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2015年7月22日 (水)

面積マジック:2

★前回の話の後半戦です。

:「1」という面積が増えたり減ったりする、という部分。それはいつでも「1」なのか、「1」じゃないことはないのか。増減にどういう規則性があるのか?

これが宿題でした。

いきなりですが。
★カッシーニ・シムソンの定理というのがあります。
言葉で表現すると

フィボナッチ数列の項を取るとき、その項の前後の項の積とその項の自乗との「差」は1である。(ここでの「差」とは大きい方から小さい方を引いたものを意味するものとする。)

式で表現した方が簡潔です。

Cassinisimson

ここでnは2以上の自然数とします。

なんなのさ。それがどうしたの?
まあ下の表を見てください。
Cassim1
これ、エクセルの表に書き込んだ数式です。
・1列目フィボナッチ数列の項のナンバー。
・2列目がフィボナッチ数列を生成する式。
 1項目と2項目が「1」で、それ以降は前の2項の和、です。
・3列目は、(前後の項の積)マイナス(間の項の自乗) です。
これの計算結果を表示すると
Cassim2
こうなります。
いかがですか?「1」と「-1」が交互に現れますね。
これはフィボナッチ数列を観察して得られた「観察事実」です。
これを前出のように式で表現し、数学的帰納法などを用いて、一般的に証明すると「定理」になるわけですね。

★「面積マジック」の話では「定理」ほど一般的でなくて、エクセルの表で書いてみた程度の観察事実で実質上は十分です。
坪田さんが新聞コラムで書いたマジックの2つの例を検証してみましょう。
最初の例では:1辺が8の正方形を、5と13の長方形に組み替えました。
a,b,c,d,e
2,3,5,8,13
正方形の面積=8×8   =64
長方形の面積=5×13=65
ほらね、ce-d^2 = 1 ですね。
ということは長方形の面積が正方形の面積より「1」大きくなってしまうということです。
これは、長方形の対角線の両側に細い隙間があって、その隙間の面積は「1」だということですね。

次の例では:1辺が13の正方形を、8と21の長方形に組み替えました。
a,b, c, d,   e
3,5,8,13,21
正方形の面積=13×13=169
長方形の面積=8×21 =168
ce-d^2 = -1 のケースですね。
長方形の面積が正方形の面積より「1」小さくなってしまうのです。
この場合、長方形の対角線を挟んで、両側から重なり合いが生じて、重なった部分の面積(重複した面積)が「1」なのです。

で、エクセルの表でもおおよそはわかりますが、証明された定理によって、この「1」と「-1」の繰り返しは無限に続くのです。

●対角線とそれを挟む斜辺の傾きがいくら近づいても、「隙間」や「重なり合い」は細長くなるだけで消えはしません。

1辺が46368の正方形を、28657と75025の長方形に組み替えたパズルを神様に提示してみましょうか。
神さまは一目で、「傾きが一致していない」とおっしゃるでしょうね。
そして、組み替えた長方形は元の正方形より面積が「1」大きい、と即座におっしゃることでしょう。

21: a=10946
22: b=17711
23: c=28657
24: d=46368
25: e=75025

c/a = 28657/10946 = 2.6180339850173579389731408733784
d/b = 46368/17711 = 2.6180339901755970865563773925809
e/c = 75025/28657 = 2.6180339882053250514708448197648

↑もしね、「1km進んで2.6180339850173579389731408733784km高くなる」
という話にすると、1km=1000000mm」ですから
1000000mm進んで
2618033.9850173579389731408733784
2618033.9901755970865563773925809
2618033.9882053250514708448197648
差は1mm弱しかないのですね。
こんな図は描き分けられません、人間業じゃ。
神さまにはクリアに違いが見えるんだろう。

↓面積の話で言いますと

c*e = 2149991425
d*d = 2149991424
ね、長方形の方が面積「1」大きくなっているのです。

★フィボナッチ数列の左端でやってみたら?{数列の右の方は「無限」ですが、左には「端っこ」がありますので。}
a   b  c  d   e
1  1  2  3  5
1辺が3の正方形を組み替えて、2と5の長方形にしてみました。
Menseki11235
アハハ。ですね。
これなら、人間の眼でも一目瞭然に、傾きは違うし、面積も1くらい違っていておかしくないですね。
余りにもあからさまなので人をビックリさせる「面積『「マジック』」になりませんね。

     a b c d   e
1 1 2 3 5 8 13 21・・・
      a  b c  d  e

このあたりが、傾きがほとんど同じに見えるのに、面積が減ったり増えたりしている、と計算もさほど面倒くさくないし、いい具合、なのですね。

★ところで、坪田さんのコラムでも、長さに「cm」を、面積に「平方cm」を使っています。
実際に紙で「切ってはって」実行する場合は、これでいいですが・・・。

数学というものは、単位を必要としないのが特徴です。
「1」があれば、自然数も整数も有理数も無理数も実数も生み出していくことができるのです。
だからこそ、強力な思考ができるわけです。
その「1」が1cmでも、1mでも、1kmでも関係ないです。
長さの「単位」などに縛られていたら、誤差の問題が入ってくるし、地球は球面だし、宇宙空間だって歪んでいるんだそうだし、数学がローカルなものになってしまうのです。
そういう意味で、数学の問題としてこの「面積マジック」を扱うためには、単位「cm」は無用だし、邪魔だと私は考えます。
都立高校入学試験の数学でも、図形問題に「cm」というような単位で出題されたりする。
試験監督中に問題を読んでいて、ムカッとすることがよくありましたっけ。思い出します。
「数学」は「量の単位」抜きで考えるべきだと思う、古いタイプの教師でした。

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