★事故から大分時間が経ち、素人の私が何か言っても差し障りもなくなってきたと判断して取り上げます。
●事故は6月17日。
●7月20日のNHKのニュース
衝突事故の米海軍イージス艦 本国で原因調査へ(7月20日 4時07分)
先月、静岡県の伊豆半島沖でアメリカ海軍のイージス艦とコンテナ船が衝突した事故で、損傷したイージス艦は神奈川県内の基地のドックで修理が行われていて、アメリカ海軍は修理が終わりしだい船を本国に戻し、引き続き事故原因の調査を進めることにしています。
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アメリカ海軍のホームページには修理の様子などの写真が公開され、コンテナ船の船首にある「バルバス・バウ」と呼ばれる突起物が衝突してできたと見られる船底付近の穴は現在は鉄板で塞がれています。
一方で、船体の右側の側面は大きく潰れるように壊れたままになっていました。
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●先日、8月に入ってのニュース。
7人死亡の米イージス艦、秋に帰還 損傷大きく運搬船で(朝日新聞デジタル 2017年8月9日15時13分)
静岡県の伊豆半島沖で6月、フィリピン船籍のコンテナ貨物船と衝突し、乗組員7人が死亡した米海軍のイージス駆逐艦フィッツジェラルドについて、在日米海軍は9日、同艦を今秋中に米国に帰還させることを明らかにした。損傷が大きく、長い航行にはリスクがあるとして、民間の重量物運搬船に載せて運び、米国で大規模修理に入るという。
米海軍は7月、同艦を神奈川県の横須賀基地のドックに移し、破損の状況を詳しく調べていた。米海軍は海上保安庁による捜査への協力について、「乗組員の調書の共有など、できる限りの協力はする」と説明している。
ダメージは大きかったようですね。自力航行あるいは曳航では帰れないらしい。
イージス艦の横っ腹がかくも脆弱だった、というのはアメリカにとって知られたくはなかった機密でしょう、多分。民間のコンテナ船と衝突してこうだもんな。
★それはさておき、私が書きたいのはちょっと別の気になった点。
貨物船下部衝突、穴から水 居住区に7遺体 イージス艦事故(朝日新聞デジタル 2017年6月20日05時00分)
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海面下にある船首下部の突き出た部分は「バルバスバウ」と呼ばれ、水の抵抗をやわらげるため球状になっている。貨物船「ACX CRYSTAL(エーシーエックスクリスタル)」のバルバスバウが、イージス艦の船腹に突っ込み、そこから浸水したとみられている。
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「バルバスバウ」というのを読んで初めなんだかわからなかったのです。
更にNHKのニュースでは6文字語の日本語の高低アクセントで読むものですから、なおさらよくわからない。
「 _----_ 」
こういう感じかな。音の高低で捉えてください。
聞いていて。とっさに英語が浮かびませんで、戸惑った。気持ち悪いなぁ。ぞっとしますね。
新聞で「バルバス・バウ」という表現を見て、あそうか、と了解。
これ「球形船首」じゃないですか。球形船首なら40年前の高校物理の波の授業で教材として授業で話をしましたよ。
単純に「球形」というと「spheric」という感じがするのですが、そうではない。
「bulbous bow」なんですね。「bow」は船首。で、面白いのが「bulbous」なんです。
bulbous は bulb の形容詞ですが、じゃあ bulb って?
bulb
{名詞}球根(ユリ根・タマネギなど);電球;球根状の物.
◆bulbous {形容詞}球根のある[から生じる];球根状の.
