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2018年2月20日 (火)

チタンのフライパン

0119_1titan1 2018.1.19
 これ、チタン製のフライパンです。刻印してありますね。
以前、蒲田に道具屋さんがありまして、面白いので時々覗いていたのです。
私、元化学教師ですから、面白い素材があると、つい「あ、これは教材になる」と思ってしまう。そんな「教師眼」がいまだに抜けないんです。
 チタンというのは非常に面白い素材で、現役時代ずいぶん教材として活用した金属です。
フライパンを手に取って見ていたら、店の人に、軽いでしょ、錆びないし、一生もんですよ、といわれて心が動き、買ってきたものです。ま、それなりに値は張りましたが。(もう現役じゃなかったのにね。)

 さて、このフライパン、未使用の時は銀灰色の金属だったのですが、使っているうちに、冒頭の写真のように虹色の部分ができてきました。炎が強く当たる部分です。
近づくと
0119_1titan2
きれいでしょ。虹色、ですね。
こういう色を見たら、光の干渉による「構造色」と思ってください。
シャボン玉は薄い膜。表面と裏面での反射光が「干渉」して、膜の厚みに応じた特定の色が残って見える。
膜の厚みの変化が、色の変化として見えるわけです。
このフライパンの場合、金属のチタンの表面が高温に焼かれて酸化し、薄い酸化膜が生じたのです。
その酸化膜の厚みの違いが、色の違いとして現れているのです。{現役だったら、このフライパンを持って授業やってたかも}
 同じような現象は、銅の板の新鮮な表面を焼くときにも見られます。
銅板の表面に、虹色のゾーンが動いていくのはなかなか美しいものです。
酸化銅の膜というと光を通さないような気がしますが、酸化銅(Ⅰ)の薄膜はこういう構造色を見せてくれます。

★さて、チタンですが。
密度で見ると
Al  2.7
Ti  4.5
Fe  7.9
Cu  9.0

アルミニウムには及びませんが、密度の小さな金属です。
フライパンとしての重さはどうなのか、とキッチンスケールにのせてみたら。

T-falのフッ素樹脂コーティングのフライパン:700g
Titanのフライパン:550g
(どちらも直径約27cmです。チタンのフライパンはかなり深いです。)

柄を持ったときに、かなり軽い、という感じがします。
フッ素樹脂コーティングを施してありませんので、焦げることもありますが、チタンはとても硬い金属なので、ステンレスの切子タワシでこすり落としても大丈夫。洗いやすくっていいですね。
調理用具としては優れモノです。

ただ、チタンは精錬がやっかいで塩化チタンを金属のマグネシウムで還元する、という方法。
当然、高くつきます。
融点で見ると
Al 660
Ti 1668
Fe 1538
Cu 1085

融点が高いのです。精錬・加工がやりにくい。
で、以前は、値段のことをあまり考えない軍事用として使われたりしていたと聞きます。
それが、だんだん実用的な価格に近づきまして、日常生活にも入ってきました。
0119_1titan3
これ、チタンの印鑑。
大同特殊鋼が初めてチタンの印鑑を出した時は高価でね、一教員が手を出すのはためらわれた。
それが、山梨県の印鑑業者がどのくらい需要があるかの市場調査を兼ねてでしょうね、1万円を切る値段で出したんです。
チャンス、と買ったのがこれ。その後の販売はもう少し高い値段だったと思いますが。
他の印材と比較するとやはり金属ですから持ち重りがする。役所などで受付の人に渡して押印してもらうときなど、手渡すと必ず「オッ」という顔をする。「チタンなんですよぉ、元化学教師なもんで」とちょっぴり鼻が高い。
0119_1titan4
眼鏡のフレームです。ALL TITANですね。
0119_1titan5
こちらもメガネなんですが、F-TITANというのは多分、フレームだけがチタンなのかな、と思っています。

★この他、日常で使えるものとしては、チタンフレームの自転車がありますね。軽くて丈夫、ですが、ちょっとお値段が張ります。

★意外なところで、人工骨、人工股関節などにも使われるようになったようですね。生体組織との親和性が高いのだそうです。

★また軽くてさびにくいという性質から、寺社の屋根瓦に使われるようになりました。ちょっと高いようですが。軽いということは非常に有利。災害対策としても有効でしょう。
東京に住むものとしては、浅草寺でいくつかの建物の屋根がチタン瓦で葺き替えられたと記憶しています。

