理科おじさん

2022年10月26日 (水)

化学の日

10月23日は「化学の日」だったそうですね。一応まぁ私は化学が専門の立場ですから、新聞の題字の下の小さな広告を見て、一瞬で「あ~そうか」でしたけど。わかります?化学が苦手になる一つの「躓きの石」かもしれないんですけど。

アボガドロ定数 6.02×10^23[mol^−1]

というやつです。{「^」はべき乗を表す記号として使っています。右肩の上に乗るやつですね}

↓当事者の日本化学会
https://www.chemistry.or.jp/kagakunohi/2014/09/1023.html
10月23日は「化学の日」

日本化学会,化学工学会,日本化学工業協会(日化協),新化学技術推進協会(JACI)の4団体が,毎年10月23日を「化学の日」,その日を含む月曜日から日曜日までの1週間を「化学週間」として制定しました。アボガドロ定数 6.02×10^23 mol^−1 にちなんだものです。各種イベントに使う缶バッジのデザインもできました。この産学官一体となった化学の普及活動が国民的イベントとなるよう,会員の皆さんこぞっての参加を呼びかけたいと思います。化学の市民権向上に向けて。

{イラスト}
chemiちゃん calちゃん
 も応援中です!!

よくやる話では。
12個のまとまりを「1ダース」といいますね。
原子分子の世界はスケールがものすごく小さいので、質量が人間の測定できるスケールになるまで集めると、ものすごい数になります。それがアボガドロ数なんですね。
これ以上は深入りしません。

ところで、「10の23乗」などというのは、私たちの日常生活には無縁な数なのでしょうか。
パソコンを扱っていると、「メガ」「ギガ」などの用語には日常的に接しますね。最近は「テラ」くらいまでスケールが上がってきた。
テラってどのくらい?
  10の12乗
なのです。
10の12乗 × 10の12乗 =10の24乗
ですから、アボガドロ数のスケールに来ましたね。
なんとなくスケール感がつかめるでしょうか。

「センチ」「キロ」・・・「メガ」「ギガ」・・・
こういうのを「SI(国際単位系)接頭語」といいます。
これが、まもなく拡張の予定だそうです。
これまでは、10の24乗を表す「ヨタ」が一番大きかったのですが。
窮屈になったんでしょうかね、拡張されるんですって。

https://unit.aist.go.jp/nmij/info/SI_prefixes/index.html
計量標準総合センター : National Metrology Insutitute of Japan (NMIJ)

SI接頭語の範囲拡張について
 大きな量あるいは小さな量を端的に記述するために、10のべき乗を表し、SI単位と共に用いられるものをSI接頭語と呼びます。これまでは、1024から10-24の範囲のものが認められていましたが、昨今のデジタル情報量の急激な増加など、科学技術の発展に伴いSI接頭語の範囲拡張が議論されてきました。2022年11月に開催予定の第27回国際度量衡総会において、1030、1027、10-27、10-30のSI接頭語の名称と記号が新たに提案される予定です。承認されれば1991年以来のSI接頭語の範囲拡張となります。 詳細は下記のファイルをご参照ください。ファイル内容の転載は自由ですので、SI単位に関する教育や広報にぜひご活用ください。

— SI接頭語の名称と記号 —
10^30 クエタ quetta Q
10^27 ロナ ronna R
10^24 ヨタ yotta Y
10^21 ゼタ zetta Z
10^18 エクサ exa E
10^15 ペタ peta P
10^12 テラ tera T
10^9 ギガ giga G
10^6 メガ mega M
10^3 キロ kilo k
10^2 ヘクト hecto h
10^1 デカ deca da

10^-30 クエクト quecto q
10^-27 ロント ronto r
10^-24 ヨクト yocto y
10^-21 ゼプト zepto z
10^-18 アト atto a
10^-15 フェムト femto f
10^-12 ピコ pico p
10^-9 ナノ nano n
10^-6 マイクロ micro μ
10^-3 ミリ milli m
10^-2 センチ centi c
10^-1 デシ deci d

↓「下記のファイル」とある文書です。
https://unit.aist.go.jp/nmij/info/SI_prefixes/pdf/SIprefixes.pdf
2022 年 4 月 13 日 計量標準総合センター
SI 接頭語の範囲拡張

