「圧力と力」:訂正記事が出ていましたね
★こんな訂正記事が掲載されました。。
訂正して、おわびします(朝日新聞デジタル 2015年9月19日05時00分)
▼15日付生活面の「水害への備え」の記事で「水圧は『水深の二乗』に比例する」とあるのは誤りでした。水深の二乗に比例するのは「ドアにかかる水の力」で、水圧は水深に比例します。
よかったよかった。私はこの記事にカチンと来て、批判を書きました↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-9f14.html
2015年9月17日 (木)「圧力と力」
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-66b5.html
2015年9月18日 (金)「圧力と力:補遺」
これで一応、外が浸水するとドアを内側から押し開けることはすごく大変になる、という話については決着がついたといえますね。
★決着がついていないのは
プールの中で歩くと前に進みづらいのは水圧のせいだ。水圧は「水深の二乗」に比例するので、水深が2倍になると水圧は4倍に。「水深が50センチを超えると、成人男性でも何かの拍子にバランスを崩し転ぶ可能性が出てきます」
この件。
私には、量的な見積もりができないので、前回は言葉を濁しましたが・・・。
水の中を歩く、あるいは流水の中に立つ、という、脚と水の間に相対的な運動がある時の「歩きにくさ」、水の抵抗の問題ですね。
私の知識では、こういう場合、水の粘性抵抗と形状抵抗が大きな要因だろうと思っています。
・粘性抵抗は要するに粘っこさです。
・形状抵抗というのは、例えば、断面が流線型の物体と、断面が四角い物体に水流が当たる場合を考えてください。
流線型の物体では、それこそ「流線」型なのですから、水の流れに乱れが生じません。ここで考慮すべきは斜めの時の揚力かな。
けれど、断面が四角い物体に水流が当たると、後ろに渦ができます。渦ができたら大変、すごい抵抗になります。
ということで「形」によって生じる抵抗なので「形状抵抗」といいます。
ただ、形状抵抗は「圧力抵抗」と呼ぶこともあります。
流れが乱れると、水流に当たる上流の面と、反対側の下流側の面で、「圧力差」が生じます。
ここでいう「圧力」は水深で決まる圧力ではなく、進行方向での物体の上流側と下流側の面を押す抵抗力の差ですね、その力の単位面積当たりの値のことでしょう。
この抵抗力は速さの二乗に比例すると考えられますので、新聞記事中の話は多分これのことでしょう。
専門家はね、内容が分かっていますから、多少のあいまいさは大丈夫なのです。
論文など書くときは当然、厳密に定義された用語を使うでしょうけれど。
素人にはその辺の加減がわからない。ですから、マスコミの記者さんは、それを意識して記事を書かなければなりません。
今の場合だと
「プールの中で歩いたり、流れる水の中に立っていると前に進みづらいのは、水の抵抗のせいだ。水の抵抗には水の粘っこさによる抵抗と、水の流れから生じるものがある。流れる水の抵抗は速さの二乗に比例し、水深が深ければ抵抗力を受ける面積も大きくなるので、水深が50センチを超えると、成人男性でも何かの拍子にバランスを崩し転ぶ可能性が出てくる。」
こんな位のところでいかがでしょうか。
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