ツクシ・スギナ
2021.3.7
庭のツクシ。もう胞子放出のころですね。
3.17
写真ではうまく表現できないのですが、肉眼的には「スギナ林」になっています。
この場所では毎年恒例の眺め。
一度、ちょっと離れた場所にツクシが出たことがあります。きっと胞子が飛んで行って芽を出したのでしょう。
でも、定着は出来ませんでしたね。タフな植物が定着できないということは、我が家の庭は「過酷な」環境なのかな。
★ところで、高校の嘱託員をしていた時に、生物専門の嘱託の先生もいらっしゃいました。その先生から、ツクシの胞子の顕微鏡観察を教わったのです。生活環は知っていましたが、ツクシの胞子の面白い性質を知ったのは初めてでした。
スライドグラスにツクシの胞子を撒きます。顕微鏡で胞子を観察すると弾糸という糸に乗った様子が見えます。その時に、口を開いてハァーっと弱く息を吐きかけます。吹きかけるのではなく。吹けば飛びますからね。飛ばないように息をそっと吐きかける。そうすると呼気は湿ってますので、弾糸が水分を吸って丸くなるんです。しばらく見ていると、また弾糸が伸びてくる。
とても面白いもので、生徒の顕微鏡実習にも向いていますよ。
さて、嘱託員も2005年の3月で終わりましたが、その4月から元同僚の先生の小学4年生のお子さんと理科遊びをすることになりまして、その第1回に、ツクシの胞子の観察をやったのでした。U君とUおじさんの「理科おじさんの部屋」は3年間つづいたのでしたっけ。楽しかったな。
理科おじさんの部屋:第1回
・・・
1:ツクシの胞子(ほうし)を見てみよう季節ものですので、今を逃すと見られません。チャンス! で、Uおばさんが多摩川の河原へ行って、ツクシ採り。その胞子を観察することにしました。
ツクシはスギナの胞子体といいます。通常の生活はスギナとして暮らし、胞子をばらまいて繁殖するためにツクシが出てきます。
下の写真がツクシの胞子です。「弾糸」という糸が2本交差していて、その交差しているところに丸い胞子が乗っています。
この弾糸はしめっているとクルクルっと胞子に巻き付いて、丸まってしまいます。乾燥すると伸びます。ツクシの「筆先」に納まっている時は、胞子は全部丸まってぎっちりと詰まっているのでしょう。いざ、胞子が成熟して、天気も良いし、胞子をばらまく時が来ると、カサが開いて、胞子が乾燥します。すると弾糸が伸びて風をはらんで遠くへ旅立つのです。こんな大きさのものにとっては、「糸」は風を受ける帆の役割を果たします。タンポポの種の毛もそうですね。クモの子が草の葉先につかまってお尻から糸を出し、風を受けて遠くへ旅立つのも同じです。ツクシの胞子もどんなところへ着地するかは全く分からないまま、生息地を広げるために旅立つのです。
顕微鏡で覗きながら、胞子に息を吹きかけると弾糸がクルクルっと丸く巻き上がり、放置するとまた弾糸が伸びてくるようすが観察されます。
・・・
というわけなのでした。なつかしいものを発掘してきました。
↓Wikiの解説から
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AE%E3%83%8A
スギナ(杉菜、接続草、学名:Equisetum arvense)は、シダ植物門トクサ綱トクサ目トクサ科トクサ属の植物の1種。日本に生育するトクサ類では最も小柄である。春先に出る胞子茎をツクシ(土筆、筆頭菜)とよぶ。
・・・
地下茎から地上へ出る胞子茎と栄養茎に分かれ、栄養茎をスギナ、春(3 - 4月)に出現する胞子茎をツクシ(土筆)と呼び、ツクシの方は食用もされる[5]。ツクシは淡褐色の円柱形で中空、ハカマといわれる葉の変形物がつき、てっぺんに胞子穂がついている[5]。早春、南向きの土手などに、他の植物に先駆けてツクシが地上から生えて、繁殖のため胞子を放出したあとは、胞子茎は枯れてしまう[5][7]。その後同じ場所に栄養茎(スギナ)が生える。栄養茎は高さは30センチメートル前後になり、緑色で光合成を行い、節に鞘状の変形葉がついて、枝が輪生する[5][7]。
↓NHKのミクロワールド。さすがに画像は最高。
「どうがを見る」をクリックすると、5分の動画が見られます。是非ご覧いただきたいと思います。
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/bangumi.cgi?das_id=D0005100166_00000
ミクロワールド 飛び出す胞子 ツクシの秘密
↓高校の生物での観察です。
http://www.makasaka.net/seibutu/tukusi/tukusi.html
TOPページ > 高校せいぶつ実験 > ツクシの胞子の観察
ツクシの胞子の観察
ツクシ(スギナ)の胞子の形と運動を観察し、そのしくみを考察する。春先、がっこうの周辺にたくさん見られる「ツクシ」を掘りおこすと、暗褐色の地下茎があり、そこでスギナとつながっています。つまり、ツクシはシダ植物の一種の「スギナ」の胞子茎であり、いわゆるスギナは栄養茎(光合成を行う器官)で、ともに一つの植物なのです。シダ植物の生活は複雑で、次の図のように世代交代を行います。
・胞子は生殖細胞であり、スギナの胞子は4本の弾糸をもつ。
・ツクシの頭部は亀甲状の胞子葉に被われ、その裏に胞子のうがある。
・・・
わかりやすいです。最後のところに、生徒のスケッチが載っているのですが。
「スケッチは点と線で、大きく丁寧に書く。」という先生の指導通りに、点と線で描かれています。
これ大事なことでして、陰影を使ってはいけません。
https://www.sci.keio.ac.jp/gp/FE14F344_10978371.html
生物実験におけるスケッチは、生物の特徴や重要な構造と形態を表現するものである。デッサンとは異なり、見えたままを描くものではない。スケッチをすることで、対象の細部まで観察する姿勢が身につく。
こういうことなんです。
★またおまけ。
私は、大学教養学部時代の生物実習で、ホルマリン漬けのヒキガエルの解剖をやったのですが。
ヒキガエル2匹を使って徹底的に細部まで観察し、最後は骨格標本をつくる、というところまでやりました。
その時のテキストがまたすごい。図が一切ない、のです。観察すべき対象やどこをどう見るのか、などすべて言葉で書かれているのです。図があると学生はその図に頼ってしまい、自分の目の前の対象を自分の目で見なくなる、観察が甘くなる。言葉で表現されたものを自分で見よ、そして点と線だけでスケッチして提出せよ、という実習でした。
自分の手がホルマリン漬けで、ごわごわになり、皮膚の触覚がしばらくは失われるという過酷な実習でしたが、叩きこまれましたね。面白かった。
半世紀を超える昔の記憶です。
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