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2020年11月 2日 (月)

伊東俊太郎先生おめでとうございます

10月27日に、2020年度の文化勲章受章者5人と文化功労者20人が発表されましたね。
その文化功労者に伊東俊太郎先生のお名前をみて、私はとても嬉しかった。
11月4日が顕彰式ですね。おめでとうございます。

↓朝日新聞での紹介文です

 【文化功労者】
 伊東俊太郎氏(いとう・しゅんたろう)90歳。科学哲学・科学史から比較文明学まで研究し「文明における科学」などの著書で、近代科学と社会の緊張関係や人類史の諸段階について独創的な見解を平易な表現で論じ、一般市民にも刺激を与えた。東京大名誉教授。

実は私、伊東先生の不肖の弟子なんでありまして、深く感じ入る次第です。
ちょっとだけ私の略歴に触れますと。
化学科時代に教師を志望して採用試験を受けて合格もしていたのですが、化学科を出て化学の教員になるって、なんだか当たり前すぎて底の浅い教師になりそうな気もして、科学史・科学基礎論(通称・科哲(科学哲学の略))の大学院を受験しまして、合格したんですね。で、直接の指導教官は渡辺正雄先生だったのですが、木村陽二郎先生、村上洋一郎先生、小佐田哲男先生、伊東俊太郎先生など、錚々たる先生方の間できっちりと2年間揉まれました。いえもう、へなへな。

伊東先生のゼミでは、楔形文字で表記されたバビロニア数学を学びましたね。高校の世界史かなんかで楔形文字のことは知ってはいましたが、まさか自分が楔形文字を読むことになるとは思いもよりませんでした。
バビロニアの数学は60進法。計算が面倒でね、音を上げたワタシ、60進法の九九表を作って先生にお目にかけたら、笑っておられましたっけ。
↓参考
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/60BFCACBA1.html
国立天文台 > 暦計算室 > 暦Wiki

60進法

古代バビロニアでは、1より小さい数は1/60、1/3600 (=1/602)、1/603 、・・・を単位として表していました。
60は多くの数で割り切れるので分数計算には便利です。
10進法の小数と比較すると、
10進法では、1.234=1+2/10+3/102+4/103+・・・ となるところが、
60進法では、1.234=1+2/60+3/602+4/603+・・・ となります。

↓過去記事です。それぞれの記事の終わりあたりに伊東先生の思い出話が載っています。内容はほぼ同じですが、細部が違う。記憶というものは思い出すたびに変更が加わるものですので、老人の記憶を丸ごとそのまま信じ込まないでくださいね。

http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-a1b9.html
2012年2月 6日 (月) 黄金比


★思い出話。
「原論」の訳・解説に伊東俊太郎先生もおられますが、私、ほんの少しだけ、伊東先生の教えを頂いたことがあります。
バビロニアの楔形文字で書かれた数学書の講読に参加したことがあるんですね。
先生は、楔形文字が読めるんだから参った。
科学史の大家でもいらっしゃいますが、語学の天才でもあるんですね。
「英語はもちろん、フランス語、イタリア語、ドイツ語は自由に話し・・・古代ギリシャ語、バビロニアの文字など辞書なしで読んじゃう。そのうえなんと、日本語まで話せるんだぜ」というのが学生のジョーク。
60進法で書かれた数学の内容に手を焼いた私が、60進数の「九九表」を作成して、これで計算の負担が随分楽になります、と提出したら、ひどく喜んでいただいて、こんなことを発想する学生には初めて出会った、とおほめを頂きましたっけ。
{手抜きだよ、と本当はおっしゃっていたのかもな。}

http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-d70e.html
2014年12月24日 (水) √2 の話:その4(黄金長方形と白銀長方形を折り紙で作る)


★思い出話。
ユークリッドの原論の訳・解説に伊東俊太郎先生の名前がありますね。
私がおそらくは理解できないようなこの本を買ったのには、そのこともあるんです。
伊東先生のバビロニアの数学のゼミをとったことがあるんです、ワタシ。
なにせ伊東先生は語学の天才、バビロニアの楔形文字が読めるんです。古代ギリシャ語も辞書なんかなしで読めるんです。現代の英独仏などは自由自在、「その上、日本語までできるんだぜ」というのが学生のジョーク。
バビロニアの楔形文字の粘土板の写真のコピーを読んで、数学的な内容を議論するゼミでした。ご存知かと思いますが、バビロニアの数学は「60進法」。あまりの面倒くささに私は「60進法の九九表」を作ってしまいました。そうしたら、伊東先生が驚いてくださいまして。それは嬉しかったです。何年か後に、あんな九九表を作るという発想は君以外に誰もやってない、と言われて、褒められたのか、呆れられたのか、思い出深いのでした。

★さらに
木村陽二郎先生のゼミでは、植物誌のラテン語の原本のコピーを渡されて、焦ったのなんのって。英羅辞書と文法書を買い込んで首っ引きで読みました。

★小佐田哲男先生は教養学部時代に先生の俳句ゼミをとって、やたら議論を吹っ掛けたりしたせいか、覚えていてくださいまして。
大学院入試の面接の、面接官の一人だった先生が「最近、俳句作ってますか」と。大汗かきました。どこでどういう出会いがあるか、不思議なものです。
小佐田先生は、私が教養の学生だったころは理科Ⅰ類の図学を担当なさっていましたが、「海事史」の専門家でもいらっしゃいました。で、大学院では日本各地に残る船の遭難の記録とかの海事の文献を読むゼミに参加しましたが。これが変体仮名を解読するゼミでして、鍛えられてしまったのでした。
楔形文字、ラテン語、変体仮名。かなりものすごい勉強をしてしまったことでした。

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