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2021年4月23日 (金)

「におい」の話:2  神様の足の裏のにおい

神様の足の裏のにおい

朝日新聞の連載から
(リレーおぴにおん)日本のにおい:9 「神様の足の裏」にも根拠あり(朝日新聞デジタル 2021年3月2日)

 熟成すると独特の刺激臭をもつチーズがあります。その香りは「神様の足の裏のにおい」などといわれます。好きな人にはたまらないので「神様の……」なのでしょう。
 ・・・
 例えば、イタリア料理に使うパルミジャーノ・レッジャーノはパイナップルのような香りですが、これは乳脂肪の分解によるプロピオン酸エチルなどの有機化合物です。「神様の……」はアミノ酸由来でイソ吉草酸という足の汗のにおい。こうして香りと根拠を一つひとつひもづけしていきました。
 ・・・

笑ってしまいました。元化学教師として「イソ吉草酸(isovaleric acid)」はよく知っています。酪酸(butyric acid)と並んで「悪臭物質」として知られます。
イソ吉草酸の正式名称は3-メチルブタン酸(3-メチルブタンさん、3-methylbutanoic acid)といいます。
酪酸にメチル基がついた構造です。鎖の短い脂肪酸は「臭い」んです。酢酸だって濃いと鼻を衝く臭気ですよ。
ところが、エタノールなんかとエステル化すると、果実の芳香になったりします。
酪酸エチルはパイナップルの香り、といいますね。
Wikiから
「イソ吉草酸自体にはチーズもしくは汗、足、加齢による口臭のにおいのような不快感を伴う刺激臭があるが、そのエステルは快い芳香を持つため香料として広く使われている。」
こうですもんね。
悪臭と芳香、その落差がすごく大きいので、高校の有機化学で結構よくやる実験なんですね。
面白い実験です。大抵、何かのエピソードが生まれます。においの落差のせいで。

それにしてもなぁ。「神様の足の裏のにおい」とは、いくらなんでもあまりかぎたいとは思えませんが。
むしろ、赤ちゃんの「乳臭い」吐息の方がましだなぁ。

↓過去記事。かなり詳しく書きました。興味のある方はどうぞ。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/valeric-acid.html
2012年7月 9日 (月) Valeric acid

↓以前の私のHPからの引用

生物学のための基礎化学(官能基)から
 こちらがイソ吉草酸。(本当は3-メチルブタン酸といいます)
 カノコソウ属植物(Valeriana)の根の精油中に存在します。「不快な変質チーズ臭」を有すると辞書にはありましたが、むしろ汗臭さのもととして有名だと思います。蒸れた靴、蒸れたTシャツ・・・などを想像してみてください。昔、i-吉草酸を使った実験をやったあと、同僚の独身教師が家に帰ったら母親に「あんたまた靴下かえてないんでしょっ!!早く脱ぎなさい!!」と叱られたそうです。汗でぬれたジャージをロッカーに入れたまま夏休みに入って、9月新学期、扉を開けたら臭気でノックアウト、などという状況を想像してみてください。
 ところがこのイソ吉草酸とエタノールが化合した「イソ吉草酸エチル」という物質はリンゴのような芳香がするのです。不思議です。実はこの実験をしていたわけです、上の話は。
 花束にはよくカスミソウを飾りにつけますが、カスミソウにはほんのわずかですが、イソ吉草酸の匂いが漂うのです。敏感な人は嫌うようです。この匂いのしないカスミソウの開発が研究されているようです。
 ところで、赤ちゃんの吐く息には、独特の乳臭さがあります。大人がそんな匂いを漂わせたら、総スカンですが、赤ちゃんは別。甘酸っぱい、発酵したような、乳臭さがかわいさを引き立てます。実はこの匂い、イソ吉草酸の匂いが入っているのです。そこで、欧米ではカスミソウを、「Baby’s breath」と呼ぶことがあるようです。粋なネーミングですね。

「赤ちゃんの香り」なんです。甘酸っぱいような香りですね。

↓Wikiから。リンクしませんが。

●酪酸(Butanoic acid)
体外へと分泌される皮脂にも含まれており、蒸れた足などから発せられる悪臭の原因物質の1つでもある。他に、同じく体外へと分泌される乳汁を原料としたバターやチーズなどにも含まれている。植物にも含まれ、例えば、銀杏の異臭の原因でもある。
酪酸エチル
酪酸エチル(らくさんエチル英: ethyl butyrate)は、酪酸エステルの一種。拡散性のあるバナナ・パイナップルのような果実香を持ち、食品香料などに用いられる。
主に食品香料として果物・バター・チーズ・キャラメル・ナッツ・洋酒のフレーバーに、28~1400ppmほど使用される

酪酸ブチル
酪酸ブチル(らくさんブチル英: heptyl butyrate)は、酪酸エステルの一種。新鮮なバナナ・パイナップルのような果実香を持ち、香料などに用いられる。
主に食品香料として果物・バター・ナッツ・洋酒のフレーバーに、チューインガムで150~1500ppm、その他用途で8.6~24ppmほど使用されるほか、口紅用調合香料にも少量使用される[1]。

●吉草酸(Pentanoic acid)
足の裏の臭いはこの異性体であるイソ吉草酸が原因である。

吉草酸エチル
リンゴ、アプリコット、モモなどフルーツ系、バター、ナッツ系の香料として4.2~15ppmほど、チューインガムにおいては260ppmほどの濃度で使用される。嗅覚閾値は吉草酸メチルより低いものの、加水分解で発生した遊離酸による悪臭が生じるため調合香料には不向きである[2]。

すごいでしょ。「におい」って不思議ですね。
あらゆる「におい」を嫌うような傾向って、不健全というか不健康だな、と思います。
生きることの豊かさを放棄してしまっては悲しいじゃありませんか。ね。

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