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2019年8月19日 (月)

Fluctuat nec mergitur

★タイトルの意味は後程説明するとして。
↓下の記事で、「安定・不安定」について触れました。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2019/08/post-31cfdc.html
2019年8月 5日 (月) 7月の気温など(東京)
・・・
地表から上空まで通常の気温分布であって、乾燥した空気が上昇したのなら、上昇で膨張した空気は温度が下がり、やがて周囲との温度差がなくなって、上昇が止まる。こういう状態を「安定」といいます。外部からの擾乱に対して揺り戻しがきくのが「安定」。ところが、暑く湿った空気が膨張して冷えると水蒸気が液化します。液化の時に熱を出すし、周囲が寒気で冷たいとなれば、上昇が止まらなくなります。このように、一旦動き始めたら止まれなくなる、というのを「不安定」というのです。
・・・

安定というと「ただどっしりとして動かないこと」のように考えがちですが、外部からの擾乱に対して揺り戻しがきくのが「安定」という感覚もぜひ養ってほしいのです。

↓参考
https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2012/2012_02_0135.pdf
安定と不安定  廣田勇

・・・
「安定・不安定」とは,「あるシステムに外部から何らかの力が加えられたとき,それを現状に引き戻すことが出来るか否か」という見方捉え方のことです.日常的な社会用語では,かなり漠然とした(定量的でない)判断基準でこの言葉が使われますが,これを自然法則に基づいて厳密に定義するのが科学用語の安定・不安定(stability,instability)という概念です.夏目漱石の『吾輩は猫である』に,寺田寅彦をモデルにした水島寒月という理学士が登場し,主人公の苦沙弥先生からいま何を研究しているかと訊かれて,「団栗のスタビリチーを論じて併せて天体の運行に及ぶ」という論文を書いた云々の返事をする場面が出てきます.漱石は寅彦を通して物理学の素養を深めていたようで,力学的安定という概念のみならず,ラプラスが『天体力学』のなかで太陽系惑星の軌道運動が摂動に対して安定であることを証明したことも知っていたに違いありません.物理学の立場から安定性の概念が使われている点では気象学もその例に漏れません.本文の冒頭に述べた「大気が不安定」というのは,実は日常語ではなく,厳密な気象学用語なのです.
・・・

{引用文中にあるように、太陽系は安定かどうか、議論があったのです。神が時々手入れをしないと太陽系は崩壊するのではないか、という考えもあったのです。ここではこれ以上立ち入りませんが。}

★気象の話やらなにやらごちゃまぜですが、どうかお付き合いください。

朝日新聞の連載コラム「折々のことば」を引用します。

折々のことば:1475 鷲田清一(2019年5月28日05時00分)
 Fluctuat nec mergitur
 (パリ市の紋章から)
     ◇
 ラテン語で「揺れども沈まず」という意味。国家や都市はしばしば船に喩(たと)えられるが、パリも古くからその紋章に帆掛け船をあしらい、この句をモットーとして掲げてきた。アンヌ・イダルゴ市長も先のノートルダム大聖堂の火災時に、パリ市民に、何としてもみなでこの「痛み」から立ち直ろうとツイッターで呼びかけ、この句を引いた。ちなみに、彼女はスペイン出身で、パリで初めての女性市長。

これが今回の記事のタイトルなのです。
「たゆたえども沈まず」ともいうのかな。

ラテン語なのですが、ヨーロッパの言語というのは、ギリシャ語やラテン語を共通の語根として持つことが多い。
英語で、対応する言葉を探してみましょう。

fluctuate
►vt, vi 波動する;動揺する[させる];〈相場・熱など〉変動する,上下する〈with〉
・fluctuate between hopes and fears 一喜一憂する.
[L (fluctus a wave〈fluct- fluo to flow)]
リーダーズ英和辞典第3版より引用

submerge
►vt 水中に入れる,沈める〈in, under〉;水没[浸水,冠水]させる;〈感情などを〉おおい隠す.
►vi 沈降[潜没]する,〈潜水艦などが〉水中に沈む,潜水[潜航]する (opp. emerge).
リーダーズ英和辞典第3版より引用

{sub は「下へ」ですね。subway, submarine などでわかります}
これだけ並べたてると「揺れるけれども沈まない」という意味が見えてくるでしょ。

★おもちゃで
0815_2balance
これ竹細工のトンボ。とんがった口が、直径2mmあるかなしかの小さなくぼみに入っていて、そこを支点にして揺れ動く一種の「やじろべえ」です。そばを人が通ると揺れるくらい敏感ですが、そうそう落っこちるものじゃない。
「揺れるけれども落っこちない」のです。
重心が支点より下にあると傾いても復元できるんですね。
0816_2yajirobee これも「やじろべえ」の一種。馬に乗った人の爪先が支点です。馬の脚先の重りが重心を支点より低くしています。

★船の場合でいうと。
船全体の「重心」と、船の水中部分に働く浮力の中心「浮心」との位置関係で復元力が働きます。
ヨットなんか重いキールというのををつけて重心を下げてますね、ですから波に引っくり返されても復元できるのです。
「揺れても沈まない」という「復元力」を英語では stability といいます。日本語の感覚では「スタビリティ」というと「安定性」という感じがしますけど、同じ語なのです。

スタビリティー【stability】
①安定(性)。すわり。
②船などの復原力。
広辞苑第六版より引用

↓参考サイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%A9%E5%8E%9F%E6%80%A7
復原性

http://www.meiwakaiun.com/meiwaplus/tips/tips-vol02/
復原力(STABILITY)ってなんだろう?

やじろべえ【弥次郎兵衛】‥ヱ
(振分け荷物を肩にした弥次郎兵衛の人形を用いたからいう)玩具の一つ。短い立棒に湾曲した細長い横棒を付け、その両端に重しを取り付けたもの。指先などで立棒を支えると、釣合をとって倒れない。与次郎人形。釣合人形。正直正兵衛。
広辞苑第六版より引用

★オマケ:Cg とかCbとかいう記号が出てきたら
重心:center of gravity
浮心:center of buoyancy
に由来します。

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