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2021年8月10日 (火)

大気圏内での無重量・地下での無重量

●大気圏内での無重量
前の記事で「キーポイントは「放物線を描きながら」というところにあります。」と書きました。

★実は放物線飛行(パラボリック・フライト)というのがあるのです。
ジェット機で急上昇し、途中で推力を切って放物運動状態に入り、落下中は空気抵抗を打ち消す程度の推力を出しながら降りてきて、水平飛行に戻る。これで20秒くらいの無重量状態が体験できます。

宇宙飛行士の訓練に使ったこともあるし、「無重量」を商業的に体験してもらったりしたこともあります。

https://astrax-by-iss.wixsite.com/zero-g/about
パラボリックフライトとは

●更に「地下での無重量」というのもあります。
北海道の旧炭鉱で使わなくなった立坑(たてこう)を利用して、カプセルを自由落下させ10秒くらいの無重量をつくる施設でした。もちろん人は乗れません。工業的な価値を売ったのです。
↓参考
https://dbnst.nii.ac.jp/pro/detail/1898
地下無重力実験施設

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1994/114/12/114_12_781/_pdf
-廃坑利用の地下無重力実験センター

落下施設は総長が710m,このうち490mを自由落下長として用 ,200mを機械制動,20mを非常制動のために利用している。自由落 下長490mは原理的に10秒の無重力時間を提供することができる。カプセルは大気中を落下するのであるが,落下中の空気力学的な抵抗を考慮してカプセル自体二重構造になっている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E4%BA%95%E7%A0%82%E5%B7%9D%E7%82%AD%E9%89%B1
地下無重力実験施設
地下無重力実験施設(旧:三井砂川炭鉱中央立坑櫓、2006年5月)

閉山後、立坑と立坑櫓を利用した地下無重力実験施設(財団法人宇宙環境利用推進センター)の誘致に成功。施設では、700m以上の落差を利用した無重力(微小重力)実験が繰り返し行われた。落下実験はカプセルを櫓の上から落下させるものだった。

1回当たりの経費は200万円以上でスペースシャトル等を利用するよりは安価であるが理解が得られず、また、実験結果を工業・商業的に応用することが難しいなどの状況から利用率は低迷し、2003年に閉鎖された。 閉鎖後、宇宙開発の実験場としての貢献から、後に小惑星イトカワのクレーターのひとつに上砂川(Kamisunagawa)の名が用いられることとなった。

https://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/101.html
地上で微小重力実験はできますか?

私たちは通常重力に逆らっているから重力を感じているのです。
地球表面の重力を打ち消すためには、重力に逆らわず、重力の中心に向かって落下すれば良いのです。

落下塔の例(落ち続けている間は重力を感じない)

実験装置を落下させる落下塔というものがあります。
落下搭の仕組みは、地球の中心に向けて真っすぐ立てたタワーもしくは掘った穴に実験装置を内蔵したカプセルを落下させるというもので、
遊園地にあるフリーフォールと基本原理は同じです。

北海道空知郡上砂川町にある(株)地下無重力実験センター(Japan Microgravity Center: JAMIC)※1にある落下搭を例に説明します。この設備は旧炭坑の縦坑を利用したもので、全長710m、自由落下距離は世界最大の490m、10秒間の微小重力環境が実現できます。

落下塔の内部は空気抵抗でカプセルが減速しないように、空気抜きのダクトが設けてあります。
落下終了時はこのダクトを制御することでエアブレーキにもなります。

落下カプセルは二重になっており、実験装置は落下カプセル内に取り付けるのではなく、落下カプセルの中には空間がありそこにある内カプセルに取り付け、落下カプセルに固定されてはいません。

この落下カプセルの中は真空にされています。
落下カプセルの上部には空気抵抗により減速した速度を補うための空気ジェットスラスタがあります。

実験機器を搭載した内カプセルが落下カプセルの床に触れそうになったら、空気ジェットスラスタを噴いて落下カプセルを加速し常に内カプセルが落下カプセルに触れないように制御し、自由落下させます。
この構造により内カプセル内は10-5gという非常に良好な微小重力環境を保つことができます。

落下搭にはガイドレールがあり、落下カプセルはそれに沿って落下します。
着地時には、エアブレーキと機械式ブレーキにより緩やかに減速(8g以下)されますので、市販の実験装置や測定器が壊れることはありません。

また、岐阜県土岐市にある日本無重量総合研究所(Micro-Gravity Laboratory of Japan: MGLAB)には自由落下距離100m、自由落下時間4.5秒間の落下搭があります。
この落下搭は搭内を真空にすることにより、空気抵抗を無くし落下カプセルを自由落下させています。

