も高いし、何より展性・延性に優れていて昔から金箔として使われ、金閣寺なども有名です。
金閣寺の金箔の張り直しの際に、金箔ブームが起こって、金箔で包んだおにぎりとか、金ぱく入りのお酒や飴など、いろいろ便乗商品が売れましたっけね。
金ぱく入りの飴を持っています。これも生徒に見せると喜びます。

先生!金箔って食べても大丈夫なの?
大丈夫、全く消化吸収されずに、うんちと一緒に出ていくよ。
なんだぁ。

先生!金ぱく入りのせっけんって効き目あるの?
効き目、全くゼロ。全然溶けないからね。
なんだぁ。

さて、冒頭の話ですが、その雑誌あてに、使っていいですよ、と写真を添付してメールを送りました。その写真とは微妙に違う奴をここでお目にかけましょう。

1005kinpaku2_2
これは床にひっくり返って、天井の蛍光灯を写した写真。何の変哲もありません。

では、カメラのレンズの前に金箔をかざして撮ると・・・
1005kinpaku1
こうなります。
青いでしょ。

金箔は光が透けるということ自体あまり知られていませんね。
さらに、色が変わるとなると、話に聞いたことがあっても実際に見たことのある方は少ないでしょう。
金箔は厚さが0.0001mmといいます。金原子が厚さ方向に1000の桁くらいの個数が並んでいるといってよいでしょう。
光が透けるくらいなんですね。
で、薄くっても、反射光は黄色。すると、白色光のうち黄色が抜けた色が透過します。
これ「黄色の補色」っていうんですよね。
つまり、青なんです。

◆ところで別件。画材屋では、純金箔とならんで、「洋金箔」というものを売っていました。
値段が一ケタ安いのです。色や輝きは純金箔と同じ。当時はインターネットなんて存在しない時代。検索もありはしない。「洋金箔」とはなんだろう?と分からなかったのです。
で、授業に、金箔と一緒に持っていって、今のところどういうものか分からないんだが、洋金箔というものもあったよ、で、こいつは光がほとんど透けないし青くはならないんだ、と話しました。
そうしたら、お父さんが貴金属宝飾店を経営なさっているというお嬢さんがいましてね、答えを聞いてきてくれたのです。
洋金箔とは真鍮の箔です。
純金箔よりずっと丈夫なので、装飾品に貼って金箔のように見せたり、あるいは、絵や工芸品に金箔を貼る際の下地に使うと丈夫になる、ということでした。
で、翌年から、純金箔に加えて、洋金箔+5円玉が教材になったのでした。生徒と作る授業です。

1015junkinpaku 純金箔を卓上の小型蛍光灯の前に持って、撮った写真。

蛍光灯は、「透過光ですから青く」見え、周囲は「反射光ですから黄色く」見えます。

1015youkinpaku こちらは洋金箔を使って同じようにして撮った写真。

薄い箔にする過程で微小な穴がいっぱい開いたのだと思います。
蛍光灯がうっすらと白色光のまま透けて見え、周囲は真鍮の反射光で黄色く見えます。

違いがお分かりいただけたかと思います。
いかがですか?物質の性質って面白いですね。だから化学は楽しいのです。

もののことは、ものにきけ。

2009年10月 9日 (金)

褐色細胞

体温の話をなんだか引きずっていて思い出したことを一つ追加。
細胞の中で「エネルギー通貨」として働くATPという分子のことを聞いたことがあると思います。生物の方では、ATPは「高エネルギー結合」を持っていて、その結合を切ると大きなエネルギーが得られるということになっていますが、化学の側から見ると、さほどの高エネルギーではないのでして、水分子の熱運動のエネルギーを上回る、といった程度でしょう。
生徒には「10万円金貨じゃ自動販売機が使えないでしょ、小銭がいる、100円玉が必要」細胞内の「エネルギーの小銭」がATPなんだよ、と話しました。

さて、ATPはミトコンドリアで作られるのですが、水素イオンの濃度差を利用して、濃い方から薄い方へ水素イオンが流れる、その力を利用して「発電機」のような装置を回してATPを合成します。
ところで、ヒトの新生児や冬眠動物では体温を維持するために「褐色細胞」という細胞を持っています。これは脂肪細胞のうちで特にミトコンドリアが多くて鉄イオンの色が濃くなって褐色に見えるものです。
この細胞では、ミトコンドリアはたくさんあるのですが、ATP合成装置を回さずに、水素イオンの濃い側と薄い側を「ショート」させるのです。電気回路のショートはご存じでしょう。本来電気がいろいろな仕事をするはずのところを、ショートさせると光と熱を発生します。
ミトコンドリアでも同じこと。本来ATPを作るはずの装置をショートさせると発熱するのです。

生まれたばかりの赤ちゃんが命を維持するために作った特別な装置です。
生命ってすごいですね。赤ちゃんって、本当に守られているのですね。

(ダイエットに効くかなんていう話もあるようですが、ダメ。大人にはほとんどありません。そんなものに頼るより、ちゃんと体を使えばいいのです!それだけ!)

2009年10月 8日 (木)

ふるえる

◆セスジスズメが体温を上げるために翅を震わせていた、ということを前の記事で書きました。
 「震える」ということから、二つのことを書きたいと思っています。
 一つは、おしっこをした後、ぶるっと体が震えるのはなぜか、という話。
 もう一つは、風邪などで発熱する時に悪寒がして震えるのはなぜか、という話。

 筋肉は収縮によって力を発揮するものですが、筋肉が消費したエネルギーのすべてが力になるわけではありません。エネルギー効率は高いけれども、無駄になる部分も出ます。その無駄になった部分というのがどうなるかというと、熱になる、のですね。ですから、筋肉を使えば発熱する、ということになるのです。
 ヒトでも体温が下がると大きな筋肉に震えが来て、発熱しようとします。
 ガでは、よくこの翅を震えさせることによるウォーミングアップが見られます。

◆さて、おしっこの後にぶるっと震えるという話です。
 どうも、巷間には、排尿によって体から熱が放出されて体温が下がる、そのため体温を上げるために震えるのだ、という説がまかり通っているようです。
 これ、全くの間違いです。大ウソです。
考えてもみてください。

 ポットに90℃のお湯が入っているとしましょう。お茶を飲もうとポットから200mLほどのお湯を急須に注ぎました。200mLのお湯が熱を持ち出したので、ポットのお湯の温度が下がってしまいました。

って、これ、ウソでしょ。そんなことないですよね。お湯の量は減るけれど温度は下がりません。
 おしっこすると、37℃くらいの体温と同じぬるい湯を出すわけですね、体重は減るでしょうけれど体温が下がるわけがないではないですか。
 おしっこをして熱を放出したから体温が下がるなどというのは明白な間違いなのです。

●中学校あたりで習うのかな?熱の話。
 熱を「熱流体」というまるで液体のようなものと考えて扱うと楽でいいです。その場合、物体は熱流体の容器ということになります。容器ですから「大きさ」というものがあるのですが、なにせ、熱流体は見えません。そこで、「1℃温度を上げるために必要な熱の量」で、容器の大きさを定義します。これを熱容量といいます。
 例えば、実際のバケツや風呂桶の大きさを定義するのに、水深を10cm深くするのに必要な水の量、で定義することは可能でしょ。風呂桶なら何リットルかで水深が10cmあがるでしょうけれど、プールの水深を10cmあげるにはものすごい水量が要りますね。プールは水の容器として大きい、ということです。
 熱でも同じ。
Netu1 物体を熱の容器として考えたとき、水深に相当するのは「温度」です。
熱容量が大きいと、1℃温度を上げるのに必要な熱量がたくさん必要です。
fig.1は、温度の異なる物体を接触させると、熱の移動が起こって、やがて温度は等しくなるということを示す図です。
36℃の体に0℃の氷をくっつけたら、体から氷へ熱の移動が起こって、体が冷えますね。ブルっとなるかもしれません。
 でも、おしっこの場合はこういう関係ではないのです。
Netu2

どちらの図でも、大きな容器が体、小さな容器は膀胱のつもりです。
体内で、体温と同じ温度の尿が膀胱にたまります。これがfig.2.
排尿するということは、fig.3の赤い線のように膀胱を一旦切り放して中身を捨て、空になった膀胱を体に接続するのと同じことです。
この操作の際に、体温は下がりませんね。尿が熱量を持ち出したことは確かですが、同じ温度の物を出しただけですので、温度に変化は起こらないのです。

納得していただけましたか?おしっこをしても体温は下がりません。

●間違っていることは明白ですが、では「ブルっ」の正しい原因は何か?ということになると、これが難しい。今のところ確実な答えはないようですね。
 私の経験などからすると、この出来事は思春期ごろまでの男の子に強く見られる現象ではないかと思っていました。そのことから考えるに、大人の男性の射精という能力のリハーサルを排尿時に行っているのではないか、と考えていました。
 排尿するには、膀胱からの「満タンだ」という信号がいろいろな神経回路を通って排尿してよい、という筋肉の弛緩に至るのですが、その回路の中には、射精をコントロールする回路と隣接するものがあるのです。ですから、排尿に関わる神経活動と筋肉活動が、大人になれば完全に分離される射精能力と未分離であるために、「ふるえ」という形になって現れるのではないかと、想像するわけです。
 で、小学生くらいの男の子によく見られる現象なのではないか、と考えていました。
 かつて、朝日新聞社が出版した子ども向け科学週刊誌「かがくるプラス」に、おしっこのあと体が震えるのは体温が下がるためだ、という解説が載っていたので、編集部にそれは間違いだ、とメールを入れたところ、丁寧な返事を頂きました(記事の訂正はなかったですが)。 その中で、女性にも同様の現象がある、と記されていました。

困った。私の仮説はぐらぐらだ。で、今もって、解決はしておりません。

誤りを指摘できるということと、正しいことを知っている、ということは別の話だということもご理解ください。

◆今、インフルエンザが流行していますが、風邪を引くと発熱しますね。発熱の初期に悪寒がして体が震えることがあります。これはなぜでしょう?また、「寝汗をかくと風邪が治る」とよく言いますが本当でしょうか?

間脳の視床下部という場所に「体温調節中枢」があります。熱帯魚を飼う時に水槽の水温を一定に保つためのサーモスタットのようなものだと思ってください。血液温をモニターしていて、設定温度と比較して、温度を一定に保ちます。平常の場合、この設定値は37.1℃です。この設定値の時に、脇の下あたりで36℃程度になるわけですね。

風邪をひくと、病原体と戦っているところから、体温を上げてくれ、という要求が血液に乗ってやってきます。それを受けると、体温調節中枢は設定値を上げます。すると、設定値よりも血液の温度が低いと判断されますから、体温を上げる反応が引き起こされます。代謝を上げると同時に、速効的に体に震えを起こして筋肉にも発熱させるのです。
 本人は、平熱だったのに、設定温度のほうが上がったために「寒気」を感じてしまうのです。これが、熱が出る時の「寒気・震え」の実体です。

さて、病原体との戦いが終わると、体温を上げてくれという要求が消えます。すると、設定値がもとの37.1℃に戻ります。すると今度は、血液の温度が設定値より高くなってしまうので、体温を下げようという反応がおこります。で、大量の汗をかいてしまうのです。

つまり、「寝汗をかくと風邪が治る」のではなく「風邪が治ったから寝汗をかく」のですね。

2009年9月15日 (火)

放物線

0908pinoheadlamp教員現役時代で物理を担当していたら、この写真、絶対教材にします。

ピノのヘッドライトなのですが、下に見える曲線はまごうかたなき放物線。
(抛物線は古い表記ですが、「物をなげうつ」という意味ではより良いんですがね。「物を放す」よりもね。)

回転放物面の焦点に光源を置きますと、鏡に反射した後の光は平行光線となります。
その回転放物面を平面で切った断面が上の写真で見えているわけですね。
最近の車は、荷重の状況によってヘッドライトの光線が上がって対向車の運転者が眩しくなったりしないように、光線の射出方向が変えられるようになっていますね。
でも、なんだか昔より眩しい車が増えたように感じられるんですがねぇ。年のせいかなぁ。

どうも、いまだに教師眼が抜けません。何かを見て、アッこれ教材になるっ、と思ってしまうんですね。我ながらおかしい。

2009年9月10日 (木)

ピタゴラス数

◆理科おじさんから、「夏休み明けのテスト」です。

問1:直角三角形の斜辺の長さが10001、直角をはさむ一つの辺の長さが9999であるとき、もう一つの直角をはさむ辺の長さを求めてください。

問2:600、9991、1009の三つの数はピタゴラス数になっています。計算によって確認してください。

[ヒント] a^2 - b^2 = (a + b)(a - b) というのを利用して下さいね。
     まともに計算するのは疲れます。

{注意:「a^2」という書き方は「aの自乗」という意味です。右肩に乗っけたいのですが、書けなくて。プログラミング関係者には普通に通じるはずですが。}
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◆何を一体始めたのか?とお思いでしょう。

a^2 + b^2 = c^2 となる(a, b, c)の組を「ピタゴラス数」といいます。
(3, 4, 5)とか(5, 12, 13)などはよく知られていると思います。
で、何となく今回、よく知られたピタゴラス数の、ほとんど誰も見たことのない領域をお目にかけようと、ただ好奇心で大量のピタゴラス数を生成してみたのです。

詳細は私のホームページに載せました。
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/freestdy/Pytha.htm
ここにあります。

m, nを正の整数として
a = m^2 - n^2
b = 2mn
c = m^2 + n^2
と表すことができます。
但し、m > n,  mとnは互いに素(公約数を持たない)
です。
そこで、m を2から始めて、100まで1ずつ増やし、各 m について、n は、n=m-1 から始めて、n>0 の間2ずつ減らして計算しました。

エクセルのVBAマクロで書いて実行してみました。

2040組のピタゴラス数ができましたよ!

それって何かの役に立つの?
いいえ、全然何の役にも立ちませんョ。
ただ面白いだけです。

それでも、見てみたい方はど~ぞ、HPの方をご覧ください。

2009年8月27日 (木)

うんちは黄色

2009.8.24付 朝日歌壇より
白いものしか摂ってない乳飲み子のうんちは黄色ちいさな宇宙:(ひたちなか市)沢口なぎさ

不思議ですよね。白いものしか食べていないのに、ウンチは黄色。多分おしっこも少し黄色。
実は、あの色、赤血球の赤い色素に由来しているのです。
「からだの構造と機能」A.シェフラー、S.シュミット 著、西村書店 という本から引用します。

胆汁の組成:胆汁は水や電解質以外に、ビリルビン、胆汁酸、コレステロール(コレステリン)、レシチン、そのほかの脂溶性の排泄物(医薬物も含む)を含んでいる。また胆汁によって中間代謝物質、最終産物、若干のホルモンなども排泄される。

このビリルビンというのがウンチに色をつけます。ビリルビンについては次に引用しますが、ここでもう一つ大切な記述があります。胆汁をよく消化液のようにいますが、ほとんど消化には関係ないですね。腸管内というのは、口から肛門にいたる管の中ですから、実は「体外」なのです。肝臓がいろいろなものを分解・解毒したときにできる産物を腸管という「体外」へ捨てているのですね。腸の中は「体の外」という認識を大切にして下さい。生物は「体内」へ軽々しく異物をとりこんだりはしません。コラーゲンだとか、酵素だとか、核酸だとか、みんなばらして、小さな分子にして取り込むのです。ごく基本的なことですが、いい加減な商品が出回っていますのでご注意ください。

赤血球の分解:骨髄で作られて熟成した赤血球は、血液中を焼く20日間循環する。通常は、脾臓で血液の浄化が行われる。古くなったり機能が果たせなくなった赤血球はここで血液から除去され、分解される。・・・遊離したヘモグロビンはヘムとグロビンに分解される。そしてヘム分子の鉄はさらに遊離し、直ちに再び鉄の輸送蛋白に捕捉される。・・・
 鉄を失ったヘム分子の残部はいくつかの過程をへてビリルビンに変化し、肝細胞と胆道をへて排泄されたり、一部はさらに水溶性のウロビリノーゲンに変化して尿中に排泄される。肝疾患やビリルビンの過剰生産などでビリルビンの排泄が障害されると、黄疸が起こる。

