駒込ピペット
朝日新聞の東京の地方版です。
2020年09月18日
都立駒込病院、23日から再開 /東京都医師や看護師、患者ら計6人が新型コロナウイルスに感染した都立駒込病院(文京区)が、23日から通常診療を再開する。都が17日発表した。
病院は、今月5日から、感染した看護師が勤務していた一般病棟の新規入院患者受け入れを停止していた。
今、ここで話題にしたいのはコロナウイルス感染のことではありません。
「駒込病院」という名前のことです。
私自身は5,6歳の頃に何だったか、左脚の腱を詰めるという話だったか、補装具のことだったか、駒込病院にお世話になったことがあると、ぼんやりと記憶しています。幼いころの記憶なので、確実さは非常に低いのですが。でもなんだか、ご縁があったような気がして身近な感覚があります。
で、私は化学教師でしたから「駒込ピペット」というものもごく身近な存在。
さて、駒込ピペットって、どういう命名なのかご存知でしょうか。
私はいつ頃知ったのだったかわかりませんが知っていました。
駒込ピペットは駒込病院で作られたのです。
1920年代に当時の駒込病院長の二木(ふたき)謙三氏が考案したのだそうです。
伝染病の患者から検体を採取するのに、口で吸うピペットでは危険なので、ゴム球をつけるという工夫をしたそうです。
↓詳しくは駒込病院自身のサイトでどうぞ。
https://www.cick.jp/referral/history.html
駒込ピペットの由来
駒込ピペットは、写真1のように上部にゴム乳頭を備え、ピペット管の上3分の一の部分に膨らみをもたせたスポイト状のピペットです。容積は1~20mlのものが多く、目盛りのあるものとないものがあります。毒性のある化学溶液、細菌液、刺激性物質を採取・希釈する時などに使用されます。迅速・安全に採取でき大変便利であり、わが国では化学、医学、生物学分野や高校の化学実験などにも使われています。また、英語名Komagome Pipetteとして世界的にも広く用いられています。しかし、採取量は精度が高くなく、微量の精度が要求される場合には適当でなく、最近では以前ほど使用頻度は高くなくなりました。
駒込病院は明治12年(1879)にコレラの避病院として設立され、その後、伝染病院として数多く業績をあげてきました。駒込ピペットは当院が伝染病院として活躍していた1920年代に、作製されたピペットです。ピペットの作製に関する文献はありませんので、理化学機械の歴史に詳しく本も著している木下義夫氏に話を伺いました。木下氏の話では「かつて、駒込病院は伝染病患者を収容し治療することを目的としていたので、臨床医学はピペットを多量に必要としていました。しかも、危険な伝染病菌をあつかうので、安全・確実・迅速にサンプルを採取したり希釈する必要性がありました。使用したピペットは、伝染性のある危険な細菌やウイルスの付着があるため、使い捨てとしました。使い捨てにするためには、値段を安くする必要があります。そこで、計量器検定を必要としないピペットとして、安価に作製されたのが、駒込ピペットであるということであります。
作製者は、今より80年ほど以前の駒込病院長の二木謙三先生が、考案したということです」ということでありました。 当時、伝染病患者から採取した検体を検査するにあたり、ピペットを口で吸うのは極めて危険なことであり、安全性の見地からもスポイト状の使い捨て型のデスポ・ピペットを世界に先駆けて開発したものと推察されます。一見、変哲もないようでありますが、極めて独創的かつ実用的発想で、その後、この駒込ピペットが世界的に普及したのも当然なことと思われます。
二木謙三先生
二木謙三先生については、当時、注文に応じてピペットを作製・販売した小林商店に、尋ねたところ先・先代社長小林吉次郎が、駒込病院第5代院長二木謙三先生に依頼をうけて、ピペットを作製したのが最初であるということでした。
二木謙三先生(写真2)は、1873年秋田に生まれ、1901年東京帝国大学を卒業後、直ちに駒込病院に就職し、コレラ菌、赤痢菌の研究で新型菌(駒込A, B菌)を発見しています。ドイツ留学後、駒込病院副院長、1915年鼠咬症スピロヘーターを発見、1919年から1931年まで駒込病院第5代院長を務められています。駒込ピペットは院長時代の1920年代に作製されたものと思われます。1921年からは東京帝大教授も兼任され、1955年には文化勲章を受章されております。【参考】日本化学会編集:教育現場からの化学Q&A、丸善
駒込ピペット、現在はあまり使いませんね。
メスピペットやホールピペットに、ピペッターという弁のついたゴム球をつけて使うことが多い。
でもまあ、有名な理科実験器具ですから、思い出しついでにご紹介しました。
↓ここも詳しい。
https://www.imachas.com/pages/column/3744/
ではなぜ、駒込ピペットには「駒込」という地名が入っているのでしょうか。
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