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2019年1月25日 (金)

日は西から昇るか

面白い記事があったんです。

「西から昇ったおひさま」見えるのだ 中3の計算が表彰(朝日新聞デジタル 2019年1月20日08時59分)
 「西から昇ったおひさま」が見たい!! 青森県弘前市の弘前大学教育学部付属中学校3年の工藤君がそんな研究テーマに取り組み、一般財団法人理数教育研究所(事務局・大阪市)が主催する「算数・数学の自由研究作品コンクール」中学校の部の最優秀賞に輝いた。常識を覆す発想は、ある人気アニメの主題歌がヒントになった。
 ・・・
 まず三平方の定理を使った計算で、高い所ほど地平線までの距離が長くなることを証明。西の地平線に太陽が沈んだ直後に素早く高所に行けば再び太陽が地平線から顔を出すと考え、50秒で地上350メートルの展望台に到達する東京スカイツリーのエレベーターで実現性を検討した。
 計算では地球を半径6400キロメートルの完全な球体、スカイツリーの位置を北緯36度などと仮定。地上で日没を見た瞬間にエレベーターに乗ると、50秒後に何メートルまで上がれば太陽が再び見えるかを三角比や理科の知識も駆使して計算した結果、「35メートル」という解を得た。
 ・・・

この発想が素晴らしいですよね。
1224_16kumo1626 2018.12.24
この写真は日没寸前の写真ですが、話のイメージづくりとして掲載します。
雲の低い部分は暗く、高いところは明るく光っています。
日没直後と考えてみてください。暗い部分からは太陽が見えなくなっているのに、何とかして雲の高いところへ登れたらまだ太陽が見えるはずですね。(孫悟空に頼みますか)
そうすると、高いところへ登る途中、西の空から太陽が昇るように見えるはずだ、というのが工藤君の発想。
おみごと。
私は実は日の出を見たことがない。
私の母の実家は秋田県で日本海に面したところ。ですから海への日の入りは数えきれないほど見ています。
浜辺に座って日の入りを見る。沈む寸前、太陽と自分の間に一直線の光の道ができる、そういうのが大好き。
浜で日の入りを見て、後ろを振り返ると白神山地が迫っていて、山のてっぺんは赤く輝いている。
あそこに登ったらまだお日様が見えるんだよな、とは思っていました。でもそれを計算してみようとは思わなかった。
Horizon
これは以前の記事で使った図。
浜辺で2mの高さから見る水平線は約5km先。
450mの高さから見る水平線は約76km先。
という計算を書き込んであります。
ですから、浜辺で日没を見た直後に450mまで登れれば水平線は76km先ですからその水平線に沈む前の太陽が見えるはずですね。

工藤君の計算によると、楽勝で「西から昇るお日様」が見られるようです。
{実は地球には大気がありますので、屈折によって水平線より下の部分も少し見えているんですが、今回のような場合は無視しましょう。}

三平方の定理(ピタゴラスの定理)を使い、三角比も使って計算しています。三角比を知らなければ「東京での議論」もできない。三角比を知っているということが、思考の道具になっているのですね。三角比、三角関数が「無駄だ」などとは言えません。思考の道具なのです。

★ところで、このブログ読者の方の中には、何となく記憶を刺激されるような感覚の方はおられませんか?
そう、実は「星の王子さま」ですね。
https://nakabiblio.exblog.jp/5678910/
ANTOINE DE SAINT-EXUPÉRY
Le Petit Prince
星の王子さま

サン=テグジュペリ作

実際のところ、誰でも知っていることだけれど、アメリカが正午のときにフランスでは夕日が沈むんだよ。1分でフランスに行くことができれば、日没を見物することができる。残念なことに、フランスはとても遠すぎるんだ。でも、君の小さな惑星でなら、椅子を何歩分か移動させるだけで十分なんじゃないかな。だから君は望むがままに何度でも黄昏を眺めていられたんだね...
「いつだったか、僕は夕日が沈むのを44回も見たんだよ!」

ずっと夕日の沈むところを見続けられる、という一節がありましたね。
世代的なものもありましょう、私共の世代には「星の王子さま」は衝撃的でしたっけ。

★下のリンク↓
http://www.rimse.or.jp/research/winner6th.html

2018年度 受賞作品
 塩野直道記念 第6回「算数・数学の自由研究」作品コンクールには,小学生,中学生,高校生のみなさんから合わせて16,485件の作品が届きました。海外からも31件の応募をいただきました。
作品は各地域で選考後,中央審査委員会で最終審査を行い,以下のように受賞者が決定しました。

このリンク先から、工藤君の作品へのリンクがあります↓そこから部分引用します。
http://www.rimse.or.jp/research/pdf/work03.pdf