↓朝日新聞の記事から部分引用
ギガよりゼロが21個多い 宇宙の果てより遠くも表せる大型ルーキー(2022年7月31日)

・・・
 いま接頭語で表せる最も大きな桁は10の24乗の「ヨタ」、小さな桁は10のマイナス24乗の「ヨクト」だ。そこに10の30乗を表す「クエタ」と27乗を表す「ロナ」、10のマイナス27乗を表す「ロント」とマイナス30乗を表す「クエクト」が加わる見込みとなった。
・・・
 計60桁を接頭語がカバーするようになる意義を、長さの単位「メートル」で考えてみよう。
 人間の身長はスケールで言えば、ざっくり「1メートル」だ。それに対し、地球から観測できる宇宙の果てまでの距離(約138億光年)は、10の26乗メートルのスケールで、「約0・1ロナメートル」と言いかえられる。
 「プランク長(ちょう)」と呼ばれる現代の物理学で扱える最小の長さは、10のマイナス35乗メートルのスケールで「約0・00001クエクトメートル」と言える。
 つまり、四つの「ルーキー」の登場で、人類が現時点で認識しうる世界の全スケールを接頭語でスカッと簡潔に表せるようになるのだ。
・・・

 今年11月の会議で1991年以来、31年ぶりに四つの接頭語が加わる背景には、情報科学の発展によるデジタルデータ量の爆発的な増加がある。
 米国の調査会社IDCによると、2010年に世界に存在したデジタルデータ量は約1ゼタ(10の21乗)バイトだった。しかし、20年には新型コロナウイルス対策によるビデオ会議や映像配信の増加で約59ゼタバイトに到達。25年には約175ゼタバイトになると予測されている。
 このデータ量を現在の米国のインターネット平均接続速度で1人でダウンロードしようとすると、18億年かかるという。
・・・(後略)

なんだかなぁ。ものすごいことになってきましたね。
テラ バイト級のハードディスクでも買おうかなぁ。時代遅れになりそうだ。

↓過去記事です
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-6b91.html
2014年10月27日 (月) 化学の日

http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/post-84c2.html
2018年10月23日 (火) 10月23日は「化学の日」

2022年9月 1日 (木)

秒速→時速

昨日の「風速75メートル 」の記事では、私は単位の変換を主として書きましたが。
もっとやさしい書き方もあったかな、と考えまして。(同じことなんですけどね)

a [m/s] とは1秒間にa[m]進むという速さです。
ではそのa [m/s] で1時間進んだらどのくらい進めるのかな?
1時間=1[h]は、60[s]×60 = 3600[s]ですから
a [m/s] で1時間進むと
a[m/s] × 3600[s] = a×3600[m]
進めますね。
速さとしては a×3600[m/h] になりました。

時速では距離はmではなくkmで表示します。
m 表示を km 表示に変えるには1000で割ればいい。そうすると時速での速さは
a×3600÷1000 = a×3.6 [km/h]

ということで、秒速での値を3.6倍すれば時速での値になるのです。
専門家なんか必要ありません。ご自分で計算してください。

2022年8月31日 (水)

風速75メートル

昨日のNHKのニュースで、聞こえてきて、アレっと思ったけれど詳細は読み取れなかったニュースを、今日、NHKのサイトで見つけました。
台風11号 沖縄 大東島地方に接近 暴風や高波に厳重に警戒(NHK 2022年8月31日 10時27分 )

猛烈な台風11号の影響で沖縄県の大東島地方に近づき50メートル近い最大瞬間風速が観測されています。大東島地方では引き続き暴風や高波に厳重に警戒するとともに沖縄本島地方でも台風の接近に備えるようにしてください。
・・・
中心の気圧は920ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は55メートル、最大瞬間風速は75メートルで中心の半径95キロ以内では風速25メートル以上の暴風が吹いています。
・・・
台風11号は31日、中心付近の最大瞬間風速が75メートルになると予想され、接近する沖縄県の大東島地方では最大瞬間風速が70メートルに達するおそれがあります。