寿命のきた赤血球を壊し、ヘモグロビンも分解して鉄は回収します。
ヘムという分子は、植物の葉緑素と似た分子でして、真ん中に鉄イオンがあるとヘム、マグネシウムイオンがあるとクロロフィルというような感じです。もちろん細かいところでいろいろ違いますが、おおざっぱな話、よく似ています。
で、ヘムの分解されたビリルビンが腸管に排出されると便に色をつけ、尿中に排出されると尿に色をつけるわけです。

というわけで、最初に掲げた歌で、赤ちゃんが白いものしか摂取していないのに黄色いウンチをするというのは、こんな体の活動を反映しているのですね。

余談:赤ちゃんが白いものしか摂取していないうちは、ウンチは黄色いけれど、特別臭くはない。ところが、離乳食を始めると、とたんに大人と同じ「におい」のウンチに変わっていきますね。あれ、観察していて実に面白かったです。
若い親でしたが、理系夫婦でもあるもので、いろいろ観察してしまいましたっけ。
ミカンの皮をむいて、中の袋も皮をむいて、つぶつぶはそのままに食べさせたら、消化できずにつぶつぶがそのまんまでてきて、焦りました。こんな薄いものもまだ消化できないんだなぁ、とビックリ。すぐ、ミカンはつぶまで、ちゃんとつぶして食べさせるようにしましたっけ。

2009年8月19日 (水)

ワルナスビ

0814warunasubi1ワルナスビが咲いていました。

ワルナスビだとわかるには、特徴があります。
0814warunasubi2 コレ。

かなり痛いですよ。うっかり手を出さない方がいい。
バラのトゲより扱いにくいですね。

このトゲや、繁殖力が強くて始末が悪い、というのが名前の由来のようです。
草も実も有毒です。
英語では "Apple of Sodom"とか、"Devil's tomato" と呼ばれるそうです。嫌われてますね、かわいそうに。

2009年8月 5日 (水)

太陽がいっぱい

0725komorebi1表題を見て、アラン・ドロン主演の映画を思い浮かべた方は、私と同年代以上かなぁ。

東海道新幹線が多摩堤通りをまたいでいる場所です。
線路脇の保線用に敷かれた穴あき鉄板からの「木漏れ日」です。
この間、皆既日食の時に、「日食がいっぱい」という観察方法をご紹介しました。あれを引きずって、今回は「太陽がいっぱい」。
道路にうつった丸いものが、一つ一つ、それぞれ、太陽の像なのです。
0725komorebi2
ほら、こんなにいっぱい、太陽が落っこちていました。
これが日食だったら見ものなんですけれどね。

木漏れ日を見たら、思い出してください。

◆現在、家にいる2匹の猫。
上がチビ、下が1年年下のラン太。
この、チビは兄弟姉妹5匹のうちの1匹です。
兄弟に、ものすごくりりしくって、顔立ちの良いサバトラが2匹いました。
妻は、アラン・ドロンにちなんで、アランとドロンと命名しようと提案したのですが、娘はアラン・ドロンを知らなくて、なにそれ、ドロンなんて変だ、ドロンボー、ドロンジョみたいだ、といって反対。ハンサムを割って、ハンとサムにしようということで、2匹はハンとサムになったのでした。
サムはクールなやつで、物静か。ハンは甘えん坊で、大声で鳴き騒ぎ、体を立てた赤ちゃん抱っこが大好きというやつでした。「なきむしハーン」というあだ名までもらいました。
猫にも性格というものがあるんですよね、どういう風にして形成されるものなのか。不思議だ。
ヒトとネコと基本のところでは変わりないなぁ、と痛感します。お互い哺乳類だもんね。

2009年7月24日 (金)

赤い水平線

Rh 朝日新聞の報道動画です。
「水平線だけが明るい帯になる」とあります。

Redhorizon
「水平線は赤く染まった」というキャプションがついた写真です。

さて、太平洋上の船の上から眺めて、頭上が真っ暗な時に、なぜ360度全周の水平線が赤く染まるのでしょう?

船の上の人は頭上に半径100kmの黒い傘をさしている、と考えてください。その傘の中で日食が見えています。
ところが、傘の覆いの先は明るいのですね。濃い半影部分から明るい半影部分へ、その先は全くの昼。
その明るいところからの光が、水平線ギリギリの低い角度で走ってきて船の上の人の目に入る。
これって、夕方の夕焼けと同じですね。水平線のこちら側はもう暗くなってきているのに、水平線の向こうの太陽からの光が低い角度でさしてくると、夕焼けになります。

昼間の青空、太陽光が空気で散乱されて生じるのですが、波長の短い青い光が散乱されやすいのです。赤い光は散乱されにくく、遠くまで届きます。
低い角度の光は長い距離を通ってきますので、白色光のうち、青い光は散乱で失われ、赤い光が届いてくるのです。ですから、「夕焼け」は赤いのです。

日食のときも同じこと。月の影の傘の外からの光が長い距離を進んで赤い光が届くのです。しかも、月の影の丸い傘の全周が同じ状況ですから、360度、見わたすかぎり水平線が明るく赤くなるのです。

◆水平線って自分の位置からどのくらい先なんでしょう?
Horizon
図の中に式を書き込みましたので読んでください。ピタゴラスの定理を使っているだけです。

おおざっぱな話ですので、近似を使っています。

地球の半径 r=6378kmを入れると

高さ h kmの位置から見る水平線までの距離xは

x=113×√(h)

となります。

h=1km(1000m)     x=113km
h=0.1km(100m)    x=36km
h=0.01km(10m)    x=11.3km
h=0.02km(20m)    x=16km
h=0.001km(1m)    x=3.6km
h=0.002km(2m)    x=5.1km

海岸に立つ身長2mの人が見る水平線は海岸から5kmくらい先なんですね。
大型の船の上が例えば海面から20mあったとしますと、水平線は16km先です。

半径100kmの傘の下ですから、光源は水平線の向こうにあるわけで、まさしく夕焼けを見るのと似た条件なのですね。

◆今回の日食に関してお話したいことはほぼ尽くしたと思います。
もしまた何か思い出したら、その時書きますね。

授業でも、こんな雰囲気だったんですよ。本来の授業から脱線して日食の授業を1hくらいやるんですね。
プリントを2,3枚作っていって、詳しく知りたい人はプリントをきちんと読めばちゃんと理解できるようにして、授業では、要点をかいつまんで話すわけです。

こんなことばっかりやってましたからね、同じ授業ができるわけがない。
やれ日食だ、やれ雪が降った、やれ雷が鳴る、やれ青空って何だ、やれ誰かがあくびした、猿にはあくびがうつるか、・・・・

その日その時、授業はライブ
同じ授業は2度とできないんです。一回っきりのものなんです。
授業って生徒と教師が共同で作る「創作物」なんです。
授業って、始まりから終わりへ向かって、誕生し成長し終焉する「生き物」なんです。

授業を殺さないでください。

視半径

2009年07月18日(土)付 の朝日新聞「天声人語」の一部です。
 ・・・

 

月の400倍の直径を持つ太陽が、約400倍のかなたにある。この奇跡が二つの球体の見かけの大きさをそろえ、月が日にぴたりと重なる時が巡り来る。創造主からの贈り物と言われるゆえんだ。
 ・・・

こんな表現を、今回、何回も見かけました。
ここでは、これにかかわる話をしましょう。
データは理科年表を参照しています。


   月の赤道半径=     1738km
太陽の赤道半径=696000km

696000/1738 = 400

なるほど、400倍大きい。

   月の軌道の長半径=         38,4400km
地球の軌道の長半径=1,4960,0000km

149600000/384400 = 389

なるほど、約400倍遠いですね。

◆図1を見てください。
Fig1 △ABCと△A'B'C'があります。
∠ACB=∠A'C'B'=直角 とします。
便宜的に、AC=a、BC=b とします。
また、A'C'=400a、B'C'=400b とします。(図形の実際の大きさの比は400なんて全く無視していますが話の進め方には問題ありません。)

これが、「400倍大きなものが、400倍遠いところにある」という言葉の内容ですね。

すると
AC:BC=A'C':B'C'=a:b であり
∠ACB=∠A'C'B'
ですから

△ABC∽(相似)△A'B'C' となります。
二つの三角形が相似ですから
∠BAC=∠B'A'C'
となります。

Fig2 そうすると
左の図2のように、二つの三角形を重ねることができて
A(A')のところに眼を置くと、BCとB'C'が重なってしまって角度的に同じ大きさになるのです。

お分かりと思いますが、皆既日食の場合、BCが月の半径、B'C'が太陽の半径ということになります。
というわけで、「400倍大きなものが、400倍遠いところにある」と「月が日にぴたりと重なる」という言葉の正当性は、このように三角形の相似、という形できちっと裏付けられるのですね。

感覚的には納得しますが、ホント?と確かめてみるのも無駄ではないでしょう。
数学って生活に役立つんですねぇ

◆実際のところ、∠BAC=∠B'A'C'はどのくらいの大きさの角度なのでしょうか?
Fig3
この図3を見てください。天体の実際の大きさではなく、天体を見る角度で大きさを議論するのですね。
図3の中のθを「視半径」といいます。

月について
tanθ=1738/384400=0.004521
です。
タンジェントが求まればアークタンジェントという関数で角度が求まりますね。
arctan(0.004521)=0.004521
あれ?!タンジェントの値と角度の値が同じになっちゃった。いいのかな?

高校数学で極限を学ぶと、θ→0のとき、((sinθ)/θ)→1 というのを習ったと思います。
(tanθ)/θ=(sinθ)/((cosθ)・θ)=(1/cosθ)((sinθ)/θ)
ここでθ→0のとき、前のカッコ内は1に近づき、後ろのカッコ内も1に近づきますので
結局、θ→0のとき、tanθ=θになってしまうのですね。

ただし、これは角度をラジアンではかっている時のことです。これではピンときませんから
度にしてみましょう。
ラジアンを度に換算するには、(180/π)という値をかけてやればいいのです。
0.004521×(180/π)=0.2590度 です。
1度の約1/4位ですね。
ちゃんというと、15分32秒くらいです。これが月の視半径。

太陽はというと、
tanθ=696000/149600000=0.004652
θ=0.004652rad=0.2665度=15分59秒 これが太陽の視半径。

視半径がほぼ同じですから、「太陽と月の見かけの大きさはほぼ同じ」で、重なることがあれば、月が太陽を隠すことができるわけです。
これが日食なのです。

ところで、
針式の時計の一目盛は6度です。
ですから、月や太陽の視半径は時計の一目盛のさらに24分の1という角度なんですね。

1円玉の半径は1cmです。2m=200cm先に置いた1円玉の視半径は17分11秒くらいです。ですから
太陽や月は2m先の1円玉よりもう少し小さいくらいなのですね。





日食のスピード

Map_2 この地図の十字カーソルのあたりが悪石島です。

黒い線は資料を見ながら私が適当に描きこんだ皆既日食帯の北と南の限界線です。

地図の下のスケールを使って、皆既日食帯の幅を見積もると、約240kmくらいありますね。

Image 皆既日食「帯」というものは、地表に落ちた月の「丸い影」が移動していく帯です。左図がそのイメージです。
ということは、皆既日食帯の幅が、月の影の直径である、と考えていいでしょう。
地表に落ちた月の影は直径約240kmという事です。
帯のほぼ中心に位置する悪石島では、この240kmの影が約6分半くらいで通過していったわけです。

240km/6.5min=36.9km/min

分速37kmといってもピンときませんね。60倍すれば時速になりますね。

36.9km/min ×60≒2200km/h   !!!!

時速2000kmですよ!
物体が動いているわけではなく、影という現象の移動速度ですから、周りの空気をまきこんで・・・などということはないからいいですけどね。
時速2000kmというのは想像を絶していますね。

地球に落ちた月の影が移動していく様子の動画が見られます。

気象庁のサイトです

http://www.jma-net.go.jp/sat/data/web/suneclipse_observation.html

気象衛星ひまわり7号が撮影した15分ごとの画像を動画化したものです。インドの方に現れた影が猛スピードで太平洋の方へ抜けていくのが見えます。なかなかに見ものです。どうぞ。

地表に立って、太陽の前に月が入って隠した、という出来事が、別の側面で見ると地表を走る影ということにもなるのです。「視点」の変更って、結構楽しいですよ。

更に別の見方もあります。月も地球も太陽に照らされて、宇宙空間にいつでも影を曳きながら運動しているわけです。月と地球、それぞれに相手の影に入ってしまう事があるわけで、それが今回のような日食であり、月食であるわけです。

月の影は月食のときだけあるのではなくて、いつも宇宙空間に影を曳いているのですね。

◆宇宙的な話は人間のスケールを絶しています。

地球の自転速度は赤道上の点で、約1680km/hです。

公転速度はというと、なんと、10,8000km/h=30km/s です。

すごいでしょ。

日食時の中之島の気温

0722nakanosima昨日は那覇での気温変化のグラフを掲載しました。
なかなか楽しい作業でした。

今日は、皆既日食帯に入った鹿児島県中之島での気温変化をお目にかけます。悪石島と屋久島の中間付近にある島です。

晴れていれば、日の出とともに気温が上昇し始めて、日食の時間帯にぐんと下がる、ということになったはずですが、残念なことに、雨。
朝、27℃くらいだった気温が、日中にかけて下がっていきました。
グラフ中の青い線が、強引に全体的傾向を示すかな、と描いた線です。

ところが、日食が始まったころから、気温がぐんぐん下がりました。

そして、日食が終わると、また本来の気温低下傾向の線へと復帰していく、というのが、なんとなく、ストレートには理解していませんが。
そうなんだなぁ。

グラフを眺めて、いろいろ解釈してみてください。データは気象庁のホームページから頂きました。

2009年7月23日 (木)

日食時の那覇の気温

0722naha気象庁のホームページから、気象統計を取りだしてグラフ化しました。
2009.7.22の那覇における10分ごとの気温の変化です。

那覇での日食は9時32.7分に始まり、最大は10時54.0分で、食分は0.917、12時20.2分に終了でした。天気は晴れたり薄曇りだったようです。

グラフを見ると、10時頃から気温が下がり始め、11時ころに谷底に入り、12時半ころには回復したようですね。

これは、日食の影響でしょう。日が陰って気温が下がる、ということを、肌で感じたことはありますが、グラフ化できたのは初めてでした。

この気温のグラフ化についてのヒントは、当日2時からのNHKの「お元気ですか 日本列島」という番組の中で、気象予報士の関嶋梢さんが紹介しておられた、那覇での気温変化のグラフです。当日ですので、グラフは部分的でした。
そこで、翌日の今日、7月22日全体にわたってのグラフを私がエクセルで作ったものです。まぁ、みごとですね。

小学生の頃、潮干狩りの最中に、かなり食分の大きい日食があって、空気がひんやりしたのを覚えています。多分、宇宙飛行士の毛利衛さんが宇宙への関心を持つきっかけになった日食と同じものでしょう。

2009年7月22日 (水)

日食がいっぱい

9739nissyoku1古い写真をお目にかけます。

これ、1997年3月9日の日食の写真です。

部分日食が6つ写っています。
ですから、日食がいっぱい!
これを撮ることができたおかげで、こののち、教材としてずいぶん活躍してもらったものです。
その年に持っている教科が化学だろうと物理だろうと生物だろうと、日食がどこかである、という話になると、日食の原理から、観測の仕方、日食がいっぱいの話・・・軽く1時間は費やされますね。別に試験に出るわけでもなし、ただひたすらに好奇心の発露というやつです。
生徒の中には、先生って、いっつも楽しそうに授業やってたね、とか、先生の授業は「脱線 命」とかいってくれたり。もう、にこにこ、脱線だらけの授業だったのです。
9739nissyoku2
最後に、上の写真を撮るのに使った、穴のあいた紙。
これです。

こんなもので楽しい写真が撮れます。お試しあれ。

木漏れ日でもいいんですよ。葉っぱの重なりのすき間がピンホールになって地面に日食が写ります。ただ、こちらの撮影しやすい場所に写るかどうか、コントロールできにくいので、穴のあいた紙はお薦め。
また、指を曲げて、関節の間のすき間を使ってもいい。
両手の指を直角に重ねて、格子状のすき間をつくってもいいのです。
ほかにもいろいろバリエーションはあると思います。今度日食に出会うことのできる方はぜひ試してみてください。

