「おつり」の話:2・本題
さてここからが本題なのですが
↓こんな本を読みました。{ }内は私の文です。
「昆虫考古学」小畑弘己 著、角川選書 610、平成30年12月21日初版発行
p.84 3 トイレの中から出てくるムシたち
・・・
藤原京跡のトイレ遺構から発見された昆虫化石は、以下の通りである。{半翅目、双翅目、甲虫目、膜翅目 など列挙}
そして、これらは、その生態から以下のように分けられている。
①糞虫類
②貯穀害虫
③便・腐敗物(動物死体)を好む昆虫
④周辺植生に生息する昆虫{具体的な昆虫名は省略しましたが、④に含まれるものとして、ニドゥラリアカイガラムシというコナラにつく昆虫が挙げられています。}
またコナラ属の木につく虫たちの存在は、トイレから「おつり」が帰ってこないように葉っぱや枝を沈めた結果と考えられ、それらはいわばトイレ用品というべきものである。
出ました「おつり」。
便壺で汲み取り式の便所での一つの大きな悩みが「おつり」でした。
便壺に溜まった大小の混ざったねっとりした液体に、固体というほどでもないけれどちゃんと形を持つ粘土みたいなウンチを落下させると、まっすぐ上に向かって液体の塊りが返ってくるんですね。で尻を汚す。気分悪い。
家族4人が普通の生活をしていますと、汲み取り直後におつりが返ってきやすいのですが、しばらくすると安定状態になりおつりは帰らなくなります。ところが、正月などでお客さんが何人も来ると、皆さん小用を足すばかりですので、液体分が増えてしまい、確実におつりが返ってくるようになる。正月はヤな気分でしたね。
対策としては、落し紙や切った新聞紙などをうまく落下させて液面を覆っておけばおつりは返ってこない。これが意外と難しいのでした。
これで話がつながりましたでしょ。
おつり防止にコナラ属の植物の枝葉を便所に備えておき、大用を足す前に葉のついた枝を落してその後用を足す、という古代の方々の生活が見えてくるんですね。
用を足す、ということは昔も今も変わりゃしないということです。
この本を読んでいて、思わずニヤッと笑い、古代人に親しみを感じましたっけ。
考古学ってそういう人間生活の探求でもあったのですね。昆虫が教えてくれたのでした。
★さて、この「おつり」という現象、便壺型の便所を使った世代にしかわからない言葉なんだろうな、と検索してみたんです。「トイレ おつり」でアンド検索して見ましたら。
↓あらまぁ。
https://qa.toto.jp/faq_detail.htm?id=82870&category=12&page=1
使用時に水が跳ね返らない便器はありますか?
残念ながらありません。
《理由》
トイレ使用時の水はね、俗にいう「おつり」は便器の水たまりがあることが原因です。
汚物の形や量などによっては水がはねかえってくることがありますが、
この水たまりには下水からの臭気を遮断する大切な役目があるため、なくすわけにはいきません。
汚物の形状は一定でないため、完全にはなくせないのが現状です。《おつり防止の方法》
気になる場合は、あらかじめトイレットペーパーを浮かせてご使用ください。
TOTO(東陶)がいうんですから間違いない。現在も「おつり」はあったんですねぇ。逆に、知りませんでした。
★注
冒頭に引用した昆虫考古学の文中の語をそのまま書きますと「ニドウラリアカイガラムシ」なのです。
これがなんだかわからない。で、いろいろ調べたら
「ニドゥラリアカイガラムシ」
でした。
ニドゥラリアカイガラムシ Nidularia japonica
こういうカイガラムシがいるんですね。現在も。コナラにつくカイガラムシだそうで、引用文と一致します。
↓参考にしたサイトです。
http://mushi-akashi.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-65a7.html
明石・神戸の虫 ときどきプランクトン
2015年5月14日 (木)
ニドゥラリアカイガラムシ(改題)
* 215.05.15・追記とタイトル修正 *はじめタイトルを「カタカイガラムシ科の一種」としていたのですが、ezo-aphidさんにニドゥラリアカイガラムシ Nidularia japonica Kuwana,1918 であろうと教えていただきました。タマカイガラムシ科に属し、コナラの幹や枝に寄生する種だそうですが、詳しくはコメントをご覧ください。
苔に覆われたコナラの幹で、あちこちの窪みに1匹づつ点在していたカイガラムシです。
カタカイガラムシ科の一種だろうと思って調べてみると、フッカーSさんの「東京23区内の虫」に良く似た画像が見つかりました。種名は特定されていませんが、同じくコナラの幹で撮られているので同種の可能性があると思います。
↓「東京23区内の虫」も調べてみました。
http://tokyoinsects2.blog.fc2.com/blog-entry-985.html
東京23区内の虫 2
ニドゥラリアカイガラムシ
ニドゥラリアカイガラムシ Nidularia japonica
(タマカイガラムシ科Nidularia)2010.4.3.撮影(練馬区石神井公園)
コナラの幹の窪み部分に寄生していたカイガラムシの一種。底部からは白いロウ物質を分泌し、殻の表面は小石をちりばめたような外見をしている。ロウ物質を底部から分泌している姿は遠目にはモミジワタカイガラムシ(Eupulvinaria horii)に似ているが、よく見ると形状や対表面の様子がかなり異なっている。
長らくカタカイガラムシ科と推測したまま詳細が分からなかったが、全国農村教育協会の「日本原色カイガラムシ図鑑」(P16,131,132)で本種の写真を見つけ、ニドゥラリアカイガラムシだと分かった。図鑑によれば、本種はコナラの小枝の分岐部や幹などの凹部に寄生し、年1化で成虫越冬し、4月頃に産卵するという。
私はこのカイガラムシを見たことはないと思います。おつりの話から勉強しました。
★昔の駄ジョーク
「伊奈陶器(ina)は東洋陶器(toto)の兄貴なんだぜ」
「ina toto」を右から書きますと「otot ani」
ね、伊奈陶器のほうが兄でしょ。
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