« トサカフトメイガ幼虫 | トップページ | ヒャクニチソウ »

2015年9月 4日 (金)

アリジゴクについて

★前の記事で天声人語を引用しました。その中に

ところで、アリの大敵にアリジゴクがいる。砂地などにすり鉢状の巣を掘って潜み、落ちてくるのを捕食する。巣は砂が崩れないぎりぎりの角度に作られていて、アリが脚を踏み入れると崩れるそうだ

この書き方だと、アリジゴクが「ぎりぎりの角度」を知っていて、その角度で巣穴を掘ってアリを待ち構えている、という感じがしませんか?
まあね、アリが踏み込むと砂が崩れて脚を取られる、そこへ底からアリジゴクが砂をかけて滑り落ちるようにして、アリをとらえる。のではありますし、そういう「ぎりぎりの角度」であることは確かですけど。
でもそれは、自動的にそうなるのですよ。

★「安息角」という概念があるのです。
下のリンク1にあるような
   自然にとりうる土の最大傾斜角
という概念があるのです。

2番目のリンクをお読みください。
砂場や海岸で砂を手に取って連続的にこぼすと「山」ができますね。この時、誰がやっても、同じ砂を使えば同じような傾斜角の山ができるんです。

3番目のリンクはアリジゴクの話。
砂時計では「上部球にできる斜面の角度を流出安息角,下部球にできる山の斜面の角度を堆積安息角」が観察できるようです。「アリジゴクの穴に獲物が入ると,粒子の一部が撹拌されて静止摩擦が動摩擦に変化し、斜面が崩壊するわけです。このときの斜面の角度(崩壊斜面)を表面流動角」というのですね。
アリジゴクのすり鉢状の巣の内面の角度は「流出安息角」になるのです。どのアリジゴクが作っても、素材の砂地が同じなら同じ角度の穴ができるのです。
この辺りのことを天声人語子はよくご存じなかったようですね。

★話は3つのリンクの先に飛びます

http://www.chugoku-geo.or.jp/book/export/html/30

安息角(angle of repose)とは、地盤工学会発行の土質工学用語集には、“自然にとりうる土の最大傾斜角で、乾燥した粗粒土の場合は高さに関係しないが、粘性土の場合は高さに影響されるので、安息角は一定の値にならない”と説明されている。

http://www.zerobalancer.jp/html/09_01_001_ansokukaku.html

一定の高さから粉体を落下させて、自発的に崩れることなく安定を保つ時に、 形成する粉体の山の斜面と水平面とのなす角度を表します。
粒子の大きさと粒子のかどの丸みにより決まります。
川砂ではかどが立っているので急角度でも安定しています。
海砂ではかどが取れているので緩やかな角度でも流動します。
粒度、含有水分、粒の形状などが影響します。
粒子の大きさが小さくなると安息角が大きくなる傾向があります。

http://bigai.world.coocan.jp/msand/powder/antlion.html
粉体工学から見たアリジゴク(蟻地獄)

写真2は,私がその頃夢中になっていた大きな砂時計です(24時間計,いわき市勿来海岸の砂を使用)。この上部球の砂にできるくぼみは,鋏の穴そっくりです。(前述の松良先生が私の研究室を訪ねてこられたとき、たまたまこの24時間計の実験中でしたが、先生はこの穴を見ておおいに驚かれ、「エッこれアリジゴク?」と大声を出されたのはさすが専門家と感激したものです。下部球には砂が山のように堆積します。上部球にできる斜面の角度を流出安息角,下部球にできる山の斜面の角度を堆積安息角といい,(水平に対してなす角を測定するとして)一般に流出安息角の方が堆積安息角より小さいものです。"安息角"は英語のangle of reposeの直訳ですが,斜面上の粒子が,粒子同士の静止摩擦によってひとときの安息を得ているという意味で,おもしろい表現ですね。アリジゴクの穴に獲物が入ると,粒子の一部が撹拌されて静止摩擦が動摩擦に変化し,斜面が崩壊するわけです。このときの斜面の角度(崩壊斜面)を表面流動角といい,下図のような装置で測定できます。

★↓これは私のブログ記事。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-5393.html
2009年7月15日 (水)「蟻地獄」

 アリジゴクはウスバカゲロウの幼虫で、砂上にすり鉢状の巣穴を作り、その底に隠れて餌を待ち伏せする。巣穴の斜面の角度は37度ぐらいで、砂が流れ落ちないでとどまるギリギリの角度になっている。もう少し詳しく説明しよう。たとえば砂を入れた瓶をゆっくり傾けていくと、始めは砂が動かないのに、ある角度で突然砂が一気に流れ出す。その時の角度を安息角(休止角)とよぶ。安息角の値は砂粒の大きさや湿度などの影響を受けて変化するものの、アリジゴクのワナはつねに安息角で保たれている。そのため、餌が一度巣穴の中にはいると、均衡が崩れて砂が崩れる。
 ・・・
余談:アリジゴクは幼虫時代の3年間ウンチをしないそうです。ウスバカゲロウに羽化するときにまとめて排出するのだそうです。不思議な生態ですね。

★記事の終わりに「余談」がついていますが、これに関して、2010年に面白い発見がありました。

朝日新聞(2010年11月4日)