日食

0722donten東京都大田区の南ふち。
7月22日午後12時46分。
です。
朝から結構強い雨が降り続き、この時間やっと、この曇天。
いやあ、残念でした。部分日食は見られませんでした。

日食を見ようと準備していたんですよ。
0722megane1 これ、観測用眼鏡の表側。強く光っていますね、この面にコーティングが施されていて反射率を高くしてあるのだと思います。
強い太陽光のかなりの部分を反射でシャットアウトするのでしょう。
0722megane2 こちらが、顔の側。
光っていませんね。反射されなかった光はさらに吸収されてわずかだけが透過して目に入るのです。
普通にこの眼鏡怖を目の前にかざすと、何にも見えません。真っ暗です。相手が太陽だから透けて見えるのですね。
星の手帖社が出した、日食本「欠ける太陽を見よう! 皆既日食」に付いていました。
日本全国各地での見え方の地図とこの眼鏡で合わせて500円。かなり売れたそうです。

アサヒコムの記事によると
2009年7月22日1時57分

 ・・・
 星の手帖社(東京都渋谷区)は5月、「欠ける太陽を見よう! 皆既日食」(税込み500円)を発行した。本の中に、目を保護するフランス製の日食メガネを挟み込む作業があり、社員3人で毎日2千部を出荷するのがやっとだったという。
 ところが6月以降、人気に火がついた。3日で完売という書店も現れ、特に奄美大島などで皆既日食が見られる鹿児島県での売れ行きが突出している。1万部でヒットといわれる天文分野にあって、すでに約13万5千部を完売。紀伊國屋書店によると7月には全国販売数で、村上春樹さんの「1Q84」を超えた日もあったという。
 ・・・

ということです。知らなかった。2冊買いましてね、妻と二人で並んで観測する予定だったのですが・・・。ザンネン。
次は26年後とか。多分生きていませんね。わが人生最後の日食でしたが、見られませんでした。

実はもう一つ準備しておいたものがあるのです。
0722pinhole
コレ。

ただの紙。折りたたんで角をハサミで切って、9つの穴をあけたものです。
名付けて「日食がいっぱい」観測装置。
立派な名前でしょ。
一つ一つの穴がピンホールカメラになって、9つの日食像を結ぶのです。
それを写真にとってお目にかけるつもりだったのですがだめでした。
つまんないから、こんな写真を撮りました。
0722pinholecamera
室外からの光をカーテンで遮って室内を暗くし、天井の蛍光灯の像を白い紙に結ばせて撮影したものです。
蛍光灯は3本セット。そのセットが9つ写っています。小さな穴からの像は暗くなっています。
紙にあけた穴は四角いのですが、結ぶ像は四角くなんかありません。ピンホールカメラですからね。
このように、四角い9つの穴から、9つの部分日食像が写る予定だったのです。

はい空振りしました。
テレビの中継を見て、テレビ画面の写真を少し撮ってあります。面白いものがあったらそのうちお目にかけますが、もう、みなさんごらんになっていますよね。

2009年7月21日 (火)

希硫酸

0714ryusan希硫酸が走っていました。
信号停止していたら、タンクローリーが右前に停止。時間があったのでパチリ。

10060/7800=1.29
なるほど、表示はあってますね。
kg/L=(1000×g)/(1000×mL) =g/mL となって、普通の密度表示単位と同じなんですね、

さて、元化学教師としての感覚では、比重1.29の硫酸を「希硫酸」といっていいのかなあ、という気がしました。
その場では正確な数値は分かりませんでしたので帰って調べてみました。

比重1.29の希硫酸は38.03%、5mol/Lという濃度です。

95.6%の濃硫酸が、比重1.84、18mol/L ですので、タンクローリーの「希硫酸」は、濃硫酸を約3倍強に薄めたものに相当しますね。
高校の化学室としてはこれはかなり濃いです。
生徒に使わせることを考えると、3mol/L よりは薄いものの方が安全。
濃硫酸を6倍に希釈したものを用意しておいて、用途に応じてさらに薄めて渡すことが多かったと思います。
3mol/L の希硫酸というと、比重は1.18、24.8%くらいになります。

自動車なんかの鉛蓄電池に使っている硫酸の比重が1.3くらいでしょうか。ですから、このタンクローリーの希硫酸は、バッテリー・レベルであって、高校化学のレベルの希硫酸ではないですね。
かなり濃い硫酸が走るものだなぁ、と感心しました。

◆古い人なものですから。希硫酸、希塩酸などの「希」の字が嫌いでしてね、願うわけじゃなし。
稀硫酸、稀塩酸でしょうにねぇ。薄めたのですから「稀」。
希薄じゃぁ、望み薄ですよね。やはり稀薄がいいなぁ。
時々、授業で、ボヤキを聞かせながら教えていました。

2009年7月20日 (月)

日食について

Nissyoku1拙い図を描いてみました。

7月22日(水)に日食が見られるというので、大分テレビなどでも解説が増えましたから、日食のおおよその仕組みはお分かりと思います。
ただ、なんとなく、もう一歩、という感もありますので、少しだけ補足を。

左図では、太陽や月や地球の大きさや距離関係は完全に無視しています。
影の理解のための図です。

月の影が地面に落ちています。
この時、FGの間の影を「本影」といい、EF間よびGH間の影を「半影」といいます。

あまり意識しませんが、普通に地上の物体の影でも、この本影と半影はあるのです。
窓枠の影に、頭の影を近づけていくと、頭にこぶができたようになって、影が伸びることがあります。これは窓枠の半影と頭の半影が重なって暗さを増し、こぶのように伸び出して見えるのです。

◆さて、FG間の本影の落ちている地面上で、Vという観察点を考えます。
Vと月の縁Cを結ぶ直線は太陽の縁Aより外を通過しますから、Vから太陽のA点は見えません。おなじように、Vと月のD点を結ぶ線も太陽のBより外を通りますので、Vから太陽のB点は見えません。
ということは、Vから太陽を見ることができないという事ですから、Vでは「皆既日食」が見えるのです。
◆GH間の半影の中の観察点Vを考えます。(EF間でも議論は同じ)
VとBの間を遮るものはありませんから、VからBは見えます。
VとDを結ぶ直線は、太陽面のA'を通ります。そこで、Vから太陽面のAA'間は見えませんが、Vから太陽面のA'B間は見えます。
ということは、太陽面の一部が見えないのですから「部分日食」ですね。
VがGに近いほど、たくさん欠け、Hに近いほど欠ける割合が少なくなります。

◆今回、鹿児島県のトカラ列島などは、この本影の中に入り、私の住む東京は半影にはいるのですね。
1999nissyoku
これは1999年の日食のときにミールから撮影した地表の写真です。
真っ黒いところが本影、薄黒いところが半影です。
本影が落ちた所では皆既日食が見え、半影が落ちた所では部分日食が見えているはずです。
この写真には感激しました。

★さて、ちょっと、地球・月の位置関係が変わると、左のようなことが起こります。
Nissyoku2
本影が直接地面に落ちず、その延長が地面に落ちている、という図です。

本影の延長の中の観察点Vではどのような日食が観察されるでしょうか。
本影の延長なのだから、皆既日食が見えるだろう、と考えますか?

ちょっと違うんですね。
ずがごちゃごちゃしていますが、Vから月の縁をかすめる直線を引くと、太陽面面に交わってしまうのです。
ということは、Vから太陽面のAA'とBB'が見えるんですね。A'B'間は見えません。
これは、太陽の中心部は隠されているのに、縁の部分が見えてしまうという日食=「金環食」なのです。

今回は、皆既日食であって、金環食ではありません。お間違いのないように。(観察点V2からみえる部分食は同じことなので説明しません。)

◆「ダイヤモンド・リング」というのも聞きますね。
太陽がすべて隠れた直後に、太陽の光が一か所だけ漏れて輝くことがあります。これは、月の「谷」から漏れた光です。月面の谷を観測しているとも言えるわけですね。
同じようなことなのですが、月面の谷から漏れる光が複数連なって見えることがあります。これは発見者の名前をとって「ベイリーの数珠」(Baily's beads)といいます。
太陽が隠れることの方に意識が向きがちですが、太陽を隠す月の表面に関する情報も見られるのだということを意識しながら見ると、日食観測ががより実り多いものになるでしょう。

◆実は、日本の気象衛星ひまわりも日食時の写真を撮ったことがあるようなのです。

1988_3nissyoku 1988年3月の撮影だそうです。この写真の存在は寡聞にして知りませんでした。もっと早く公開してほしかったなぁ。せめて教育関係者には公開してほしかったなぁ。授業で使いたかったなぁ。ミールからの写真は授業に使ったんですよ。

いいものを見た、という感覚よりも、なんでもっと早く見せてくれなかったんだ、という不満のほうが募ります。

退職して長くなる私の中に、いまだに「教師眼」が残っているのです。いい写真をみると、「あっ、これは授業に使える!」とすぐ思ってしまうのです。正直、本なんか見ていて、授業に使える写真や図が1,2枚あれば、4千円や5千円だしてももったいないと思わないのです。ほかの部分は使えなくてもね。そうやって、どれほどの「無駄遣い」を積み重ねて授業を創出してきたことでしょう。こういう感覚って、授業づくりということをご存じない方にはなかなかお分かりいただけないと思います。30年教師やって、同じ授業なんかしたことないですよ。毎年、変わるんです。全国の真剣な先生方はみんな同じ。常に新しい授業を模索していらっしゃいます。授業というのは「作品」なのです。教師と生徒が共同して作り出すものです。常に、ライブです。

このブログで掲載した写真や図や解説が授業に使えるようでしたら、存分にお使いください。

2009年7月 6日 (月)

名前が分かりません(花)訂正:ノウゼンカズラ

0618hum1六郷用水跡を散歩しておりましたら、きれいな花が咲いていました。

0618hum2
オシベ・メシベが上の方に張り付いた感じです。

花弁(萼か?)が分離していません。

0618hum3
つぼみや、葉はこの写真で感じをつかんでください。

なんだろうなぁ?

0618hum4 アシナガバチがきていました。
多分コアシナガバチだと思いますが、いいアングルでは撮れませんでした。

この花の名前、教えてください。

7月6日訂正:桔梗さんから「ノウゼンカズラ」でしょうとのご指摘を頂きました。全くその通りです。おはずかしい。

http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_c107.html

↑2年前に私自身が書いたノウゼンカズラについての記事です。六郷用水跡の生垣に今年初めて咲いたので、びっくりしてしまいました。どなたかが移植なさったのかな。

2009年6月 9日 (火)

「空気抜き」

0526juicepackちょっとまえに、ジョークとして「黄色いトマトジュース」をご覧に入れました。

そのジュースの四角い1Lパックです。
右端に「注ぎぐち」、左端に「空気抜き」と印刷してあります。

細かい話ですが、この「空気抜き」というのは誤りですね。「抜く」ということは、内部から外部への空気の流れですよね。でも、実際に注ぎぐちからジュースを注ぐと、外へ流れ出たジュースの体積の分だけ、「空気抜き」の口から「空気がパック内に入る」のです。ですから、厳密に言うとこれは「空気入れ」ですね。「空気取り入れぐち」のほうが正確かな。

ペットボトルに水をいっぱい入れて、ただ逆さまにすると、水が出ては、出た分の空気がボコッと入り、水が出て、空気が入り、を繰り返して、なかなかスムーズに水が出ません。

そこで、ボトルの底をぐるぐる回して中の水を回転させてやると、ボトルの中に渦ができて「竜巻」のようになり、ボトルの口のところで、渦の中心が外の空気とつながって、水が出るのと空気が入るのが別々に行えるようになって水の流出が速くなります。
この実験「ボトルの中の竜巻」とかいって、渦を見ることに重点が置かれがちなのですが、実は、この水の流出速度のアップの実験としても重要なものです。(私自身は50年くらい前に、科学雑誌か何かで話を聞いて、重い一升瓶で実験してびしょぬれになりながらたっぷり遊んだものです。)

もし、ペットボトルの底に釘か何かで穴をあけておいて、指でふさいで水を満たし、逆さまにして穴から指を離すと、ものすごい勢いで水が抜けていきます。

長いストローをペットボトルの口から中へ入れ、ストローから空気が入るようにしてやっても、やはりすごい勢いで水が抜けます。

つまり、水が抜けることと、空気が入ることが別々に行えればとても速くなるということですね。
冒頭のジュースのパックでも同じことなので、「注ぎぐち」からはジュースが流れ出し、それとは別に、「空気抜き」の穴から「空気が入る」ことによって、流れがスムーズに速くなるのです。

というわけで、「空気抜き」は誤りなのでした。

理科おじさんの部屋、という私のホームページでも小学生のU君とやった実験を紹介してあります。関心がありましたらどうぞ。
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/50th/sci_50.htm
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/51st/sci_51.htm

2009年5月28日 (木)

肺活量

2009.5.25付 朝日俳壇より
鯉のぼり肺活量の底知れず:(新潟市)小林直司

たしかにね、際限なく空気を吸い込みますからね、底知れぬ肺活量だ、と思われるのも無理のないところです。それはそれで、みごとな着眼点だと思います。

◆ここから、理科おじさんになってしまいます。
「肺活量」って何でしょう?「肺の容積」とは違うのでしょうか?同じなのでしょうか?
この場合の「活量」という概念は、肺が空気を出し入れできる量のことです。(化学の方でいう activity という活量とは全く違います)
3Lの空気を吸いこんで3Lの空気を吐出できれば、肺活量は3Lですね。では、その人の肺の全容量は3Lでしょうか?違いますね。息を吐ききった時、肺がぺちゃんこにつぶれてしまうわけではないので、ある容量は残ります。この分は換気できなかった量ですから、あまりなじみのない言葉ですが「死量」ということになります。燃料タンクなんかで使いきれない容量を死量ということはあるようです。

人間の肺のように、肺に息を出し入れして呼吸するタイプの肺では、必ず活量と死量ができることになります。そして、肺活量が大きいと呼吸能力も高い、ということで、冒頭の「鯉のぼり」の肺活量はものすごい、という発想になったわけです。

ところが、身近なところで、鳥の肺はどうなっているかというと、ある意味で「鯉のぼり」みたいなもので、肺活量という概念がないんですね。

鳥も息を吸ったり吐いたりします。ところが、肺の中での空気の流れは一方通行になっているのです。死量がないんですね。

肺の前後に前気嚢、後気嚢というものがあって、吸いこんだ空気は後気嚢に入り、肺を通って前気嚢へ送られます。鳥が息を吐くとき前気嚢にたまった空気を吐き出します。吸う時は後気嚢へ入れて、肺を通して前気嚢へ送り、吐くときは前気嚢から。という流れを常に維持していますので、空気は肺の中を一方通行で流れ続けるのです。ですから、非常に効率の高いガス交換ができ、ヒマラヤ越えをするアネハヅルのような、とてつもない活動が可能になるのですね。

鯉のぼりには実は「肺活量」というものがなかったのです。
なんというか、ロマンのない話でゴメンナサイ。

私のホームページで、このあたりの話を扱ったことがあります。どうぞ。
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/chemistry/Seperation/Coolant.htm

2009年4月30日 (木)

ステンレスの錆

0420bike1道端に止めてあったオートバイのマフラーです。
携帯電話のカメラでの撮影ですので、少々画面が粗いのですが話の本筋には関わりませんのでご勘弁を。

マフラーはステンレス製です。
さて、マフラーの両端に色が付いていますが、どうしてでしょう?
0420bike2
別に塗料で着色したものではありません。

これ、多分ステンレス中のクロムの酸化膜による、シャボン玉と同じ原理の虹色です。

ステンレスって錆びないんじゃなかったっけ?
いえ、ステンレスはさびの膜で保護されているんです。
ステンレスは鉄に、クロムとニッケルを混ぜた合金です。クロムはさびやすい金属でして、すぐさびて、緻密なさびの膜=酸化膜をつくって、鉄そのものがさびることから保護しているんですね。ニッケルが入ると、さらに酸にも強くなる。
ステンレスは、さびでさびから守る、という合金です。

ですから、ステンレスの表面にはさびの膜ができるわけですが、オートバイのマフラーには、エンジンから熱い排気が送り込まれます。すると、温度差に応じてさびの膜の厚みに違いができるんですね。熱いところはきっといっぱいさびて、酸化膜も厚くなるのでしょう。

