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2015年7月17日 (金)

無人探査機「ニューホライズンズ」:1:PlutoとPlutonium

★アメリカが大騒ぎですね。

冥王星探査機 観測データに期待高まる(NHK 7月15日 5時11分)
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 NASA=アメリカ航空宇宙局は14日夜、無人探査機「ニューホライズンズ」が冥王星に最接近して1万2000キロの距離まで近づいたと発表し、探査機の地上管制室があるアメリカ東部の研究施設では集まった関係者らから大きな歓声が上がりました。
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{B}最接近 関係者が歴史的瞬間を祝う
 アメリカ・メリーランド州にある地上管制室のすぐそばの建物には、「ニューホライズンズ」のプロジェクトの関係者やその家族、それに国内外のメディアが大勢集まり、探査機が冥王星に最接近するのを待ち構えていました。そして、全員でカウントダウンをして最接近の予定の時間を迎えると、会場では大きな歓声が上がり、集まった人たちは手に持った小さなアメリカ国旗を振って歴史的な瞬間を祝っていました。
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 また、1930年に冥王星を発見したアメリカの天文学者・クライド・トンボーの息子のアル・トンボ-さんも会場に駆けつけ「父はよく冥王星について、説明してくれた。この瞬間に立ち会えて、とてもうれしいし、家族にとって大きな宝だ」と話していました。また、トンボーさんは「ニューホライズンズ」に父の遺灰が載っていることを誇りに思っているということで「父が、みずから発見した冥王星を訪れ、さらにその先の宇宙まで旅を続けるなんて、こんなに喜ばしいことはない」と話していました。

★この大騒ぎの報道を聞いていて、私の中に浮かんでくることどもをいくつか拾い出してみましょう。
[1]元素名と惑星名の関連。私、元高校化学教師ですからね。元素名の話もよくしましたっけ。
https://kotobank.jp/word/%E5%85%83%E7%B4%A0%E7%99%BA%E8%A6%8B%E5%8F%B2%28%E5%B9%B4%E8%A1%A8%29-1614620

1789〔元素記号〕U 〔元素名〕ウラン(英:uranium, ドイツ:Uran) 〔発見の契機〕ピッチブレンド(ウラン鉱の結晶質でないもの)(U,Th)O2 〔発見者〕M・H・クラプロート(ドイツ) 〔命名者・命名の由来〕1781年、イギリスのF・W・ハーシェルが発見した天王星Uranusにちなんで命名

1940〔元素記号〕Np 〔元素名〕ネプツニウム(英:neptunium) 〔発見の契機〕ウラン238に中性子を照射し生成 〔発見者〕E・M・マクミラン、P・H・エーベルソン(ともにアメリカ) 〔命名者・命名の由来〕周期表でウランに続くことから、ウラノス(天王星、Uranus)の外側を回る惑星の海王星ネプチューン(Neptune)にちなみマクミランが命名

1940〔元素記号〕Pu 〔元素名〕プルトニウム(英:plutonium) 〔発見の契機〕ウラン238に重水素原子核を衝突させ生成 〔発見者〕G・T・シーボーグ、E・M・マクミラン、J・W・ケネディ、A・C・ウォール(以上アメリカ) 〔命名者・命名の由来〕ウラン、ネプツニウムがそれぞれ天王星、海王星から命名されたのに倣い、冥王星(Pluto、1930年発見)にちなんで命名。plutoniumの名称は、100年以上前にE・D・クラーク(イギリス)がバリウムに対して与えたことがある

・天王星Uranus(1781)にちなんで元素名ウランUが命名(1789)された。
・天王星の外側の海王星Neptuneにちなんで、ウランの次の元素に元素名ネプツニウムNpが命名された。
・冥王星Pluto(1930)にちなんで元素名プルトニウムPuが命名(1940)された。

こうなんです。
惑星の方が先で、元素名はそれにちなんでいます。
では、惑星の発見はと言うと

国立科学博物館のサイトです↓
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/uranus_neptune/urnsnept01.html

 1781年3月13日、イギリスの天文家ウィリアム・ハーシェルは、いつものように自分で作った愛用の反射望遠鏡で、ふたご座付近を観察していました。するとそのとき、夜空の星々の配置を暗記してしまっている彼の目に、いつもと違う見慣れない星が入りました。ハーシェルは最初この星を彗星と思いましたが、その後その動きから土星の外側をまわる惑星であることがわかりました。惑星は土星までしかないとずっと思っていた世界中の人々を驚かせた大発見でした。

