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2015年11月 4日 (水)

実用的ではないな

★「大黄金展」というのがあったようで。

純金バルタン星人、1080万円 新宿高島屋(2015年10月15日16時30分)
 新宿高島屋(東京都渋谷区)で15日、純金製の「バルタン星人」が発売された。光り輝く姿に見入った客を、両手のハサミをあげたポーズで威嚇していた。
 ・・・

私は世代的にバルタン星人とは無縁でして、それが純金であろうとなかろうと一切関心はないのですけど・・・
この展覧会の新聞広告にちょっと気になるものがありました。
いえ、欲しいとか買いたいとかいう関心ではなくって。
理科爺さんとしての関心。

・18金のお鈴(おりん)も載ってましたが、これは一応、仏壇に置いて、ち~んと鳴らすのですから「実用品」かな。
24金では柔らかくて、佳い音が出ないんです。で、18金にして、固くしてあるのですね。
・「純金の湯呑」も掲載されておりました。これが「使えねぇな」なのです。
Yunomi2
6,415,200円
だそうです。恥ずかしながらワタクシ、3桁区切りでは読めない。
641,5200円と書くと、読めます。ふ~ん。
高っけぇ。
これは使えねぇなぁ、というのが私の感想。
こんなもん、私には買う趣味も資産もないのですが。
いや、買う人だって、この湯呑で煎茶を飲もうとは思わんでしょう。
玉露を飲むなら、杯状の小さな茶碗がいい。
抹茶を飲むなら、でかい椀がいい。
となると、煎茶?番茶?ほうじ茶?まさか。
きっと大事に飾っておくんでしょうね。

★理科爺さんとしては「これは湯呑としては使えない」と思います。
何を言いたいかというと、金は熱伝導率が大きすぎる。のです。湯呑としては。

熱伝導率という概念自体は「熱の伝えやすさ」ですから、小学生でもわかる。
熱の伝わり方「伝導・放射・対流」なんて習うでしょ。
これが、きちんと定義しようとすると結構厄介。

熱伝導率=熱の流れに垂直な単位面積を通って単位時間に流れる熱量を,単位長さあたりの温度差(温度勾配)で割った値。
Netudendouritu
説明しません。ふ~ん、そんな単位になるのか、でいいです。この数値が大きければ熱を伝えやすいのだし、小さければ熱を伝えにくいのです。
{一言・二言だけ:W(ワット)=J(ジュール)/秒 を使って式を変形しています。Kは絶対温度ですが、絶対温度でも目盛り幅は摂氏温度と同じですので、安心してください。}

★さて、熱伝導率の具体的な値を見てみましょう。ウィキペディアから。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%B1%E4%BC%9D%E5%B0%8E%E7%8E%87
一般的な材料の室温付近での熱伝導率

材料                        熱伝導率(単位: W・m^-1・K^-1)
カーボンナノチューブ(C)  3000 - 5500
ダイヤモンド(C)              1000 - 2000
銀(Ag)                          420
銅(Cu)                          398
金(Au)                           320
アルミニウム(Al)             236
シリコン(Si)                    168
人造黒鉛(カーボン)(C)   100~250
真鍮                               106
ニッケル                           90.9
鉄(Fe)                             84
白金(Pt)                          70
ステンレス鋼                     16.7 - 20.9
水晶(SiO2)                        8
ガラス                                 1
水(H2O)                            0.6
ポリエチレン                        0.41
エポキシ樹脂                       0.21
シリコーン(Qゴム)               0.16
木材                                   0.15 - 0.25
羊毛                                   0.05
発泡ポリスチレン                  0.03
空気                                   0.0241

理科年表 第84冊 物54(410)

追加で、理科年表第88冊 2015年版から引用

チタン   26   (0℃で)
磁器       1.5(常温で)

ガラスのコップや磁器の湯呑なら「1」程度。金だと「320」です。
2桁も違う。

人間には2種類の「湯」がありまして。
風呂なら40℃程度。
飲むなら60℃程度。
他の動物でも、40℃の湯が体にかかってもまあ平気でしょうが、60℃の湯に接したら危険を感じて避けるでしょう。
多分、人間は加熱調理を行うようになって、口からとりいれるものについては、許容温度が上がったのではないですか。

さて、お茶でも飲みますか。ポットから90℃程度のお湯を、茶葉の入った急須に注いで、適当な時間の後、湯呑に注いで「どうぞ、粗茶ですが」
まだ70℃やそこらはあるだろうな。
60℃であっても、金の湯呑では熱くて持てません。
ふーふー冷まして、40℃くらいにしてから、手に取って口をつけて、やっと飲める。
口に入る飲み物としては、ぬるいよなぁ。{玉露ならそのくらいの温度かもしれませんけど}

★私のクレームはお分かりいただけたと思います。
金は熱伝導率が大きすぎて、熱いものを飲むには適さないのです。
湯呑、茶碗、皿など、熱いものを入れる食器が陶磁器やガラス製なのはこういうわけなのです。熱伝導率の小さな材料でできているのですね。
熱々の飲み物が入っていても、持てなきゃ仕方ない。
他方、調理の道具は、熱源の熱を具材に素早く伝える必要があるものでは、金属製ですね。
ゆっくりでいい時は、土鍋などのように、熱伝導率の小さいものでもいい。
使い分け。