シャボン玉ではせっけん膜の裏と表で反射した光が干渉して色を発します。そして、せっけん膜の厚みに応じて、色が変わります。

同じように、ステンレスの表面にできたさびの膜の裏表で光が反射して、その反射光が干渉して色が出るのです。

新しい銅板をゆっくり焼くと同じような虹色が見られます。

チタンのネクタイピンで、表面の酸化膜の厚みをコントロールして発色させた商品もあります。

チタンの酸化膜で虹色に発色させた微粉末を練り込んだ、虹色化粧品もあります。

街角で見かけた、金属酸化物薄膜シャボン玉、でした。

2009年3月30日 (月)

青鷺

2009.3.23付 朝日歌壇より
上体を先ずは送りて青鷺は長き脚もて歩みを移す:(下関市)藤本雅子

独特の歩き方ですよね。なんであんな歩き方をするんでしょう?
ハトはどうですか?ハトの方が身近だし。思い出していただくと、同じタイプの歩き方をしていることに気づかれるでしょう。

人間は頭部が体とくっついていますので、体の移動と頭の移動は同時です。
では、人間の体が移動するとき、周囲の風景はどう見えるでしょう?
人間の場合、眼球をかなり自由に動かせますから、体が移動しているときも、視点を一定のところにとどめておいて、風景が流れないように見ていて、眼球の移動が限界に来た時に、急速な動きでまた、反対側へ視線を振り、そこで視点を固定して動く風景を追う、ということを繰り返しますね。自動車や、電車で外を見ている人の目を見ると、眼球が振れていますが、見ている本人は風景を固定して見ています。

鳥の場合、眼球が頭部に対して動かしにくいのですね。ですから、体と頭が同時に滑らかに移動していくと、眼球に映る外部の風景は、流れっ放しになってしまうのです。
そこで人間が、視線を固定しては急速に戻し、ということを眼球運動でやるところを、鳥は頭の動きでやっているのですね。

まず頭を急速に前へ送ってしまいます。この時風景は流れていますがそれは仕方ない。
で、その位置で頭を空間的に固定して=風景も固定されて、体だけを前に移動させます。
体の移動を終えたら、また急速に頭だけを前へ移動させて、固定します、そうして体を前へ移動させます……

体を移動させる時、風景が動いてしまっては不都合なので、あのような動きで外界を固定的に見ながら歩いているのですね。

納得していただけたでしょうか。

2009年3月19日 (木)

雨のしずく

0306raindrop1定期点検時にフロントガラスに撥水コートをしてくれたのですが、それもだんだん威力が落ちてきました。
水とガラスの付着力の方が強くなってきて、べたっとはりつくようになってきました。
大きくなって流れ落ちた水滴のあとが、まとまれずに、張り付いている状態です。撥水性が高ければ、ここから表面張力で細くまとまるなりするんですけれどね。
毎日、埃をぞうきんでふきますから、その摩擦で撥水コートの威力が落ちてくるわけです。ところが、リアウインドに関しては、フロントほど熱心に拭きませんから、まだ撥水性が高いままです。
0306raindrop2
バックミラーで後ろを見ていて、ふと気づきました。

この写真で赤い矢印で示したところは、水滴が流れ落ちて、そのあとが細くまとまった筋です。
では、黒い矢印の指すところを見てください。
縦方向少し斜め左下に、空白の筋、が見えますね。
これは、上の方で大きくなって自重を支え切れなくなった水滴が、流れ落ちていく時に、その進行方向の小さな水滴を吸収・合併して一緒に流し落して行ってしまったためにできた「水滴の不在」の筋、です。

細長い「存在の筋」ではなく、細長い「不在の筋」というのも、なんとなくおかしなものだなぁ、と思ってご紹介しました。

◆飛行機雲はご存知かと思います。あれは、空に微小な水滴の「存在の筋」が見えています。
ところが、飛行機雲をつくる大きな水滴が、周りの微小な水滴を集めて成長し、そのあげくに大きくなったので落下してしまったとしましょう。すると、水滴の「不在の筋」というものができます。
逆飛行機雲、とか、消滅飛行機雲、といいます。
私のブログでも一回扱ったことがあります。ご覧ください。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-9334.html

「存在」が見えるのは、まあいいとして、「不在」が見える、というのも面白いでしょ。

2009年3月11日 (水)

コアラ

2009.3.9付 朝日歌壇より
人の手に手を添えたまま水を飲む猛火を必死に耐えたコアラは:(城陽市)山仲勉
 高野公彦 評:先日オーストラリア南部で山火事があった。この歌はそのとき消防隊に救出されたコアラの可憐な仕ぐさ。
Sam
←このサムネイルはクリックしても大きくなりません。著作権のからみがありますから。イメージとして把握していただくために載せただけで、大幅に情報を削減して元の画像が復元できないようにしました。



救出コアラの「サム」、希望の象徴 豪の山火事:2009年2月13日3時4分朝日新聞
 【メルボルン(オーストラリア南東部)】史上最悪の山火事に見舞われたオーストラリアで、消火活動中に救出された野生のコアラが「希望の象徴」として被災者らを元気づけている。
 消防団員のデビッド・ツリーさんが8日、メルボルンの南東約120キロの山林で脚をけがして動けなくなったコアラを発見。ペットボトルの水を差し出すと、続けざまに3本を飲み干した。ツリーさんは「差し出した私の手を握った瞬間を忘れない」と地元紙に語った。
 コアラは「サム」と名付けられ、写真を掲載した地元紙には「分けてほしい」との問い合わせが相次いでいる。

野生動物なのに、こういうことってあるんですね。必死だったんですね。きっと、ほっとしたんですね。うれしかったんですね。
本当に心をうたれました。

◆こんな投稿もあったんですよ。
[ひととき] 命、一つひとつ
 13日付朝刊の1面に掲載されていた、オーストラリアの山火事で救出されたコアラと消防団員の写真にくぎ付けになった。
 あのかわいらしい手を人間に預け、無心に水を飲む姿に、精いっぱいの感謝の気持ちが込められているのが、私には痛いほど伝わってきた。
 胸が熱くなり、何かフツフツとこみ上げてくるものがあった。
 我が家は動物好きの一家だった。一番多いときで、ネコ7匹がいた。もちろん、全部捨て猫だ。
 薄汚れたり、傷ついたりした捨て猫を見ると、子どもたちは抱きかかえては学校から帰ってきた。それを何も言わずに私は受け入れた。
 いつかは、近所の子どもたち3、4人が「オバチャン、これ飼って。うちのお母さんが捨ててこいと言うので」と言って子猫を抱いてきたこともあった。
 7匹全部に子どもたちが名前をつけた。よく見ると、顔は全部違っており、おもしろいことに性格もみんな違っていた。
 オーストラリアのコアラは「サム」と名前が付いたそうだ。
 あまりのかわいさと感動で、私は新聞の写真を切り取り、身近に置いて、眺めている。
 それにしても、一日も早く被災地に平和が来ることを心の底から祈らずにはいられない。
 (兵庫県西宮市 ○○○○ 主婦・73歳)
(2009年2月23日付朝日新聞大阪本社朝刊から)

◆こんな話もありました。「ニュースがわからん」から引用

 ・・・
 コブク郎:消火は順調だったの?
 A:炎の高さが一般的な山火事の数倍にあたる50メートルほどにもなり、消防士がなかなか近づけなかった。地域で動員できる人数が初期段階では限られていたことも、火を止められなかった一因のようだ。
 ・・・

 昔、同僚が30歳になった時、準備室で誕生日祝いをして、年とったなぁ、とからかったりしました。その時に、小さなケーキを買ってきて、30本のろうそくを立てて、火を着けたんですね。
 ろうそくの炎って感覚としてつかめますよね。2cm程度の炎がまっすぐ立ちあがります。
実は、ろうそくの炎の形というのは、上昇気流によってつくられて、あの「炎形」になるのです。芯での燃焼熱で上昇気流がうまれ、周りから空気を吸い込んで流れていくのですね。
 ところがです、小さなケーキに30本ものろうそくを立てると、全部のろうそくの上昇気流が合わさって、ケーキ全体を包む上昇気流が発生するのです。そのため、個々のろうそくの炎はケーキの内側へ傾き、強い上昇気流に炎が引きずられ引き伸ばされ、炎の長さだけで6~7cmかなぁ、もっとかなぁ(気分的には10cmもあったような気がするけれど、定かではありません)、すごく長くなるのです。
 とても、吹き消すことのできるような炎ではなくなります。「火勢が強い」といっていいような炎の集団になります。真上に火災報知機でもあったら検知されてしまうでしょう。(天井の低い家庭ではやらない方がいいです。やるんだったら、水を用意して、すぐ消せる準備をしてからやってください。冗談じゃなく、危険な実験になります。)
 ちょっと緊張しましたね。集まっているのは理科教員の仲間だけですから、みんなで観察して、すっげぇなぁ、などと騒いだだけですが、あれはすごかった。

 これと多分同様の現象が、今回の山火事で生じたのだろうと想像します。
多数の木が並んで燃えると、1本の場合の炎とは違って、激しい上昇気流を生じて炎が引き伸ばされて、ものすごく長くなってしまうのでしょう。50mの炎といったら想像を絶しますね。多分私の推測するメカニズムで間違っていないと思います。

2009年3月 6日 (金)

灯油

0302keroseneこれは灯油ストーブなどを使っている家に灯油を売りに来る、小型のタンクを積んだ車です。

最大数量3.5kL、最大積載量2800kgと表示されています。

密度を計算すると、2800kg/3.5kL=0.8g/mLとなります。

灯油というのは、原油を分留した時の、沸点範囲が145~300℃程度の留分です。
比重は普通、0.78~0.83程度といわれています。

ジャスト合ってましたねぇ!
見事。

タンク車などの表示を眺めて楽しむことができるということをお示ししました。
ぜひ、工夫してお楽しみください。
理科おじさんの、お勧め日常サイエンス、でした。

タンクローリー

0227fecl3_soln信号待ちの偶然。パチリ。

「塩化第二鉄液」と表示されています。
正式には「塩化鉄(Ⅲ)水溶液」といいます。

鉄イオンには+2のものと、+3のものがありますので、昔、それをそれぞれ「第一鉄」「第二鉄」と呼んだのです。現在の国際的な約束では、+2のイオンは「鉄(Ⅱ)」と表示し、+3のイオンは「鉄(Ⅲ)」と表示します。

さて、最大数量「10000L」、最大積載量「12130kg」と表示されています。

「L」はリットルのことです。「ℓ」は学校では使いますが、公式には小文字で「l」なんですね。そうすると、あまりにも「1」などと区別がつきにくいので、最近は大文字で「L」と書くことが普通になりました。
12130kg/10000L=1.213 kg/L=1.213 g/mL となります。
これがこの溶液の密度ですね。1.2くらいの数字でいいと思います。

さて、塩化鉄(Ⅲ)の水溶液って何に使うのだろう?
思い浮かぶのは、プリント配線での銅のエッチングですが。

工業的な用途を調べてみました。

凝集沈澱剤 : 下水終末処理、し尿処理、畜産廃水処理、食品工場・化学工場廃水処理、石油化学工場廃水処理など
硬化助剤  : 土建関係、グランド工事、ダム工事など
金属腐食剤 :ネームプレート・プリント配線板、グラビヤ印刷、写真製版、ICリードフレーム、シャドーマスクなど
その他   :触媒、顔料、医薬、農薬、媒染剤など

こんな感じですね。これなら、タンクローリーで大量に運んでいるのが理解できます。

美術で銅板のエッチングにも使いますね。

◆普通、高校で「イオン化傾向」というと
 ・・・Zn>Fe>・・・>(H)>Cu>Hg・・・
こう教わって、実験をやるとすれば

銅イオンの溶けた青い水溶液に、鉄片を入れると表面に黒っぽく銅が析出するとか、スチールウールを入れると、青い色(銅イオン)がすっかり消えて、スチールウールの表面はピンク(金属の銅)になる、というような実験になります。

ところが、高校ではほとんど教えないのですが、(eは電子を表すとして)
Fe(Ⅲ)+e = Fe(Ⅱ)
という変化で、三価の鉄イオンが電子を奪って2価の鉄イオンになろうとする力はかなり強いのです。
電子を失うことを酸化、電子を得ることを還元、といいますので、3価の鉄イオンは電子を相手から奪い取る「酸化剤」として働くのですね。

そこで、金属の銅に塩化鉄(Ⅲ)の水溶液を塗ると、塗ったところだけ銅がイオン化して溶けます。これを利用して、エッチングをするのですね。

◆タンクローリーを見て、化学の授業が一つ構成できました。
生徒実験か演示実験で、プリント基盤づくりをやっても良いかもしれません。
あるいは美術の先生に協力をお願いして、エッチングの製作もいいですね。

白リン弾

2009.2.23付 朝日歌壇より
寒の朝温き布団に包まりてガザに落ちいる白リン弾を見る:(静岡市)山本武

白リンって何でしょう?高校で化学を学ばれた方なら、「黄リン」という名前で教わったはずです。リンの同素体です。
「エッセンシャル 化学辞典」東京化学同人 によりますと

黄リン[white phosphorus] リンの同素体の一つ。気体や液体のリンを冷却すると生じ、純粋なものは白色なので白リンともいう。・・・35℃で自然発火し・・・。室温で徐々に酸化され、黄緑色の光を発する。室温でゆっくり赤リンに変わる。α黄リンは発煙剤や殺鼠剤に使われたことがある。猛毒。皮膚との接触は避ける。飲みこんだ場合の致死量50mg。

危険極まりない物質です。別の同素体の赤リンは安定で、無害ですので口に入っても消化・吸収されずに排せつされるだけです。マッチの箱の横が赤紫色になっていたらそれが赤リンの色です。

白リン自体、接触すれば猛毒だし、自然発火するし、皮膚にくっついたまま燃え続けて、普通には消せないし、とんでもない物質です。

発煙剤といって、ただ煙が出るだけか、と安易に思わないでください。リンが燃えると五酸化二リンというものができます。これが煙の正体。また「エッセンシャル 化学辞典」から引用します。

五酸化二リン[diphosphorus pentaoxide]黄リンを過剰の乾燥空気または酸素中で燃焼させると得られる。無色の結晶。水には多量の熱を発生して溶ける。吸湿性、脱水性が強い。粘膜を刺激し、目に入ると危険である。・・・

ただの煙じゃないんです。皮膚の水分に強引に溶けて「熱い」んです。溶けたリン酸はかなり強い酸性を示します。空気中に水蒸気があると、水蒸気を液体にして溶け込み、リン酸の霧ができます。

白リン弾、煙が出るのか、では済まないのです。車に積んである発煙筒とはわけが違う。
実に気分の悪い物質なんですね。

2009年2月4日付の朝日新聞朝刊の[ニュースがわからん!]に
「白リン弾」ってどんな兵器?というのが載りました。

 

アウルさん 最近、「白(はく)リン弾」という言葉をよく聞くけど、何のこと?
 A: 化学物質の白リンを詰めた砲弾のことだよ。白リンには、空気に触れると自然発火して大量の煙が出る特性がある。そこを利用し、第1次世界大戦のころから主に煙幕を発生させる目的で使われてきたんだ。ただ、戦闘で赤外線を使う現代では煙幕の効果が薄く、時代遅れになりつつあるようだね。
 アウルさん それがなぜ、いま問題になっているの?
 A:イスラエルが昨年末から23日間にわたり、パレスチナ自治区ガザを激しく攻撃した際に、これを使ったといわれているんだ。しかも、一般の住民が多い市街地で使われ、市民がやけどを負ったと疑われている。発火しやすく、水での消火が難しいので焼夷(しょうい)弾として使われた可能性がある。国連は、国連パレスチナ難民救済事業機関の現地本部への攻撃でも使われたと見ている。国際NGOは、市街地での使用は戦争犯罪だと批判しているね。
 アウルさん 化学兵器なの?
 A:それが違うんだ。化学兵器禁止条約などの個別の規制対象に、白リン弾は入っていないと国際的には理解されている。殺傷目的ではないと考えられてきたからね。あえて焼夷弾として使った場合は、民間人を狙ったり、人口密集地で使ったりしてはいけないという特定通常兵器使用禁止制限条約に触れる可能性を指摘する人もいる。
 アウルさん イスラエルは何と言っているの?
 A:「兵器は国際法に従って使っている」と繰り返し、白リン弾を使ったとも、使わなかったとも明言していない。イスラエルの有力紙ハアレツは、軍の内部調査の結果、少なくともガザ北部のベイトラヒヤで20発が使われたことが判明したと報じた。
 アウルさん 使われた例は、ほかにもあるの?
 A:04年に米軍がイラクで、06年にイスラエル軍がレバノンで、それぞれ実戦で使ったことが知られている。また、米海兵隊は08年11月の北海道・矢臼別(やうすべつ)演習場での訓練で20発を使ったと認めた。白リンに不純物が混じったものが黄(おう)リンで、これはかつて、殺鼠(さっそ)剤の代名詞だった「猫イラズ」の主成分として日本でも使われていたことがあるんだよ。

「人道的な兵器」などというものは言語矛盾で存在し得ませんが、それにしてもひどすぎます。

ヒトってどこまで堕ちることができるのでしょう?