パーソナル英和辞典より引用
球根ですよ。
「球根型船首」なのでした。あるいは「電球型船首」でもいいか。
で、英語ですから、最初の母音のところに強弱でのアクセントが来る。
「 =--- =- 」
「=」を強く、「-」を弱く、強弱アクセントで捉えてください。
こんな感じになるでしょうか。
小学校から英語、もいいけど、カタカナ英語をもうちょっとちゃんと英語らしくしませんか。それだけでもずいぶん英語力は上がると思うんだけどな。
・さらにbとvの問題もありますね。
日本語で「バルブ」というと通常「弁」を意味することが多いのですが、それは「valve」なんです。
球根はバルブで、弁はヴァルブのはずですね。
「バ」と「ヴァ」の表記を持っているのですから、これは活用したい。英語習得の基盤がしっかりしてくるんじゃないですか
フマキラーの広告です。ここで、もういっちょイチャモンつけますってぇと
VAPEは「ベープ」ではなく「ヴェープ」でもなく「ヴェイプ」あるいは「ヴェィプ」でしょう、フマキラーさん。
日本人は二重母音に弱いんだよなあ。長音でごまかしていることが多い。
こういうのも、表記できるんですから表記すれば日常的に英語になじめますよ。
★さて、最後に本題。球形船首ってナンダ?輸送船の方に付いていた構造なのですが。
戦艦大和にもついていたし、宇宙戦艦ヤマトにもあったのです。
船にとって大きなエネルギー損失は、粘性抵抗、摩擦抵抗と造波抵抗が主要なものです。
・粘性抵抗は「粘っこい」ものをかき分けるのは大変だ、ということですね。
昔、とんでもない事故があったんですよ↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3%E7%B3%96%E8%9C%9C%E7%81%BD%E5%AE%B3
ボストン糖蜜災害
日付:1919年1月15日、場所:マサチューセッツ州ボストン
死者・負傷者:21人死亡、150人以上負傷
ボストン糖蜜災害(ボストンとうみつさいがい、Boston molasses disaster、またの名を糖蜜大洪水、Great Molasses Flood)は、マサチューセッツ州ボストンの港湾部ノースエンドで1919年1月15日に発生した事故である。ピュリティー蒸留会社の敷地にあった糖蜜を詰めた巨大な貯槽が破裂し、糖蜜の波が推定時速60キロメートルで街路を襲い、21名が死亡、150名以上が負傷した。この事故は現地の伝説となり、ボストンの住民は今でも糖蜜の匂いがすると主張している[1]。
悪夢ですね。もしこんな事故に遭遇しても、焦って歩いて逃げようなんてしちゃダメですよ。粘っこくって、進むも戻るもできなくなって、死にますよ、はっきり言って。粘っこい、ということは致死的なことなんです。小さな昆虫の世界ではたまに、粘っこい花の蜜につかまってしまって脱出できなくなって死んでしまった昆虫を見ることもあります。
・摩擦抵抗は、ほぼお分かりでしょう。船底にペンキを塗るのはさび止めとかいうだけじゃなくて、フジツボなどが付着して摩擦抵抗が増えることを阻止するためでもあるのです。
有機スズ系の船底防汚塗料が環境汚染の問題で制限されるようになったのは有名ですよね。
・さて造波抵抗。
船首が水を切って波を作る、これが大きな抵抗なんですね。
で、船首の前にバルブをつき出させて、余分に波を作る。
余計に波をつくったら抵抗が増えるのじゃないか?いえ、バルブがつくる波が、船首のがつくる波と重なって、ちょうど山と谷が重なるように設計すると、波が打ち消し合って消えるんですね。面白いものです。
これは高校物理の絶好の教材になるのです。波の重ね合わせ、というやつですね。
そもそも「波」を作るにはエネルギーが必要です。そして波はエネルギーを運びます。
地殻に溜まった歪のエネルギーが解放されるとき「地震」が起きますね。そして地震波はエネルギーを運び、災害を起こす。
電子を揺り動かすと電磁波が発生します。電磁波が届くと金属内の電子が揺さぶられ、その電流から情報が取り出せる。通信ですね。電磁波に揺さぶられるものが水であるなら電子レンジです。光によってものを見ることができるのは、網膜内の視細胞の色素の電子が光という電磁波で揺さぶられるからです。
海を渡る風に吹かれてそのエネルギーをもらって海洋波ができます。その波はエネルギーを運び、波の打ち付けるところで「力」を発揮しますね。
太平洋の波は長く風に吹かれるので大きな波が発達しますが、日本海の波は風に吹かれる距離が短いので、太平洋側の波ほどには発達しません。
エネルギーでものを見ると、また、いろんな側面が見えます。
★↓参考にどうぞ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%90%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%90%E3%82%A6
バルバス・バウ
バルバス・バウ(英語: Bulbous Bow)とは、船の造波抵抗を打ち消すために、喫水線下の船首に設けた球状の突起[1]。
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原理
バルバス・バウは水面下で前方に突き出した構造をしている。これによって、水面で船首が波をつくるよりも前方にあらかじめ波を生じる。結果、水面で船首が水を掻き分けて生じる波は、バルバス・バウによって生じた波とは逆位相となり、それぞれの山と谷が打ち消しあうことで波を小さくする。
結果として造波抵抗を最小化して燃費の低減や速度の向上を図ることができ、さまざまな船に有効である。
http://www.meiwakaiun.com/meiwaplus/tips/tips-vol30.html
海運プラザ 海運豆知識
第30回:バルバスバウ(球状船首)について
米国の造船学者D. W. テーラーが1911年に発明したもので、船の造波抵抗(船が進むとき波をおこすことによって受ける抵抗)を打ち消すために、喫水線下の船首に丸く突出したバルブ状の突起物をバルバスバウと言います。バルバスバウの原理は、船首から突出したバルブの造る波が盛り上がった後、谷となる位置が、ちょうど船首の波の山が発生する位置に重なり、互いの波が干渉しあう結果、船の両側に作る波をなくすことが出来ます。この波をなくすことで造波抵抗が減少し燃料消費量が向上し航続距離が長くなると言った効果が上げられます。なお、バルバスバウは戦艦大和にも装備され、八パーセントの省エネ効果があったと伝えられております。