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2017年2月23日 (木)

舌下免疫療法

スギ花粉の飛散が始まったようですね。
下のような記事がありました。部分引用です。

花粉症薬、広がる選択肢 初期治療に鼻噴霧ステロイド(朝日新聞デジタル 2017年2月15日05時00分)
(前略)
 ■舌下免疫療法も有効
 花粉症の体質を変えたい人には「アレルゲン免疫療法」がある。原因物質を少しずつ体に入れて、体を花粉に慣れさせる方法だ。以前は注射しかなかったが、より手軽な「舌下免疫療法」が14年から公的医療保険の適用となった。
 1日1回、決められた量を舌の下に垂らし、2分間そのままにする。シーズン中に開始すると逆に症状が重くなったり、副作用が出やすかったりするので、終了後から始める。効果が出るまでには2年間は続ける必要があるとされる。
 ゆたクリニック(津市)の湯田厚司院長らは、この療法を2年続けた患者133人の効果を調べた。症状がゼロか軽症になって薬がいらなくなった人が2割あまりいて、ほかの治療よりも効果が高かった。副作用で口の中がかゆくなることなどがあったが、重いものはなかった。
 「『完治』までいかなくても、つらい時期を大幅に短くできた人もいる」と湯田さん。講習を受けた医師しか処方できないため、まずかかりつけの医師に聞くとよいという。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%82%B2%E3%83%B3%E5%85%8D%E7%96%AB%E7%99%82%E6%B3%95

アレルゲン免疫療法
 アレルゲン免疫療法(アレルゲンめんえきりょうほう、allergen immunotherapy)は、患者にアレルゲンエキスを投与し、免疫寛容へと誘導することを目標とした、アレルギー性過敏症の免疫療法の一形態である[1]。減感作療法(げんかんさりょうほう、hyposensitization therapy)、免疫的脱感作療法(めんえきてきだつかんさりょうほう、immunologic desensitization)またはアレルゲン特異免疫療法(アレルゲンとくいめんえきりょうほう、allergen-specific immunotherapy)と呼ばれ、広義に変調療法ともいわれる。

これですね。注射ではなく舌下からの吸収を利用する方法のようです。

よく「花粉そのもの」がアレルゲンであるような話が聞こえてきますが、ちょっと大きすぎるんです、花粉そのものは。
前にも引用しましたがNHKのミクロワールドから↓
http://www.nhk.or.jp/rika/micro/?das_id=D0005100081_00000

空を舞う スギ花粉の秘密
・・・
花粉を捕らえる雌花
  雌花の中にある管のようなものの先に、透明な液体がにじみ出ています。雌花はここで、飛んできた花粉を捕らえるのです。管の先についた花粉は、ゆっくりと雌花の内部へ取り込まれていきます。このとき、花粉は水を吸収して破裂します。破裂して出てきた丸いものは「精細胞(せいさいぼう)」。この精細胞が雌花の「卵細胞(らんさいぼう)」と出会い、やがて実を結びます。

花粉が引き起こすアレルギー
  スギの花粉は、私たち人間の体でも同じような変化を起こします。花粉が目や鼻の粘膜につくと、破裂して出てくるタンパク成分、そして花粉の外側についているタンパク成分、これらがくしゃみや鼻水などの症状を引き起こすといわれています。スギにとっては繁殖のためになくてはならない花粉。それが私たち人間には、アレルギー症状を引き起こす物質として襲いかかってくるのです。

花粉の持つたんぱく質がアレルゲンなのですね。
で、そのたんぱく質を食べても消化されてしまいますから、ごく希薄な状態で直接血液中に入れたいのです。
注射はもちろん直接血流に入れられます。でも小さいとはいえ身体への「侵襲」ですから、継続するのは辛い。
「舌下」というのはどういうものなのか。
今回はそれを少しお話します。

★去年の記事になりますが↓

[しつもん!ドラえもん]2438 くすり編(11/22)
 注射は痛くていやだな。でも、飲み薬にはないメリットがあるよ。何かな?
[こたえ]早く効く
 血液に直接入る注射剤は1~3分で効果が出る。飲み薬は小腸から吸収されるので時間がかかるけれど、持ち運びや保存もしやすく、使いやすいよね。

痛いけど、速く効果があるのですね。注射は。
また、小腸から吸収されるのに時間がかかる、とあります。それはそうですけど、実は注射には別の意味もあるのです。
「初回通過効果」を回避できる、ということなのです。
ナニソレ?

参考↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%9D%E5%9B%9E%E9%80%9A%E9%81%8E%E5%8A%B9%E6%9E%9C

初回通過効果
 摂取された薬剤は、消化管などから吸収され門脈に入ると、全身を循環する前に肝臓を通過する。このとき、肝臓に多く発現している代謝酵素によって、摂取した薬剤が代謝されることを初回通過効果 (first pass effect) という。薬剤によっては腸管壁を通過する際にその一部が代謝される。この代謝と初回通過効果を合わせて体循環前消失と呼ぶ。

意義
 初回通過効果は、その代謝が薬物を不活性体に変換する場合を指すことが一般的であり、ほとんどの薬物は(この意味での)初回通過効果を受ける。胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S字結腸、直腸上部で吸収された薬物は門脈に入るため初回通過効果を受ける。

http://kusuri-jouhou.com/nyuumon/shokai.html

 (前略)
初回通過効果と肝臓の役割
 このように吸収された薬が最初に肝臓を通り、代謝を受けることを初回通過効果といいます。
肝臓によって代謝を受けやすい薬物の場合、初回通過効果によってほとんどが分解されてしまいます。そのため、医薬品開発の際には初回通過効果も考慮する必要があります。
 なお、薬の投与方法によっては初回通過効果を受けないこともあります。具体的には、腸からの吸収を考えなくても良い薬物です。注射薬や坐剤などがこれに該当します。。
 体内に直接投与する「注射薬」や直腸から吸収される「坐剤」、舌の下から吸収させる「舌下錠」などがこれに該当します。狭心症の薬としてニトログリセリンがありますが、ニトログリセリンは肝臓での初回通過効果が大きい薬剤です。
そのため、ニトログリセリンは舌下錠として初回通過効果を回避するように服用する必要があります。

通常の高校生物の授業では、消化されて吸収されたものは肝門脈を通って肝臓に運ばれる、というところまでですね。そして「初回通過効果」を受ける。まあ「初回通過効果」という用語は使いませんが、そんな内容の話はします。

ところが、消化管の始まり部分と終わり部分に例外があるのですね。
消化管でいえば、口腔内粘膜、直腸下部
それ以外に鼻腔、皮膚もですね。
解熱剤の坐剤とかニトログリセリンの舌下錠などは有名ですね。「初回通過効果」を受けずに直接血流に乗せられるわけです。
最初に戻って、花粉症の「舌下免疫療法」というのは、これなのです。
舌下からアレルゲンを直接「初回通過効果」なしに血流に乗せようということです。
ただ、免疫に関することですからね、激しい反応が起きたら大変。医師と相談して、必ず医師の指導の下に行ってください。

鼻腔に噴霧するワクチンとか、禁煙用の経皮吸収用のニコチンパッチもありますね。

薬を作る側は、「初回通過効果」も含めて、薬剤の働きが効果を持ちながら身体への悪影響が少なくなるように、薬の形「剤形」「服用方法」などを設計しているのです。
勝手に変更してはいけません。
薬とういうものは体に影響を及ぼすからこそ薬なのだということをお忘れなく。

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