火星の逆行
1月末の皆既月食の日に、天文関係の特集がありまして
3年ぶり皆既月食、どう見る? 7月は火星が大接近(朝日新聞デジタル 2018年1月31日14時40分)
約3年ぶりの皆既月食や15年ぶりの火星の大接近など、今年は注目の天文イベントが目白押しだ。好条件の流星群が多いほか、探査機「はやぶさ2」も小惑星「リュウグウ」に到着する予定だ。
・・・
で、皆既月食で騒いだわけです。で、多分多くの方が見逃したのではないかと思うのですが・・・
火星の大接近の解説の図なんです。それはそのまま火星の逆行の図でもありました。
ほらね。
火星が西側から順行で進んできて、逆行に入り、また順な方向の西の方へ進んでいく。
これ、中学校理科の第2分野で習いませんでしたか?
手元にあった昔の中学校理科の学参からです。
この図では4から5のあたりで接近になっていますね。
↓ところで、これ何の図でしょう?
ガリレオが描いた図です。
40年以上昔に買った本の挿図なのです。ガリレオの原本にある図を描き直したものです。
「天文対話 下」ガリレオ・ガリレイ著、青木靖三 訳、岩波書店
昭和36年4月5日 第一刷発行
昭和47年1月20日 第六刷発行
購入:73.03.17
こういう歴史的な視野を意識しながら、今年の火星大接近を見たらまた素敵な経験ができるかもしれませんね。
★ガリレオの「天文対話」という本は「対話」となっていますが、実は2人の対話ではなく3人の対話、ある種の「鼎談」なんです。コペルニクス説を代表する人物「サルヴィアチ」、プトレマイオス説を代表する「シンプリチオ」、専門的学者ではなく良識ある市民「サグレド」という3人です。日本の「討論」は「言い合い」みたいなものですが、認識を深める「対話」という形式は古くから根づいているのですね。
★古代の天文観測の精度についても思いを致してください。
逆行というと、短期間に惑星が行ったり来たりするような気がすると思うのですが、実は何カ月もかけて継続的に観測して分かる現象なのです。昔の人はそれを「肉眼で」実行していた。ですから単純な天動説では逆行が説明できなくて、周転円の導入などをしたわけですね。
毎晩毎晩観測を続けて、図の中に星の位置を書き込んで記録したのでしょう。
昔の技術は低かった、現代は高度な技術があるなんて思いあがらない方がいい。
天動説だって、精密な天体観測の上に成り立っていたのです。
現代は優れた時代だ、などといえるかな?私にはそんな観測能力はありません。
現代人は何でもわかっているつもりになっていますけれど、こういう地道な努力を忘れている気もします。
可能なら、今から観測を初めて、8月くらいまで続けて、自分で「逆行」を観測してみませんか?
★惑星といいますが、惑星は何を「惑って」いるんでしょう?「惑う星」ってナンダ?
実は、天球上で配置が変化しない「恒なる星」の間を「惑い歩く星」なのです。「遊星」という訳語もありましたね。
planet
{名詞}天文 惑星,遊星.
パーソナル英和辞典より引用planet
►n
1 〔天〕 惑星
2 先覚者,《知的》指導者;《先駆となる》りっぱ[偉大]なもの.
[OF,<Gk=wanderer]
リーダーズ英和辞典第3版より引用πλανητης(プラネーテース):さすらう者、彷浪する者
[地]Planet 遊星、惑星
科学用語 語源辞典 独-日-英 ギリシャ語編、大槻真一郎 編著、同学社 昭和50年5月1日 初版発行 より引用
★本の紹介
「曲線の秘密 自然に潜む数学の真理」松下泰雄 ブルーバックス B-1961 2016年3月20日{注: 「巻」の「己」が「氺」になった「やす」 です。}
極端に難しい数学ではないのですが、内容をきちんと理解するには、かなりの粘り強さが必要な本です。
でも、とっても楽しい読書体験ができると思います。
この中にコペルニクスやガリレオの話があり、ガリレオの天文対話の原図が転載されています。
コペルニクスの「天体の回転について」から地動説の宇宙像の図も転載されていて、ここでは衛星を伴うのは地球だけになっています。
そしてガリレオの「天文対話」中のコペルニクスの宇宙像の挿図も転載されていて、ここでは、木星に4つの衛星が描き込まれています。ガリレオが自分で発見した衛星ですね。
★おまけ
衛星 satellite
語源は、ラテン語の「satelles」で、意味は「attendant, follower」
のようです。手元のラテン語-英語辞書で調べてみました。
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