2009年3月 4日 (水)

雨滴(自動車のフロントガラスに)

0227waterdrop前の記事で、諏訪兼位先生の短歌をご紹介しました。
空中を落下していく雨滴の姿を高速カメラがとらえた映像を見た感想を歌に詠まれたものです。

私たちの日常生活で、空中を落下する雨滴を肉眼でしっかりと見ることはできません。
でも、この写真のような状況なら、結構見かけるのではありませんか?

これは自動車のフロントガラスに付着した雨滴が、合体して重みで流れていったところを撮った写真です。
0227waterdrop2
こんな長いのも出来たりします。

このような状態が観察できるのは、撥水処理をしてもらってしばらくの間のことです。私の車では、年に何日かしかありません。

しばらくすると、ガラス面と水の付着力が増して、こういう流れ方はしなくなります。

これ、いったいどういう状況なのでしょう?
ひと言でいってしまうと、「引き伸ばされた水滴」の状態です。

水滴に働く力はガラス面との付着力と重力です。
もし、付着力がゼロだったら、雨滴はガラス面に当たって、そのまままん丸い形で転がり落ちてしまうはずです。
付着力はゼロではないがごく小さい=撥水性の状態にあるときにこうなります。

雨滴は重力によって下へ流れようとします。でも、少しガラス面に付着して長さが伸びます。伸びたところで別の水滴と合体して水の量が増え、勢いよく下へ流れます。付着力によって水滴はすごく長く伸びます。伸びた水滴の下の部分がウィンドの下に当たって停止したとき、付着力より表面張力が勝っていれば、伸びた水滴は丸くなろうとして後ろに残してきた水をスルスルっと回収してしまいます。つまり細長く引き伸ばされた一個の水滴なんですね。
もし、伸びすぎて、途中にくびれが出来ていたりすると、表面張力でそういう部分がくびれ切れて、後に残ります。2枚目の写真にその取り残される様子が写っていますね。

付着力が大きいと、水滴が流れていったあとに、帯状の濡れた部分が残るだけになります。そうして各部分で小さな水滴に、表面張力でまるまったり、それもできずに、ただ濡れを残すだけになります。これが、日常一番よく見る状態でしょう。

圧倒的に付着力が大きくて、表面張力なんか無視、ということになると、ガラス面全体が濡れて水の膜で覆われることになります。こういう状態は、超親水的といいます。
二酸化チタンコーティング(光触媒コーティング)した鏡では、表面がこの超親水状態になって水滴ができず、曇らないのですね。風呂場で水蒸気が当たっても曇りません。
車用品で、ドアミラーに貼って超親水状態にするフィルムというものがあります。
超撥水状態では、細かい水滴がつくことは避けられません。軽い風で吹き飛ばされるといっても、ドアミラーの曇りは避けられません。こういう場所では、逆にべたっと濡れる超親水性の表面にするのが良いのです。

たまたまフロントガラスが撥水状態にある時に雨にあい、写真を撮ったら、諏訪先生の歌もあったので、まとめてお話ししました。

2009年2月13日 (金)

イリジウム

米ロの衛星同士が衝突 初の「宇宙交通事故」か:2009年2月12日11時3分
 【ワシントン】米主要メディアは11日、米国の衛星携帯電話システム「イリジウム」の衛星と、機能停止したロシアの通信衛星が衝突し、宇宙ごみ(デブリ)がまき散らされたと一斉に報じた。微小なデブリと衛星の衝突は過去にあるが、衛星同士がぶつかる宇宙の「交通事故」は初めてとみられる。
 CBSテレビ(電子版)によると、衝突は米東部時間10日正午(日本時間11日午前2時)ごろ、北シベリア上空約790キロで起きた。両衛星とも破壊され、約600のデブリとなって漂っているという。ロシアの衛星は93年に打ち上げられた「コスモス2251号」で、10年ほど前から機能停止していたらしい。
 AP通信によると、イリジウム衛星は約560キロ、コスモス2251号は約1トン。
 報道によると、米軍は衛星のほか10センチを超えるデブリの軌道を監視しており、国際宇宙ステーション(ISS)など有人の宇宙船に接近していないかどうか調べている。
 ISSの高度は約400キロと低いため、今回の衝突の直接の影響は考えにくい。デブリの高度が下がってくると、影響を受ける可能性もあるが、ISSや米スペースシャトルのような有人宇宙船は軌道を変える装置を備えているため、監視網でとらえたデブリなら回避できる。
 イリジウムは衛星を利用して世界中どこでも携帯電話が使えるサービスで、予備を含め約80個の衛星が高度約800キロの軌道を回っている。米イリジウム社は、今回の衝突で「携帯電話通信への影響はほぼない」としている。
 デブリ問題は近年深刻化しており、一昨年、中国が衛星破壊実験をしたときは「デブリが多数発生する」と国際的に非難された。米航空宇宙局(NASA)によると、10センチを超えるデブリは現在約1万2千個が確認されている。

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◆こんな記事が報道されました。
 私の記憶では「イリジウム」社は、初め77個の衛星を打ち上げて、通信網を構築しようとしたのだったと思います。その後、経営がどうのこうので、今のイリジウム社は最初のイリジウム社そのものではなかったと思いますが・・・。
 ところで、イリジウム(Ir)という元素の原子番号は77なんですね。そこで、77個の衛星で通信網を、ということで、「イリジウム」と命名したのです。化学屋としては、そういうことか、とニヤッとした思い出があるのです。

◆人工衛星が地球を回るには、秒速8km必要です。とんでもない高速だ、こんな高速で衝突したらものすごい衝突になる、という感覚を持たれるかもしれません。でも、もし、全部が秒速8kmで同じ向きに飛んでいたら、相対的には速度ゼロになります。
 軌道の要素はいろいろあるので、たまたま軌道が交差して、今回のような衝突が起こり得るわけですが、その衝突が秒速8kmだったとは限らないことには注意してください。

◆ところで、ヒトという動物の浅知恵!
 やるのはいいけれど、いっつも後始末を考えずにやるから、大騒ぎになる。

・人工衛星も始末方法はまだない。
・フロンがそうですね。化学的に安定でいいガスでしたが、廃棄されてオゾンホールをつくった。
・PCBもそうでした。絶縁性の良い油で、電気製品に大量に使われて、でもダイオキシン問題で使えなくなって、今だに未処理のPCBが入ったドラム缶が転がっている。
・原子力の活用も、核廃棄物の処理方法が確立していないのに見切り発車して、いまだに安定的な廃棄法がない。トイレなきマンション、というやつです。
・二酸化炭素もそう。
・メタンハイドレートにいま目をつけてますが、うっかり採掘しそこなって空気中に漏れ始めたら、温暖化を加速しますが、大丈夫かどうか、私はすごく不安です。
・プラスチックもそう。
 ・・・

◆自分の尻は自分で拭きなさい!
 と地球に言われますよ、そのうち、必ず。
 というわけで、どういうことになるのかというと、ヒトという生物種の絶滅が危惧されるわけです。

2009年2月10日 (火)

スタティック・ミキサー

手元に、朝日新聞2月5日付紙面の、新聞広告があります。「ノリタケ」の広告です。私は別にノリタケの広告をしたいわけではないのですが、その広告文を引用します。

回転しないミキサー
現代アートのように美しい、この螺旋状のメタル。実はこれ、回転しないミキサーなのです。飲料や乳製品などを製造するパイプの中に固定され、原料をなめらかに混ぜ合わせる役割をします。閉じたパイプの中でかき混ぜるから、安全で衛生的。たとえばビールをつくる工程で、炭酸ガスを混ぜ合わせ、クリーミィな泡とおいしいのどごしを生み出す、
これも、ノリタケの技術のひとつです。

Staticmixer この図は、ノリタケのホームページからの引用です。

こういう形をしたステンレス製のものの写真が広告には掲載されています。

多分、この広告写真と広告文を読んで、何を言っているのかが分かる人はほとんどいないでしょう、工学系の人なら別として。私は理学系ですが、この装置の原理はおそらく40年近く昔に耳にして感動し、自分の化学教師としてのキャリアの中でも、手動でこの原理を使いました。

どういう話なのか、簡単に御紹介します。

長方形の板を180度ひねったものが基本です。右にひねるか左にひねるかの違いはあります。これを、上の図の直線部分が直交するように管の中に配置するのです。そうして、管の中に液体を流すと、流れがひねられること、次のエレメントに入る時に半分に分割されること、これが液体を撹拌することになるのです。

撹拌するというと、ビーカーの中をガラス棒でかき回すようなイメージが強いと思いますが、液体が全体として一緒に回ってしまうと、意外と混じらないものなのです。特に粘っこいものは混じりにくいですね。あるいは、異なる種類の粉末を均一に混ぜようとしても、なかなか混じりません。

このスタティック・ミキサーの一番基本的な働きは、ひねって、半分にする、というところにあります。

パイ生地をこねるときに、二つに折って伸ばし、また二つに折って伸ばし、ということを繰り返しますね。10回やれば、1024枚になります。この操作で、パイの重なり合った薄い皮ができるわけです。

パン生地をこねる、ピザパイの生地をこねる、みんな、二つに折っては押し伸ばし、という基本動作で均一にこねていきます。

スタティック・ミキサーも、混じりにくい液体を二つに割って、二つに割って・・・と繰り返して細分し、均一に混ぜるのです。

この他に、ひねりが入るので、液体内部の混合も起こります。

というわけで、管の中にこのスタティック・ミキサーを設置して、混合したい液体を流すだけで混ざり合うというわけでした。

http://www.noritake.co.jp/eeg/kakouki/about_staticmixer/index.html

↑このページに解説があり、混ざっていく様子の動画も見られます。(インターネット・エクスプローラー用になっていて、ファイア・フォックスでは見られませんでした。念のため。)

面白いもの好きの方にはお勧めです。ど~ぞ。

◆化学実験で、粉末を均一に混ぜたいことがあります。板の上に置いて匙でかき回してもなかなかうまく混じりません。

そういうときは、ひと山にまとめ、4つに切ります。右上の部分を左下へ、左上の部分を右下へ、ざっとでいいですから、移動させて、またひと山にまとめます。

そうしたら、また4つに切って、混ぜます。・・・。これを繰り返すと、結構すんなりと混じるのですね。

硫黄粉末と亜鉛粉末、硫黄粉末と銅粉末、酸化鉄粉末とアルミニウム粉末など、いろいろ混ぜたいことがありました。密度が異なると、なかなかうまく混じりません。こういうときは上に書いたような、分けては混ぜ、分けては混ぜ、という方法が有効です。おためしあれ。

 

2009年2月 6日 (金)

密度

0202cement信号待ち。
眼の前にタンクローリー。で、一枚パチリ。

「バラセメント」というのは、よくは知りませんが、袋詰めではない「バラ」の「セメント」ということでしょう。内容物は普通のセメントのはずです。

セメントの粉、一粒一粒は、水より密度が大きい粉です。ところが、粉末全体としては、たくさんの空気を含んでいるために、密度が(ここでは比重となっていますが)1になっています。水と同じ密度です。

最大積載容積が13.0立方mで、最大積載量が13000kgです。
13000kgは13tですね。
ですから、密度は
13t/13立方m=1[t/立方m]となります。

ところで、1t=1000kg=1000000g です。
1立方m=100cm×100cm×100cm です。
そこで
1[t/立方m] = 100,0000g/100,0000立方cm=1[g/立方cm]
なんですね。

トンと立方メートルで計算した密度の値は、そのまま、g/立方cmでの密度の値として読むことができるのです。

今度、タンクローリーなど見かけたら、この計算してみてください。正確である必要はありません。1より大きいか小さいかだけでも結構面白いことになります。

えっ、この物質水より密度が小さいの?とか、意外なことになるんですよ。
お勧めします。(運転中の方は注意力をそらさないようにしてください。)

湯たんぽ(水蒸気爆発)

◆浅間山の噴火について、「水蒸気爆発」という記事がありました。

浅間山噴火は水蒸気爆発 マグマはわずか 東大地震研:(アサヒコム、2009年2月4日0時31分)
 東京や房総半島にも火山灰が降った2日の浅間山の噴火は、マグマではなく、熱で膨張した水蒸気が噴出し、火口に堆積(たいせき)していた古い溶岩などを吹き飛ばした現象だったことが分かった。火口の「ふた」が吹き飛んだ格好で、今後の噴火でマグマが噴出する可能性もあるという。
 東京大学地震研究所が火口から約8キロで採取した火山灰を解析。新しいマグマの噴出を意味するガラス成分は数%以下でほとんど含まれていなかった。マグマではなく水蒸気爆発に近いと判断した。
 浅間山は火口下に水蒸気などが充満した「ガスだまり」があり、さらにその下に「マグマだまり」がある。今回はマグマの熱で「ガスだまり」が膨張し、04年の噴火の堆積物を吹き飛ばしたらしい。高感度カメラの画像で赤く見えたのは、高温に熱せられた噴出物や火山ガスだった。
 地震研の中田節也教授は「2日の噴火は10分程度と時間も長く、火口で岩石が『うがい』をするような状況で、石がぶつかり合って細かい火山灰が発生した」と話す。

 この場合の水蒸気爆発とは、高温のマグマに水が接触して、水蒸気を発生し、その圧力で爆発的に堆積物が吹き飛ばされた、ということのようです。
「水蒸気爆発」という言葉は、結構、便利に使われていて、意味があいまいなことがあります。一応、高温物体と水の接触で急激な水蒸気の発生が起こる、ということが基本的な意味です。

◆ところが、私が少年のころ、初めてこの「水蒸気爆発」という言葉を知った時は、ちょっと別な意味でした。

 ガラス玉に水を封入する。このガラス玉を熱していくと、中で圧力が上がり、100℃では沸騰できずに100℃を超えた液体の水ができる。なお加熱を続けると、ガラス玉が内圧に耐えきれなくなって割れる。すると中の、高圧で100℃を超えた液体の水が一瞬にして1気圧になり、100℃を超えた液体の水は存在し得ないので、一瞬にしてすべてが気体になる。この急激な体積膨張が「爆発」になる。

 こういう話を聞かされて、納得しました。地下のボイラーなどでこのタイプの水蒸気爆発が起きると、ビルが吹っ飛ぶくらいの爆発になる、とも聞かされて、驚いたものです。

◆上に引いたガラス玉の話と同じ事故が、実は、最近たくさん起こっているようなのです。
それは、湯たんぽの事故、圧力鍋の事故です。

まずは、湯たんぽの事故
① 平成19年1月3日(北海道):ゆたんぽのふたをしたままガスこんろにかけ寝込んでしまったところ、破裂してアパートの部屋の窓ガラスが割れた。
② 平成19年12月6日(兵庫県)、平成20年1月5日(福井県):金をはずさずに電磁調理器でゆたんぽを暖めていたところ、破裂して調理器などが破損した。
③ 平成20年1月27日(長野県):ゆたんぽのふたをしたまま石油ストーブの上に乗せて加熱し放置していたところ、破裂してガラス、引き戸、テレビなどが破損した。

