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2019年6月21日 (金)

屈折率と反射率

0504_26_0655_1 2019.5.4
コップに氷が入っていて、何か黒いものがあるのは分かるけど読めない。
0504_26_0655_2
水を注ぐと。数字が見えてきました。
0504_26_0655_4
「0655」という文字が入っていたのですね。
NHK・Eテレ朝6時55分の0655という番組です。

どうして、こうなったのでしょう?

・初めは。
 屈折率1.00の空気中に屈折率1.31の氷があった。屈折率の差が大きいのです。
・水を注ぎました。
 水の屈折率は1.33。氷と水の屈折率はかなり近い。

●かき氷を思い浮かべてください。
無色透明な氷をかき氷機で細かくすると、真っ白な雪のような氷片になりますよね。
色を付けないままに放置するか、甘いシロップだけをかけたらどうなりますか?
完全に透明とは言いませんが、白っぽさが消えて透明感が出てきます。
この出来事と、ほぼ同じことが、上の写真で示されているのです。

●ちょっと一般化しまして
Reflectance0
この図のように、媒質1と媒質2の界面に光線が垂直に入射する時の反射率Rは、比較的簡単に計算できます。
Reflectance1
こんな式。

空気 n1 = 1.00
氷  n2 = 1.31
とすると n12=1.31 となるので
R=0.02 となります。反射率2%といってもいいですね。

水 n1 = 1.33
氷 n2 = 1.31
とすると n12=0.98 となるので
R=0.0001 となります。
反射率0.01%です。

空気から氷へ光が垂直入射する時は、2%の反射率、つまり透過率は98%。それでも何度も入射を繰り返せば透過してくる光はかなり減ります。
ところが、水から氷への垂直入射では、透過率が99.99%ですから、透過してくる光の量は圧倒的に多い。

「0655」という文字の前が、氷で覆われている場合、透過してくる光が少なくて読めない。
ところが水を入れると、透過してくる光が増えて、読めるようになる、ということなのです。

ここでの話は「垂直入射」で進めました。界面に対して斜めに入射すると、計算はできますがややこしいことになります。
無色透明な物質であっても、より細かくすると、複数回の屈折で曲げられて通過してくる光は減るし、入射する光は透過率が減って反射率が上がり、向こう側は見えにくくなります。

★一般的に、2種の媒質が接するとき、屈折率の差が大きいと反射率が上がります。
たとえば、ダイヤモンドの屈折率は2.42ですので、空気中のダイヤモンド表面での反射率は0.17⇒17%になります。
大分昔、国立科学博物館でダイヤモンド展があった時に見学に行ったら、合成ダイヤモンドの薄片と、ガラスの薄片が並べてあったのですね。ガラスとダイヤモンドの反射率の違いは、一目でわかるものでした。ガラスに比べればダイヤモンドは鏡のように見えました。で、妻にそんな解説をしたのですが、他の見学者は全く気づかない様子で通り過ぎていきました。

ところで、二酸化チタン(TiO2)の結晶で、ルチル(金紅石)というのがあります。このルチルの屈折率はなんと2.62なんです。ダイヤモンドよりも大きな値なのです。ですから、ルチルの面での反射率は20%にもなるのです。

★一般的に、無色透明な個体を粉末にすると「白色粉末」になります。
氷砂糖はほぼ無色透明。小さな結晶の白砂糖は白。粉砂糖も白。(決して「漂白」したのではありません。妙なアジテーターが白砂糖は漂白してあるからいけない、などと騒ぎましたが、あれは嘘なんです。)

私のやった生徒実験:ガラスは無色透明ですが、割ってガラス粉末にすると白い粉になります。これを試験管に入れて水を注ぐと、ほぼ透明になってしまいます。生徒はかなり驚く。

白色粉末を構成している物質が、屈折率がほぼ同じ液体の中に入ると透明になってしまいます。粉の表面からの反射が減るのです。

油絵具でジンクホワイトという酸化亜鉛の白色顔料を使った絵具がありますが、酸化亜鉛の屈折率は2.00なので、油で練ると、白さが失われやすい。
ところが、前述の二酸化チタンなら、油で練っても白さが失われない。ですからチタニウムホワイトという油絵具は優秀なのです。
こういう「下地を覆い隠す力」を「隠蔽力」といいますが、現在、白色顔料で最大の隠蔽力を持つのは二酸化チタンです。
その利用形態の一つが、白いポリ袋です(レジ袋やごみ袋)。ポリエチレンの屈折率は1.53ですが二酸化チタンの屈折力の大きさで、ポリエチレンに練り込んでも隠蔽力が保たれるのですね。買い物の内容や、ゴミの内容が外からわかりにくくプライバシーが保護されるので利用されるわけです。

もう一つ利用例を。
下地を覆い隠す隠蔽力の強さは化粧品にも利用されるのですね。ファウンデーションなんかは「下地を覆い隠し」たいんですよね。その上に「化粧」という絵を描くわけです。
「令和」という言葉の解説で「白粉」がでまして、私は当時の白粉は鉛白じゃないのか、有毒で危険だ、ということを書きましたっけ。現在の白粉は二酸化チタンが主流。化学的に安定ですから、鉛白よりずっといい。
こんなところに「屈折率」が登場するのですね。物理学は楽しい。
白粉や口紅などを使う時はそんなことも思い出してください。

★思いつき:ダイヤモンドを粉末にして化粧品に使ったら、二酸化チタンと同じく大きな隠蔽力を発揮するはず。
「ダイヤモンドのファウンデーション」とか「ダイヤモンドの口紅」なんて作ったら受けるんじゃないか。値段が高くて、それがまた付加価値だったりしてね。

★オマケ:水鏡の話
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-faf9.html
2013年2月18日 (月) 鏡の話:13 「水鏡」

http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-a5d9.html
2013年2月19日 (火) 「逆さ富士」番外編

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