専門家で作る日本風工学会によりますと、最大瞬間風速70メートルは時速に換算するとおよそ250キロと、新幹線の速度に匹敵するということです。
・・・

あのですね「風工学」の専門家でなくても風速を時速に換算するなんてことは簡単にできるんですよ。
丹念に説明すれば小学生にだってわかります。
やるべきことだけ先ず書いてしまうと
風速[m/s]を時速[km/h]に換算するには
風速の値×3.6=時速の値
なのです。ですから
70×3.6=252≒250
手元に電卓があればNHKの記者さんも計算できたんだけどな。暗算でもできるでしょ。
その場合の記事は(私なら)
「最大瞬間風速70メートルは時速に換算するとおよそ250キロと、新幹線の速度に匹敵します」
こんな記事かな。
個人的な表現を付け加えると
「新幹線の屋根にしがみついているような感じがするでしょう」
かな。新幹線の窓は開かないから「走行中に窓から顔を出したような感じ」とは書けないでしょうからね。

★ではちゃんと説明します。
秒速 a m/s を時速に換算します。
a [m/s] = a[m] / 1[s]
です。分母を 1[h]にすれば時速になりますね。で、1[h]=3600[s]ですから、分子分母に3600を掛けます。
a [m/s] = a[m] / 1[s] = a×3600[m] / 1×3600[s] = a×3600[m] / 1[h]
分子の
a×3600[m] は、a×3.6×1000[m] = a×3.6[km]
となります。
ハイ。
a [m/s] = a×3.6[km] / 1[h] = a×3.6[km/h]
できました。
秒速の値を3.6倍すれば時速の値になるのです。

式のこの変形、50年近く昔、中学校で教えていた時に授業でやったと記憶します。
その後、高校でも物理を担当した時は当然ちょこっと授業中にやりましたよ。

[m/s] [km/h]
10   36
20   72
30   108
40   144
50   180
60   216
70   252
80   288
90   324
100  360

こんな表を黒板に作って。
「高速道路を時速100kmで走っていて、窓から顔を出すと秒速30mが体験できるけど、やるなよ、呼吸困難だぞ」
「台風では時速200kmくらいの風というのもあるんだぜ」

ついでに
「100mを10秒で走ると時速36km。マラソンは時速約20km」というような話も付け加えて。
私は日本風工学会の会員でもないけど、このくらいはわかるんです。理科教師として。

中学校で「速さ」の授業というのをやったことがあるので、いずれご紹介したいとは思っていますが、いつになるやら。今日はここまで。脱線だらけの理科教師です。

2022年5月31日 (火)

「ウクライナで生まれた科学者たち」

これは「現代化学」という雑誌に掲載されたエッセイのタイトルです。

現代化学 2022.5(東京化学同人)
p.42 「あれ・これ」古郡悦子
ウクライナで生まれた科学者たち

 ロシアに蹂躙されたウクライナが、なかなかの科学技術国であることをご存知の読者は多いことだろう。

こう始まる、見開き2ページの記事です。
名前と業績を解説していますが、ここでは名前だけを引用・列挙します。

 1:ロアルド・ホフマン(1937~)
   「ウッドワード・ホフマン則」
   福井謙一とともに1981年のノーベル化学賞受賞

 2:ジョージ・キスチャコフスキー(1900~82)
 3:セルマン・ワクスマン(1888~1973)
   1952年にノーベル生理学・医学賞受賞
 4:イリヤ・メチニココフ(1845~1916)
 5:トロフィム・ルイセンコ(1898~1976)
 6:テオドシウス・ドブジャンスキー(1900~75)
 7:ジョージ・ガモフ(1904~68)
 8:レフ・ランダウ(1908~1932)
 9:イーゴリ・シコルスキー(1889~1972)
10:ジャン・コウム(1976~)
11:マックス・レプチン(1975~)

化学・物理系の方なら、え、あの人が、という名前も多いと思います。

「ウッドワード・ホフマン則」とか「ランダウ・リフシッツ」なんかどうですか。
ガモフは理系でなくてもご存知かもしれませんね。「トムキンス」とかね。
シコルスキーといえばヘリコプターかな。