何が起こっているのか、説明します。
Vaporpressure1  グラフを見てください。このグラフは水の状態図というものの一部です。(データは理科年表からとり、グラフ化しました。)横軸は摂氏温度「℃」、縦軸は気圧「気圧」です。(学術的にはパスカルという単位を使いますが、分かりにくいので「気圧」単位としました。)
 このグラフの曲線の左上側の領域では水は液体として存在し、曲線の右下側の領域では水は気体として存在します。そのような存在状態をグラフ化したので、状態図というのです。
 グラフ中のA点は、20℃、1気圧です。通常の生活環境です。
この20℃の水を、1気圧下で加熱していくと、温度が上がっていき、曲線にB点でぶつかります。ここが沸点です。1気圧のもとでは100℃です。もし、1気圧のままで加熱を続ければ、水に対して与えられた熱エネルギーは、沸騰によって液体が気体に変わるときの熱として運び去られ、液体の水がなくなるまで沸騰が持続します。
すべてが気体の水になった後も加熱を続けると、今度は気体の水の温度が上昇し、点Cの方へと進んでいきます。これはごく普通のこと。

 もし、湯たんぽを蓋をしたまま加熱するとどうなるか。中で水蒸気=気体の水、が発生しても逃げ場がありませんから、圧力が上がります。圧力が上がると、沸点も上がりますので、グラフの曲線にそって温度上昇にとともに圧力も上昇していきます。
例えば、点Dのところの圧力で湯たんぽが耐えられなくなったとしましょう。(多分もっと高圧まで耐えます。このグラフでは後でお話しする圧力鍋との関連で、Dを2気圧のところに設定しました。Dが曲線上のもっと高圧側であっても話の筋書きは同じです。)

 点Dでの圧力に湯たんぽが耐えられなくなって、湯たんぽが割れました。
2気圧の水蒸気がシューっと噴出するだけだ、と思われるのではないでしょうか。
違うんですね。湯たんぽが割れたので、湯たんぽの中が1気圧になってしまいます。すると、1気圧のもとで120℃の液体の水というものは存在し得ませんから、水全部が一瞬にして気体になってしまうんですね。点Eへ移るわけです。
これは大変な体積膨張を伴うわけでして、爆発になります。
上に引いた、事故例でも、水蒸気が噴出したという生易しいものではなく、窓ガラスが破れたり、テレビが破損したりしていますね。まさに爆発事故になったのです。

 爆発というと、ガス爆発とか、火薬の爆発とか、そういうものを考える方が多いと思いますが、そもそも爆発とは「短時間における急激な膨張」のことなんです。ですから、火薬やガスがなくても、液体の水が一瞬にして気体になるということで十分爆発になるのです。

これも、水蒸気爆発というものの一つの形態です。

 水蒸気の噴出とはケタ違いの出来事なのだということを認識してほしいのです。
湯たんぽにひびが入っても、水蒸気が噴き出す程度だろう、というわけにはいかないのですね。

次は圧力鍋。
 我が家でも、もう30年以上圧力鍋を使っています。使い方さえ正しければ便利な調理器具です。我が家のはラゴスティーナの鍋です。
 フタに圧力調整用の弁があって、内部が2気圧程度になると、水蒸気を逃がして内圧をほぼ2気圧に維持します。すると、内部では120℃くらいでの沸騰が続くので、普通のオープンな鍋ではできない調理ができるというわけです。

 上のグラフは、2気圧で約120℃ということが分かるようにました。

 圧力鍋のフタには、もう一つ安全弁があります。もし、水蒸気を逃がして圧力を一定に保つ調圧弁が何かの不具合で正常に働かなくなった時の安全装置です。硬めのゴムか何かでできた弁がはめてあって、限界を超えるとこの弁が弾き飛ばされます。
 一度だけ、この弁が作動してしまったことがあります。粘っこいものを煮てしまい、圧力を逃す弁が詰まってしまったのです。
 安全弁が吹き飛び、その結果、鍋の中が一瞬で1気圧になり、鍋の中の水分が一瞬で全部気体になり、粘っこい煮物が全部噴出しました。すごかったです。でも、爆発には至りませんでした。それが安全弁というものの働きです。

さて、圧力鍋の事故です。

【ここがポイント! 暮らしの安全】取扱説明書を読もう(1)朝日新聞2008年08月27日
 ・・・
 ここ数年、炊飯器を使った新しい調理方法を紹介した書籍が出版されている。介護食や単身世帯向けの食事を中心に、煮物や肉料理などの本格的な調理が紹介されている。
 都は先日、これらの方法で調理すると、場合によって高温の蒸気などが噴き出す危険があると発表した。
 ある消費者が書籍を参考に炊飯器を使ったところ炊飯器の中身が飛び出し、やけどを負った事例があった。そこで都が圧力式炊飯器を使って実際にテストした。その結果、蒸気口をふさぎやすい豆料理やポリエチレン製の袋に食材を入れる調理、アク取りシートを使用する調理では、蒸気が蒸気口や炊飯器のすき間から急に噴出したり、炊飯器のふたを開けたときに中身が飛び出したりする危険性があることがわかった。
 メーカーの取説には、圧力式炊飯器の蒸気口をふさぐような調理は内圧が高まって危険であるので、調理しないようにと記されている。
 ・・・

この記事の中で触れている東京都の調査も見てみました。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2008/07/60i7f100.htm

平成20年7月15日:生活文化スポーツ局

 過去約10年間に全国の消費生活センターに寄せられた相談情報によると、近年、圧力式炊飯器の使用中に「フタが突然開き、飛散した内容物によってやけどした」等の相談が増加しています。相談の中には市販の書籍を参考に炊飯以外の調理を行ってやけどしたものもあり、圧力式炊飯器を炊飯以外の調理に利用することが事故の遠因となることが考えられました。
 そこで、東京都では、圧力式炊飯器等の安全な使用方法に関する調査を行い、結果を消費者に情報提供し、事故の未然防止を図ることとしました。
1 調査結果
(1) 取扱説明書と炊飯器調理を紹介した書籍の調査
 圧力式炊飯器の取扱説明書には「炊飯中はフタが開かない」や「フタの蒸気口をふさぐ恐れのある道具の使用を避けること」が記載されていた。
 その一方で、炊飯以外の調理方法を紹介した書籍があり、それらの中には「途中でフタを開けて様子をみる」等、圧力式炊飯器の禁止事項に該当する記述が見受けられた。
(2) 再現テスト
 圧力式炊飯器で、1) 豆の調理事例、2) アクとりシートを使用する事例、3) ポリエチレン袋を使用する事例の再現テストを実施した。その結果、炊飯器の蒸気口がふさがれ、内容物が飛び散ったり、高温の蒸気がふきだした場合があった。
 ・・・(後略)

・「炊飯中にフタを開けて様子をみるよう指示している書籍が4冊あった」そうです。
 もってのほかです!
 調理というものはすぐれて「理科的」なものなのです。化学も知らない、物理も知らない、で責任ある調理法が開発できますか!
 加圧調理中にフタを開けるなんて、初歩の初歩の大間違い。よく恥ずかしげもなくそんなことが書けるものです。

・ポリエチレンというものは純粋な物質のようなくっきりした融点がありませんが、おおよそ、110℃~130℃くらいでとろけてしまうものなのです。加圧調理中は100℃を超えるのですから、調理対象は粘っこくなくても、ポリエチレンがねっとりべっとり、圧力調整弁をふさいでしまう可能性はとても大きい。

情けないですねぇ。自衛しましょう。料理研究家と自称しておられる方々の本を信じないこと!やはり基本的にメーカーの取扱説明を読んで理解し、禁止事項は守ること、です。

 水蒸気爆発は、遠い火山での出来事ではありません!家の中の台所で起こりうる事故です。
 圧力を異常に高めないようにさえすればよいのです。

 ぜひ、ご自分の身はご自分で守ってください。

◆私のホームページ「案山子庵雑記」で、原発での事故に触れて、この水蒸気爆発を扱った記事を書きました。関心がありましたら、お読みください。

http://homepage3.nifty.com/kuebiko/essay/Jiko.htm

2009年1月30日 (金)

ハナアブの幼虫

0123onagauji1氷漬け状態を生き抜いた花アブの幼虫=オナガウジです。

幼虫本体はもういいとして、呼吸管がくっついた水面を撮影してみました。

この画面では6匹いることが確認できますね。(もっといますが全部出さなくてもいいですね。)

水面が丸くくぼんでいます。
水中の糸のようなものが呼吸管です。

0123onagauji2
なんとかこんな風に写すことができました。

不思議な光景ですね。

ふと思ったんですが、それぞれの呼吸管は水面に対して垂直ですねぇ。

幼虫は水中で何かにつかまっているんだろうか?

それとも、ひょっとして水面から呼吸管によってぶら下がっているのではなかろうか?

疑問がわいてきました。

0123onagauji3 水面を接写すると、こんなにへこんでいるのです。

1円玉を水面にそっと置くと、浮かびますよね。1円玉は1gあります。
水面下に沈んだ部分の浮力がありますから、沈もうとする力は1g重以下になります。
その沈もうとする力を表面張力が支えられるわけです。ですから、1円玉は水面に浮く。

Surfacetension
こんな図を描いてみました。

上の写真の、水面のへこみの状況を概念的に描いたつもりなんです。

水面がへこみます。すると表面張力は斜め上に向って働きます。その斜めの力の水平分力は管の壁が持ちこたえて釣り合いをとります。
すると、斜めの表面張力の垂直成分が残るわけで、これが水面にくっついた物体の重さを支える力になります。
オナガウジの体重はどのくらいあるものなのか、よく分かりませんが、そう大きなものではない。しかもおそらく体全体の密度は1よりそれほど大きくはなくて、浮力を受けている。

となると、細い呼吸管ではあっても、水面に接するところのくぼみのところで表面張力によって発生する上向きの力で、体重を支えられるんじゃないか、そう思えるのです。

水中の幼虫たちは、水面からぶら下がっているのではないか、と推測するわけです。
あまりにも呼吸管が水面に垂直に立っているものですから、そんな推論をしてみました。

どうかなぁ、合ってるかなぁ。
オナガウジさん、教えてぇ。

検電ドライバー

0108driver1ここに2本のドライバーが写っています。
どちらも柄の中に何かが入っていますね。そして、写真では分かりませんが、柄の後端には「金属部分」があるのです。

これらは、検電ドライバーといいます。
0108driver2 ドライバーの先端を、壁コンセントの短い方の穴(接地されていない側)に差し込み、柄の後ろの金属部分に触れると、写真のように中のネオンランプが点灯します。
感電しないの?って。大丈夫。ほんのごくごくわずかの電流ですから、感電しません。

0108driver3 最初の写真の短い方のドライバーの柄の中から取り出したネオンランプです。
ヒューズみたいですね。ネオンランプの下の脚が右の金属部に接続され、上の脚は抵抗を介して左の金属部に接続されています。
前回のネオンランプとまったく同じです。

何に使うの?

さて、何に使いましょう?

・ブレーカーのボックスのスイッチが、家の中のどの部屋のブレーカーになっているかのチェックをしたことがあります。スイッチをひとつだけONにして、検電ドライバーで、電気のきているコンセントを探します。こうやって、家中の配線状態を知っておくのはよいことです。
・掃除機が動かなくなったので、どこかで断線したかな、と検電ドライバーを使って、配線のつながり具合を丹念に調べていったら、断線はなく、モーターのブラシが片減りしているのを見つけました。電気屋さんにそういったら、珍しい人だ、といってブラシを交換してくれました。
・オーディオの回路図などを見ると必ずアース記号があります。それをチェックして、その部分がちゃんとアース側になるように電源とつないでやること、コンポーネントを組む時は、きちっとアース側をそろえることが、マニアックな耳の方には必要です。音質がいいんですって。そういうときは壁コンセントだけではないでしょうから、延長コードの先のコンセントのアース側もちゃんとチェックしましょう。

などというわけです。1本持っていると、たまに重宝する道具です。でも、持ってなくても不便ということはないですけどね。

元理科教師としては必携の道具なのでした。

宇宙の塵

1月28日付で「塵」という題名で宇宙の塵について少し書きました。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-6b63.html 

今日30日、朝日新聞の朝刊科学面に、面白い記事が載っていましたのでご紹介します。

惑星のもと 突き止める(朝日新聞 2009/1/30)
 地球などの惑星のもとになる「宇宙のちり」が、赤色巨星がさらに変化した「漸近赤色巨星」からわき出していることを、国立天文台などの研究グループが突き止めた。宇宙のちりは、主に超新星爆発で一瞬にしてつくられるとの説が有力だった。今回の成果は、宇宙初期にちりが形成されるメカニズムや銀河の進化の解明につながると期待される。
 グループは米国のスピッツァー宇宙望遠鏡を使い、太陽系から約28万光年の距離の漸近赤色巨星を観測して確認した。この星は表面温度が低い。太陽も約50億年後に漸近赤色巨星になるとみられる。(サイエンス)

というわけです。やっぱりね。宇宙はある意味で「塵」だらけなんです。そこから新たな星が生まれるのです。太陽もやがてそうなるでしょう。宇宙を舞台とする、巨大な循環です。想像していると楽しいですね。人間のスケールなんて、微小なものです。

ところで、太陽がその「漸近赤色巨星」になって、宇宙に塵を吹き出すようになったとしても、鉄より原子番号の大きな重い原子を新たに作り出すことはできません。太陽などの核融合では、鉄という安定な原子核を超えて不安定な原子核を核融合で作り出すのは無理なのです。

ところが、今の地球上に鉄の原子番号26を超えて、金や銀があり、原子番号92のウランもあります。これらの元素の誕生には、やはり、超新星の爆発というメカニズムが必要だと思います。
鉄までの原子核同士が融合し、大量の中性子が当たって、巨大な原子核が一挙に生成され、それが崩壊してウランなどをつくるのです。
このメカニズムが否定されたわけではありません。

地球上にウランがあるという事実は、超新星爆発を経てばらまかれた原子がここ地球に集合しているのだ、ということを変えるものではありません。もちろん、赤色巨星から吹き出した塵なども一緒に集合したことも事実でしょう。

2009年1月29日 (木)

ビリビリ

0108neonlamp1右下の指は私の指です。指で電球の足をつまんで、もう一方の足をコンセントにつ込んで、電球がついていますよ。

感電しないんですか?ビリビリしないんですか?