熱伝導率の表を見ますと、銀や銅は金よりもは熱を伝えやすい。
銅は錆びるので、食品関係にはあまり使いませんが、銀の食器はありますね。
銀のスプーンで熱いスープを飲むのは要注意かも。
アルミニウムも結構熱を伝えやすい。で、冷凍食品の自然解凍用の台に用いたりしますね。もちろん鍋にも。
ステンレスは1桁熱伝導率が小さい。で、ステンレスの浴槽、というものもありうるわけです。
いくら金持ちでも、金の浴槽なんか作った日には、湯が冷めやすくってかなわないでしょう。

意外なのはダイヤモンドの熱伝導率の大きさ。
ガラスより1000倍も大きい。

ここでちょっと、演習問題。
問い:20℃の部屋の中に、ずっと一緒に置いておいた木の机と鉄のハサミ。
当然、温度は両方とも。20℃のはず。では、手で触ったらどちらが冷たく感じますか?

答え:鉄のハサミ。
触った時に感じる「熱さ・冷たさ」というのは、その物体の表面温度そのものではないのです。
熱を伝えやすい物体だと、接触した手の表面の皮膚から熱がどんどん逃げる。それを人間は「冷たい」と感じるのです。
木の机は同じ温度ですが熱伝導率が小さいので、手の熱が逃げない。で、そんなに冷たく感じない。

では。
ダイヤモンドと、ガラス玉を持ったら、どっちが冷たく感じますか?
もうお分かりですね、ダイヤモンドが冷たく感じるのです。
唇やその周辺はとても敏感ですから、唇にダイヤとガラス玉を当てると区別が楽そうですね。
ダイヤモンドとガラス玉を冷蔵庫で冷やしておいて、取り出すと・・・
両方とも表面に微細な水滴が凝縮して曇りますが、ダイヤモンドの方はすぐ室温にあたたまり曇りが消える。ガラス玉はなかなか暖まらず曇りが消えにくい{のだそうです。やったことないけど。}

話が変わりますが。
★NHKの朝のニュース番組の中「まちかど情報室」というのがありまして。
2015年10月19日(月)の放送分で、「体温が伝わって冷たいバターもカットしやすいナイフ」というのが紹介されていました。材質は銅合金(チタン加工)だそうです。

それねぇ、体温が伝わるのかなあ。そうなら、手がすごくヒヤットするはずですが、そうなのかどうかは聞き逃しました。
むしろ、室温が伝わりやすいのじゃないかなぁ。室温はおそらく20℃は超えてるでしょ。空気の方が大容量熱源になるという気がしますが。

★銅製だから、熱が伝わりやすい、と思うでしょうけれど・・・。
昔、化学教師現役時代。
銅の針金(太さは1mm程度)を、直径7~8mmのガラス棒に巻いて、長さ3cm位のコイルを作り、柄として長さ20cm位の針金を真っ直ぐに延ばしておきます。全部銅製ということになります。
この銅針金の柄の部分をもって、バーナーの炎に入れると、酸化炎のところでは黒く酸化されます。還元炎に当たった部分は還元されてピンクといっていい金属の銅の色が観察できます。これを、各班でやらせる。
生徒は、銅の針金なんか持ってバーナーで焼いたら熱いでしょ、やけどしない?と騒ぎます。
私、熱いかもね。もし熱かったら、直ちにその場で手を離してどうの針金を机の上に落っことしな。机が焦げるほどのもんじゃなし。投げるなよ絶対、それは危険だから。素直に落っことせばいいんだよ。
さ、やってみよう!
だ~れも落っことしたりはしないのですね。生徒は意外そう。
手に熱が伝わってくる前に、大部分は空気中に逃げてしまうんですねぇ。
同じ実験を、年配の先生がやっておられましたが、一生懸命に木の棒の柄をつけていた。ご自分でやったことがないんだな、ということが同僚の私には伝わってしまう。ま、実験というものはやってみないとわかりません。

★これ、逆に、銅製のナイフを3~4℃のバターにくっつけるというシーンで考えてください。
おそらく、バターの「冷」は手まで来ないで、空気中に逃げると思うんですよ。

熱が伝わるのと、マイナスの熱=冷が伝わるのと、考え方としては向きが逆なだけで同様に考えられるのです。
もちろん熱は原子分子の運動エネルギーですから、マイナスの熱というものはありませんが、定性的に考察する場合には冷というものの伝達と考えてもいいのです。

★まあ、どうでもいいんですけど。
頭でっかちはいけません。
昔から、バターをスムーズに切りたかったら、ナイフをお湯にちょっとつけて切ればいい、といってたはずですよね。
古い技です。

{もいっちょ余談}
夏場、氷柱の前に立つと、対流というのではなくて、冷気が放射されてくるように感じませんか?
「冷の放射」って変な気がすると思いますけど。
熱放射の主要部分である赤外線について考えましょう。
電気ストーブから赤外線が放射されてくれば「熱放射」ですね。あたたかい。
赤外線を見ることのできる生物がいるとして。
この生物の目には、電気ストーブは明るく輝いて見える。
では、この生物が氷柱を見るとどうなるでしょう。
氷柱からは赤外線が出てこない。だから、氷柱の赤外線色は「黒」なんですね。
そこから赤外線が来ないのだから、熱が来ない。これが「冷の放射」という感覚になるのです。

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