皆既日食と太陽光発電
2017.8.28
森田さんが夏休みを終えて復帰。日食を見ていらっしゃたそうです。
アメリカ大陸を日食(=月の影)が横断しましたので、「グレイト・アメリカン・エクリプス(全米横断皆既日食)」というらしい。
{Solar Eclipse が日食ですから、American Eclipse というと、アメリカが欠けちゃうみたいな気もするけど、いいのかな。}
それはそれでいいんですけど。今回、面白い側面を教えてもらったので、ご報告します。
日食というと、日食中の気温の低下(ひんやりする)というようなことは以前から言われていました。
今回知ったのは、日食中の太陽光発電はどういうことになるのか、という点です。
太陽光がかげれば出力が落ちる、それは当たり前で以前から知られているところ。
ところが、現在は太陽光発電の規模が大きくなっていますから、実際にどうなるのか、まだあまり経験したことのない事態だったのですね。
★NHK朝のニュースの中に「おはBiz」というコーナーがありまして、8月28日のそのコーナー。前半はどうでもよかったのですが、後半で
2017年8月28日放送 6:00 - 7:00 NHK総合
NHKニュース おはよう日本「おはBiz」
“試練”にさらされたのは?
海外電力調査会によると米の太陽発電能力は4470万kWで、5年で9倍になっている。カリフォルニア州は発電量の10%弱を太陽光が担っている。21日の日食の時間帯は300万kWと、平均の半分だったが揚水発電を利用して調整したという。
なかなかいいグラフが見えたのです。ゆっくり見たいな、と番組のHPを見に行ったのですが、前半部しか載ってない。私にとって肝心な、日食時の発電状況の話はない。どう検索しても上に引用した簡略な「内容紹介」しかないんですね。
★ネット上で検索したら
日経テクノロジーonline というのが詳しく扱っていました。
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/286991/081600056/?ST=msb&P=3
8月21日の米横断「皆既日食」、試されるグリッドの信頼性(page 3)
太陽光の出力急変に備え、水力・火力で迅速な調整を準備
2017/08/17 06:30 Junko Movellan=ジャーナリスト
毎分98MWで出力急増
カリフォルニア州で太陽が月に隠れるのは、午前9時2分から11時54分の間で、日食の中心時刻は10時22分。これは、太陽光発電の出力が上がり始めた時に日食が起こり、 太陽光発電の最大出力が出る時間帯に日食が終わることになる。CAISOは、太陽光発電の出力ロスに加え、「ランプ現象」と呼ばれる太陽光発電の出力急減と急増を最も重要な課題としている。
日食の始まる午前9時の太陽光発電出力は7.337GW。部分日食なので全ての発電が止まることはないものの、日食の中心時刻には出力が3.143GWまで下がると予想されている。これは同州の 太陽光発電所の出力がこの82分間に4.194GW減少することを意味する。1分あたり70MWの出力減(ランプダウン)となる。
太陽が再び姿を見せ始める時は太陽光の最大出力の時間帯であるため、出力は毎分98MWで急増(ランプアップ)し、午前11時54分には出力は9.046GWに達すると予測されている。低出力帯から高出力帯への変化速度がたいへん速くなっている。ちなみに、日食が無い通常の日の午前9時から昼にかけてのランプアップは毎分12.6MWとなっている(図3)。
日食の前にすでに議論があったのですね。当然ですけど。
上の引用文中の「図3」をここに引用します。
図3●カリフォルニア州における皆既日食時のメガソーラーの出力予測(出所:CAISO)
★そして実際の日食後、同じ筆者による記事がありました。
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/286991/082200057/?rt=nocnt
米「皆既日食」、 太陽光の出力急変にグリッドが見事に対応!
