撥水性:サトイモの葉・アオスジアゲハの翅
私は以前「案山子庵雑記」というHPを書いていました。小学生のU君が4年生から6年生まで、私の自宅で100回ちょい、理科遊びをした記録です。今はもう閉鎖しましたけれど、ワードで書いて html文書にしてアップロードしていましたので、ワード文書は手元に残っています。で、その第57回に、サトイモの葉の撥水性の話がありました。
★サトイモの葉
これがサトイモの葉の上の水滴。サトイモは例によって食用として買ってきたものを栽培しました。
下に引用した東京新聞の記事を参考にして
葉を折り曲げて、曲げた部分を顕微鏡で見た写真。微小なキノコみたいなものが並んでいます。
セメダインCという接着剤をご存知かと思います。ニトロセルロースや酢酸ビニル樹脂を有機溶剤に溶かした接着剤。
塗って乾かすと透明な膜になります。そこで、セメダインをサトイモの葉に薄く塗って、乾燥させてから剥がすと表面のレプリカが取れます。そうやって、顕微鏡で検鏡したのが下の写真です。
表面の凹凸が見えます。
拡大するとこんな風。
こういう微細な凹凸があるので、ハスの葉と同様に、強い撥水性を持つのですね。
★これは第100回の記録から。
アオスジアゲハの翅が落ちていたので、拾っておいて、U君が来た時に、撥水性を見てもらいました。
鱗粉はもともと疎水性の成分でできているはずですが、その鱗粉が瓦のように重なることで、微細な凹凸が生まれて強い撥水性を発揮するのです。
このように翅は濡れにくいですし、体には微細な毛が生えていますので、チョウは体全体が濡れにくい。
雨の日は、もちろん上に葉が重なった場所で雨宿りするのでしょうが、体がびしょびしょになってしまうことはほとんどないのです。
[参考]
やってみようガリレオ工房 水がコロコロ、ハスの不思議(東京新聞2006.8.8 から)
ハスの葉に水をたらすと、水は玉になってよくころがりますね。なぜ、よく水をはじくのでしょうか。■水をはじくしくみ
ハスの葉の表面を顕微鏡で観察します。葉を切手ぐらいの大きさに切り、葉の表を外側に二つに折ります。スライドガラスの上にセロハンテープで図のように留め、折れ目のところを観察します。反射鏡で視野を十分明るくしてから、五十倍ほどの低倍率で観察しましょう。折れ目が視野の中央に来るようにスライドガラスの位置を調節すると、葉の部分が真っ黒に影絵のように見えてきます。明るい部分と葉の黒い部分の境界に、小さなぶつぶつがわずかに見えると思います。
倍率を三百倍ほどにすると、低倍率のときに見えたぶつぶつが写真のような突起であることがわかります。
この突起が、ハスが水をはじくしくみです。たくさんの凹凸の上に乗った水と葉の表面の間に空気の層ができて、水が玉のようになってころがり、水をはじくと考えられています。自然がつくる超撥水(はっすい)性のしくみです。■葉の構造の利用
こんな構造を利用して、強い撥水性を持った繊維も開発されています。普通の撥水処理は、表面に水をはじく物質を塗ったりしますが、ハスの葉は表面の構造によって水をはじきます。自然のしくみはすごいですね。凹凸の構造が何に応用できるかを考えてみませんか。 (科学写真家 伊知地国夫)
★とんでもなく別の話。
人間は「裸のサル」といって、体毛があまりありませんけど、それでも、腕や脚には短い細い毛が生えてはいます。
腕を見てください。
肘から手首まで、毛はどういう向きになっていますか?多分、手首から肘へ向かう流れになっているはず。
肘から肩まではどうですか?多分、肩から肘へ向かう流れ。
おや、毛の流れの向きが違いますね。
まだ他の霊長類と分岐する前の私たちの祖先はきっと毛深かった。
雨の日、雨宿りはするものの、体に雨がかかってきたとき。肘を曲げて体につけて、体を丸くして耐えたのでしょう。
そうすると、手首から肘へ、肩から肘への毛の流れに沿って、雨水が流れやすく体が濡れにくい。
毛は薄くなりましたが、その頃の痕跡を私たちは体に持っているのだろう、と聞いたことがあります。
霊長類のほかの仲間もそういう毛の流れを持っています。私たちってサルなんだなぁ。
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