吊架線(ちょうかせん)
★こんな事故があったのです。
パンタグラフ、全て破損 架線切断、工事影響か 京浜東北線(朝日新聞デジタル 2017年12月17日05時00分)
JR京浜東北・根岸線の架線が切れて列車(10両編成)が止まり、22万人の足を直撃した事故。列車のパンタグラフはすべて破損していた。
架線から電気を受け取るパンタグラフは、3本ある架線のうち、一番下のトロリー線にのみ接している。今回切れた補助吊架(ちょうか)線は、トロリー線をつるしている架線で、JR東日本横浜支社によると、補助吊架線は16日未明に行った工事の不具合の影響で切れたとみられる。垂れ下がった補助吊架線の下を列車が通過した際にパンタグラフが接触したため、三つあるパンタグラフがすべて壊れた可能性があるという。
・・・
これは活字メディアですから「補助吊架(ちょうか)線」となっていますが、テレビでこのニュースを聞いたときに
「ほじょちょう かせん」
というように聞こえた。「補助ちょう」と「架線」に分離して聞こえたんですね。
おそらくアナウンサー用の原稿では「吊」という字が「ちょう」と読めないとまずいので「補助ちょう架線」となっていたのではないですか?
で、吊架線という言葉は普通の人にはポピュラーな言葉ではないので、切れ目を入れ間違ったのだろうと、推察する次第です。
★パンタグラフと接触して電車に電力を供給する電線を「トロリ線」といいます。もし、電線の支えの間に直接トロリ線をはると、どうしたってたわむでしょ。強く引っ張ればたわみは少なくはなりますが、なくなるわけではない。
昔のトロリーバスや都電くらいの速さなら、パンタグラフのバネでそのたるみをフォローできるでしょうけれど、現在の普通の電車は時速100kmくらい出せることがごく普通。そうなると、たるみのあるトロリ線ではパンタグラフがフォローできなくなります。
このたわみは、理想的な形では「懸垂線(カテナリー)」と呼ばれる曲線になります。一見、放物線みたいに見えますがちょっとややこしい。{今回は詳細は省略}
2017.12.17
白い矢印で指しているのが吊架線です。赤い矢印がトロリ線。
吊架線から異なる長さのハンガーという金具がぶら下がっていて、ハンガーの下端が水平にまっすぐになっているのです。そこへトロリ線を繋ぎますので、トロリ線のたわみは、なくなるわけではありませんが、ごく小さなものになります。
これが「シンプルカテナリー式」といいます。
吊架線は電流を流す線ではありませんので、途中で絶縁しながら伸びている。また横向きのU字型のバネは、何かあってもトロリ線とくっつきにくくしているのでしょう。
家の前で見られるハンガーは2種類あります。
こんなのと
こんなの。
東急多摩川線だとこういうシンプルカテナリー式でよいのですが、JRのような高速でいっぱい走らせる鉄道では、もう一段トロリ線のたわみを取り除きたい。
で「コンパウンドカテナリー式」という方式になります。
吊架線から補助の吊架線をつり、補助吊架線からトロリ線を吊るという形式ですね。
ハイ、ここで「補助吊架線」が登場しました。
冒頭の事故で切れたのは、この補助吊架線だったのですね。
これで事故で何が起こったのか、見通しがよくなったと思います。
↓参考
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%B6%E7%A9%BA%E9%9B%BB%E8%BB%8A%E7%B7%9A%E6%96%B9%E5%BC%8F
カテナリー = Catenary とは懸垂線の意味。
シンプルカテナリー式
最も多く用いられる代表的な架線である。パンタグラフが接触する部分であるトロリ線と、トロリ線をハンガーと呼ばれる金属線(5 m 間隔で設置)を吊架線で吊して支持する構造となっており、列車速度は100 km/h 程度までに制限される。コンパウンドカテナリー式
パンタグラフによるトロリ線の押し上げ量を平均化する目的で、吊架線とトロリ線の間に補助用吊架線を追加し、それを吊架線がドロッパー(10m間隔で設置)で支持して、補助用吊架線がハンガー(5 m 間隔で設置)でトロリ線を支持する方式。高速走行時の離線が少なく集電容量も増加するため、運転密度が高く高速走行する路線で使用されている。
↓以前の記事です。参考にどうぞ。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_1ccd.html
2008年2月 6日 (水) まだ 架線
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/post-84fb.html
2015年12月 3日 (木) 余計な一言
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