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2017年3月21日 (火)

花粉症の話

★定期購読している雑誌がありまして。
「四季のカガク――春PartⅡ 花粉のカタチのカガク」藤木利之、化学 Vol.72 No.4(2017)、化学同人
この記事で、スギ花粉についての解説もありました。

 大きさは非常に小さく直径約30μm程度で、パピラという小さな突起をもち、ユービッシュ体という金平糖状の顆粒が表面に散在している。
・・・
 スギ花粉症の抗原物質には、おもに Cry j1 および Cry j2 という2種類のたんぱく質があり、Cry j1 は花粉表面にあるユービッシュ体に局在し、Cry j2 は花粉内部のデンプン粒および細胞内膜に局在していると考えられている。(後略)

↓以前にも引用したのですが、NHKのミクロワールドがいい。
http://www.nhk.or.jp/rika/micro/?das_id=D0005100081_00000
ミクロワールド
2016年度第40回空を舞う スギ花粉の秘密

花粉を捕らえる雌花
  雌花の中にある管のようなものの先に、透明な液体がにじみ出ています。雌花はここで、飛んできた花粉を捕らえるのです。管の先についた花粉は、ゆっくりと雌花の内部へ取り込まれていきます。このとき、花粉は水を吸収して破裂します。破裂して出てきた丸いものは「精細胞」。この精細胞が雌花の「卵細胞」と出会い、やがて実を結びます。

花粉が引き起こすアレルギー
  スギの花粉は、私たち人間の体でも同じような変化を起こします。花粉が目や鼻の粘膜につくと、破裂して出てくるタンパク成分、そして花粉の外側についているタンパク成分、これらがくしゃみや鼻水などの症状を引き起こすといわれています。スギにとっては繁殖のためになくてはならない花粉。それが私たち人間には、アレルギー症状を引き起こす物質として襲いかかってくるのです。

花粉が持つたんぱく質が主要なアレルゲンなんだな、ということがわかります。
で、今回そのたんぱく質の名前がわかった。
名前がわかったからといって理解が進むものでもないのですが、元理科教員としては、なんだか話の筋書が見えてきたようで、気分がいい。

★で、調べてみました。
スギの学名は「Cryptomeria japonica」というのだそうです。
上記の「Cry j1 および Cry j2」というのは、学名からとったたんぱく質名です。

タンパク質名はわかりましたが、どういう働きをするたんぱく質なのか。
↓このサイトによりますと
https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kouho/mori/mori129/mori-129.html

スギの主要な花粉アレルゲン
  スギの主要な花粉アレルゲンとして、2種類のタンパク質(Cry j 1、Cry j 2)が報告されています。そこで、2種類の花粉アレルゲン遺伝子を単離し、それらの塩基配列を解析し、遺伝子の発現特性を調べました。スギの花粉アレルゲン遺伝子の配列は、セコイヤ、ヒノキやビャクシン等のスギ科やヒノキ科内の樹種ではよく類似していますが、マツ科のものとはかなり異なっていました。この結果により、スギ花粉症患者がヒノキ花粉にも鋭敏に反応するという現象を説明できます。これら遺伝子は花粉で大量に発現し、成熟した雄花でも検出されました(図4)。Cry j 1はペクテートリアーゼ活性を、Cry j 2はポリメチルガラクツロナーゼ活性を持っています(表1)。2種類の花粉アレルゲンは多糖類分解酵素で、花粉の発芽や花粉管の伸長に機能していると推定できます。人間にとって厄介者でも、スギにとっては子孫を残すために重要な役割を果たしています。

語尾が「アーゼ」となっているものは酵素です。
Cry j1と Cry j2 は花粉が発芽し、花粉管を伸ばすために必要なのですね。
花粉は風に乗って飛んでいかなければならないので、乾燥して軽くなければならない。遺伝子を運ぶ道具なので、遺伝子を保護し、丈夫でなければならない。それが雌花にくっついて濡れたら、水を吸って復活し、頑丈な花粉を割り花粉管を伸ばしていかなければならない。その時に、Cry j1 、Cry j2 という酵素が重要な働きをしているらしいですね。
免疫というものは、自他を識別し、他を排除するシステムです。スギにとっては生殖に欠かすことのできない重要な酵素ですが、人体にとっては他者ですから排除しなければならない。花粉症というのはそういうものなのですね。
タンパク質というのはアミノ酸をつないで作るものですが、DNA解析をしてアミノ酸配列が似ている部分があれば、タンパク質も似る。「似る」というのはタンパク質分子の「形」に現れます。そこで、免疫システムはスギ花粉由来のCry j1 や Cry j2 と似た形の分子が来ればそれを認識して排除しようとします。「交差する」というようです。
 「スギの花粉アレルゲン遺伝子の配列は、セコイヤ、ヒノキやビャクシン等のスギ科やヒノキ科内の樹種ではよく類似していますが、マツ科のものとはかなり異なっていました。この結果により、スギ花粉症患者がヒノキ花粉にも鋭敏に反応するという現象を説明できます。」
というのはこういういみなのです。

