ホウケイ酸ガラス
朝日新聞デジタルから
増産、収束願って 医療用ガラス容器、生産急ピッチ(2021年2月1日 5時00分)
新型コロナウイルスのワクチン接種に向けて準備が進む中、医薬品を入れる特殊なガラス容器の需要が世界的に高まり、加工を手掛ける企業は急ピッチで生産を進めている。
「ホウケイ酸ガラス」と呼ばれる特殊なガラスで出来た瓶や注射器の部品などを製造する「村瀬硝子」(東京都墨田区)では、新型コロナの感染が世界的に拡大した昨年3月ごろから、国内外の製薬会社からの注文が増加。今後の需要拡大を見据えて増産に備えている。
(後略)
「特殊なガラス」とあるのですが、これ通称パイレックスですよ。パイレックスはアメリカのコーニング社の商標なので耐熱ガラスといった方がいいかな。昔、ガラスコップに熱湯を注ぐとコップが割れる、というのは有名な話でした。でも現在、コップに熱湯を注いでも割れませんよね。台所にある多くのガラス製品は耐熱ガラス製です。小中高大、理科関係の実験器具もほとんどすべてが耐熱ガラス。
ホウ素を含むガラスです。「特殊な」というのは気が引けます。要するに、熱膨張率が小さいのです。ですから、容器に温度差ができても、内部の応力が小さくて割れないんですね。温度差に強いだけでして、機械的な衝撃には特に強いわけではないので、気をつけて下さい。耐熱ガラスなんだから衝撃にも強いと思ってしまう人がいて、台所でガラス容器をぶつけて割ってしまうこともあるやに聞きます。
で、今回のワクチンはドライアイス温度くらいで保管しますので、常温との温度差が100℃近くになることもあるでしょう。そこで温度差に強い容器が必要になるわけですね。
ちょっと記者さんの理科知識が不足したかな。私の授業では耐熱ガラスの話もよくしましたよ。
★オマケ
pyr-/pyro-
►comb form 「火」「熱」「熱作用による」「〔化〕 焦性の」「〔鉱〕 炎のような色の」
[Gk (PYRE)]
リーダーズ英和辞典第3版より引用
パイロというのは火とか熱に関わる言葉です。ギリシャ語から来たのかな。で、それを使ってPyrexという商品名を作ったのでしょう。
↓ハリオの解説です
https://www.hario.com/heatproof.html
電子レンジで使えるガラス容器はもちろん耐熱ガラス製です。
英語だと「microwavable」とか「microwave-safe」と表示されていると思いますよ。
« 1月の気温など(東京) | トップページ | ストック »
「理科おじさん」カテゴリの記事
- 化学の日(2022.10.26)
- 秒速→時速(2022.09.01)
- 風速75メートル(2022.08.31)
- 「ウクライナで生まれた科学者たち」(2022.05.31)
- 反射光(2022.05.09)
コメント