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2015年11月19日 (木)

人工衛星の速さ

http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-f709.html
2015年11月12日 (木)「小惑星が接近しましたね」

このニュース原稿ではあまり強調されていませんが、「秒速35kmものものすごい速さで飛んでいる」というような強調の仕方をしたニュースも聞きました。
そりゃまあ、35km/sといえば、3500m/sですから、時速にしたら3.6倍して12600km/hですもんね。
とんでもない高速です。
とはいえ、そんな高速で飛ぶ小惑星が地球に衝突したら大変だ、という感覚でとらえてほしくないのです。
・・・
ほらね、地球の公転速度は約30km/sなんですね。
地球の公転軌道周辺を飛ぶ物体はみなこんな速度で飛んでいるのです。

↑ここでこんなことを書きましたが、人工衛星や国際宇宙ステーションに関しても、似たようなことがあります。

国際宇宙ステーションで、スペースデブリとの衝突が心配されたりする事態ですね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%87%E3%83%96%E3%83%AA

ここで言う「スペースデブリ」には、耐用年数を過ぎ機能を停止した(された)、または事故・故障により制御不能となった人工衛星から、衛星などの打上げに使われたロケット本体や、その一部の部品、多段ロケットの切り離しなどによって生じた破片、デブリ同士の衝突で生まれた微細デブリ、更には宇宙飛行士が落とした「手袋・工具・部品」なども含まれる。
・・・
スペースデブリは、地表から300 - 450kmの低軌道では7 - 8km/s、36,000kmの静止軌道では3km/sと非常に高速で移動している。

で「秒速8kmの高速で飛ぶ物体が当たったら大変なことになる」と。
そりゃ、相対速度8km/sで衝突したら大変ですが・・・。

★地球が真の球として、空気抵抗を考えずに、地表面すれすれを飛ぶ人工衛星を考えると、約8km/sの速さで飛ぶことになります。
静止衛星の場合だと、赤道上空の地表から36000kmのところを24時間で回りますから
(2×π×(36000+6400))/(24×60×60)=3.1km/s
ということで
通常の人工衛星はこの3~8km/sで飛ぶと考えてください。

すごい高速ですが、同じ軌道上でなら相対的に静止ということになります。
ですから、軌道要素が似たようなスペースデブリなら、相対的には秒速8kmでの衝突とはなりません。
ただ、極軌道に打ち上げた衛星のロケット残骸とか、ミサイルで人工衛星破壊実験などして飛び散った残骸などは、とんでもない向きで飛んでいることもあり得ます。そうなると、相対速度が8km/sを超える衝突もあり得ることになります。
ですから、ただ「8km/sで飛ぶ物体だから怖い」ではなく、相対速度がどのくらいなのか、監視機関が測定している相対速度などをきちんと評価して、「相対速度が大きく危険なスペースデブリを避けるために、軌道を変更した」というような感じで伝えるべきなんですね。

★ごく大雑把な話。
半径rの等速円運動における向心加速度aは
a=(v^2)/r
です。
質量mの物体が半径rの等速円運動をすると
運動方程式はF=ma ですが
F=mg であり、加速度は上の式ですから
mg=m((v^2)/r)
となります。
g=(v^2)/r
v=√(gr)
こうなります。
地球の半径6400km=6400000m,g=9.8を代入して計算すると
v≒7900m/s=7.9km/s
という結果になります。約8km/s。

向心力として、mgではなく、万有引力の式を使えば、地表面から離れた高度での等速円運動の速さなども計算できます。
式だけ書くと
v=√(GM/R)
Gは万有引力定数で G=6.67×10^(-11) m^3・s^(-2)・kg^(-1)
Mは地球の質量で  M=5.97×10^(24) kg
Rは地球の重心からの距離
地表なら R1=6.4×10^(6) m
静止衛星軌道ならR2=4.2×10^(7) m
R1で計算すると v=7.9km/s
R2で計算すると v=3.1km/s
となります。

★ところで、人工衛星の打ち上げ基地はどこの国でもなるべく南に建設します。
日本では種子島、アメリカならケープ・ケネディなど。
なんでだ?
そして、通常の衛星は東向きに打ち上げます。
なんでだ?

地球の自転速度を利用したいからなのです。そうすれば積載する燃料が少なくて済む。
ということは同じ量の燃料であるなら、赤道になるべく近い南から、東向きに打ち上げれば、重い衛星が打ち上げられるのです。

http://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/60.html

人工衛星を載せたロケットは、なぜ東向きに打ち上げるのですか?
2013年2月27日(水)

 人工衛星などを地球の軌道に投入するためには、非常に大きなスピードが必要になります。
そのスピードを少しでも稼ぐために、地球の自転方向である東側に向けて打ち上げを行います。
 地球は1日に1回転(自転)していますが、この回転の方向は、西から東に向けて回転しています(太陽が東から西に動いてみえるのはこのためです)。また、その時の地表の速度は、北極や南極に近いほど遅く、赤道に近いほど速くなっています。
 JAXAが打ち上げを行っている種子島宇宙センターを例にあげますと、種子島センターは北緯約30度に位置し、そこでの自転の速度は秒速約400メートルにもなります。
つまり、ロケットを打ち上げる場合、東側に打ち上げることによって、地球の自転速度を有効に利用することができ、エネルギー的に効率がよくなります。
結果として、同じロケットでも、より重い人工衛星を打ち上げることができます。
 ちなみに、真西に打ち上げる場合の人工衛星の質量は、真東に打ち上げる時のほぼ2分の1の物しか打ち上げられなくなってしまいます。それほど地球の自転速度は、打ち上げる人工衛星の質量に影響しているわけです。
このようにして打ち上げられた人工衛星は、地球を西から東に回る軌道に投入されることになります。
 しかしながら、人工衛星はそれぞれの目的を持って打ち上げられ、かつその目的を達成するために適した軌道に投入されます。
したがってすべての人工衛星が必ずしも東側に向けて打ち上げられているわけではありません。
地球観測衛星は全地球を効率的に観測するため、投入される軌道は、地球の北極と南極上空を通る、ほぼ縦に回る軌道(極軌道)に投入されますが、この場合は、南に向けてロケットを打ち上げます。
またイスラエルではこれまで数回人工衛星の打ち上げを行っていますが、自国の東側には他の国があるため、西側に向けて打ち上げを行っている、という例もあります。

★もうお分かりと思いますが、人工惑星を打ち上げる時には、地球の公転速度を利用することになります。
それもやはり東向き、ですね。
現在、はやぶさ2が、太陽系を天球の北から見た場合、他の惑星と同じ反時計回りの軌道をとって地球に接近しつつあるのは、このように地球の公転速度を利用して太陽を周回する人工惑星軌道に打ち上げたからなのです。

ちょっと物知りになっていただきました。
物理教師だった時は、こういう話をよくしたものです。

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