気象衛星画像から カルマン渦など
2020.11.4
11:00の画像です。
日本海側に筋状の雲がたくさん見えていて、それが日本列島の低いところから太平洋側へ何カ所か「漏れて」吹き出していますね。なかなか面白い画像だ。
九州と四国の間、四国と紀伊半島の間、名古屋の辺り、伊豆半島の東側。
大陸との間に雲がない部分がありますが、この離岸距離が短いほど寒気が強いのです。
今回はそう短くはない。
この日の12:00の天気図です。
等圧線とほぼ並行な風が吹きますので日本付近ではほぼ北西風ですね。
韓国の済州島(チェジュとう)のあたりでは、北風から多少東寄りの風が吹いているかもしれない。
その風が済州島に当たって、島の風下側に渦ができているのが最初の写真でも見えるのですが、判然としないかも。
カルマン渦といって、流れの中に交互に渦ができて流れていくのです。
14:00
敢えて白黒画像で見てください。カラーよりこの方が見やすいものですから。
韓国の南では、雲の筋が南北に並んでいます。天気図で見たとおりです。
で、済州島の南、渦がいくつか並んでいるのが見えます。
トリミングするとこんな感じ。
済州島の風下にカルマン渦の列ができるというのは有名なんです。
「済州島 カルマン渦」で画像検索すると、きれいな渦がいっぱい見られますよ。
↓ウェザーニュースの解説です。
https://weathernews.jp/s/topics/201901/210145/
↓私の過去記事ですが、我ながら非常に詳しい。リンクもいっぱい。今回の記事の一部として是非お読みください。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/post-43a8.html
2019年2月12日 (火) カルマン渦
冒頭の済州島の風下側の渦の話が出ていますね。Wikiのこのページの冒頭にシミュレーション動画があってわかりやすいです。
シミュレーション動画中で、渦を作っている丸いものが例えば電線で、流れているのが風なら、電線は風向と直角方向に揺さぶられて「音を発する」ことがあるわけですね。子供用のビニールプールに水を入れているときに、ホースが水の流れと直角な向きに揺れることがあります。これもカルマン渦で揺さぶられている。
タコマ橋の崩壊というのは高校物理で有名な教材でして、峡谷にかかった吊り橋が強風で生じたカルマン渦で揺さぶられて共振したという授業になります。
↑こういう文もあります。
★カルマン渦が発生すると、流れの方向に対して横に揺さぶられます。
島が揺さぶられることはありませんが、水流の中のホースは横揺れしますし、タコマ橋は揺さぶられて崩壊した。
電線が揺さぶられて音が出る話にも触れていますが、今回はここにちょっと追加しておきます。
虎落笛=もがりぶえ というのは冬の風物詩かな。
これもカルマン渦で振動を起こしているのです。
https://kotobank.jp/word/%E8%99%8E%E8%90%BD%E7%AC%9B-645236
虎落笛(読み)モガリブエ
冬の寒風が柵(さく)や竹垣に吹き当たってヒューヒューなる現象。物理的には障害物の風下側にできるカルマン渦によって起こるエオルス音である。虎落は軍(いくさ)などのとき竹を組んで柵とした矢来(やらい)のようなもの,また竹を立て並べた紺屋(こうや)などの物干しをいう。
冬の木枯らしで電線がヒューヒューいっていたら、カルマン渦なんだ、と了解してください。
↓辞書を引いたら
https://kotobank.jp/word/%E3%82%A8%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%82%B9%E9%9F%B3-36137
エオルス音(読み)エオルスおん(英語表記)aeolian tone
エオルス音 aeolian sound
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
針金や細い棒に気流が当るときに発生する音をいう。針金に流れが当ると,針金の背後から交互に逆向きの渦が放出されて,カルマン渦列をつくって下流に流れ去る。その際,針金は周期的な力を受けて振動し,音を出す。振動数 n は,針金の直径 d と流速 u だけで決り,n=0.2u/d となることが実験的に知られている。この振動数が針金の固有振動数と一致するとき,共鳴によって強い音が発生する。こがらしのなかで電線の鳴る音がこれである。
「エオルス」といえば「アイオロス」ですよね。風の神。
確か風で鳴る琴というのがあった、と「風琴」を調べるとこれは「オルガン」のこと。
さらにしつこく調べたら
aeolian harp
[SA-] アイオロスの琴,風鳴琴 (=wind harp) 《風が吹くにつれて鳴る》.
リーダーズ英和辞典第3版より引用
なるほど。「風鳴琴」だそうです。
「風で鳴る琴」で検索したら
↓これは詳しい。
https://www.art-science.org/journal/v7n4/v7n4pp170/artsci-v7n4pp170.pdf
芸術科学会論文誌 Vol. 7 No. 4 pp. 170 - 180
風の響きにふれる~エオリアン・ハープの実践
杉山紘一郎
また、風琴や風箏、風箜篌という名で東洋にもエオリアン・ハープが存在したようであり、日本においても伽藍の軒下につり下げていたということが正倉院文書の中に記述されているという[4]。このように世界のいたるところで古来から風が弦を奏でることは知られており、その音は身近なものとして親しまれていたようである。
いろいろあるんですね。いわゆる「琴」を風に当てると弦が生り始めることもあるようですよ。
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