※1:(株)地下無重力実験センター(JAMIC)は、平成15年3月31日をもって解散しました。

★実は・・・私、小学生時代にもう無重量状態での「球形燃焼」というのを見たことがあるんです。
岩波科学映画でみました。岩波の科学映画というのは実に質の高いものでした。日曜の午後6時台に15分やってたんじゃないかな。草笛光子さんの「光子の窓」とか「シャボン玉ホリデー」も一緒にあったような。おぼろな記憶。

ロウソクの炎って、いわゆる「炎型」をしていますよね。融けたロウが芯を伝って上がってきて、燃焼する。燃焼すると温度が上がりますので周囲の空気が膨張して密度が下がります。すると冷たい空気の浮力で熱い空気は上昇する。その時に周囲の空気を引き込み、芯で燃焼するロウに酸素を供給するとともに、炎を上へ引くので「炎型」になります。
では無重量状態ではどうなるでしょう。差し当たって、火をつけた、としましょう。周囲の空気は熱せられて膨張しますが浮力が働かないので、上昇気流が生ぜず「球形」に燃えるのですね。また、もし長い時間無重量状態が維持できた場合、上昇気流によって供給されていた酸素が来ません。拡散でやってくるだけ。で、燃焼が維持できなくなって消えるはず。
長時間の無重量状態は無理ですが、短時間なら自由落下で作れる。
岩波の科学映画チームは、まず長方形の木箱を作り、一端にロウソクを立て、他端にカメラをセットし、きちんとした蓋をして中の空気が揺らがないようにして、ビルの屋上から落下させたのです。下ではネットを張って木箱を受け止める。
落下直前に点火し、炎型で燃焼するロウソク。それが自由落下を始めた途端に炎が「球形」になった。ほんの短時間でしたが炎が丸くなったのを確かに見ましたよ。感動してしまいました。見ちゃった、本物を見てしまった。こういう経験は後の理科教師としての経歴に影響したな、と感じています。
幼い人、子どもにこそ本物と接する機会を提供すべきです。
それはその人に「残り」ます。

★大人になってのイタズラ。
工業高校でのこと。物理と化学を4人で分担して持っていたのですが、そのうち一人が30歳の誕生日を迎えた。
で、誕生祝をしてあげようと小さなケーキを買ってきた。そこへロウソクを30本立てた。かなり密に並びましたね。そのロウソクにライターで火をつけた。
さあ、大変!
ロウソク一本の炎は2cm程度ですよね。ところがその炎は上昇気流を作っている。一本一本バラバラならいいのですが、密に並ぶと上昇気流が合体して、ケーキの中央部を中心とする「巨大炎」のようになった。個々の炎は内側に傾き、炎の長さも10cmまでは行かないまでも、ものすごく長くなり、合体して燃え上がる。ススも大量に上がる。
マズイ!天井の火災報知器が反応するかもしれない。泡食ってロウソクを倒すようにして消しまして、ほっとした。
試してみないでください。危険です。学校という天井の高い建物で、天井の素材自体はほぼ不燃性ですから事なきを得たのですが、もう二度とやる気にはなりません
小さな炎も合体するととんでもないことになります。

★もう一つ、思い出。
上のエピソードと同じ工業高校で。
当時としては珍しいエレベーターのある建物があったのです。重いものを搬入したりするためでしたでしょう。
古いエレベーターですから、上昇を始める時は体が重く感じ、停止する時はふわっと軽くなる。
逆に、下降を始める時は軽くなり、停止する時に重く感じる。
現在のエレベーターはモーターの制御が精密で、乗る人に加速度変化を感じさせないようにコントロールされていますけどね。
さて、生徒とともに、台秤を持ってエレベーターに乗ります。重りを乗せておきます。例えば1kgの。
エレベーターを上昇させると、一瞬秤の針が重い方へ振れる。停止時には軽い方へ振れる。
どのくらい振れたかを大雑把に読み取っておいて、加速度を求める、というような実験。
この実験は「重量」を測っているからできるのです。
上昇開始時に「重力が増し」停止時に「重力が減じた」ように感じるんですね。
エレベーターを降りる方で運転した時に、もしワイヤが切れたらどうなるか。(事故ですけど)。
台秤の針はゼロを指すでしょう。「無重力」かな?。重力か働いて落下しているのに、「重量」が消えてしまうのですね。
この実験を、もし天秤を使って実験したら、変化はないはずです。天秤は質量を測る道具ですからね。

↓参考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/62/4/62_4_329/_pdf
無重力下でローソクは燃えるか

https://humans-in-space.jaxa.jp/faq/detail/000720.html
無重力でろうそくを燃やすと、炎の形が丸くなってしまう。なぜだろうか?

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