植物ホルモン「エチレン」
★ちょっと前になるのですが、こんな記事がありました。
{ブログの話題用に取っておいて忘れたのです。まだたくさんそういうストックがありますので追々使います。古ネタで。}
野菜傷めるガス6倍分解 日立アプライアンスの冷蔵庫(デジタル朝日 2015年7月17日05時00分)
日立アプライアンスは、北海道大学が開発した「プラチナ触媒」を採用した、野菜の栄養素や鮮度を保つ冷蔵庫「真空チルド」シリーズを8月13日から売り出す。プラチナ触媒は、野菜から出る傷みを進める成分のエチレンガスを、従来の光触媒より6倍多く分解できる。・・・
この記事では「エチレン」は、まるで野菜に害をなす悪い物質のように受け取れますね。
悪者エチレンを除去する!と。
善悪でものを考えるのはやめましょう。物質にはいろいろの側面があります。
この場合は野菜を長く保存したいという「人間の欲望」にとってエチレンが「害をなし」ているだけです。野菜にとってはエチレンは熟成ホルモンなんですから。
★高校で生物を学んだ方は「植物ホルモン」についても学んだと思います。
オーキシン、ジベレリン、エチレン、アブシシン酸・・・など。
手元の生物資料集では
エチレン
・果実の後熟(成熟)促進。器官の脱落(落葉・落果)の促進。細胞の伸長抑制、屈地性の消失、開花の調節。
・ガス灯の近くの植物の落葉が早いことから植物ホルモンとしての働きがわかったエチレンは、成熟または傷んだ果実から放出され成熟・老化を促進する。
・成熟したリンゴ(エチレンを出す)と青いバナナを一緒に置くと、バナナが早く熟す。
こう記述されていました。エチレンは植物が生きて成長し、子孫を残していくために必要な物質なのです。
人間の都合で善悪に2分しないでください。(害虫・益虫も単なる人間の都合・欲望による分類に過ぎませんね。)
★バナナの話が出ていましたので、ちょっと検索して調べてみました。
↓日本バナナ輸入組合広報室のHPから引用
http://www.banana.co.jp/3step/maturity/
フィリピン産であれば、バナナの保管温度が常に13~14℃に保たれながら約5日間かけて日本まで運ばれます。その温度だと成熟が止められ、青いままで日本に到着することになるのです。ちなみに、成熟が進んだ黄色いバナナは、傷みやすく害虫もつきやすいなどの理由から、日本では輸入が禁止されています。
こうして日本に到着したバナナは、室(ムロ)と呼ばれるところで追熟され、黄色くなります。室は、温度・湿度などが管理された熟成室で、バナナはここで少量のエチレン(植物の熟成ホルモン)を与えられ、数日間かけておいしく熟成した後に出荷されていくのです。
私たちはエチレンのおかげで、バナナをおいしく食べる事ができるわけです。
エチレンって大事ですね。
そう、野菜室にリンゴを一緒に入れないように、という基礎知識もありますね。どうぞよろしく。
★「オーキシン」というと「アベナ屈曲テスト」を学びましたよね。
Weblio 辞書 > 学問 > 生物学用語
アベナ屈曲試験法
同義/類義語:アベナ屈曲テスト, アベナテスト, アベナ伸長成長試験法
英訳・(英)同義/類義語:avena curvature test, Avena test植物の成長促進物質の生物検定法で、カラスムギの芽生えの鞘の先端を除去し、その一部にオーキシンなどの成長促進物質を含む寒天の小片を載せると、その影響で偏った成長が起こり、茎が屈曲することを利用した検査法。
こういう話。私は小学生の頃に岩波映画でこれを見ました。植物の屈曲に影響している「物質」の存在を確かめるという、その「論理」「実証」のすごさに驚きましたっけ。教師キャリアの底流に、小学生の頃に見た岩波映画が今も強く流れていることを実感します。
「本物」を見るということは大事です。
お笑いやショーやクイズではそういう永続力を持った影響は残らないと思いますよ。
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