越水破堤
★昨日の朝日新聞デジタルの記事です。
鬼怒川決壊「越水破堤」か 現地調査の専門家が見方示す(2015年9月13日15時31分)
茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊した現場に13日、河川工学の専門家らが調査に入った。土木学会の山田正・中央大教授(河川工学)は河川敷の状況などから、10日の現場の水位は堤防より高かったと推測。あふれた水が堤防の外側を徐々に削り取ることで堤防の強度が弱まり、水圧に耐えられずに決壊する「越水破堤」が起きたとの見方を示した。
終了後、報道陣の取材に答えた。山田教授によると、堤防決壊には越水破堤のほかに、「浸食破堤」や「浸透破堤」がある。この日の調査では、越水以外の破堤にみられる痕跡は確認できなかったという。
現場を調査したのは、大学教授らで作る国土交通省の鬼怒川堤防調査委員会のメンバーと土木学会に所属する専門家。
堤防の裏の法面を越水した水がえぐってしまうのが「越水破堤」ですね。
堤防の川の側(内側)の法面を、増水した川の水がえぐるのが「浸食破堤」だと思います。
堤防に水が浸透して堤防をぐずぐずに緩めてしまうのが「浸透破堤」だろうと思います。
{素人の想像ですので、正しい定義かどうかはわかりません}
★NHKでもこの「河川工学の専門家らが調査に入った」ことを報じました
堤防越えの水が削り決壊か(NHK 09月13日 18時22分)
記録的な豪雨で鬼怒川の堤防が決壊した茨城県常総市の現場を13日、専門家が調査した結果、決壊した堤防の裏側の地盤が深くえぐられていたことが分かりました。
専門家は堤防を越えた川の水が地盤や斜面を削り、決壊につながった可能性が高いと指摘しています。
調査を行ったのは、河川や地盤の災害に詳しい土木学会などの研究者、およそ20人で、茨城県常総市の決壊した堤防の壊れ方や周辺の地形の変化などを詳しく調べました。
その結果、決壊した堤防の裏側の地盤が深くえぐられ、池のようになっていたことが分かりました。
これについて調査を行った中央大学の山田正教授は、増水して堤防を越えた川の水が、裏側の地盤や斜面を削ったため堤防の幅が徐々に小さくなり、強度が低下して決壊した可能性が高いと見ています。
(後略)
NHKでは「越水破堤」という言葉は使っていません。
その代わりにイラストがありました。
(グレイスケールに変換して縮小してあります。ここから元画像を再現することはできません。)
一つ素人考えを付け加えておきますと、このイラストでは、越水した水が滑らかに流れているように見えますけれど、おそらくは法面を下りたあたりで激しく渦を巻いたのではないか、とも想像します。渦というものは恐ろしい。破壊力が増すことでしょう。
★今更言っても始まりませんが。
川の水が越水した、堤防が決壊した、という報道を夫婦で見ていて、私が言ったことがあるのです。
それは、2011.3.11の東日本大震災の時の堤防破壊のメカニズムとして、津波が防波堤を越えて裏側をえぐり取ったため防波堤が破壊された、という解説があったことを思い出して、そんな話もあったよな、と。
震災当時の解説ではなかった、もっと後になってから読んだものだ、という記憶がありました。
あれと同じ、あるいはよく似た現象が今回、川の堤防で起こったのではないか、と思い出し、その話を妻としていました。
そして昨日、「越水破堤」という報道が出ましたので、やっぱりそうなんだ、おそらく同様の出来事だったんだな、と二人で話したのでした。
いろいろ調べていったらNHKにありました。↓
http://www.nhk.or.jp/sonae/column/20150534.html
堤防と防災
第1回 堤防の被災メカニズム
執筆者:有川 太郎(中央大学教授・国立研究開発法人 港湾空港技術研究所 客員研究官)(前略)
津波による堤防等の被災メカニズム
・・・直立型の海岸堤防や胸壁は、堤体は同様にコンクリートの塊ですので、同じように水位差がつくことで流されますが、さらに、堤体背後の地盤が、津波の越流により洗掘(せんくつ)されることで支持基盤が弱くなり、転倒したものもあります。
一方で、構造の異なる傾斜型の海岸堤防では、津波が越流する際、背後の裏法面に強い流れが生じることで、裏法面を被覆しているコンクリートのブロックなどが剥がれ、それにより盛り土が露出し、その盛り土が流されます。そうすると表法面の堤体も支えを失うため、引き波時などに流されることになります。つまり、被覆しているコンクリートが剥がされることが引き金になっているわけです。これは、裏法面の背後が洗掘されることにより、裏法面全体がずるずると流されることも示しています。
(後略)
(2015年5月31日 更新)
素人考えですので、これと今回の堤防の越水破堤が同様の現象なのかどうか確実ではありませんが、水というものがものすごい力で「えぐる」ということを知っておいても悪くないかな、と思い、ここに掲載します。
« 茨城県常総市の水害報道について | トップページ | ゼニアオイ »
「自然」カテゴリの記事
- フェーン現象(2022.09.20)
- 台風など(2022.09.20)
- 今年も後半戦に入りました(2022.07.04)
- 折れた飛行機雲・夕焼け(2022.05.17)
- 上弦の月(2022.05.16)
「理科おじさん」カテゴリの記事
- 化学の日(2022.10.26)
- 秒速→時速(2022.09.01)
- 風速75メートル(2022.08.31)
- 「ウクライナで生まれた科学者たち」(2022.05.31)
- 反射光(2022.05.09)
コメント