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2017年6月 9日 (金)

日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターで作業員5人が被曝した事故

以下、私見を述べます

5人、汚染室内に3時間 事故後、除染準備待つ 原子力機構(朝日新聞デジタル 2017年6月9日05時00分)
 放射性物質が飛散した事故は6日午前11時15分ごろに、燃料研究棟の分析室で発生。放射性物質が入ったポリ容器は二重のビニール袋に包まれ、ステンレス製の保管容器に入っていた。
 原子力規制委員会や原子力機構によると、事故当時、保管容器の内部の状況を確認するため、50代の男性職員がフタを留める6本のボルトを緩めていた。4本目を外したところでビニール袋が膨らんで、フタが浮き上がってきたという。職員はフタを押さえつけながら残りの2本を外してフタを取ったところ、ビニール袋が破裂した。ビニール袋内に何らかの原因でガスがたまり、内圧が高まっていた可能性がある。
 破裂の瞬間、職員は「脇腹からおなかにかけて風圧を感じた」と話したという。
・・・
 室内が放射性物質で汚染されたため、そのまま外に出ると放射性物質が外部に漏れる。5人は室外の職員に対応を要請した。
 原子力機構はドアの外に体の汚染状況を調べたり除染したりする作業スペースを設置する作業を進めたが、完成したのは午後2時半ごろだった。5人は約3時間、放射性物質が飛散した室内で待機した。口と鼻を覆うタイプのフィルター付きのマスクを付けていたが、長時間待機している間に、顔などの隙間からプルトニウムなどを吸い込んだ可能性があるという。

「ポリ容器」とは「ポリエチレン容器」です。
「ビニール」とは「ポリ塩化ビニル」です。

作業員被ばく事故 「おなかに風圧感じた」(NHK 6月8日 18時16分)
・・・
   なぜ袋が破れたのか?
 今回の被ばく事故では、核燃料物質のプルトニウムやウランの粉末が入った容器を包んでいた袋が破裂したことがわかっています。
 放射性物質を外に漏れ出さないための袋がなぜ破れたのか。事故が起きた大洗研究開発センターに過去に所属し、核燃料の性質に詳しい、東京都市大学の佐藤勇教授は、2つの可能性を指摘しています。
 1つは、プルトニウムが自然に違う物質に変わる際などに発生する「ヘリウム」です。長期間、容器に保管されている間に発生したヘリウムガスが蓄積され、袋の中の圧力が高まって破裂した可能性です。
 もう1つが、プルトニウムなどから出る放射線によって袋や容器の成分が分解され、水素ガスなどが発生した可能性です。同じようなケースが平成22年7月に起きていて、このときは、茨城県東海村の研究施設で核燃料を入れていたプラスチック製の容器が放射線によって分解され、水素が発生し、火災になっています。
 原子力機構は袋が破裂したことについて「想定していなかった」と話していますが、今回のような保管容器はほかに20個あり、今後同じような点検作業を行う必要があることから、佐藤教授は「核物質の量からどのくらいのガスが出るかなどを調べて、原因を究明する必要がある」と話しています。

中に入っていたのは「プルトニウム239」です。
理科年表から↓
            半減期
239Pu 2.411×10^6y α、SF
アルファ崩壊するということと、自発核分裂(spontaneous fission)を行うという記載です。
α線というのは要するにヘリウム原子核ですから、電子を捕獲してヘリウムガスが発生することになります。
ただその「量」については、Puの貯蔵量などで変わるでしょうから、素人の私が見積もることはできません。そう高圧になるとも思えませんが。

太陽系を離脱していくような人工衛星の電源として原子力電池があります。これはPuなどを熱源として発電する電池です。Puの自発核分裂で発熱しますし、アルファ線を出しますので、それが周囲の物質に吸収されれば当然、α粒子の運動エネルギーが熱になります。

ということは、今回の事故の容器もどの程度かは知りませんが温度は高かったはず。
高温でプラスチックが劣化することは当たり前。全体としてそう温度が高くならなかったとしても、局所的には強い発熱はあったはずですね。
α線でポリマーの結合が叩かれれば、化学変化も起きてプラスチックは劣化するでしょうし。
ポリ塩化ビニルでは塩化水素が抜けてぼろぼろになる、という劣化がよく知られているはず。
水素が発生するとNHKの記事にありますが、それについては私には知見がありません。
何にせよ、「ビニール袋にゴミを入れておく」という感覚でPuを扱うなど論外です。

「想定していなかった」などというのは、技術者として非常に恥ずかしい。
こういう貯蔵を行うのなら、貯蔵品と全く同等のものを用意して、それをモニターとして継続的に変化のチェックをして、貯蔵品の状態として把握するとか。あるいは、予備実験として、容器類に強い放射線を照射して、どのような変化が起こるかをチェックするとか、絶対に必要でしょう。安全に係わる常識を持ってないんですかね。

3時間も部屋に待機させられたなんて、ひどい話だ。
緊急事態用に、フルフェイスの気密マスクでも用意しておいて、呼吸用気体を栓から供給するとかしないのか?
酸素ボンベを必ず携行するとか、いろいろありうるでしょう。

この間、フランスの使用済み核燃料保管施設の研究施設のレポートを民放で見ましたが、事故は起こりうるものとしての対策をしていましたよ。

どうも、日本の原子力関係の技術にはそういう緊急事態への意識や対処法の研究が足りないと見受けます。怖い。

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