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2022年11月21日 (月)

日食月食

朝日新聞の連載コラムなのですが↓興味深い話でした。
(山本みなみの鎌倉からの史)月食から守られた将軍(2022年11月17日)

 11月8日、442年ぶりの「皆既月食と惑星食」のため、多くの方が夜空を見上げたことだろう。
 メディアでは織田信長も見たかと話題になっていたが、中世の日食・月食に対する考え方は現在とは大きく異なる。
 日食や月食の光は、自然秩序の変異を示す穢(けが)れと認識されていた。11世紀末頃の院政期より幕末に至るまで、天皇は日食・月食の妖光から保護されなければならず、そのため御所を筵(むしろ)でつつむ行為が行われるようになる。天皇は聖なる存在であり、その身体を守ることが、国の安泰を維持するために必要であると考えられたのである。
 順徳天皇(後鳥羽院の皇子)が宮中の儀式や作法をまとめた『禁秘抄』には、「日蝕(にっしょく)・月蝕の際、御所を席(むしろ)で裹(つつ)み、決して光に当たらぬようにし、御持僧(ごじそう)(天皇加護の祈祷〈きとう〉を行う僧)が修法を奉仕する」とある。
 ・・・元久元(1204)年9月、将軍実朝が北条義時邸から帰宅する際、月食であったため逗留(とうりゅう)することにしたという話が『吾妻鏡(あずまかがみ)』にみえる。月食の光が、将軍の身体を穢すという認識を持っていたことを窺(うかが)わせる。
 将軍は、武家政権の首長として、国の安穏を体現する存在でもあったといえよう。(中世史研究者)

そうなのか。「天皇は日食・月食の妖光から保護されなければならず」なんですね。知らなかった。
現在は「日食 月食」と書きますが、もともとは「日蝕 月蝕」と「むしばまれる」できごとですものね。

↓参考
https://www.kcg.ac.jp/kcg/sakka/oldchina/tenpen/nisshoku.htm
日蝕故事

  古代中国では天変は政治の上で非常に大切でした。真偽はともあれこんな伝承があります。
夏の第4代仲康のとき天文官だった羲氏と和氏が酒色に溺れ、職務である天文観測をさぼり,日蝕の予報を出さず,暦を乱したのでクビ(罷免ではなく死罪)になったそうです。天文官たるもの職務には命をかけねばならず,星空を楽しむ余裕はなかったようです。その日付は詳しすぎてかえってアヤシイですが『書経』では季秋月朔と,また『竹書紀年』では帝仲康五年秋九月庚戌朔となっているそうです,もしホントなら世界最古の日食記録です。そこで紀元前19世紀,20世紀に洛陽で見える皆既日食を探すと・・・BC2004年2月27日、BC1961年10月26日,BC1945年7月3日,BC1903年9月15日が見つかり,どれも皆既食です。それらの日の干支はそれぞれ癸丑、庚子,己巳,癸亥で,記載とは合いません。
 ・・・

暦というものが民に対する権力者の権力の源泉のひとつであったようですね。

「暦はエレガントな科学」 石原幸男 著、PHP研究所、2012年1月10日第1版第1刷 発行

p.46「つまり暦の整備は『新秩序の形成』だったのです。爾来、中国ではこのことが重視され、暦は皇帝が『天意を知る者』として制定し、人民に授けるものとされました。」

p.63「じつは中国歴では日食月食の予測が重要だったからです。暦は皇帝が『天意を知る者』として人民に授けました。天意を知るといったって、口先だけで信用するほど中国人はお人好しではなかった。実証する必要があった。それが日食月食の予報だったのです。これが当たっているうちは皇帝は信頼された。しかしひとたび外れると、へたをすれば革命も起こりかねない。そんな緊張感のなかだ、天文学者たちは暦をつくりつづけたのです。」

いろいろ日食関係など読み歩いていたら、朝日新聞の「論座」というところで面白い記事を見つけました。
有料会員でなくても読めるようです。記事は長いので、終わり近くの一部を引用します。

↓論座
https://webronza.asahi.com/culture/articles/2022111500001.html?iref=com_rnavi_chumo_n
皆既月食や日食に盛りあがる日本人の心に潜んでいるもの

・・・
古来、月は直接見るのは不吉とされ、水に映して楽しんだ

 さて、この目でみたい! とあれだけ盛り上がった月食観測の話に戻ろう。日本の文化歴史に詳しい、成願義夫氏(伝統デザイン研究家)によると、かつては月食はもとより月自体も直接は見てはいけないものだったらしい。特に女性が月を見るのは良しとされていなかったという(「女性が月を見てはいけないと言われる理由。ただの迷信じゃなかった!」女性の美学)。

