オメガ脂肪酸
広告でよく見かける「オメガ脂肪酸」。
化学系の私としては不快なんですよね、この言葉。そういうものはないのです。
EPAとかDHAとかアラキドン酸とかを指しています。
「機能性食品」とかいうのでしょうが、魚でも食べていればいいんです。っ。
「オメガ ω」というのは、「位置」を示す言葉なのです。終端部という意味です。
「アルファ α」は始端部です。
脂肪酸というのは炭素原子が長く繋がった分子の端に-COOH(カルボキシル基)が付いたものです。
HOOC-C-C-C-・・・-C-C-C-C
1 2 3 4 ・・・
α ω
で、EPAというのはエイコサペンタエン酸(正式にはイコサペンタエン酸)といいまして、「エイコサン」というのは炭素が20個という意味で、「ペンタ」は「5」ということ、「エン」は「二重結合」のことです。
炭素20個で、二重結合が5つある脂肪酸、ということですね。
で、-COOHとは反対側の終端部の炭素=ω位の炭素から数え始めて3番目と4番目の炭素の間に二重結合があり、その他にも4つ二重結合があります。
で、こういうのを「ω-3」系脂肪酸というのです。
DHAはドコサヘキサエン酸。ドコサンは炭素が22個、ヘキサ エンは二重結合が6個、です。
これもω-3系の脂肪酸です。
アラキドン酸というのは、炭素が20、二重結合が4つの脂肪酸です。エイコサ(イコサ)テトラエン酸と呼んでもいいかな。
ただ、二重結合がω末端から6番目の炭素のところからなので、ω-6系脂肪酸ということになります。
人間はω-3系やω-6系の脂肪酸を自分で合成できないので、食品から摂取することになります。
で、メーカーとしては、ω-3系とω-6系を一緒に宣伝したくて、「ω脂肪酸」「オメガ脂肪酸」とまとめてしまったのかもしれません。
でも、私としてはどうにも気持ちが悪いのです。
正式な名前などはややこしいので、ここでは省きました。
ま、気持ち悪いよ~という告白として、笑って読み過ごしてください。
↓以前、案山子案雑記というHPをやっていた時に書いたものがあります。
部分的にお目にかけます。
●「飽和」と「不飽和」
すべての炭素間の結合が単結合で、残りの結合の手は水素であるような炭素鎖を「飽和」しているといいます。他方、炭素間に二重結合が入っている場合「不飽和」であるといいます。二重結合のπ結合には「付加反応」といって、ポリマーが出来るのと同じで、内部でのπ結合がほどけて、水素や塩素・臭素などと結合することが出来ます。少し先の話になるのですが、脂肪酸(炭素の鎖の先端にカルボキシル基(-COOH)がついてカルボン酸になったもの)で炭素鎖の部分が不飽和であるときに、水素を反応させると(「水素添加」略して「水添」といいます)二重結合のπ結合に水素が反応して飽和脂肪酸になります。二重結合があって「まだ水素が入る」のは不飽和、二重結合がなくなって「もう水素が入らない」のが飽和だと考えてください。 二重結合は鎖の中に一ヵ所とは限りません。複数ある時は、二重結合を「エン(ene)」であらわして、数詞で数を表現します。
DHAは「ドコサヘキサエン酸」で、「ドコサ」が炭素数で22個、「エン」が「ヘキサ=6」ですので、炭素数が22個で、その鎖の中に6ヵ所二重結合があり、端っこの炭素は-COOHになっていてカルボン酸だ、という名前なのです。
EPAは「エイコサペンタエン酸」。炭素数が20個の鎖の中に5ヵ所の二重結合があり、端は-COOHになっているわけです。
(EPAの現在の正式名はイコサペンタエン酸(アイコサペンタエン酸)です。)
詳しく書くと(ただし水素は省略しますが)上の図のようになります。カルボン酸の-COOHのCを1番として炭素原子に通し番号を振り、その番号を使って二重結合の位置を示します。「4」とあれば「4番から5番への二重結合」ということになります。ここでの二重結合は共役していません。飛んでいますので。
↓辞書から
オメガ【Ω・ω】
(omega)(ギリシア語の最終字母)
①最終。最尾。
②電気抵抗の単位オームを表す記号(Ω)。
③〔化〕有機化合物において位置を示す記号の一つ(ω)。注目した官能基と反対側の端にある炭素原子を示すもの。
広辞苑第六版より引用omega
►n
1 a オメガ《ギリシア語アルファベットの最終第 24 字;Ω, ω》.
b 終わり,最後 (cf. ALPHA1).
2 OMEGA MINUS; OMEGA MESON.
►a 〔化〕 オメガ…《化合物の末端の基・位置についていう》.
[Gk (ōmega great O)]
リーダーズ英和辞典第3版より引用
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