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2020年3月 2日 (月)

ヤマカガシ

朝日新聞に興味深い記事が掲載されました。

ホタルの幼虫を食べて毒を得る蛇 京大など突き止める(朝日新聞デジタル 2020年2月25日 5時00分)

 京都大学などの研究チームが、中国にいる毒蛇ヤマカガシの仲間は、ホタルの幼虫を食べて毒を身につけることを突き止めた。日本にいるヤマカガシは、ヒキガエルを食べて毒を獲得しており、研究者はかけ離れた食性について「驚きだ」と話している。研究成果を25日、米科学アカデミー紀要に発表した。
 ヤマカガシの仲間は、2種類の毒を持つ珍しい毒蛇だ。獲物を捕まえるために牙に持つ毒に加え、天敵から身を守るため、首など体の外側にある器官から出す毒も持つ。
 この防御用の毒は天然の化学物質の一種で、蛇は体内で合成できない。日本のヤマカガシは、毒を持つヒキガエルを食べ、その毒を蓄えることが知られている。
 ・・・
 ただ、中国南西部に生息するイツウロコヤマカガシは全長約60センチメートルで日本のヤマカガシよりも小さく、ミミズなどを食べるため、防御用の毒がどこから来るのか謎だった。
 そこで京大の森哲(あきら)准教授(動物行動学)らは約30匹を捕まえて毒の起源を探った。天然の化学物質から同じものを探したところ、陸生ホタルの一種が持つ毒の成分と一致した。陸生ホタルは幼虫が陸上で暮らし、カタツムリなどを食べる。
 野生のイツウロコヤマカガシの胃の中身を調べたところ、ホタルの幼虫が見つかった。飼育している蛇にホタルの幼虫を与えると食べ、この成分をもたない種類のホタルは食べないことも確認した。
 進化学的な解析では日本のヤマカガシよりもイツウロコヤマカガシが新しい種で、森さんは「ヒキガエルからホタルに大きく食性を変えた背景や仕組みを調べたい」と話している。
 ・・・

イツウロコヤマカガシというヘビはホタルの幼虫が持つ毒を体内に蓄えておいて、自分の防御用にする、というのです。
ここから2つのことが私の頭の中に浮き上がりました。

★まず1番目。
ホタルの幼虫はみな「毒ないし不味物質を持っている」という点です。
このことは2018年にブログ記事にしました。
↓これです。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/post-4f0e.html
2018年3月 8日 (木) ホタルは不味い

幼虫は雌雄コミュニケーションをする必要がない。また、ホタルは幼虫もみな毒あるいは不味物質を持っている。これらのことから、ホタルの幼虫の発光は自分が食べてもマズいことをアピールする警告の役割だと考えられる。したがって、白亜紀に現れた原初のホタルも、幼虫期に光ることで毒を持つことを警告していたに違いない。
・・・
ホタルが地上に出現した白亜紀の地上では、夜行性の原初哺乳類が虫を漁りあるいていた。このときホタルの幼虫は、自分がマズいことをアピールする方法として緑色に光る能力を進化させ、生き残ったにちがいない。・・・

こういう話。
ホタルの幼虫がみな光るのは、夜行性の原初哺乳類に光で「有毒だぞ、食うなよ」とアピールしていた、というのですね。その発光能力を成虫まで持ち越した種類が、生殖に利用するようになったのでしょう。
上のリンク中の引用で、トガリネズミにホタルを与えたら嘔吐し、二度と食べなくなったということが記されています。
「明治の著名な動物学者である渡瀬庄三郎は『余も味わってみたが』ホタルは大変マズかったと本に書いてある。」とのことですし。毒が弱くてよかったですね。

イツウロコヤマカガシは、この有毒分子を持ったホタルの幼虫を食べて、その毒を貯えて利用するというのですが・・・。
自分自身にはその毒は効果がないのか?不審。
想像するに。消化管から吸収した毒性分子に対して
・その毒性分子を化学修飾して(水酸基とかメチル基とか何か、くっつけて)一旦、無毒化し、体内の貯蔵部位へ運んでから元の毒性分子に戻す。
・タンパク質か何かでその毒性分子を抱え込み(包み込み)、貯蔵部位へ運んでから解放する、とか。
そんなことなんでしょう、きっと。

