« 龍 | トップページ | オウバイ »

2018年3月 8日 (木)

ホタルは不味い

http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2018/02/post-e61d.html
2018年2月21日 (水) 鼻・マスク
↑ここで
「続ざんねんないきもの事典」から「サイガは空気をあたためるため鼻がでかくなった」という話を引用しました。
正編の「ざんねんないきもの事典」も面白かったですよ。今泉さんの監修ですからデタラメではないと信頼できますし。既知のことも多かったけど「へぇ、そうなんだ」というのも多かった。
その中で、二つの読書が絡みまして面白かったのでご紹介します。

★まずは
「ざんねんないきもの事典」今泉忠明監修、高橋書店、2017年10月20日発行

p.29
ほとんどのホタルは光らない
 ホタルといえば、夜の水辺で美しく光っているイメージがあります。この光は、暗闇の中で交尾する相手を見つけるためのプロポーズの合図といわれています。
 でも、日本に50種ほどいるホタルのうち、よく光る種は10種ほど。ほとんどのホタルは幼虫のときだけ光り、おとなになると光らなくなります
(後略)

ホタルの発光は成虫の雌雄の求愛行動として普通理解されていますよね。
卵や幼虫も光るけれど、ある意味それは余分なこと、と考えています。成虫の繁殖に必要な能力を幼虫のときにも持ってしまっている、と。
ところがですね、上の引用文にあるように「ほとんどのホタルは幼虫のときだけ光り」「おとなになると光らなく」なるのだそうです。
意外でしょ。

★これを読んで、もう一つの読書を思い出した。blogに使えないかと温めていたネタではあるんですが。
「恐竜はホタルを見たか 発生物が照らす進化の謎」大場裕一 著、岩波科学ライブラリー249、2016年5月27日 第1刷発行
題名がいいですよね。ティラノサウルスは蛍の光を見たでしょうか?

この本によりますと、ホタルの「幼虫はどの種も必ず光る」そうです。ホタルが光ることの本来の意味は幼虫時代にあるらしい。
↓では引用をお読みください。

p.63
   ティラノサウルスは緑色に光るホタルを見たか
 ・・・ホタル科の起源は白亜紀(1億4500万年~6600万年)くらいだろうと推定された。まさに恐竜が地上を支配した最後の時代である。
 ・・・
だから、ティラノサウルスをはじめとする白亜紀の恐竜たちは、初期のホタルの光を見ていたに違いない。巨大恐竜が眠る夜の森をホタルが光りながらのそのそ歩いているさまを想像すると、なんだか楽しくなってくる。
 しかし、実際ホタルの祖先ともっぱら顔を合わせていたのは、むしろ恐竜の陰に隠れてこそこそと夜行生活を行っていたわたしたちの先祖である初期の哺乳類(原初の有胎盤類)であったかもしれない。
 では、初期のホタルはいったいどんな姿だったのだろう。ホタルは成虫になると光らない種もあるが、幼虫はどの種も必ず光る。そのため、幼虫期にだけ発光するのがホタル科の祖先状態だったと考えられている。先ほど「光りながらのそのそ歩いている」と書いたのは、そういうわけだ。
 もちろん、幼虫は雌雄コミュニケーションをする必要がない。また、ホタルは幼虫もみな毒あるいは不味物質を持っている。これらのことから、ホタルの幼虫の発光は自分が食べてもマズいことをアピールする警告の役割だと考えられる。したがって、白亜紀に現れた原初のホタルも、幼虫期に光ることで毒を持つことを警告していたに違いない。
 ・・・

   

ホタルがマズいのはわたしたちの祖先のせい
 白亜紀の哺乳類は、現生のトガリネズミのような生きものだたといわれている。つまり夜行性で昆虫食だった可能性が高い。・・・
 これらを総合したわたしの推理はこうだ。ホタルが地上に出現した白亜紀の地上では、夜行性の原初哺乳類が虫を漁りあるいていた。このときホタルの幼虫は、自分がマズいことをアピールする方法として緑色に光る能力を進化させ、生き残ったにちがいない。・・・
 ・・・
 ちなみに、わたしの知り合いが試しにトガリネズミにゲンジボタルを一匹与えてみたところ、食べた直後から何度も嘔吐してそれから二度とホタルを食べようとはしなかったそうである。よほどマズかったようだ。また、明治の著名な動物学者である渡瀬庄三郎は「余も味わってみたが」ホタルは大変マズかったと本に書いてある。わたしは味わって見たことはないが、ホタルは人間が食べてもかなりマズいのだ。
 生物の味覚は進化の産物であり、なにが旨くてなにがマズく感じるのかはその生きものが歩んできた進化の道筋による。そして、苦味とは、基本的に食べられないものを忌避するための感覚である。だから、現在のわたしたち人間がホタルをマズく感じるのは、もしかするとホタルの光がもともと哺乳類に対する警告であったことを今に物語るはるか昔の名残なのかもしれない。
(後略)

マイッタナ。
「ホタルの幼虫の発光は自分が食べてもマズいことをアピールする警告の役割だと考えられる」
「夜行性の原初哺乳類が虫を漁りあるいていた。このときホタルの幼虫は、自分がマズいことをアピールする方法として緑色に光る能力を進化させ、生き残ったにちがいない」

警戒色というのは比較的よく知られていると思います。周囲に紛れて身を守る保護色の反対で、周囲に比べて敢えて目立つような色や模様をもつことですね。毒がある、不快な匂いを出す、食べると不味い、などをアピールするわけです。一度こういうのを食べた動物は学習して、もう食べなくなる、という戦略です。
昼間活動する昆虫あるいは幼虫は色や模様が使えますが、夜行性のホタル幼虫が夜行性の原初哺乳類に「自分は不味いぞ!」とアピールするには「光る」というのがよかったのですね。
発光能力を獲得した幼虫は成虫になり繁殖できるようになった。幼虫時代に持っていた発光能力を成虫になってからの雌雄の生殖コミュニケーションに再利用した、というのが、夏の夕べに私たちを楽しませる「光るホタル」なのでしょう。

それにしても、研究者というのもすごいですね。ホタルを食べた人がいるとは。
昆虫食が注目されている現在ですが、ホタルは食べない方がいいようですよ。(ホタルなんか食わねぇよ。といわれそうだ。)
白亜紀の頃から、ヒトとホタルは闘ってきたのですから。
(甘い味のするホタル、という品種改良は、まあ、ムリでしょうし)

« 龍 | トップページ | オウバイ »

動物」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

2024年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
無料ブログはココログ