これが天王星の発見。

 天王星が発見されると、その外側にもまだ惑星があるかもしれないと考えられるようになりました。実際、天王星の観測される位置と軌道計算から予想される位置を比べると、少しくいちがいがあることがわかってきました。これは遠くの別の惑星が引力をおよぼしていると考えると説明することができます。フランスのルベリエが計算して予報した位置に、ベルリン天文台のガレが新しい惑星を発見したのは、1846年9月23日のことでした。また、同じ頃イギリスのアダムスも同じ研究をして、その位置を予言していました。ですから海王星発見の業績は、ルベリエ、アダムス、ガレの三人のものとされています。この発見は、天王星のような偶然ではなく、ニュートン力学にもとづいた計算がもたらしたものだったことで、人々に大きな感銘を与えました。

すごいですね。星の配置を暗記していたそうで。さすが。
摂動から海王星の発見に至ったというのは有名な話です。(物理教師でもあったのです、私。)
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/pluto/pluto01.html

 

冥王星は1930年2月18日、アメリカのローウェル天文台で撮影された写真から、当時24歳の若き天文学者クライド・トンボーによって発見されました。しかし、そのおおもとは天王星の発見にまでさかのぼります。天王星の運動の乱れから、海王星が発見されたことは天王星・海王星のところでのべましたが、海王星の引力を考えても説明できない運動の乱れがわずかに残っていました。
 そこで、海王星より遠くにまだ発見されない惑星があると考えられ、その惑星を探すことがいろいろな天文台でおこなわれました。中でも火星観測で有名なローウェルが創立したローウェル天文台は火星の観測のほかに、この新しい惑星を発見することを重要な仕事としていました。ローウェルは1916年に亡くなりましたが、ローウェル天文台の人たちはその後も懸命に探しつづけていたのです。
 みつかった冥王星は、明るさ15等でたいへん暗く、距離は海王星までの距離の約1.3倍でした。また、その軌道は他の惑星が集中している黄道面(地球の公転軌道面)に17度も傾いていました。発見に時間がかかったのは、もう少し明るいと予想され、黄道面に近いところを探していたからです。なおまた、冥王星の軌道は他の惑星の軌道よりもっとだ円形につぶれていて、太陽にいちばん近いときは44億4千万km、いちばん遠いときは73億9千万kmと、極端に変化します。冥王星が太陽にいちばん近いときには、内側の海王星より太陽に近くなることが起こります。
 なお、1978年冥王星の約半分の大きさの衛星カロンが発見されました。

こういう経緯なんですね。
アメリカ人が発見した惑星ということで、冥王星はアメリカ人にとって非常に親しみ深いものだったのです。{「新しい国」アメリカにとっては、ほかの惑星は皆、欧州の発見でしたので、ことさらに自国での発見が嬉しかったのでしょう。}

[2]不思議な「因縁」なのですが、冥王星Plutoに接近した無人探査機ニューホライズンズの電源にはプルトニウムを使った原子力電池が搭載されています。

冥王星に最接近、米探査機から信号受信 無事コース通過(デジタル朝日 2015年7月15日12時05分)
 米航空宇宙局(NASA)は14日午後8時50分(日本時間15日午前9時50分)すぎ、冥王星に近づいていた無人探査機「ニューホライズンズ」から最接近後に初めて信号を受信したと発表した。予定したコースを無事に通過したことが確認された。
 探査機は、冥王星そばでの観測に専念するため、13日夜に信号の発信を一時停止していた。米メリーランド州の管制センターでは、信号を待つ管制室の様子を大ホールで中継。集まったおおぜいの関係者たちが受信の瞬間を見守った。探査チームのメンバーたちが抱き合って喜ぶ姿が映し出されると、ホールの観客も立ち上がって拍手し、最接近の成功を祝った。
 探査機は、冥王星から1万2500キロ離れた地点を通過し、その前後に冥王星や衛星カロンの高精度画像を撮影するなど観測を続けていた。最接近時に撮影した詳細な画像などの公表は15日以降になる見通し。観測したデータ全体の受信が終わるのは2016年秋になるという。
 探査機はこの後、冥王星と五つある衛星の観測を続けながら、次の観測目標となる太陽系外縁の天体を目指す。複数の候補の天体から年内に目標を定める。機体には、プルトニウムを燃料とする原子力電池が積まれていて、故障などがなければ、今後20年は観測を続けられるという。

今、ニューホライズンズから振り返って太陽を見ても、ほんの「点」にしか見えないはずです。
とても太陽電池を電源とすることはできません。
で、酸化プルトニウム中のプルトニウム原子核が壊変する時に出す熱による高温と、探査機外部の宇宙空間の低温との温度差で発電する「熱電池」が搭載されていて、それを電源としているのです。
Plutoへ行く探査機にPlutoniumといのも、なんだかなぁ、不思議な感じがします。

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