★NHKのニュースです。

花粉症 特定の食べ物でアレルギー反応も(NHK 3月17日 17時40分)
 春本番を前に、すでに本番を迎えている花粉症。目がかゆい、鼻水が止まらないといった症状もさることながら、「自分は何の花粉に反応しているのか」、きちんと知っていますか。反応している花粉の種類によっては、特定の食物を食べると、さらに重いアレルギー反応が起きる場合があるとして、専門の医師が注意を呼びかけています。
今の時期に花粉症の人を悩ませているのは、主にヒノキ科のスギやヒノキです。同時に、カバノキ科のハンノキの花粉も飛散していて、症状は似ています。
 そうした花粉症の人が、特定の野菜や果物を食べると、口の中やのどが、いがいがして痛くなったり、赤く腫れたりするケースがあります。これを「花粉ー食物アレルギー症候群」と呼びます。花粉と、たんぱく質の構造が似ている食物を摂取することで、アレルギー反応が起きてしまうのです。
 花粉と食物の組み合わせですが、アレルギーが専門の医師によりますと、まず、スギやヒノキでの花粉症の人は、トマトを食べると、口の中や周りがかゆくなったり、赤くはれたりすることがあるということです。重篤な症状に至ることは少ないそうです。
 (後略)

トマトのたんぱく質の中に、スギ花粉のCry j1 や Cry j2 と形が似た部分のある分子があるということですね。
食品アレルギーとのかかわりも今後問題になってくるでしょう。

★↓参考サイト
http://www.phadia.com/Global/Market%20Companies/Japan/News/Mail%20News%20Image%20Files/ANN/ANN_14.pdf

1.Group 1アレルゲン(Cry j 1):Pectate Lyaseスギ花粉中のPectate Lyaseは、スギ花粉症の原因アレルゲンとして最初に同定され、後にCry j 1と命名されました。スギ花粉のMajor allergenです。下の表に示すようにキク科、ヒノキ科のPectate Lyaseもアレルゲンとして同定されています。花粉以外にも、Asp f PL(アスペルギルス)、Pen c 32(ペニシリウム)がPectate Lyaseです。スギを含むヒノキ科花粉間のPectate Lyaseは互いにアミノ酸配列の一致率が高く、臨床的な交差反応性を示すことが知られています1)。ブタクサのMajor allergenであるAmb a 1も同様にPectate Lyaseですが、Cry j 1とのアミノ酸配列の一致率は45%程度とあまり高くなく2)、臨床的な交差反応性は示さないと考えられています。
2.Group 2アレルゲン(Cry j 2):PolygalacturonaseCry  j  2もスギ花粉のMajor allergenです。ヒノキ科、スズカケノキ科(プラタナス)、イネ科においてもPolygalacturonaseがアレルゲンとして報告されています。その他にトマト果肉(Sola l PG)、菜の花種子(Bran n PG)が知られています。Pectate Lyaseと同様にヒノキ科間の交差反応性に関与しています

https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2002/18.html

1. スギ花粉の主要アレルゲン遺伝子の単離と発現特性の解明
スギの花粉で発現する遺伝子の中から、Cry j 1遺伝子とCry j 2遺伝子を単離し、それらの構造を決定した。スギのアレルゲン遺伝子の配列は、スギ科やヒノキ科の樹種では良く類似しているが、マツ科のものとはかなり異なっていた。アレルゲンの構造が似ていることが、スギとヒノキの両方に反応する花粉症患者の多い原因となっている。また、2種類のアレルゲン遺伝子の発現特性を調べると、これらの遺伝子は花粉で大量に発現し、成熟した雄性球果でも発現していた(図1)。Cry j 1はペクテートリアーゼ活性を、Cry j 2はポリメチルガラクツロナーゼ活性を保持している(表1)。いずれも植物の細胞壁に存在するペクチンを分解する酵素であることから、これらアレルゲンは花粉管の発芽や伸長の時期に機能し、細胞壁の再構築に重要な役割を担う酵素であると考えられる。

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