周到な準備で、天体イベントの課した「信頼性試験」に合格
Junko Movellan=ジャーナリスト 2017/08/23 07:02 1/3ページ全米が壮大な天体ショーに沸く
・・・
その壮大な天体ショーを相手に、米国のグリッドは信頼性を保つことに見事に成功した。これは、電力会社、送電系統管理機関、発電事業者などの綿密な計画を立て、十分に準備が整っていたことによるだろう。太陽光出力の減少幅は予想超える
カリフォルニア州は皆既食帯ではないものの、同州北部では76%、南部では58%の部分日食の範囲に入っている。部分日食といえども、米国で太陽光発電の設置容量で50%以上を占める同州は日食で、電力供給で最も大きな影響を受けるとされていた。
カリフォルニア州の広域系統運用を行うカリフォルニア独立系統運営機関(California Independent System Operator; CAISO)によると、日食により、4.2GWの発電事業用メガソーラーと1.3GWの分散型太陽光発電が一時的に出力を失うと予想されていた。CAISOはこのイベントに備え、 起動、調整力と柔軟性に優れた発電源である水力発電と天然ガスを燃料とした火力発電、そして蓄電池を確保した。
さらに同州の各電力会社は、太陽光発電の出力ロスによる供給不足を和らげるため、電力需要者に、電気自動車(EV)の充電や洗濯機・食器洗浄機の使用を控えるなどの省エネを呼びかけた。
当日、日食の始まる午前9時すぎから、日食中心時刻の10時20分の約1時間に、発電事業用メガソーラーの出力は約6400MW(6.4GW)から3000MW(3GW)に減少した。これはCAISOによる前日予測の4600MW(4.6GW)を下回り、減少幅は3400MW(3.4GW)に達した。日食中心時刻後に出力は回復し、太陽が最も高く上がる午後1時には9600MW(9.6GW)を超えた(図2)。図2●上:2017年8月21日、カリフォルニア州の太陽光発電出力量(黄色線)、下:カリフォルニア州ロサンゼルスにおける部分日食の様子、10時21分が日食中心時刻
(出所・上:CAISO、下:Griffith Observatory)
・・・
何はともあれ、カリフォルニア州にとどまらず、全米のグリッドは綿密な準備と計画でグリッド信頼性のテストを無事に合格したと言える。
図2を引用します。日食の様子と太陽光発電の出力が重ねられていてとても見やすい。
太陽光発電が大規模化すると、日食によって電力危機が発生する可能性がある、ということは充分に注意すべきことですね。そう頻繁に起こる事態ではないですが、備えを怠れば危機が訪れます。
★この事態について、普段私が接しているメディアではNHKの短い報道だけだったのですが、9月に入って毎日新聞のコラムが扱っていました。
土記:日食テスト=青野由利(毎日新聞2017年9月2日 東京朝刊)
<do-ki>
先週、米大陸を横断した皆既日食をテネシー州ナッシュビルで見てきた。皆既日食を見るのは、2009年の硫黄島沖洋上、10年の南米パタゴニアに次いで3回目。
・・・
今回は、太陽光発電への影響というさらに現代的な話題もあった。
現在、米国の太陽光発電の設備容量は約45ギガワットと、ここ数年で急成長。もはや日食の影響は無視できない。
中でも注目されたのは設備容量が約15ギガワットと全米一で、電力の1割を太陽光で賄うカリフォルニア州だ。皆既帯からははずれていたが太陽が6~7割欠けるため、系統運用組織「CAISO」が調整を念入りに準備してきた。
日食が始まると太陽光の発電量は通常の4割程度まで急落。これを天然ガスの火力や水力、近隣からの「輸入」で補った。市民にも節電を呼びかけ、「とてもうまくいった」とCAISO幹部は記者会見で語っていた。「日食テストに見事合格」というわけだ。
日本で次に皆既日食が起きるのは18年後の2035年9月。日食自体も楽しみだが、それまでに太陽光発電がどこまで育つか。大きく育てて、それを見事に調整する技も見てみたい。(専門編集委員)
ということで、日経の記事を後追いした形になっています。
私はこの件、もっと大々的に扱うべきだった、と思います。日本でも太陽光発電の規模が大きくなっていく中で、原理的に抱えざるを得ない問題があるということは多くの人が知るべきでしょう。そう思いました。
↓ここに「金環日食の日の、つくば市での太陽光発電の発電量グラフ」の話も書きました。
「2012年05月21日の発電実績」というグラフだったようです。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-ff9a.html
2012年5月30日 (水) 日食時の気温変化
残念ながら、ここにあるリンクはもうリンク切れになっています。
そのグラフでは「朝、7時少し前にいったんピークになり、それから下降して、7時40分くらいにミニマムとなって、その後急速に発電量が増していった」ことが読み取れるものだったようです。
太陽光発電が普及していく中で、考えておかねばならない問題ですね。
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