よくやるよ。という感じです。

★2番目は。
「日本のヤマカガシは、毒を持つヒキガエルを食べ、その毒を蓄えることが知られている。」という記述がありますよね。
自分が食べた毒性物質を、自分が利用するのはまあ、そうなんだろう、まあいい、として。
実は、メスのヤマカガシは、その毒性物質を卵を通じて幼生に渡すのだそうです。
ヒキガエルを与えないで飼育したメスの仔は毒をもたないそうです。
何らかの方法で、卵黄を通じて幼生に「毒」を渡すのでしょうが・・・すごいことをしますね。
上に書いた、化学修飾とか、たんぱく質などで包む、といった方法で卵黄に分子サイズで溶かしておいて、幼生の側がそれを毒に戻すのか。
あるいは、細胞膜と同じような膜で小胞をつくりその中に毒を封入して卵黄に入れておき、幼生は時期が来たらそれを取り込む、のか。

何にしても、生物というものは、すごいことをします。ため息が出るほどです。

★ヤマカガシとは違う話ですが、「ベーツ擬態」というのがありまして。
ジャコウアゲハの幼虫の食草はウマノスズクサなのですが、この植物は毒を持つ。で、その毒草を幼虫は食べて、毒を体内に蓄積するのだそうです。(どういう形態で蓄積するかは知りません)。
この幼虫がやがて蛹になり、羽化して成虫になる。その成虫は幼虫時代に蓄えた毒を持ちこしているんですね。
で、ジャコウアゲハの成虫を鳥がついばむと、その毒で中毒して苦しむのです。一度それを経験した鳥は、もうジャコウアゲハを狙わない。
そこで、クロアゲハなどは自分は毒を持っていないけれど、ジャコウアゲハに擬態することによって身を守ろうとするのです。こういうタイプの擬態を「ベーツ擬態」といいます。
「そうなろう」としてなったのではなく、たまたまジャコウアゲハの模様に似た翅を持つものが出現して、生存率が高まって、擬態が成立したのでしょう。そうはいっても、ため息が出るほどの精妙な「進化」ですよね。

↓参考
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%82%AB%E3%82%AC%E3%82%B7
この頸腺の毒は、餌であるニホンヒキガエルの持つ毒(ブフォトキシン)を貯蓄して使用していることが明らかになった[12][13][14]。ヒキガエルが生息しない金華山に生息するヤマカガシはこの頸腺の毒を持たないが、このヤマカガシがヒキガエルを捕食すると、この毒を分泌するようになった[14][15]。

↓私はこの記事でヤマカガシの毒のことを読みました。
http://www.tkd-pbl.com/book/b358757.html
現代化学 
現代化学2018年5月号 No.566

餌の毒を再利用するヘビ
― ヤマカガシの柔軟な防御行動 ―
森 哲

★話がちょっとずれます。
アオミノウミウシというウミウシは、クラゲを食べて、クラゲが持つ「刺胞」を横取りして、自分の武器にします。
これは不可解。ヤマカガシの毒の場合は分子サイズですが、刺胞は細胞です。
刺胞は刺激に対して敏感で、わずかの刺激に対しても反応して、毒針を発射します。
食べたクラゲの刺胞を、消化管から自分の背中まで、どうやって運ぶんだ?
栄養分子の吸収とはちがうでしょ、細胞の大きさのものを腸管壁から取り込むのですか?
刺胞に刺激を与えたら腸内で刺されますよ。
ゼリーのようなものを分泌して刺胞を包んで運ぶのか?
でも、どこから取り込む?

さっぱり訳が分からないのです。

↓参考
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%BA%E8%83%9E
刺胞

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%AA%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%82%A6%E3%83%9F%E3%82%A6%E3%82%B7
アオミノウミウシ
猛毒のクラゲ類の刺胞を体内に取り込んでおり、それを他のミノウミウシ類のように捕食者に対する武器として用いる。毒性は健在なので、その美しさと優雅さに惹かれても、直接手で触れることは危険である。2017年2月14日には、オーストラリア中東部を襲った46℃の記録的熱波の影響からクイーンズランド州沿岸部一帯でアオミノウミウシが大発生し、触れたサーファーや海水浴客63人が毒の被害に遭ったことが報じられている[3]。


★★★★★
まったくの「オマケ」
「ホタルは不味い」の記事の隣に「鼻・マスク」という記事がありましたので、ご紹介します。
私の見解です。COVID-19 に適用できるかどうかは知りません。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/post-e61d.html
2018年2月21日 (水) 鼻・マスク

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