大丈夫なんですね、これが。
コンセントをよく見てください。向って左の穴の方が少し長いですね。こういう違いがあることに気づいていらっしゃったでしょうか?
家庭に入ってくる電線2本のうち、1本は地面にアース(接地)されています。地面を電圧の基準にして、そこから100Vとなっているのです。電気工事士さんが間違えていない限り、コンセントの長いほうの穴がアース側です。

電圧というのは「電気的な山の高さ」のようなものですから、どこかに高さを測る基準がないと測れないんですね。理論的には「無限遠」を基準にとったりしますが、実用的ではない。そこで、地球を基準にして地面を0Vとし、そこから電圧を測るのです。(神様がいたずらして、誰も知らない内に、地球に電気を送り込んだとしましょう。無限遠を基準にしていると、地球の電圧が変わったことが分かりますが、地球上に住んでいて、地球を基準にしている限り、何にも変化なしなんですよ。エレベーターの中で床から1mのところに物をもっていたとして、エレベーターが上下しても床から1mということは変わりませんね。それと同じです。)

さて、上の写真、ネオンランプという、電圧がかかると小電流で光ってくれる電球なんです。(電流を制限する抵抗も入っていますが、後でお目にかけます)。
2枚の極板の間で放電して光っています。

つまり、アース側じゃない方の線と、アース側の地面に建てられた家の中に座っている私の間に、基本的には100Vの電圧があって、その電圧によって放電して光っているのです。ただ、非常に微小な電流なので、感電などはしません。

ただ、乾燥していて絶縁がいいので、あまり派手には輝いてくれません。
0108neonlamp2 同じようにして、電球の足を、アース側に差し込むと・・・

光りませんね。

電位差がないので光らないのです。
0108neonlamp3
電球の2本の足を、まともにコンセントに入れると、強く輝きます。
まともに100Vがかかると、こんな輝きなのです。

手で持って光らせた時には弱くしか光りませんでしたから、100Vはかかっていなかったことが分かります。
0108neonlamp4
電球の構造はこうなっています。2本の電極があって、その間で放電して光っているのがよく分かると思います。
電球の中には主としてネオン・ガスが入っています。放電しやすくするためにアルゴンなどもはいっています。
電極は鉄かニッケルです。

0109neonlamp5
実は、このように、足の一方に、抵抗が直列に入っていて、電流制限をしています。

◆このネオンランプは、アイロンを分解したときにパイロットランプとして入っていたものを取り出しました。発熱体や雲母などが見られないかな、と思って分解したのですが、もう、錆びついていて、何も取りだせませんでした。このネオンランプが唯一の収穫。
復元する必要のない、破壊的な分解って楽しいですよ~。私の趣味です。

◆小学生のころ、家のコンセントを修理に来た電気屋さんのそばで、中が見たくてずっと仕事を見ていました。
電気も長く扱ってるとな、一日一回くらいは感電して、ビリビリしないと調子が悪いんだ。ほら、といって、電線に触って見せてくれました。何も知らない私は、電気屋さんってスゴイんだ、感電しても平気なんだ、とびっくり。坊主はまねすんなよ、修行を積まなくっちゃできなんだ、素人がやると下手すると死ぬぞ、と脅されました。(コンセントにピンセットを突っ込んで、派手なショートをやらかして、親に叱られたりしてましたから、少しは懲りていましたし。)
以来、アースの仕組みを知るまで、私は、信じ込んでいたのです。
アース側に触れるのであれば、大丈夫。絶縁の関係で、多少ビリビリすることはあるかもしれませんので、決してお勧めはしませんが・・・。

壁のコンセントから、延長コードで引き出したコンセントの場合、どっちがアース側になっているか分かりませんので、気をつけてください。次回書こうと思っていますが、検電ドライバーが必要です。くれぐれも、気軽に電線に触らないで下さいね。

2008年の気温

Kion_12007年12月~2008年12月の間の東京の気温をグラフ化してみました。
データは、朝日新聞の朝刊に掲載される「気温と湿度」です。最高気温は午後3時まで、最低気温は前日午後9時から午前9時までの間に出たものです。
グラフ中、赤で示されているのが最高気温の毎日の値で、その上下する中を貫いているのが平年気温です。青は最低気温のグラフで、その中を貫くのが平年気温です。

このグラフでは、毎日の記録もさりながら、平年気温の変化を眺めていただくと面白いかと思います。
ちょうど今頃、1月の末頃に、年間の谷底にあります。年間の頂上は8月ですね。
梅雨の頃は上昇スピードが鈍いとか、いろいろな情報を読み取れると思います。

平年気温からどれだけ高いか低いかだけを取り出して、さらにそれを15日間の移動平均をとってならしたグラフをお目に掛けます。
Kion_2
このグラフでは、0の軸の近くが平年並み、ということです。
3月は暖かかったのですね。7月~8月初めも暑かった。12月はずいぶん暖かい12月でした。
全体としてみると、0より上に出ている部分の方が多いようですね。ということは暖かい年だった、ということになります。

◆オマケ:湿度
Situdo 毎日、午後3時の湿度、というデータも載っていますので、それもグラフ化してみました。
青のグラフが毎日のデータです。当然、雨が降れば湿度は高い。上下動が非常に激しくて、そのままでは傾向が読み取れないので、これも15日間の移動平均をとってならしてみました。それが赤の線です。
まだ上下動は大きいですが、それでも、全体的な傾向が見えてきました。
ごく当たり前のこと、梅雨の間は湿度が高い。8月下旬がそれに匹敵して湿度が高い。蒸し暑いんですねぇ。
いろいろ、ご自分の興味のあるところを読み取ってください。

2009年1月28日 (水)

2009.1.26付 朝日俳壇より
凍て星や塵ひとつなき大宇宙:(多摩市)田中久幸

さて、冬の星空を見上げておられる。空は晴れ「塵ひとつ」なく澄みわたっている。という句なのだと思います。晴れた夜の冬空は塵も少ないし、水蒸気も少ない。星を見るにはもってこいです。

ところで、宇宙には実は「塵」がいっぱいあるのですよ。太陽系はそういう宇宙の塵から生まれました。太陽は宇宙の初代の星ではありません。宇宙の年齢が137億年くらい。太陽の年齢は50億年くらい。初期の宇宙には水素とヘリウムくらいしかなかったんです。その時代の星たちが寿命に達し、爆発し、星の中で作ったいろいろな元素を宇宙に吹き飛ばしました。そういう宇宙の塵が、集まって次の星が生まれました。太陽と一緒に生まれた地球には鉄があります。この鉄は、かつて別の星の中心部で核融合によってつくられたものです。私たちの体を作っている炭素や酸素や窒素の原子たちも、かつて別の星の中で核融合によってつくられ、宇宙に吹き飛ばされ、宇宙を旅して、今、地球にあり、私たちの体を作っているのです。
宇宙って、塵だらけなんですね。
今から50億年もすると、太陽は膨らみ、地球軌道あたりまで飲み込んでしまうかもしれません。そうすると、今、私たちの体を作っている原子たちは、吹き飛ばされて、また、宇宙の塵として旅に出るのかも知れません。やがて、別の星をつくることになるのかも知れません。

私たちは宇宙を旅する塵であり、星の子、なのです。

◆ところで、2009.1.19付の朝日新聞「天声人語」は、こんな書き出しでした。

 そう言われれば、という至言に出会うのも小説の楽しみだ。「星は正面から見つめるより、斜めにチラリと見た方が輝きを増す。過ぎた深読みは推理を惑わせ、弱めてしまう」。エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」で、警察を出し抜く探偵デュパンの持論である。・・・(後略)

天声人語子は「至言」として紹介しています。至言ということは広辞苑によりますと「ある事柄をこの上なく適切に言い表した言葉」ですから、推理というもののあり方についての、すぐれたたとえという扱いになるでしょう。

ところが、実は、これは至言というよりは、ヒトの眼の「生物学的な事実」なのです。

村上元彦 著「どうしてものが見えるのか」岩波新書(新赤版)413 から引用します。

 ・・・だからうす暗いところでは中心窩はよわい光を見ることができず、生理的な中心暗点となる。十九世紀に活躍したフランスの天文学者、物理学者で政治家でもあったアラゴ(Arago)は「暗い星を見たいと思ったら、その星を見つめてはいけない。すこし眼をそらせたほうがよく見える」と書き記しているという。当時は網膜のこまかいことなどわかっていなかったから、かれはこのことを経験的に知っていたのであろう。

中心窩というのは、明るいところで色覚をもってものを見ることのできる「錐体」とよばれる視細胞が密集していて、視力がもっともよい場所のことです。
ところが、この色覚にあずかる錐体は、暗いところでは感度が低いのです。他方、白黒の明暗視しかできないけれど、非常に感度が高い「桿体」という視細胞は中心窩にはなくて、周囲に分布しているのです。
Photo
これがその分布をしめすグラフです。

私たちは、普段、中心窩でものを見ています。色も分かるし、視力も良いので細かい文字などの分解能も高いのです。
ところが、夜、星を見るときに、星の像が中心窩に結ぶように直視すると、錐体は暗いところでは感度が低いので、はっきり見えないのです。その時、視線を少しずらして、星の像が桿体の多いところ、中心窩から少しだけずれたところに結ぶようにしてやると、桿体は感度が良いのではっきりと見えるということになるのです。

星は正面から見つめるより、斜めにチラリと見た方が輝きを増す
というのは、たとえとか、寓意とかいうことでは全然なくて、私たちヒトの視覚の生理的特性なんですね。

今度星を見るときに試してみてください。自分の眼の性能を分析して理解することができます。

2009年1月26日 (月)

体重計

0107weight1_2
古い体重計を分解しました。最近の体重計は体脂肪率が測定できたりして、「電子的」になっていますが、この体重計は、純粋に「機械的」です。分解してみて、その単純さに感動すら覚えます。

要するに「バネばかり」です。

 上の写真は、上面のカバー=乗る面をはずしたところです。体重を表示する回転できる目盛盤が目立ちます。四方から棒がクロスしているようです。右の方に短いコイル状のバネがあります。これが、体重に比例した伸び縮みをするバネです。では、このバネに体重がストレートにかかるのでしょうか?

目盛盤をはずしてみました。

0107weight2 こうなります。

右に置いてあるのが上のカバーなのですが、ちょっと勘違いして、上下逆さまですが、議論に全く影響はありません。

左が本体。下の二つの隅から長い2本の棒があって、バネを押し下げます。上の二つの隅から短い2本の棒があって、長い棒を押し下げます。

人が乗る上のカバーには4カ所、切れ込みのある板が付いていて、これが、長短4本の棒に体重を分散して押し下げます。

0107weight3 これが本体部分。

長い棒でよく観察してみましょう。

棒とはいっても板です。板をこういう向きに使うとほとんどたわむことがありません。体重によって、この棒(板)がしなうことはないのです。

棒の支点はケースの縁。体重がかかる力点は支点のすぐ内側。棒がバネを押す作用点は棒のずっと先の方。ということになります。

何だか変ですね。普通に小学校などで学ぶテコとは感じが違いますよ。

Fig1 左の図の上が普通のテコです。支点が間にあって、力点との距離OAが作用点との距離OBより長いのが普通のテコですね。

ところが、体重計の中の棒は図の下のような構成になっています。

支点が力点と作用点の間ではなく、外にあります。このような使い方を逆テコといいますが、あまり知られた使い方ではありません。

Fig2 力の関係は左のようになります。式はどちらでも同じです。

(OA/OB)の値は、普通のテコでは、OB<OAなので1より大きく、力を得します。(距離で損して、掛け合わせたものが同じ、になるのです。)

逆テコではOB>OAなので(OA/OB)の値は1より小さくなります。つまり力が小さくなるのですね。

このため、体重を4つに分けて、各々の棒に分散させた上に、逆テコによって、バネにかかる力はさらに小さくなるのです。ですから、バネは、測定限界の100kgの人が乗っても、100kgの力がかかるわけではなく、1/4のまた何分の1かの力しかかからないようになっているのです。

この小さくされた力に比例した伸びがバネに生じます。この伸びは上下方向です。

0107weight4 ここが、そのばねの部分。

ちょっと巧妙な仕掛けで、バネが上下に伸び縮みすると、そこにはさまれた板も上下し、その上下動が(何という名前で呼ぶ仕組みなのかは知らないのですが)写真での左右方向の移動に変換されます。(弱いバネで常に下向きに押さえつけられている棒が上下すると、回転によって左右方向の動きに変えられるのです。)

0107weight5 この写真のギザギザの歯がついた棒が、左右に動きます。すると、ラック・アンド・ピニオンという(顕微鏡でピント合わせのねじを回転させると鏡筒が上下する仕組みがありますね、あれと同じ)仕組みで、棒の直線的な動きが、今度は左1/3くらいのところにある軸を回転させます。この軸に目盛盤がついていて回転して、体重を表示するわけです。

体重→4カ所に分散→逆テコで力の縮小→バネの伸び→(回転)→水平方向の直線的な動き→ラック・アンド・ピニオンで目盛盤の回転→体重の読み取り

こういうシステムなのです。完全にメカニカルな装置なのですが、実によくできています。

力学と工学の基礎をちゃんと知っていないと、何が起こっているのか理解できないかもしれません。シンプルにしてパーフェクトな装置でした。

かんどう!

◆ちょいと別件。私たちの体を観察してみてください。筋肉の腱は関節を越えて向こうの骨についています。これ、逆テコです。

http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/21th/sci_21.htm  

ここに詳しいことが書いてあります。

腕でいうと、力では損をしながら、手先の大きな動きが可能になります。

手の先で10kgのものをもったら、筋肉はその10倍やそこらの力を出しているのではないでしょうか。すごいでしょ。

体の中に骨格のある動物だけではありません。外骨格といって、体の外側がかたい動物でも同じ。昆虫やエビ・カニも同じです。カニの脚を食べるときに注意して観察してみてください。食べるのは筋肉。筋肉が出す力は、必ず関節を越えて向こう側、なのです。

でなきゃ、動けないもん。

2009年1月23日 (金)

いぶき/H-IIAロケット15号機 打ち上げ成功のようです

0123h2a1発射台上のH2Aロケットです。

JAXAのインターネット・ライブ中継画面を、カメラで撮影したものですから、画像は粗いのですが、ご勘弁を。

0123h2a2 12:54。
点火。

0123h2a3 上昇中。

晴天なら、ロケットの上昇していくところを追跡する画像が撮れたと思うのですが、今日はあいにく雲が低くて、すぐ雲の中に入ってしまいました。
0123h2a4
雲の下に残された煙。

ロケットが旅立っていく姿って、何度見てもいいものですね。何だかジーンとします。
0123h2a5
SRB-Aという「固体ロケットブースター」の切り離しの瞬間です。
メインエンジンは、水素の燃焼ですが、固体ロケットで推力の調整ができるそうです。

0123h2a6
フェアリングというロケット先端の覆いが外れたところ。

大田区の中小企業の技術力、という話で、このフェアリングを絞り加工する北島絞り製作所が手仕事で作っているというのが有名ですが、今回のロケットのフェアリングがどうなのかについては情報は得ていません。
真ん中に衛星「いぶき」があり、周囲に大学や高専や町工場などが作った小型衛星が配置されているはずです。
0123h2a7
「いぶき」分離の瞬間です。

私がフォローしたのはここまで。
他の衛星の切り離しについては、まだ確実な情報は入っていませんが、多分大丈夫でしょう。

自分がロケットに乗って地球を見るなんてことはありえませんが、こうやってロケットから送られてくる画像で、地球を見るのは素敵な気分ですね。
やっぱり丸いんだぁ、と当たり前のことに感動します。

アサヒコムから引用します。

H2A打ち上げ成功、衛星「いぶき」分離確認:2009年1月23日13時34分
 三菱重工業と宇宙航空研究開発機構は23日午後0時54分、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」を搭載した国産ロケット「H2A」の15号機を、鹿児島県種子島の宇宙機構種子島宇宙センターから打ち上げ、目的の軌道に投入することに成功した。打ち上げ能力の余裕を利用して積み込まれた小型衛星「まいど1号」なども、順調に宇宙に放出されたとみられる。
 H2Aの打ち上げ成功は9回連続で、製造・打ち上げを宇宙機構から移管された三菱重工業にとっては3回目。
 いぶきは打ち上げから約16分後に高度約670キロで分離され、地球を南北方向に回る軌道に入った。
 いぶきは宇宙機構と環境省、国立環境研究所が開発。地球の温室効果をもたらす二酸化炭素とメタンの観測が目的だ。これまで観測場所は約280地点しかなかったが、いぶきは上空から約5万6千地点で測定する。総事業費は打ち上げを含め約346億円。
 今回、搭載された超小型衛星は、SDS―1(宇宙機構)▽スプライト観測衛星(東北大)▽まいど1号(東大阪宇宙開発協同組合)▽かがやき(ソラン)▽KKS―1(東京都立産業技術高専)▽STARS(香川大)▽PRISM(東京大)の7基。

とりあえず。速報!

2009年1月16日 (金)

クロマトグラフィー(?)

0110hei1雨のあとのブロック塀。

しみがついている、としか見えないでしょ。

実際のところ、そうなんです。

これは多分鳥の糞です。そこへ雨が沁みて、糞が少し溶けて、ブロック塀のコンクリートに沁み広がっていったのですね。

青いですね。何の実を食べたのかな?