その昔、月は直接見てはいけないものでした。
まして、月蝕はなおのこと、不吉とされていたのです。
それでも月を観たい人々が、見る方法はただ一つでした。
それは、手鏡か水鏡に写した月を間接的に観ることでした。
月を観たいのは、庶民だけではありませんでした。
最も位の高い日本人、そう天皇も月を観たかったのです。
しかし、天皇はご自分が最も上に座する人。
何かを見上げてはいけないのです。
さらに不吉な月を見上げるなんてとんでも無いことでした。
月を間接的に見下ろして、ご覧になる方法はただ一つ。
そこで、
嵯峨天皇は月を観るためだけに、池を造らせました。
その池が嵯峨にある広沢池です。
水鏡に映る月を見る『観月の宴』を船で楽しまれたそうです。
出典:成願義夫氏のフェイスブック(2022年11月9日)

 成願氏によれば、京都の桂離宮は池の水に月を映して見るために計算しつくされて設計されているという。「日本人にとって、満月が特別だったのはなぜか!?」(weathernews)という記事ではその計算された方位が示されている。
 ・・・
 満月を直接見ずに、鏡のような水面、まさに文字通り明鏡止水に映し出された月を真珠の粒として味わい、歌に詠む。これはこれでなんと風流なことだろう。
 月食にしても日食にしても、時々、全国で盛り上がる天体ショーはそういう古人が当たり前に行っていた行事を懐かしむ何かが私たちの中に潜んでいるからかもしれない。次の満月、部屋の明かりを全部消して、月明かりだけで一時を過ごし、歌でも詠んで平安時代の貴族の気分を味わってみてはいかがだろうか。

広沢池にそんな話があるとは全く知りませんでした。
今度、月見をするときには、手鏡を持って鏡に映る月を愛でてみませんか。
「私は見上げたりはしないのだ」と見得でも切りながら。

↓素性の確かなサイトにリンクします。
https://weathernews.jp/s/topics/201801/260095/
【中世日本の月食観】月食が怖かった!?

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9138/
ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版サイト
月食にまつわる各地の神話 2014.04.17

●追記
ここまでは土曜日にテキスト・エディタに下書きを書いておいて、あとはアップロードするだけだと思っていたのですが、日曜日の朝刊に思いがけない記事が載りましたので追記します。

↓朝日新聞デジタル
QuizKnockの朝日新聞クイズ(2022年11月20日)

・・・
 月食とは、太陽の光を受けてできた地球の影に月が入ることで、月が欠けたように見える現象のことです。したがって、三つの天体が太陽、地球、月の順で一直線に並んだときに起こります。これは満月になる条件と同じですが、地球が太陽を回る軌道面に対して、月が地球を回る軌道面が微妙に傾いているため、満月のたびに月食が起こるわけではありません。古代ギリシャの天文学者アリスタルコスは、月食の時に月に映る地球の影の大きさから、月の直径が地球の約3分の1だと推定しました。彼は太陽の大きさも求め、地動説の先駆者とされています。
・・・
 ■Q3 北欧神話では、月食が起きるのはどんな動物のしわざだと考えられていた?
・・・
 北欧神話では、ハティというオオカミが月を捕まえることによって月食が起こると考えられていました。北欧神話には他にも、日食の原因だと考えられていたスコルや、世界の終末に主神オーディンをのみ込むフェンリル、オーディンに仕えるゲリとフレキなどのオオカミが登場します。
・・・

アリスタルコスの推定は知りませんでした。
↓早速wikiを見たら
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%82%B9
月の大きさ
アリスタルコスの『太陽と月の距離と大きさについて』の写本(10世紀頃)

アリスタルコスは月食の際に月が地球の影の中を通過する様子を観測した。彼はこの観測から、地球の直径は月の直径の約3倍であると見積もった。地球の外周を252,000スタディア(一説では約42,000km)であると求めたエラトステネスは、このことから月の外周を約14,000kmであると結論した。実際の月の外周は約10,916kmである。

そうだったのか。
理科年表によると

    赤道半径[km]
地球:   6378.1
月   :  1737.4

こうですので、6378/1737=3.67
です。
ごく大雑把な推定としては、いい線いってる、というべきでしょうね。
すごい人もいるもんです。

月蝕や日蝕は、オオカミが「蝕む」のだ、という神話を考えると、これらの現象はやはり「不吉」なものだったのでしょうね。

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