ダイオウイカとアンモニア
★前の記事で、濃アンモニア水の話を書いて、思い出したのですが。
こんな記事が以前にあったのです↓
(ののちゃんのDO科学)ダイオウイカって食べられる?(2015年7月18日03時30分)
・・・
先生 イカの刺し身を海に入れたら沈むって、知ってる? イカは海水より重いから、浮くためには泳がなきゃダメなんだ。でも、育てば10メートル前後になるダイオウイカは、体重が100キロを超えるほど重い上に、住んでいるのはエサの少ない深い海なの。ずっと泳いでいたら、エネルギー切れで海底に沈んじゃうよね。
のの それは困るね。
先生 だから、海水より軽いアンモニアを蓄えて体を軽くしているのよ。体の重さを海水と同じに調節していて、泳がなくても同じ深さに居続けられるの。アンモニアは有害だから動物は普通、おしっこにして体の外に出すけど、ダイオウイカは塩化アンモニウムという害の少ない状態にして、筋肉の中にある液胞という袋に蓄えるのね。
・・・(もっと教えて!ドラえもん)深海魚って不思議な姿だね(2016年2月7日05時00分)
・・・
高い水圧の世界で生きていくために、体に脂を蓄える魚たちもいる。深海と浅い海を行き来する深海魚によくある特徴なんだ。
もともと魚は体を軽くして自由に泳ぐため、体内にガスをため込んだ浮袋を持つものが多い。でも深い所から浅い所に移動すると、水圧が低くなって浮袋が膨れあがってしまう。そこでハダカイワシやバラムツなどは、水より軽い脂を筋肉や肝臓にためて、体を軽くしているんだ。こうした脂には食べるとおなかを壊すものがあるから、食べない方がいいね。サメの仲間には、脂ではなくアンモニアをため込む種類もいるんだよ。
・・・
「海水より軽いアンモニアを蓄えて体を軽くしている」?
「塩化アンモニウムという害の少ない状態」?
不審だ。
当然「アンモニア」ではないでしょう。塩化アンモニウムでしょうね。しかし、塩化アンモニウムはアンモニアの「状態」ではない。別の物質です。
アンモニアは軽い気体だから、軽い気体で体を軽くしている、なんて思ってませんか?
不審だ。
こんなニュースもありました。
「ダイオウイカが食べたい!」大量のツイートが出る 生きたまま捕獲、アンモニア臭くて「ペッ!ペッ!」
2014年1月9日(木)18時17分配信 J-CASTニュース
・・・
「うわぁ、しょっぱあい、しょっぱくて食べられない」
ダイオウイカを6年前に調査したという東京海洋大学客員准教授でタレントの「さかなクン」さんは、今回捕まったダイオウイカが泳いでいる映像を見て、
「魚(うお)~!!すぎょい!泳いでる!泳いでますよ~」
と大興奮。ただし食用に関しては、
「うわぁ、しょっぱあい、しょっぱくて食べられない。ペッ!ペッ!って感じなんですよ~」
と説明した。体重が重いイカは泳いでいないと沈んでしまうため、アンモニアを体内に溜めてそのアンモニアを使って浮力を調整している。だから食用には向かないのだそうだ。今回のダイオウイカを捕獲した佐渡市の「加茂水産定置網組合」に話を聞いてみたところ、網にかかったダイオウイカを船にあげた時点でアンモニア臭に驚く船員もいた。
・・・
塩化アンモニウムは塩辛いのです。化学屋としてそれは確かです。(苦味もありますけど)
でもなぁ、塩化アンモニウム水溶液を浮力調節に使うというのは、私には俄かには信じられない。
どなたか、魚の専門家の方。ダイオウイカの体液内の塩化アンモニウム濃度を測定してくださいな。
塩化アンモニウムの生理的な濃度での密度と、海水の密度を並べて表示してくださいな。
でなきゃ、わからないでしょ。
ちゃんとそれが示されたら、考え直してもいい。
アンモニアは生体にとって有毒ですからね、動物は何らかの形で体外に排出します。
ヒトは尿素にして、爬虫類や鳥類は尿酸にして、海産の軟体動物にはアンモニアのまま排出するものもいます。
ですから、生でもアンモニア臭いことはあり得ますね。
塩化アンモニウムにするメカニズムもよくわからないけど、なんだかなぁ。
想像ばっかり先行してませんか?基本的なデータを提示してください。
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http://www.edu.utsunomiya-u.ac.jp/chem/v12n2/ashida/TabC03.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/22/7/22_7_439/_pdf/-char/ja
これらを参考に計算してみます。海水の塩のモル濃度をナトリウムイオンと塩化物イオンの合計約0.7mol/Lとします。また海水の比重は1.024g/Lということが分かっています。この時浸透圧を保てるように液胞中の塩化アンモニウムも同濃度だと仮定します。塩化アンモニウムの表を見ると、完全に電離するとみなして活量が0.7mol/Lになるには塩化アンモニウム濃度は0.35mol/Lあれば言いのですから、その時の質量百分率濃度は2.00未満、比重は1.003未満となり、これは海水の比重より小さいので確かに、浮力を得られそうです。
投稿: 栗田悟 | 2023年1月 8日 (日) 10時18分
丁寧なコメントありがとうございます。
納得しました。しかしまぁ、生物の能力というのはすごいものですね。おいしくはなさそうだけど。
投稿: かかし | 2023年1月 9日 (月) 14時29分