気温変化の速さ
平年気温は毎日少しづつ変化します。
これは以前にも使ったことのあるグラフですが、東京における太陽の南中高度(右目盛り)と、最高気温・最低気温の平年値(左目盛り)のグラフです。
今回議論したいのは、気温の平年値のグラフの「傾き」についてです。
ざっと目で見て、4月の傾きが大きいというのは見て取れると思います。
右上がりの傾きが大きいということは、毎日の気温の上昇の速さが大きいということですね。
4月はぐんぐん気温が上がる。
このことを、もっと見やすくする手はないか、と考えました。
月初と月末の平年気温を日数で割って、1日当たりどのくらい平年気温が変化するのか、を求めてみました。
変化速度=気温変化量/日数
ですね。
{1月31日から2月1日への変化分を、どちらの月に割り当てるのかで、ほんの僅かの差が出ますが、今回は1月の方に入れる、という形で計算しました。}
それを棒グラフで表したのが下のグラフ。
赤い棒は日最高気温の変化速度、青い棒は日最低気温の変化速度です。
1月:年間の気温の谷底のある月です。ほんの僅か下がります。
2月:上旬に立春。少しづつ気温が上がり始めます。毎日0.05℃くらい。
3月:下旬に春分。毎日0.1℃くらい上昇します。速くなってきました。
4月:春分を過ぎて立夏へ向かう月。毎日0.2℃近く上昇します。上昇速度が最大の月なのです、4月は。春パワー炸裂ですね。
5月:上旬に立夏。
6月:下旬に夏至。東京の場合、6月~7月に梅雨の時期があって、日照量が減りますね。そのせいで速度が落ちるのだと思います。雲が蓋しちゃうから。でも太陽の南中高度は夏至の時に最大。
7月:毎日0.1℃くらいの上昇。
8月:上旬に立秋。「この暑いのに暦の上では秋かよ、だから古い暦は困る」というような文句がいっぱい聞かれますが。夏至を過ぎて、太陽から流入するエネルギーは減ってくるのですが、遅れて地面が暖まるのです。気温のピークは8月ですが・・・。立秋を過ぎればやはり気温はわずかづつですが下がり始めるのです。秋が立つ。
9月:下旬に秋分。毎日0.2℃くらい下がります。さすがに秋。
10月~11月:最低気温の方が9月とほぼ同じペースで下がっていきますね。地面が放熱しています。
11月:上旬に立冬。
12月:下旬に冬至。この時点ではまだ下がり続けていて、1月の谷底へ向かうのです。冬至の時がエネルギーの流入が最少。でも冷え切るのは1カ月ほど遅れて1月になります。
とまあ、グラフを眺めていると、そんなことがわかるのかな、と書き綴ってみました。
他の解釈もありうると思います。いろいろ考えてみてください。
上のグラフは、月で切ってグラフ化しましたが、二至二分とか、二十四節気で区切ってグラフ化するという手もあるかもしれません。チト面倒で、実行しませんでしたが。
★もう5月に入りました。
4月にふと思ったのですが、気温の上昇速度は最大。でも、家という構造物、マンションや学校という構造物が暖まるのには時間がかかる。気温上昇から少し遅れますね。
{熱容量の問題です。地球あるいは地表だって太陽エネルギーの流入・放射と気温の最高最低は1カ月くらいずれますでしょ。}
ですから、外に出ると暖かいのに、家に入るとなんだかちょっと肌寒いかな、ということが起こり得るのです。
暖房するほどではないけれど、着るものをうまく調整しないと、座っていて肌寒く感じることがありますね。
気温上昇が速いですから、ずれを感じてしまうのではないでしょうか。
体調を崩さないようにしましょう。
★私たちは衣服を着て生活します。寒い時は衣服で空気層を何層も重ねて保温します。セーターは空気を含んで断熱性はいいけれど、風を通してしまう。ウィンドブレーカーのようなもの一枚でも風を遮れば暖かい。
暑い時は肌を露出したり、肌から水蒸気が逃げやすい風通しのよい素材の服を着たりして、快適な生活空間を身体の周りに構成します。こういうのを「衣服内気候」といいます。
衣服を着た私たちは住まいの中で生活します。寒い時は暖房し、暑い時は風通しをよくしたり冷房したり。これを「微気候」といいます。