あとはお任せします。

★実はこの古郡悦子(ふるこおり・えつこ)さんという科学ジャーナリストの方は、私と教養学部時代の同級生なんです。理科Ⅱ・Ⅲ類のクラスでね。
化学科、科学哲学なども相前後しながら、似たような道筋をたどった方です。
化学科で私と相前後して同学年だったこともある人が、私より先に卒業して東京化学同人に就職したんですね。
その直後、「現代化学」という雑誌が創刊されまして、「お前、購読しろよな」といわれて以来ずっと現代化学の読者であるということなのでありました。
古郡さんはもう、この雑誌に20年以上コラムを書いていらっしゃる。ということで、毎号、愛読しております。

2022年5月 9日 (月)

反射光

0401_18tesuri 2022.4.1
階段の途中。午後4時半近くでしたか、下へ降りようとしたら壁面に丸い光。
一瞬ナンダ?と思いました。
2階の窓から入った陽ざしが直接こんな形になるわけはない。
そうか、手すりの円柱表面の反射か。
円柱での反射ではありますが、隙間から細い陽光が差し込んでくる角度が手すりの角度に近くてこうなったのでしょう。
いつでも見られるというものではない。
季節、時刻のごく限られた範囲でしか出現しないものだと思います。
おもしろいものを見ました。(私の後光じゃないです)

2022年4月21日 (木)

台風の風

台風1号が日本列島のそばを通過していきました。
テレビの気象情報で台風周囲の風の画像が見られましたが、それは撮影し損ねました。
進路の右側が真っ赤で、猛烈な風であることが表示されていました。

で、私は時々使う地球上の風のサイトへ行きました
↓このサイトです。
https://earth.nullschool.net/jp/#current/wind/surface/level/orthographic=-225.01,34.29,1306

2022_0415taihu 2022.4.15
こういう画像を得ました。
進路の右側が赤く、風が強いことがわかります。

なぜそうなるのか?
↓気象庁のHPから
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/2-1.html
台風に伴う風の特性

 台風は巨大な空気の渦巻きになっており、地上付近では上から見て反時計回りに強い風が吹き込んでいます。そのため、進行方向に向かって右の半円では、台風自身の風と台風を移動させる周りの風が同じ方向に吹くため風が強くなります。逆に左の半円では台風自身の風が逆になるので、右の半円に比べると風速がいくぶん小さくなります。
・・・

気象庁の解説ですが、普通に調べると、どこも大体この説明をしています。
台風自体の風と台風を移動させる風の、足し算と引き算。
地上で測定される風速はそれでいいんですけど。(言い方がちょっと微妙ですね)
つまり観測する座標系が地上にある場合はこれでいい。

ですが、台風を移動させる風に乗って台風と一緒に移動しながら台風を見下ろす位置に座標系を移したらどう見えるかな?
台風は円形の渦ですから、おそらく渦の回転速度は周囲でほぼ同じだと思うんですよ。でないと歪んでしまう。

それを地上から観測すると
台風の右側では、台風自体の風と台風の移動速度が足し算になって強くなる。
台風の左側では、引き算になって、風は弱まる。
私が高校の物理で話した時にはこの論理でやりましたね。

出来事は一つなんですから、結局同じことの説明をちょっと視点を変えただけなんですけどね。

↓こんな論文を見つけました。
http://www.fudeyasu.ynu.ac.jp/member/thesis/2016-yamasaki/index.html
修士論文:台風シミュレーションに基づく強風ハザー ド評価 -台風ノモグラムの開発-
横浜国立大学大学院 教育学研究科 修士二年 山崎聖太

図1.1 理想的な台風の風分布:台風は渦状であるため、北半球で は台風の中心に対して反時計回りに回転している。その渦としての風速場に、台風の移動速度の成分が足されるため、台風の移動方向に対して右側の半径で風が 強まり、左側では弱まる。また、台風の風は外側に比べ中心に近い方が強い。しかし、眼にあたる部分は弱風となる。

この図1.1というのがわかりすい。ご覧ください。

★ちょっと話を変えて。
速さvで等速で直進する自動車の屋根の上からピストルを撃ちます。弾丸の速さはVとしましょう。
撃つ人から見たら、前方へ向かって撃っても後方へ向かって撃っても、弾丸は自分から速度Vで飛んでいきます。
ところが、これを地上にいる人が見ると

前方へ向かって撃った時は、弾丸はV+vの速さで飛び
後方へ向かって撃った時は、弾丸はV-vの速さで飛ぶ

のです。

2022年4月15日 (金)

