ステッキの影
前の記事で、赤トンボが腹を上げて受光面積を減らすという話をしました。もし、完全に腹の影が無くなれば、その時、腹は太陽を指していることになりますね。
夏至の後、ステッキの影など撮影していましたが、ここで、アカトンボの話と並べて書いておきたいと思います。
★まずは前段。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2017/06/post-27d1.html
2017年6月22日 (木)「夏至の翌日」
↑ここで夏至(6/21)の翌日にステッキの影の長さを測ってみたりしました。
この日の影は少しぼんやりした感じでしたのでもう一回チャレンジ。
2017.6.23 12:50
長さ1mのステッキの影を平らなタイル面に落としました。影はくっきりしています。
その影の長さは34~35cmのようです。
下にリンクする計算サイトで計算すると
6/23 12:50の太陽高度は、 71.1度 でした。
影の長さ=(1/tan(71.1)))=0.342
わ、34cmです。あってますねぇ。(多分たまたま)
★さて後半戦、アカトンボの真似。
6.24 12:40
影の長さが無くなるようにステッキを傾ける、という方法を試みました。
計算サイトによると、この日この時刻の太陽高度は、 72.7度です。
ステッキだと握りの部分の影が邪魔なので、木の棒を出して来て
線路柵に立てかけて影がほぼなくなるようにしました。
ほぼ横から撮影。でも真横からの写真にはなっていないと思います。
影は線路柵に直交する方向ではないので転がりそうだし、なかなか難しい。
{予防線を張っておきましょう}
6月24日 12時40分頃の太陽高度は72.7度でした。
右下はBASICで描いたグラフ。直線の傾きが72.7度になるように描きました。
ほぼ平行ですが、棒の傾きの方が少し大きいかな。
張っておいた予防線の通りですね。棒と太陽方位がなす面が傾いているので三角形が細く見えているのでしょう。
まあ、思いつきの実験としてはうまくいった方だと思って自己満足しています。
↓いろんな計算ができます。ご利用ください。
http://eco.mtk.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/koyomix.cgi
国立天文台 > 暦計算室 > こよみの計算
★ところで、エラトステネスってご存知ですよね。
素数の方で「エラトステネスの篩(ふるい)」という名前でよく知られていますが、その人です。
実はエラトステネスは地球の半径(あるいは地球の子午線長)を測ってもいます。
原理は「影の長さ」です。
http://www.core.kochi-tech.ac.jp/math/highschool/earth/index.php?title=eratosthenes
高校大学連携授業 1
「地球の半径を測る」(井上 昌昭)
彼は次の事実を知っていました.毎年,夏至の日(北半球では6月21日ごろ)の正午には,シエネの町(現在のエジプトのアスワン)では深い井戸の底まで太陽の光が届くのです.ということは,1年の間で正確にその時,この場所では太陽が真上に来ることを意味してます.一方,アレクサンドリアでは,正確に夏至の正午に(おもりをつり下げて)垂直にした日時計の柱の影の長さを測り,図1に示した角度θを 7.5°と測定しました.さらにエラトステネスは,シエネ(アスワン)がアレクサンドリアの(ほぼ)真南,約 800kmのところにあることも知っていました.
・・・
現在知られている地球の半径は約6360kmです.
エラトステネスが得た値は「6114km」
すごいですね。私の棒の影実験より精度が高い。6000kmという値で「一致」しているというべきでしょう。
http://www2.nc-toyama.ac.jp/~mkawai/lecture/introduction/navschool/earthsurv/newpage2.htm
<エラトステネス(紀元前200年頃)>
「ナイル川沿いの町シエネ(アスワン)は、北回帰線上にあり、夏至の日の正午に太陽が井戸の底を照らす。」
↓こちらではエラトステネスが地球の円周長を測ったという形で記述しています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%A9%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%8D%E3%82%B9
エラトステネスの値が46000km、現在の値は40000km、誤差15%となっています。
誤差15%というのはかなり精度が高い、といってかまいません。
高校の物理や化学の実験では誤差が10%やそこらあることの方が普通です。
値そのものよりも、原理的な思考の方を読み取ってください。
足元の影という身近な現象と地球サイズの測定とを結びつけることができる、という論理の一貫性のすごみ、ダイナミックさを楽しんでください。
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