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2020年5月 4日 (月)

人工流れ星

外出しづらい状況の中の連休。私のこのブログの閲覧数がいつもより多くなっているみたい。大したもんじゃないんだけど。
引き籠り爺さんやって、ブログを書かないつもりでいたのですが、わずかでもみなさんの退屈しのぎになるのなら、とアップします。過去の読書などをひっくり返しているので、思ったほどには進まないのですけど、「へぇ」と感じていただければ幸いです。

↓こんな記事がありました。
人工流れ星、故障で実験延期(朝日新聞デジタル 2020年4月21日 5時00分)

 人工の流れ星を光らせようと計画している東京の宇宙ベンチャー「ALE」は20日、昨年12月に打ち上げた人工衛星2号機が正常に作動していないと発表した。宇宙から金属の粒を放出する初の実験=イメージ、ALE提供=を今年予定していたが、2号機での実験を断念。開発中の3号機を打ち上げて2023年初めの実現を目指すとした。ALEによると、2号機は、金属の粒を放出する装置に粒を格納庫から送り出せない状態。部品の一つが宇宙の真空によって固着したとみられ、指令を送っても動かないという。それ以外の機能は正常だった。

残念ですね。化学で学ぶ「炎色反応」を利用して、美しい色の流れ星を人工的に作ろうというプロジェクトなんですが。
ニュースを読んだ時に、宇宙の高真空での潤滑の問題でしょう、と妻に話しましたが、検索してみました。


https://star-ale.com/news/2020/04/20/000161.html

人工衛星2号機の動作不良に伴う、人工流れ星の実現延期(2020年→2023年初期)のお知らせ
2020.04.20 (Mon)

「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」をミッションに掲げる株式会社ALE(東京都港区、代表取締役社長/CEO:岡島礼奈、以下ALE)は、2019年12月6日に打上げた人工衛星2号機(以下、2号機)の流星源(人工流れ星の素となる粒)装填動作用の部品が正常に動作していないため、2号機では人工流れ星を実現できないと判断いたしました。世界初の人工流れ星は、2号機を利用して2020年に実現する計画でしたが、開発中の人工衛星3号機(以下、3号機)を利用して2023年初期での実現を目指してまいります。

■2号機の状況
 2号機は、人工流れ星の素となる粒を格納庫(①)から放出機構(①内)に送り出し、円筒内で加速して放出します(②)。軌道上の2号機から放出された粒が地球の大気圏に再突入して発光し、地上からは流れ星となって見えます。
 しかし、地上局から2号機に対して動作指令を送信しても放出機構に粒が送り出されない状態です。詳細な検証を行った結 果、粒の送り出しを行うための部品の一つが動きにくくなっており、所定位置に戻らなくなっていることが判明しました。その結果、送り出しの動作を開始でき ず、放出の動作に移行することができない状況となっています。
 この動作不良の原因は、宇宙空間特有の影響だと考えられます。宇宙空間では、超高真空と呼ばれる高い真空度により、摩擦力が地上より増加することや 素材同士が固着現象を起こすことがあります。検証の結果、この宇宙空間特有の影響が予測よりも大きく、動作に必要な力が設計値を上回っている可能性が高い という結論に至りました。
 (後略)

やっぱりね。宇宙空間というのはシビアな環境なのです。
地上で問題なく動作する機械が、宇宙へ持ち出すと作動しなくなるという問題は、人工衛星が打ち上げられるようになってから、かなり早い段階で認識されて問題になった、と記憶します。
地上では問題のない潤滑油が、宇宙では蒸発してしまって機能しなくなるんです。あまりの高真空でね。
大学とか、民間企業の人工衛星を打ち上げる話も多く聞くようになったのですが、民生品をそのまま使うと宇宙では動かなくなる、ということもありうるのです。かなりシビアな条件ですね。
さて、液体の潤滑剤が使えないとなると、固体潤滑剤という概念が重要になります。
結晶構造が層状になっているということでは、グラファイトが有名かな。
また、自動車のエンジンの潤滑にも使われる硫化モリブデンもいいですね。これは宇宙でも使える。

私は理学部系の出身で、機械工学には疎い。
教員になって、中学校から高校へ移動した最初の高校が工業高校だったのです。
機械科、電気科、電子科がありました。機械科のある先生と話しをしていると、もうほとんど自動車工学の講義を聴いている感じでした。その先生から学んだのが潤滑の問題。「lubrication」ですね。おもしろかった。私の潤滑に対する関心はこのころに形成されました。自動車のエンジンオイルに硫化モリブデンの添加剤を入れると滑らかになり燃費が向上するよ、と教わったのもこの時。硫化モリブデンの結晶が層状であることは、調べて理解し、納得。
「理科教員は机上の実験。工業科の先生は現場の技術者」ということが身に染みましたっけ。
工業科の生徒実習を見学し、ちょっかいを出して、いろいろ「技」に触れることもできました。あの工業高校経験はは楽しかったな。理科教員ですからね、原理はほとんどわかるんです。でも、実際に実用にするためには、理科の範囲をはるかに超えたものがあったのでした。

↓参考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsass1969/20/216/20_216_39/_pdf/-char/ja
宇宙における潤滑の諸問題 Some Problems on Space Lubrication

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/57/9/57_9_630/_pdf
宇宙トライボロジーの現状と課題

「トライボロジー」という言葉は聞きなれないと思いますが、日本トライボロジー学会のHPによりますと

トライボロジーとは潤滑、摩擦、摩耗、焼付き、軸受設計を含めた「相対運動しながら互いに影響を及ぼしあう二つの表面の間におこるすべての現象を対 象とする科学と技術」です。
トライボロジーの科学と技術から、機械や部品の低摩擦、低摩耗、表面損傷の低減を実現し、私たちの社会の省エネルギーおよび省資源に貢献しています。
・・・
語源
トライボロジー“tribology”とは、“擦る”を意味するギリシャ語“tribos”と、学問を意味する“ology”とをつなぎ合わせた造語。英国教育科学省による、英国における潤滑に起因する経済的損失の調査と産業界へのその必要性の提案を行うための報告書の中で、1966年3月9日に始めて提唱された。この報告書は、トライボロジーの産みの親とされているH. P. Jostが中心になって作成したもので、JOSTレポートと呼ばれている。
・・・

本棚を眺めると、摩擦関係の本が5、6冊あって、パラパラとページを繰ると、記憶が蘇ってきて楽しんでしまいます。
てなことで、興味深い話はいろいろあるのですが、ま、こんなところで。了。

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