パイプと棒

Eテレ、0655の仮説小学生というコーナーから。
0325_2kuda1 2022.3.25
こういう「事件」の解説。
0325_2kuda2
実際のタンポポの茎の切断面。確かにパイプ状ですね。
0325_2kuda3
同じ重さのアルミ棒とアルミパイプを用意して、横にして荷重をかけると
0325_2kuda4
棒の方が曲がりやすいのです。中が空洞のパイプの方が丈夫なんですよ。
なんとなく中まで詰まっていた方が丈夫そうな気がしてしまいますけど、そうではないんですね。
タンポポの花は地面に近いかなり低い位置で咲きます。花の後、茎がぐんぐん伸びて背を高くし、綿毛の実が風を受けやすくします。風を受けやすくするのですから、風で折れてしまってはいけない。そういう力学的な要請の中で進化して中空の茎になったのでしょう。
生物って、すごいですね。

★ついでに
・洗濯物を干す「物干しざお」ってパイプですね。昔はじっさい竹の竿でしたからパイプ状だったのですが、現在もパイプです。棒よりも材料が少なくて、しかも洗濯物の荷重に強いからですね。

・私のこのブログでは、よくチョウの羽化をご報告します。
蛹はあの狭い体内で折りたたまれた状態の翅を形成します。そして羽化すると、翅脈に体液を圧送して翅を展開します。よくまあ、たたまれた状態で形成してちゃんとあの翅の形になるものだと、驚異的に思います。
で、翅を展開した後は、翅脈に送った体液は回収して排泄します。「蛹便」というものですね。アゲハなどの蛹便は薄青いかな。ツマグロヒョウモンの蛹便は血のように真っ赤。初めて見る人はショックを受けます。
翅脈が液体を通すパイプとして機能するのは、この羽化後の翅の展開時のみ。それを過ぎると中空の軽いパイプとして翅を支える構造材になるのです。チョウが薄い羽根を自在に使って空中を舞うことができるのは、この軽い中空の翅脈のおかげなのですね。
いえ、チョウに限りません。膜状の翅を持つ昆虫、ハエ、アブ、トンボ・・・などの翅の翅脈はみんな同じ。軽くて強いパイプなのです。

・私たちヒトの骨を思い浮かべてください。骨髄というやわらかい組織が中にありますが、これは構造材ではない。実は骨もパイプなんですね。
↓NHKのミクロワールド
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/outline.cgi?das_id=D0005100157_00000
軽くて丈夫 骨の秘密

私たちの体を支える骨。およそ200本が組み合わさっています。成人の全身の骨の重さは平均およそ9kg。体重の7分の1ほどしかありませんが、激しい運動に耐える強さがあります。軽くて丈夫な骨はどのような構造になっているのでしょうか。太ももの骨、大腿骨(だいたいこつ)を縦に切った断面を見ると、骨の中心部分は空洞になっています。この構造によって、骨は軽くなっています。

・骨のある動物はみんなこうですよ。
鳥の羽も。さらに羽の軸だって中空パイプですね。

他にもまだまだ例があるかもしれません。探してみてください。

★蛹の中での翅の形成に触れましたが。
植物の、つぼみの中での花の形成も、信じられないほどの出来事ですね。
つぼみ、という狭いギュウギュウ詰めの中で、花弁を形成する、咲いた時の形まで折りたたまれた中でちゃんと形成する。
そんなことできますか?広がったものをたたむことはできても、たたんだ状態で広がった形状を作るんです。
いっつも、その不思議さに打たれています。

2022年4月14日 (木)

アンラーン

為末大さんが本を出しました。
『Unlearn 人生100年時代の新しい「学び」』 柳川範之、為末大〈著〉
こういう書名。三八広告では
   「思考のクセ」を捨て、生涯成長し続ける方法
と謳っていました。

とにかくまあ
Unlearn(アンラーン)」という言葉が新鮮です。

「UN」という接頭辞についてですが、通常、日本では要するに否定を意味する、と理解されてませんか?
そうすると「学ぶ」を否定したら「学ばない」になるんですが、そういう意味ではないようなのです。