そして、その全体を包む地域の「気候」があるのですね。
いろいろなレベルの「気候」があって、遅れが生じたりもしますが、これらの気候の「連動」が生活の質にとってだいじなものなのですね。
↓広告ではありません!言葉の紹介です。
http://www.toyobo.co.jp/seihin/ifukunai/ifuku2.htm
衣服内気候 とは、衣服と皮膚の間の微少な空間の温度・湿度・気流の総称です。東洋紡は、この衣服内気候の快適性を追求した素材開発に成功しました。
衣服の快適性を論ずる場合 温感、冷感、圧感などを感知する神経終末小体が皮膚にあることを考えると、衣服と皮膚の間の微少な空間が重要な意味をもつことがわかります。快適性の要因は他に、衣服圧、肌触り(風合いと接触温冷感)があり、用途によってこれらの重要度は異なってきます。
http://www.misawa.co.jp/kodate/seinou/mokusitu/kaiteki/bikikou.html
昔ながらの知恵と先端のテクノロジーを融合させて1年中快適に暮らせる住まいを設計することを、ミサワホームは「微気候デザイン」と名付けました。微気候とは、住まいとその周辺に限った気候のこと。たとえば庭の植栽で風を導き、直射日光を遮るのも微気候デザインのひとつです。ミサワホームは地域の気候を把握したうえで、それぞれのお住まいの敷地やプランごとに、最適な微気候デザインをご提案しています。人にも地球にもやさしい暮らしを、トータルに実現できます。
★昔話:教師現役の時代。梅雨の終わりごろですか。学校の建物はまだ暖まり切っていないのに、ものすごく湿った暖かい空気が校内に流入して来る日、というのが年に2,3回あるんですね。
そうすると何が起こるか。
冷たい廊下や壁に「結露」します。
水でも撒いたようにべちょべちょになる。
私は「滑る」ということがまるっきりダメなものですから、壁につかまりながら一歩ずつ滑らないように教室へ向かう。授業が終わった後などは、生徒が付き添って授業の用具を運んでくれたりもしましたね、ありがたいことでした。
あれが、気候と微気候のズレの象徴的なできごとでした。
家庭でも、夏前のある時期、水道水がまだ暖まりきらない地下を通って流れてきて、水道管が室内に露出した部分に暖かい空気が触れて結露することがありますね。あれもそういう気候のズレの結果です。盛夏になって、気温も高く水温も高くなれば結露はしないわけです。
身の回りを見まわしてみてください。
★馬鹿な話
気温-風速=体感温度
などということを気象予報士さんが言います、堂々と、さも訳知り顔に。
馬鹿なことを言っちゃあいけません。
左辺は測定できる値ですが、右辺は「感覚」であって測定できる値じゃないでしょ。
気温10℃の時に風速10m/sだと、凍えるほど寒い、という「感覚」ではないのですか?体感温度って。
最高気温予報値が21℃で、平均風速が10m/sのときに、差をとって、「体感温度は11℃くらいでしょう」と言ってた予報士さんがいましたよ。
「体感温度11℃」ってどうやって測るんですか?体感温度10℃と識別できるんですか?
5月4日は全国で真夏日が出ましたね。風もすごく強かった。
30℃で20m/sの風が吹いたら、体感温度は10℃ですか?と皮肉の一つも、二つも、塊りでもぶつけたくなりますよね。ブツブツ。
「高齢者の方は風にあおられないようにご注意ください」くらい言ってくれれば、感謝しますが。
« 気温など:2016年4月まで | トップページ | ディジタリス開花 »
「理科おじさん」カテゴリの記事
- 化学の日(2022.10.26)
- 秒速→時速(2022.09.01)
- 風速75メートル(2022.08.31)
- 「ウクライナで生まれた科学者たち」(2022.05.31)
- 反射光(2022.05.09)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント