世界の気圧分布
★前の記事からの続きです。。
黒板面上の図の、太陽と月を消し、夏と冬に書きかえます。
はい。
そうすると、夏は大陸が温まって低気圧となり、海は温まりにくくって高気圧となる。太平洋高気圧に覆われる暑い夏。夏台風の典型的なコースは日本列島に近づけず、大きく回る。秋になると、高気圧が少しずつ退いて、台風のコースが日本列島直撃コースになる。{昨年の夏の台風のコースは変でした。}
冬は、大陸は冷え切って高気圧となり、海は冷めにくくて低気圧になる。圧倒的なシベリア高気圧、というやつですね。
その切り替わりのところに、梅雨やら秋の長雨やら、性質の異なる気団の押し合いへし合が日本列島上で起きますね。
ごくごく大雑把な話ですよ。
さて今回の話へ移ります。
2017.2.16
本棚で本を探していたら、古い理科年表が残っていました。1987年版。30年も前の版ですね。
「ひょっとして、あの図があるんじゃないか」と開いてみたらありましたよ。
↓これ
「世界の気圧分布図」
単位が「mb(ミリバール)」ですよ。古いなぁ。この時代の数値に合わせるために現在「hPa」というちょっと半端な単位を使っているのです。「100Pa」単位ですね。そうしないと数値が変わってしまうので、混乱するからです。
注を見てください。「ソ連海軍軍令部発行」による図で、1953年刊行だそうです。
この図を私はよく教材に使いました。
この図は「1月」の状態です。北半球は冬、南半球は夏です。
北半球では大陸が高気圧(H)、海が低気圧(L)になるんじゃないか。逆に南半球では大陸が低気圧、海が高気圧になるんじゃないか。
シベリア高気圧があります。北太平洋は低気圧ですね。北アメリカが高気圧気味で、北大西洋は低気圧。
南アメリカ、亜アフリカ大陸の南の部分、オーストラリアが低気圧ですね、夏だから。
南大西洋やインド洋、南アメリカ大陸西側の海は高気圧になっています。
ハイ、比熱の大小から予想したとおりになっていますね、大体のところ。
これは7月の状況です。
分布が1月の時とおおよそ反転していませんか?比べてみてください。
このようにして、地球上の大陸や海の分布が季節によって気圧分布に大きく影響し、そこへ貿易風や偏西風も絡んで、地球上の気候を大きな形で支配するのです。
もちろん、地域の特性によって細かな部分は変わりますけどね。まず大きく地球を把握しておけば、気候の学習も理解しやすくなりますね。物理は地学にも大事なんですね。
今、2月の下旬。冬至以降、太陽からのエネルギー流入は少しずつ増えています。ですが、冷え切るのに時間がかかって、2月に入ってから実際の気温は少しずつ上昇を始めたところです。
シベリア高気圧の勢力に少しずつ翳りが出てきました。そのため、日本あたりで低気圧が西から東へ走るようになってきたのです。「春一番」とかいうのはその表れ。日本海側の雪はシベリア高気圧からの寒気の吹き出しが主要因。で、関東平野へは空っ風が吹き下ろす。
低気圧が日本付近を走るようになって「南岸低気圧」という形になると、関東地方に雪が降る。シベリア高気圧が緩んできたせいです。東京の雪は春の兆し、ということになりますね。
日本列島の周囲では「シベリア高気圧」「オホーツク高気圧」「太平洋高気圧」「(揚子江)移動性高気圧」などが主要な影響を及ぼします。それらの消長をみていれば、気象情報の意味もよくわかりますよ。{「気団」という言い方もします。}
原理を把握すること、科学の面白さはそこにあります。
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コメント
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かかしさん、面白い~ そういう見方があるんですね。
さっそくプリントアウトしました。息子が帰ってきた
ら一緒に読みます。小学校6年生の息子、「理科の
実験がつまらない。わかりきったことを実験してな
にが面白いの」と生意気なことを。読書家ですが、
読むのはすべて歴史系のものばかり。自然科学
の本を置いておくのですが、手に取ってくれませ
ん。かかしさんのブログを読むと、世界が広がりま
す。そういう世界観をもっている、ってとても魅力的
です。奥様、一緒にいて楽しいだろうな、と思います。これからも記事を楽しみにしています。
投稿: あきこ | 2017年2月28日 (火) 17時17分
わかりきったことからビックリを引きだすのが理科教師の腕の見せどころなのです。相手が毎年違うのですから、同じ実験などできるわけがない。教師自身が自分の中にびっくりを抱えていなければできないことです。授業は楽しかったな。
投稿: かかし | 2017年3月 4日 (土) 15時13分