↓参考
http://gogengo.me/roots/141

接頭辞 un-
「否定」、「反転」を意味します。

「反転」という意味があるようです。
そうすると

unlearn
►vt 〈学んだことを〉念頭から去らせる,忘れようとする;…の癖を捨て去る;…の誤りに気づく;UNTEACH.
►vi 既得の知識[習慣]を捨てる.
リーダーズ英和辞典第3版より引用

「既得の知識[習慣]を捨てる」という意味があるのですね。これは知らなかった。

↓朝日新聞の書評欄から引用
(書評)『Unlearn 人生100年時代の新しい「学び」』 柳川範之、為末大〈著〉
2022年3月5日 5時00分

・・・
 そこで出てくるキーワードが「アンラーン」。これまでに身につけた思考のクセを取り除くことだ。為末の場合は、緻密(ちみつ)に計画を立て行動することや、自分の力だけで問題を解決しようとすることが思考のクセであった。それらは陸上競技という環境に適応した、パターン化した思考である。成功体験を生んでもいる。だが新しい環境においては、適応を阻害する大きな要因となる。

 社会環境は変わり続けるし、常識もうつり変わる。人生100年時代において学び続けることは不可欠だ。ところが学びの文脈では、知識や情報を得るという、「インプット」の重要性ばかりが強調されがちだ。しかしアンラーンを、人によってはインプット以上に意識せよというのがこの本のメッセージだ。すでに成功体験をもっている人ほど、過去の環境への適応は高かっただろうから、アンラーンは大切だ。
・・・
評・坂井豊貴(慶応大学教授・経済学)

こうなんですね。すでに持っているものを「殻」にして閉じこもっていないで、殻を破りなさい、ということらしい。
いい言葉を聞きました。

上のリーダーズ英和辞典からの引用にある「unteach」を引いてみると

unteach
►vt 〈人〉に既得の知識[習慣]を忘れさせる;〈正しいとされていることを〉正しくないと教える,…の欺瞞性を示してやる.
リーダーズ英和辞典第3版より引用

元 teacher としては身に沁みますね。「自分は正しい」と権威になったつもりに陥るとき、teacher としての資格を失う。
常に自分に対してunlearn, unteach することを自覚していなければならない。

いや、実際、佳い言葉を知りました。うれしいことです。

★逸話:中学で理科を教えていた頃。業者テストを生徒に受けさせました。その問題で、「両眼視は立体視にとって重要である」ということを、業者テストを作った方が誤解して「両眼視ができなければ立体視はできない」という内容の問題を作った。
テストを返却しながら、生徒に、片目でも立体感を得ることはできるんだよ、このテストで×を取っても全く気にせず無視しておくれ、と言ったら、生徒はびっくりしていましたね。彼らの大好きな音楽の先生は、教員のレクリエーションのバレーボールで顔面にボールが当たって片目を失明していらしたのです。でも、運転もするし、日常生活で立体感がないのではないかという感じは全くなかった。体を左右に振ると両眼視と同じ原理で視差が生じて遠近感が得られる。宴会でビールを相手に注ぐときなどは、ビール瓶の先端がコップの縁にあたるようにコントロールすれば、こぼすことはない。などなど。片目で立体感を得る方法をいろいろ伺っておりましたのでね、そんな話を生徒にしてあげた。つまらぬ問題を作る方よりも、君たちの方が奥深い知識を得られたんだよ、とね。
「unlearn, unteach」になったかな。教職歴のごく初めのことでしたっけ。

★更に別件。両眼視の話から。
カマキリは獲物との距離感を得るために両眼視を利用しています。その両眼視で、獲物がカマの届く距離に入ったと判断した時、ものすごい速さでカマを伸ばして獲物を捕獲する。
たまに、カマキリが体軸を傾けないで、体を左右に振ることがあります。両眼視で距離がつかめないときに、頭部を左右に振ることで視差を得て、距離を見積もっている。そして接近を図るわけです。
すごいでしょ。
私も「カマキリ爺さん」と名乗ろうかな。

2022年4月12日 (火)