★話が戻りますが、酸化チタンの薄膜による構造色、というのがアクセサリーなどにも利用されています。
冒頭の写真のフライパンは熱で酸化して発色しましたが、熱による酸化での発色はコントロールが難しい。
チタンの棒や板の端を加熱すると、熱伝導によって、加熱端から膜が生成していって色のグラデーションが生まれるようですが、なかなかね、思い通りにはいかない。
そこで登場するのが「陽極酸化」という技術。
チタンを電気分解の陽極として使うのです。電解液などの詳しいことは知りません。
ただ、陽極に用いられたチタンは電子を失います。電子を失うこと=酸化ですので、チタンが酸化されます。この時酸化膜を生成しやすい電解液を使えば、酸化チタンの薄膜を、つけるべき位置や厚みなど、かなり自由にコントロールできるはずです。
この方法で、指輪やアクセサリーなどを発色させたものが販売されているようです。色もちもいいのではないかな。
一時、チタンのネクタイピンをこの方法で発色させたものが発売されたと聞いて、柄にもなく装身具の店に行きましたが、見つからずあきらめたことがあります。

★「チタン酸化膜 アクセサリー」で画像検索してみてください。カラフルな写真が見られると思います。

↓参考
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%BF%E3%83%B3

http://officemiyajima.com/index.php?QBlog-20130812-1&mode=archives&date=201308

    チタンは、このような性質を持った金属です。
    鉄に比べて軽い(比重4.5)
    銀色の金属光沢をもつ
    酸化膜の厚さで色を変えることができる
    非常に硬い
    ある特定の領域で加工が容易になるが、それ以外では加工しづらい
    身体親和性が非常に良い

    比重は4.5で鉄の55%程度です。

    チタンの表面に形成される酸化膜の厚さを変えることでチタンの色を変えることができます。
    陽極酸化処理によって色が変わる
    これを使って色を付けたチタンの置物が新潟県三条市の市民センターにあります。
    ただし、非常に硬いため加工が難しいです。しかし、ある特定の方向で滑りやすいという性質を持つので、その方向から加工すると小さな力で容易に加工することができます。
    最後に、身体親和性が非常に良いため、人工骨やメガネフレームといった「体と関係ある」部品に使用されています。中実材ではなく多孔質材にすると人間の骨により近い性質になり、非常によく人体になじみます。

http://ww32.tiki.ne.jp/~megaryo/yakiire/kenma4.htm
チタン酸化膜の実験

http://www.kyocera.co.jp/prdct/medical/technical/material/index.html

金属技術整形外科分野
 京セラは、1986年よりチタン材料の医療分野への応用に関する研究を開始し、それを支える熱処理技術の研究を行ってきました。その中から、整形外科用インプラントに適した新しいチタン合金を選び出し、臨床応用を目指して開発を続けてきました。その結果、生体適合性と強度に優れたバナジウムフリーチタン合金の開発に成功し、人工股関節ステムとして製品化しました。その後、2002年には、この京セラが開発したバナジウムフリーチタン合金が医療用チタン合金としてJISに制定され、さらに、2007年10月にはTi-15Mo-5Zr-3Al合金が国際規格ISO 5832‐14:2007※として採用されました。

https://www.asahi.com/articles/ASK6F4QTVK6FULFA00Z.html
チタンの瓦に注目、浅草寺にも 高価でも維持管理費安く(朝日新聞デジタル 2017年6月15日16時34分)

 チタン製の瓦(左)と粘土製の瓦(右)。チタン製は約100グラムだが、粘土製は約2.5~3キロ。粘土製は雨を防ぐために重ねあわせて取り付けられているが、チタン製はその必要が少ないため、小さいサイズで済む=東京都台東区の浅草寺

 丈夫で軽い金属のチタンが、寺社の「屋根瓦」として注目されている。地震など災害時の安全性が高いことから、東京・浅草寺は昨年5月からの改修工事にあわせ、五重塔の約5万7千枚の瓦をチタンに取りかえた。従来のアルミ製の瓦に比べ、チタン製を使うと単純計算で倍近く高い。しかしチタンはさびないため、維持管理費のコスト削減につながるという。
 浅草寺では本堂、宝蔵門に次いで3棟目の採用となる。守山雄順執事長は13日の記者会見で「金額は相当高いが、安全性などを考えてチタンに決めた」と話した。チタンは新日鉄住金製。施工業者のカナメ(宇都宮市)によると、これまで施工した寺社約4千件のうち約110件でチタン瓦が使われているという。
 チタンは航空機や発電所の施設などでの利用が主だったが、新日鉄住金は寺社や灯台などへ利用を広げようとしている。

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