通説は誤り!?アリジゴクがおしっこ 千葉の小4・吉岡君、自由研究で大発見

 「アリジゴクは排泄(はいせつ)しない」という「通説」が覆されるかもしれない。千葉県袖ケ浦市の小学4年生、吉岡諒人君(9)が夏休みの自由研究で、アリジゴクの「お尻」から黄色の液体が出たことを確認した。吉岡君から質問を受けた日本昆虫協会(東京都千代田区)は「通説や本、インターネットの情報をうのみにせずに発見した、価値ある研究」として今年度の「夏休み昆虫研究大賞」に選んだ。6日に表彰式がある。
 アリジゴクはウスバカゲロウ科の幼虫。一部の種はさらさらの砂地にすり鉢状のくぼみを作り、落ちてきたアリなどの体液をあごから吸う。幼虫期は肛門(こうもん)がほぼ閉じていて、成虫になる羽化時にため込んだ糞(ふん)をまとめて出す。日本昆虫協会によると、本やネット上では、羽化時まで「排泄しない」と記されたものが多いという。
 吉岡君は、近所の植え込みの下でアリジゴクを見つけて採集し、7月から約1カ月、生態を観察した。当初はアリ以外も食べるかなどを実験。しかし、アップの写真を撮ろうと白い紙の上にアリジゴクを置いた時、黄色い液体を出したのに気づいた。「プクーって出た後にはじけて、黄色い染みが広がった」という。
 「おしっこやうんちはしないはず」と思い、染みの写真をインターネットの質問サイトや日本昆虫協会などに投稿して質問したが、納得のいく答えは得られなかった。
 「エサの体液を吸っているんだから、おしっこを出さないと破裂するはず」との疑問が消えず、10匹のアリジゴクを白い紙の上に置いて調べた。その結果、数時間後、4匹の紙に黄色い染みができ、「お尻」はぬれていて「触ったらちょっととろりとした」という。
 「砂の魔術師アリジゴク」などの著書がある京都教育大学の松良俊明教授は「アリジゴクはエサの体液を吸うので糞はしないが、尿として出す可能性はある。ほとんどふさがっている肛門でも、液体なら通るのでは」と話す。「砂が尿らしき物で固まっていたのを見たことがあるが、白い紙を使って染みまで確認したのは聞いたことがない」
 学校に提出するため、リポートをA4判55枚にまとめたところ、協会から「協会の賞に応募しては」と声がかかり、漫画家のやくみつるさんや昆虫研究家ら審査員9人の全会一致で「夏休み昆虫研究大賞」に選ばれた。協会の木村義志理事は「『糞だけでなく尿もしない』という通説が広まっていたのに、流されなかったのはえらい」と話す。

ね、すごいですね。
固形の糞はしないけれど、液体の排せつ物を出す、のです。
セミなんかも樹液を吸って「おしっこ」をしますが、樹液を吸っていれば固形の糞はできないでしょ。
昆虫少年が引っかけられる「おしっこ」は排せつ物として糞も尿も一緒と考えていいと思いますよ。
もともと昆虫は糞と尿を区別して排泄するわけじゃないしね。
{私的注:「糞」は口から入った食物が消化吸収された後に残ったもの。結局は体にとっての「外部」を通過していくものです。「尿」は体の本当の意味での「内部」で生じる老廃物を体の外へ排出するもの。このようにまとめるとわかりやすいでしょうか。}
ですから「アリジゴクは排泄する」といっていいのだと思います。
すごいなぁ、やはり、まずはちゃんと「見る」ことからすべてが始まるんですね。
変なバイアスをかけずに、きちんと対象を見て把握する。これが基本です。

アリジゴクで大発見の10歳表彰 「社会に感動与えた」(2011年1月29日5時40分)
 社会に貢献し、感動を与えた無名の市民をたたえる「シチズン・オブ・ザ・イヤー」(シチズンホールディングス主催)の2010年度の受賞者3人が決まり、東京都内で28日、表彰式があった。
 今年21回目。昨年1年間に朝日新聞など日刊紙で紹介された人々から受賞者を選んだ。表彰されたのは、・・・▽千葉県袖ケ浦市の吉岡諒人君(10)▽・・・。
 ・・・
 吉岡君は、夏休みの自由研究で「アリジゴクは排泄(はいせつ)しない」という通説を覆す可能性のある発見をした。アリジゴクはウスバカゲロウ科の幼虫。肛門(こうもん)がほぼ閉じていて羽化するまでは「排泄しない」が通説だった。しかし、写真を撮るため白い紙にアリジゴクを置くと、「お尻」から黄色い液体がしみ出てきた。これを見逃さず、10匹で実験。4匹の紙にシミがあるのを確かめた。
 ・・・

社会に感動を与えてしまったようですね。
昆虫爺さんは感動しましたが、感動を与えられたとは思っておりません。
感動というものは人の心の中に惹き起こされる感情の「動き」であって、外部から心の内部へはいってくるようなものではありませんのでね。へそ曲がりでゴメンネ。

« トサカフトメイガ幼虫 | トップページ | ヒャクニチソウ »

動物」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« トサカフトメイガ幼虫 | トップページ | ヒャクニチソウ »

2023年1月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
無料ブログはココログ