「0655」から

0323_2_0655_1 2022.3.23
テレビ画面を撮影したので色が青っぽいですが、実は白い板の上に黒いものが点々と散らばっているのです。
ここでは白い板が背景で、黒い物体を認識しますね。
0323_2_0655_2
黒いものを集めていくと、なんだか様子が変わってくる。
0323_2_0655_3
白い板の上に、黒い背景が生じて、そこに白い数字が浮き上がってきます。
ここでは黒い部分が背景になり、白い字が見えるわけです。

これ、ある種の「図と地の転換」ですね。
白い背景の中に黒い物体だったのが、黒い地の中に白い文字に変化しました。
私たちは「図と地」があるとき、「図」に意味を見出して認識します。「地」には意味がない。

「百聞は一見に如かず」といって、自分が目で見たのだから確かだ、と思うと、なかなかにそうではない。
網膜に映じた像がすべてではないのです。脳が処理した結果を「見た」と考えている。
脳の処理の「くせ」のようなものがあるので、見たからといって絶対確かとは限らないのです。

↓参考
https://kotobank.jp/word/%E5%9B%B3%E3%81%A8%E5%9C%B0-542555
図と地) figure and ground

視野に二つの領域が存在するとき、一方の領域には形だけが見え、もう一つの領域は背景を形成する。背景から分離して知覚される部分(形)を「図」といい、背景となるものを「地」という。「図と地」ということばを初めて使ったのは1912年デンマークの心理学者ルビンであり、これはゲシュタルト心理学の重要概念である。メロディーは際だって聞こえ、伴奏は背景に退いて知覚される。このように知覚経験の各側面に図と地が現れ、とくに視知覚において著しい。一般に図となる領域は、形と輪郭線とものの性質をもち、面が固い感じで位置が明確で浮き上がって見え、一方、地は、形も輪郭線ももたず材料的性質をもち、面が柔らかく定位不明確で図の背後に一様に広がって見える。[今井省吾]

「ルビンの杯と顔」というのが有名ですよね。「向き合う顔と杯」が入れ替わって見えたりするやつです。

↓わかりやすい
https://dessin.art-map.net/technique/level19/01.html
デッサンと言う礎> デッサンの描き方と基礎技法> 視覚の認知現象と心理学> 図と地

2022年4月 1日 (金)

東京スカイツリー

0314_16skytree 2022.3.14
東京スカイツリーの上の方が雲の中に隠れています。

0322_1skytree 3.22
この時はてっぺんまで見えています。

空に浮かぶ雲を見ていると、「底」が平らな雲を見ることがあります。雲底といいますが、比較的低い雲ですね。
水蒸気が上昇していってその高度までは水蒸気という気体でいられるけれど、その高度より上の気温では気体でいられなくなって、微細な水滴になるわけですね。上空の気温分布が目で見えるわけです。

冒頭の写真では、スカイツリーの頭が雲に突っ込んだ部分が光っていますよね。
スカイツリーからある一定距離の場所から、雲底の光っている部分を見上げて角度を測定すれば、測量の原理で光っている部分の高度がわかります。
この場合はスカイツリーですから、どの部分がどのくらいの高さかわかっていますので、わざわざ三角測量をする必要もありませんが、そういうものがない場合、(昔は)真上に向けてサーチライトで照らし、照らされて光っている雲底部を三角測量で高度を測ったものです。
(今は)レーザーがありますので、真上に向けてレーザー光を発射して、反射して帰ってくるまでの時間を精密測定して雲底の高さを測定していると思います。

今は、レーザー測距機が安く手に入り、巻き尺なんかなくても済みそうな時代ですから、いろいろな測量技術が変化してきています。

↓参考
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%B2%E5%BA%95


 雲底は、空気の塊が上昇に伴う断熱膨張・冷却によって露点温度に達した高度、あるいは、飽和した空気と飽和していない空気の境目だといえる。エマグラムでいう、持ち上げ凝結高度(LCL)とほぼ同じ。
 湿度が高いと、雲底は低くなる傾向にある。
 雲底は海抜0mからの高度(m、ft)か、気圧(hPa)で表現する。地上からは主に雲高計(雲底計)で測定する。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%B2%E9%AB%98%E8%A8%88
雲高計

https://www.jma-net.go.jp/naha-airport/kansoku/ceilo/ceilo.html
シーロメーター

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kouku/2_kannsoku/22_amos/index4.html
シーロメーター(雲高測定器)

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