もう少し、接近してみましょう。

0110hei2
糞が実際に流れた濃い線と、水で沁みてひろがった線が見えます。
これ、化学・生物の方でいうクロマトグラフィーの原理なんですね。

chromatographyです。chromato-は「色」です。graphyhは記録でしょうか。

生物でいうと、緑の葉っぱをすりつぶして溶剤に溶かし、そこへ細長いろ紙をたらしてくっつけると、溶剤がろ紙に沁み込んで上へ広がっていきます。

その時、溶けた物質の、溶剤への溶けやすさと、ろ紙へのくっつきやすさの微妙な違いがろ紙表面に現れてきます。ろ紙にくっつきやすい方が後に残り、くっつきにくい方が先へ進んでいくので、分離されるのですね。色の違いで見ることができる、というのが命名の由来です。

この方法で、葉緑素を分離する実験をした方もいらっしゃるでしょう。アミノ酸の分析とかもこの方法でやります。紙を使うので、ペーパー・クロマトグラフィーといいます。

食品に混入した農薬の検出なんかは、ガスを流しながらそこに揮発させ、固体の粉末へのくっつきやすさの違いで検出します。ガスクロマトグラフィーといいます。

カラム・クロマトグラフィーとか、薄層クロマトグラフィーとか、いろいろあります。
化学の分析でも欠かせません。

とまあぁ、元化学屋としては、鳥の糞を見てそんなことを考えるわけです。
これで、糞の中の成分が分離してくれたらもっと面白かったのですが、そこまではいきませんでした。水に溶けてしみこんでいった、というだけです。

「壁クロマトグラフィー」とでもいうべきものを見つけて、自分の中の化学屋キャリアを思い出した次第です。

2009年1月12日 (月)

10万年に1秒

2009.1.10付の朝日新聞の「いわせてもらお」という面白話の欄に、こんな話が載っていました。

 ◎先取り
 「10万年に1秒しか狂わない」という時計を買って3年。すでに3秒も遅れている。複雑な思いで時計を見つめていると、妻が言う。「これから30万年間は1秒も狂わないのよ」
 (長崎市・確かめられないじゃないか・61歳)

◆そう、そういう広告を見ますよね。でもね、その正確さはその時計のものではないのです。そこのところ、ご存知でしたでしょうか?
 「10万年に1秒」という正確さがあるのは、電波時計の電波を送りだしている独立行政法人情報通信研究機構が保有する、12台のセシウム原子時計の精度なのです。その仕組みはここでは説明しません。現在はもっと高い精度の原子時計も研究されています。
ここでは、少々ややこしいですが、現在の秒の定義だけ書いておきます。

秒はセシウム133原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の9 192 631 770 周期の継続時間。

やたらと細かい定義ですね。こういう細かい数字を刻めるのが原子時計なのです。それは正確です。

 それに従った時刻のデータが、標準電波報時という形で送り出されます。福島県の大鷹鳥山と、佐賀県の羽金山の2か所から。

 この電波には、時、分、通算日、年(西暦下2桁)、曜日、うるう秒情報、時と分に対応するパリティ、予備ビット、停波予告情報といった情報がのせられています。これを受信してデジタル表示したり、アナログ表示したりするのが電波時計なのです。

 この電波は、40kHzと60kHzという振動数の低い、長波という電波です。正直いって、そう受信しやすい電波ではありません。そこで、電波時計は5分とか10分とか、連続して受信して、信号を重ねます。雑音は重ねると平らになるので信号が際立ってくるのです。
こうやって、定期的に電波を受信して調節している限り、その電波時計の精度は電波発信元の原子時計に同調して、「10万年に1秒」の正確さだ、といえるのです。 
とはいえ、正常に受信できていても、表示がずれることはあります。さらに、もし、その電波時計が自動受信になっていなかったり、電池が古くなってきたり、電波状況の悪いコンクリートの建物の中に置かれたりすると、電波が受信できず、時計単独で動くことになります。そうすると、その時計は通常のクオーツ時計として働くことになります。クオーツ時計は月に10秒前後の狂いがあるものです。

 冒頭の面白話に登場する時計は、3年で3秒遅れたというのですから、非常に高精度で動いています。時々電波の受信に成功して、他の大部分の時間はクオーツ時計として動いている、というような事情ではないでしょうか。
(鉄筋コンクリートの建物の中は、鉄筋のカゴで囲まれた状況です。長波の電波はこの鉄筋のカゴの中に入れないので、電波時計は電波を受信できないことが多いのです。窓を開けて、外に出してやってください。そうすると電波が受け取りやすくなります。木造家屋ではそういう心配はあまりありません。)

◆ところで、今年の元日の「午前8時59分59秒」と「午前9時00分00秒」の間に、「午前8時59分60秒」という時間があったのをご存知でしょうか?
1秒余分に入れたのです。これを「うるう秒」といいます。

 原子時計で地球の自転とは無関係に時刻が刻めるようになったら、地球の自転が遅くなったり早くなったりふらついていることが分かりました。そこで、天文学的な時刻と、原子時計による時刻の差が0.9秒以上にならないように調整しているのです。これを「うるう秒」といいます。

 地球の自転が遅くなるのは月との重力相互作用によって地球に潮汐が起こり、その摩擦によるというのが大きな原因のようですが、それがすべてでもないようです。むずかしいですね。

うるう秒について詳しい話を読みたければウィキペディアなどどうでしょうか。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%8F%E7%A7%92


情報通信研究所(NICT)のホームページのここを見ていただくと、標準時が目で見られますよ。ご利用ください。
http://www3.nict.go.jp/cgi-bin/JST.pl

過去のうるう秒の詳しいグラフもあります↓

http://jjy.nict.go.jp/mission/page1.html

2009年1月 8日 (木)

金・木星

2009.1.5付 朝日歌壇より
西空に二つ夕星金星と木星並ぶ良き香りせむ:(牛久市)伊藤夏江

金星と木星が並んだシーンは、私のブログでも載せました。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-d216-1.html
このほか、月が一緒に写った写真もその後のところにあります。

この歌のポイントは、実景そのものよりも、「金星 木星」と並べてかいたり読んだりした時に「金木犀」の語感が脳裏に浮かんだということでしょう。それが「良き香りせむ」となるわけですね。
理科系人間には思いつかないイメージと言葉の結びつき方でした。
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ところで、下の図を拡大して見てください。星の大きさは完全にデタラメです。太陽と地球の大きさの関係はこんなものではありません。位置関係だけに注目してください。
Venus
図は地球(E)の北極側の遠くから太陽系を見ているという設定になっています。
惑星の公転軌道上での動きは、反時計回りです。また、地球の自転方向も反時計回りです。
地球には常に昼夜があるわけですが、夕方というのは矢印で示したあたりになります。明け方は夜から昼へ向かう途中にあります。
金星は、地球より内側を公転していますので、図で分かるように、EAの外側に出ることはありません。角AEBを最大離角といい、約47度くらいです。ですから、明けの明星も宵の明星も、地平線から最大で47度くらい上までしかあがりません。
今回、たまたま、木星が、弧ABの間に来ていたので、金星と木星が同時に並んで見えたのです。

人間が星を見る目、神が太陽系を見おろす目、その二つを同時に意識しながら見ると、また感興が違うのではないかと考えて、こんな解説をしてみました。

理系人間は、細部が分かれば分かるほど謎が増えロマンが増す、と考えます。
今年は、ガリレオが望遠鏡で天体観測を始めてから400年ということで、国際天文年です。どうか、天文現象をお楽しみください。

◆ところで、ガリレオは、月の「陰影」を見て、山や谷だと判断しました。人類として初めて見たものをきちっと認識できる、ということはとてつもないことです。人は、既にある認識枠に沿って観察し認識します。認識枠がないところで物を見ても、何を見ているのか分からないのです。科学研究の最前線というのは、そういう場所です。新たな認識枠を創造するのです。これが科学の面白さなのです。

ガリレオは、月に山があると考えて、その影の長さから山の高さを推定しようとしました。とてつもない想像力です。

ガリレオは、木星の衛星を発見しました。でも、「回っている」とは見えなかったはずです。木星に対して位置を変える小さな星があることを見ただけのはずです。それを「木星の周りの公転」と認識したわけです。そのアナロジーから、地球が太陽の周りを回ってもいいと考えたのです。

ガリレオは、「土星の耳」を発見しました。これが「輪」であると認識することの大変さを想像してください。

ガリレオは、太陽の黒点を発見しました。太陽のごく近くを回る星であって、完璧な存在である太陽そのものに黒いしみがあるはずがない、という議論に、丁寧に反論しています。

ガリレオが残した黒点の観測記録を分析すると、太陽の自転周期とちゃんと一致することが分かります。ガリレオの観察記録に「恣意性」がなく、本物の誠実な観察記録であることが分かるのです。私のホームページ「案山子庵雑記」にそのことを解説しましたので、興味のある方はお読みください↓
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/freestdy/SunSpot.htm

宇宙論は今も進展を続けています。分かれば分かるほど分からなくなる世界です。
「トンデモ本」ではない、本物の天文学をお楽しみください。

2008年12月 3日 (水)

夕空

1126yuuzora11月26日の夕方です。

ふと見ると、こんな状態。

まるで地平線から煙でも噴き上がっているように見えます。

多分、崩れてきた飛行機雲だと思います。飛行機が飛ぶところは見ていないので確定ではありませんがそれしかないでしょう。
写真上の方から、下へ=西の方角へ、飛んでいったのです。

雲の下のところに見えるのは新幹線の架線をつる構造物です。

2008年11月24日 (月)

反射板

1124reflector1前の「交通標識」の記事を書いていて、思いだしたことを追加します。

何年か前に、道路の端に落ちていた自転車用の反射板です。スポークにつけておくと、自動車のヘッドライトを受けて光るので、自動車から視認されやすくなるので、事故防止に役立ちます。
何かの拍子に落ちてそのまま見捨てられていたものです。ひびが入っていましたが拾っておきました。(自転車に乗れないかかしさんとしては、自分がこれを買うことはほぼあり得ないので、廃品利用です。)

1124reflector2 部屋を薄暗くして、カメラのフラッシュを発光させて撮った写真がこれ。
床は暗いですが、反射板は明るく輝いていますね。
そして、六角形のユニットが並んでいるのも見えます。

前回の交通標識の拡大写真と同じ構造ですね。

では、思いっきりこの反射板に近づいてみましょう!
1124reflector3
平らな面が3枚直角に交差しているのが分かりますね。
これほど見事に見えるとは実は思っていませんでした。すごいや。やっぱりやってみるもんだ。
遠近感がつかみにくいのですけれど、基本はコーナーミラーなのです。四角い箱の隅が集まったものということです。

この四角い鏡面の集まりを正面から見ると、六角形の集合に見えるのです。

実用的な観点からは、光を送り込んできた方向のみに光を送り返すのでは、ちょっと範囲が狭すぎるのでしょう。そこで、微妙にこの四角いユニットの向きを変えています。

1124reflector4 真横から見た写真です。大きくは左右二つの部分からできていて、それぞれが光を返す向きがかなり異なっています。
その、中央の分かれ目のところが写真のほぼ中央にあります。

さらに、もう少し微妙に「散乱」させるために、四角いへこみの角度が変えられていることがこの写真から見てとれます。

何気なく使う、そう高価でもない小さな道具なのに、実にきめ細やかな技術的配慮が凝らされているものだと、とても感心しました。

もう一回フラッシュの反射を見てください。
1124reflector5
横に長い光の棒がたくさん写っています。
この写真を撮ったカメラのフラッシュは、横長の棒状のフラッシュなのです。
そのフラッシュの像がたくさんあるのですね。
この写真のアングルでは、反射板の右半分がちょうどカメラへ光を送り返す角度になっており、左半分はちょっと違った方向へ光を送り返しているということも分かりますね。

◆最近は、反射テープもありますね。あるいは、反射材をつけたジャケットとかもありますね。ああいうものの反射材の構造が知りたいな、と今思っています。チャンスがあったら調べてみたいものです。

◆追記:「反射材とは」でグーグル検索を掛けましたところ、分かりました。

上に書いたような3面で反射する「マイクロプリズム」や、「ガラスビーズ」を使っているのだそうです。

内容に責任は持ちかねますが、下のサイトで見つけました。

http://www.reflexite.co.jp/reflection/mechanism2.html

http://www.unitika-sparklite.co.jp/japanese/products_info1.html

交通標識

1114hyosiki1これ、交通標識です。

撮影したのは5時半くらいで、ずいぶん暗くなっていました。

この写真は標識をほぼ正面から撮ったものです。

では、次の写真をご覧ください。

1114hyosiki2 斜めから撮ったものです。
1114hyosiki3
逆側から斜めに撮ったものです。

どちらから撮っても明るく光っていますね。

ということは、カメラのフラッシュが送り込んだ光が、カメラの側に返ってきているということです。

交通標識ですからね、車などがこの標識を照らした時に、ヘッドライトの光を受けて、反射光をドライバーに送り返し、情報を伝えなければなりません。
ということで、当たり前のことです。

でも、自分で電源を持っていて自分で光っているわけでもないのに、光を当てた側に光を送り返すって、何だか変じゃありませんか?

Reflection1 ← 反射の法則って、こうでしたよね。

入射角=反射角

ですよね。
 この法則がちゃんと成立していたら、送った光は、そのまま向こうへ行ってしまって返ってきませんから、写真に撮った時にこんなに明るく写るわけがないのです。

今起こっている出来事は
Reflection2
こうですね。

光を送った側へ光が送り返されている。

これって、反射の法則に従っていませんが、いいんでしょうか?法則がそうそう簡単に不成立になってしまったんじゃ、困ります。

実は、一枚の鏡だったら「交通標識」とかいた上の図の出来事は起こりません。「反射の法則」の図のように光は進みます。

◆仕組みはこうです。
Reflection3
2枚の鏡を直角に置きます。すると、図に描き込んだように、それぞれの場所では反射の法則が成立しているのですが、2回反射した後の光は、もと来た方向へ返って行くのです。

黒い線で描いた光線、赤い線で描いた光線、吟味してください。
これが、光を送り込んだ側へ光を送り返す仕組みです。

3面鏡があったら、2枚の鏡を直角にして、自分を映してみてください。鏡の向こうに、自分がちゃんといる感じになりますよ。面白いです、ぜひお試しを。

◆上の図は2枚の鏡の組み合わせでした。3枚の鏡を直角に組んだらどうなるでしょう?
Reflection4
こんな感じです。
遠近感の表現がうまくいっていませんが、つもりとしては、三枚の鏡が交わる点がくぼみんでいるつもりなんです。そのつもりで見てください。

こういう風に鏡を組み合わせると、どの方向から入射した光でも、その入射方向へ反射して返って行くのです。

さて、上のような3枚組の鏡を、まっ正面から覗きこむと、自分の顔が逆さまになって「自然に」写りますよ。顔の右の部分が鏡の中の顔の向かって左にうつり、左は右へ、上は下へとなって写るからです。

対称性よく上の図を描くとこんな風です。
Reflector
六角形に見えますね。

では、次の写真と見比べてください。標識の部分拡大です。

1114hyosiki4 いかがですか?
六角形のユニットが見えますね。

この標識板、完全に中の方まで理解しきっているわけではないのですが、どう考えても、上でご紹介したような、「3枚の直交する鏡」の原理を使っているはずなのです。そのことが、見掛け上、「六角形ユニット」を見せているのだと思います。

電源も使わず、運転者には必ず光を送り返して、情報を伝える、そういう目的の反射板なのでした。

◆ところで、この直角に交差する鏡の原理はいろいろな場面で使われています。(コーナー・ミラーというよびかたもあります。)

★アポロ宇宙船が月面に置いてきた鏡は、この交通標識と同じ、「直交する3枚の鏡」方式のものです。ですから、地球上のどこからレーザー光線を送っても、必ずそのレーザー光線を送ったところへ光を返してくれるのですね。それによって、月は1年に3.8cmずつ地球から遠ざかっていることが分かったのです。

(月面に鏡を置いても、地球に光を送り返すように正確に角度を設定できるわけがない、だからアポロは月に行っていない、などということを主張する人もいたようですが、単に自分の無知をひけらかしただけでした。)

★サイド・ルッキング・レーダーというものがあります。巡航ミサイルなどが積んでいます。自分の進行方向にレーダー電波を照射するのではなく、進行方向の両サイドへ電波を出すのです。すると地形のうちで、直角に近い角度をなしているものからは強く電波が反射してきますので、それを使って地形を知るのです。
都会のビルディングなどは非常によく電波を反射して戻すことになりますね。

海底の地形探査でも、真下に超音波を出すのではなく、脇に向けて超音波を出してその反射をうけると、海底地形のでこぼこがよく分かります。

★ステルス戦闘機なるものがあります。あれは、機体面が電波を反射しにくい材質を使っているのでしょうが、それに加えて、翼と機体の交差角度が直角にならないように、必ず鈍角になるように設計されているのです。直交する鏡は電波を来た方向へ戻しますから、その逆手を取っているわけです。なんとなく普通のジェット機と印象が違って異様な雰囲気を与えるのは、この設計方法がなじみのないものだからかもしれません。

◆私のホームページ「理科おじさんの部屋」で、小学生のU君とやった光の反射の実験を紹介しています。関心がおありでしたらぜひどうぞ。

http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/6th/sci_6.htm

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