西から昇る太陽を見る方法
[1]飛行機や旅客機に乗り、地球の時点と逆の方向に進んでいく。⇒太陽は地球の自転によって東から西に動くように見える。つまり、自転と逆の方向に自転の速度よりも速い速度で進めば、一度沈んだ太陽を再び昇らせることができる。
[2]太陽が沈んだ後に、エレベーターなどを使って高いところに行く。⇒これは水平線までの距離と関係している。・・・

この[2]が今回の作品ですが、[1]も興味深いものです。
一体どのくらいのスピードで進んだらよいのでしょう?
地球の半径を6400kmとします。自転周期を24時間ちょうどとします。
すると
(2×π×6400km)/24h≒1675km/h≒465m/s
赤道のところでの自転速度は音速を超えてます。
東京の緯度を北緯36度として、東京の緯度での自転半径は
6400km×cos(36)≒5180km
これで自転速度を求めますと
約380m/sくらいかな。やはり音速を超えていますね。
サン=テグジュペリは飛行機の操縦士でしたが彼の時代の飛行機では実現不可能なのでした。

★話をふくらませて
・地球が太陽の周りを公転する速度は、約30km/s
・天の川銀河の直径が約10万光年、太陽系は銀河中心から2.8±0.3万光年離れていて、銀河内での太陽系の回転速度は約220±20km/sと考えられています。(理科年表2019から)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8A%80%E6%B2%B3%E5%B9%B4

 銀河年(ぎんがねん、galactic year)は太陽が「銀河系」の中心のまわりを1周するのにかかる時間の推定値で、約2億2500万年から2億5000万年と推定されている。
 太陽系の誕生以来の時間は18銀河年から22銀河年と見積もられている。ただしこれは近年の太陽の運動の観測値から求められる値である。過去何億年にわたって、太陽が一定の速度で運動してきた保証はないので、現在の1銀河年ごとに銀河系を1周してきたとは必ずしもいえない。
 地質学などの長い時間スケールを表すのに便利な単位である。

その銀河が集団をつくって(重力によって)、銀河群を形成したり、さらに銀河団をつくったり。
さらに超銀河団を形成し、その超銀河団がフィラメント上に連なりその間には超空洞(ボイド)があって、宇宙の大規模構造を形成しているのです。
スケールがでかいんですよ、宇宙の話は。

★ちょっと戻りますが
地球の自転速度のときに
6400km×cos(36)≒5180km
こんな計算をしました。東京での自転速度を求めるために。
赤道は緯度0度ですから、cosは1。
極点では緯度90度ですのでcosが0。つまり自転速度がない。(あたりまえですが)
赤道に近いほど自転速度は速いのです。
人工衛星を打ち上げる時の打ち上げ基地はどこの国でもなるべく赤道近くに建設します。
よく「南の方が遠心力が大きいから」という説明を聞きますが、「遠心力」というのは便利ですがなるべく使わない方がいい。座標系などをきちんと明らかにしていればいいけれど、それがないと何となく単なる感覚的な納得になってしまいます。

http://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/303.html

また、赤道付近が有利になるもう一つの理由として、地球の自転エネルギー(速度)を最大限利用できるという点が挙げられます。
地球は西から東に自転しており、一番速度が速い赤道上では秒速約464m、種子島付近でも秒速約400mもの速度で動いているため、ロケットを東向きに打ち上げる場合、この運動エネルギーをロケットのスピードに加算できるのです。

JAXAは「遠心力」を使っていませんでした。

↓このリンク先、私の過去記事ですが、是非お読みください。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2016/01/post-0449.html
2016年1月 6日 (水) 水平線

http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-cad7.html
2017年1月30日 (月) 水平線までの距離

http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-d71c.html
2017年1月30日 (月) 富士山:2

↓調べていて、日食の時の話題をたくさん書いたのが見つかりました。この記事から次々と先へたどると、かなり面白いと思いますよ。よろしかったらどうぞ。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-1afc.html
2009年7月23日 (木) 日食時の那覇の気温

★長くなりました。最後に極私的な思い出をひとつ。小学校に入学した時。団塊の世代は人数が多くてね、普通教室に入りきれなくて、私のクラスは理科室が教室でした。で、担任の女性の先生が、年度途中で産休に入られた。家庭科が専門の先生が産休代替でこられた。
何の授業だったのか「月は西から昇る」とおっしゃった。私、月が東から昇ることを知っていたものですから、悩んでしまって、先生が間違う、なんてことがありうるのだろうか、もう悶々としてしまいまして。母親に相談したら、勘違いなさったのだろう、担任の先生の産休明けの時に伝えておくよ、と。で、まあ、そういうことで、あとでやわらかな訂正をしていただきましたっけね。

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