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2020年5月 4日 (月)

流れ星の尾

★前の記事で人工流れ星の話を書きました、そして工業高校でのことも少しお話しました。
この工業高校では、理科は化学と物理の2教科を教えていたのですが、教員も相互乗り入れしましょう、という約束が実行されていました。化学教諭の私も物理を教える、物理の先生も化学を教える。で、お互い実験のやり方を教え合ったり、テスト結果の相互検討をしたり。「理科」としてまとまって仕事をしまして、11年か。楽しかったですね。教えることは学ぶこと。それをその通りに実践できました。
さて、化学実験室に何があるか、それはよく知っている。
物理実験室にはどんな実験器具などがあるのだろうと、探検していたら、いろいろ面白いものを発見したのですが。

・回転鏡というものがあった。直方体の4面に10×15cmくらいの鏡が4枚貼ってあり、これをハンドルを回して回転させることができるんですね。化学にそういう器具はない。
・当時、かなり最新の装置だったのですが、ヘリウム・ネオン・レーザーがありました。
・音叉は普通叩くと鳴り、音が減衰していくのですが、電磁音叉といって、ベルの原理で、音叉が振動を持続する装置がありました。

私の頭の中でこの3つが合体しました。
顕微鏡用のカバーグラスを銀鏡反応で鏡にする。その薄い鏡を割って3mm四方くらいの大きさにして、電磁音叉の先端部に貼り付けます。
この電磁音叉につけた鏡に向かってレーザー光線を当てる。その反射光が、回転鏡の鏡で再度反射されて黒板面に映る、という光学系を組み立てます。
回転鏡を静止した状態で、電磁音叉も止めて、レーザー光を当てると黒板面に赤い点が映ります。
電磁音叉を振動させると、音叉の先端部の振動が拡大されて(光テコ)黒板面に縦長の赤い線分が映ります。
「これが単振動だ」と私。生徒、納得。
おもむろに回転鏡を回転させ始めると、縦の単振動が、横に引き伸ばされて、黒板面にきれいな正弦波形が現れる。
「単振動の時間変化は正弦波になる」と私。
「それって、ペン書きオシロの原理じゃん」と生徒。
そう工業高校の電子科では、ブラウン管オシロの原理として、ペン書きオシロを学ぶんですね。実物ももちろんあるし。
ペンに振動を入力し、記録紙を流すと、波形が出るわけです。
さすが、工業高校でなければこういう発言が生徒から出ることはない。楽しいったらありゃしない。

★さて、私が開発したこの実験を、他の先生にも伝えて授業に使ってもらったのですが。
物理の先生で、天文部の顧問をしていた方が、この装置を見てすごいことを思いついた。
流れ星を観測すると「尾」が見えますが、「尾」は実在するのかどうか、この装置の原理で確認できるのではないか、と。

隕石は空気中で圧縮加熱によって蒸発して実際に後ろに尾を引いているのかもしれない。
もし、本当は尾はないけど、肉眼で見ている人間には「残像」という現象がありますから、尾が見えているのかもしれない。

さあ、どっちだ。
板の上にカメラを固定し、この板をモーターで振動させる。振動カメラと名付けました。
この振動カメラを夜空に向けて、振動させながら流れ星を観測する。
もし、流れ星に尾がなく、点であるなら、その光の点の時間展開が波状の幅のない線として写るでしょう。
流れ星が尾を引いているのなら、映像には幅のある帯の波が写るでしょう。

光学機器メーカーに就職した卒業生から、明るいレンズの一眼レフを安く譲ってもらって、装置を作る。
カメラの振動耐久性テストみたいなもんだと、笑っていましたが。

さあ、高尾山へ行って、天文部員と、振動カメラで観測をする。
天体写真を撮るには、カメラを固定するのが当たり前。それが、カメラをガタガタと振動させている。周囲の天文ファンが、あの連中何をバカなことやってんだ?と冷たい視線を浴びたそうです。

結果は?
  尾のある流れ星もあり、尾のない流れ星もある。
というものでした。
これを、読売学生科学賞だったかな、に、応募して最優秀賞だったと思いますが受賞したんですね。
学校内でも話題になったし、理科の研修会でも披露して受けましたっけね。
1970年代の終わりごろか、80年代の早い時期か、記憶は定かではありませんが、楽しかったですよ。

★今回ネットで検索したら、中学生がこの問題に取り組んだレポートがありました。
↓2015年8月に実験・観測したレポートです。
http://www.asj.or.jp/jsession/old/2016haru/yokou2016/79.pdf
流星の尻尾に関する研究
「流星には尻尾が有る物と尻尾が無い物があることが分かった。」

装置の図や、写真が掲載されています。お読みください。
おみごとです。理科教師たちが大騒ぎでやらかした実験を、中学生でやるんだもんな。好奇心こそが原動力。教師も生徒もね。

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