無人探査機「ニューホライズンズ」:3 冥王星が準惑星に
★2006年1月に打ち上げられた時の記事↓
冥王星へ探査機打ち上げ NASA(朝日新聞 2006年01月20日10時21分)
太陽系の第9惑星の冥王星を目指し、米航空宇宙局(NASA)の探査機「ニューホライズンズ」が米東部時間の19日午後2時(日本時間20日午前4時)、フロリダ州ケープカナベラル空軍基地からアトラス5ロケットで打ち上げられた。冥王星は探査機で調べられたことがない。飛行が順調なら、9年後の15年に冥王星に接近する。
探査機は幅2.1メートル、奥行き2.7メートル、高さ0.7メートルのグランドピアノほどの大きさで、重さは478キロ。大気の組成を調べる高性能の紫外線分光計、地形を調べる高性能カメラなど、七つの観測装置を搭載している。
来年2月ごろ、まず木星に近づき、その重力を利用して加速。冥王星周辺への到着は、15年7月ごろの予定だ。
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★ところが、同じ2006年8月
https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/pluto/pluto03.html
2006年8月にチェコのプラハで開かれた国際天文学連合(IAU)総会は、新聞やニュース番組にも取り上げられるほど、人々のあいだで大きな話題となりました。それまで9つとされてきた太陽系の惑星の定義をはっきり決めるための会議が行われ、冥王星が惑星のままか、そうでなくなるかが採決されることになったからです。
この議論の大きなきっかけの1つに、その後エリスとよばれることになる天体、2003 UB313の発見があります。2003年10月に見つかったこの天体は、公転周期が557年で太陽からの距離が38から98天文単位(平均68天文単位)の楕円軌道をえがいており、さらにその後の観測から、直径が冥王星と同等かそれ以上あることが明らかになったのです。
発見されてしばらくは、地球と同じかそれより少し小さいくらいの大きさと思われていた冥王星ですが、現在では直径2390kmと月よりも小さな天体であることがわかっています。小さいとはいえ、冥王星が太陽系の第9惑星ならば2003 UB313も惑星とよんでかまわないのではないか、第10惑星の発見だ、ということでNASAが発表を行ったのは2005年の7月のことでした。
結局、IAUの総会で2003 UB313は惑星とは認められませんでした。それどころか、冥王星も惑星のなかまからはずされてしまいました。それはなぜでしょう? IAUは、まわりの天体を重力で掃き飛ばして軌道の近くに他の天体がいないことを惑星の条件の1つと定めました。火星と木星のあいだにはたくさんの小惑星がまわっています。実は冥王星や2003 UB313のあたりにも、同じようにたくさんの天体がまわっていることがわかっています。そのために冥王星(と203 UB313)は惑星ではなくなったのです。
というわけで、ニューホライズンズが目指す冥王星そのものがなくなったわけではないのですが、飛んでいる最中に惑星ではなくなってしまったのでした。
アメリカ人が発見した惑星だったので、アメリカでは反対も多く、大きな反響が出ました。
下は新聞の報道です。
クローズアップ2006:惑星から冥王星除外 科学が“政治”押し切る
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◇発見の米国が執着
冥王星(プルート)は1930年に米国人天文学者、クライド・トンボーが発見した。その名はギリシャ神話の冥界の王にちなむ。米国人が発見した「惑星」は冥王星だけで、米国では強い愛着を持たれている。冥王星発見の年に登場したディズニーのキャラクターで、ミッキーマウスの愛犬が「プルート」と名付けられたのもその表れだ。
今回の惑星の定義案をめぐり、米ワシントン・ポストは「ウォルト・ディズニーも、冥王星が惑星の地位にとどまることを望んでいるだろう」などと報じていた。
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結局、最終定義案では、冥王星は惑星から降格させ、セレスやカロン、2003UB313と共に惑星ではない「矮(わい)惑星」と位置づけられた。
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毎日新聞 2006年8月24日 東京朝刊
「発見国」の米国に悲嘆の声 冥王星「降格」(朝日新聞 2006年08月26日)
冥王星は惑星ではない――。長年続いた冥王星をめぐる論争に、24日の国際天文学連合(IAU)の決議が終止符を打ったことで、冥王星の「発見国」である米国には、「格下げ」への悲嘆の声がある。だが、今回の結論を冷静に受け止めようとする反応も強まっている。
ワシントン・ポスト紙は25日付朝刊の1面トップ級の扱いで「惑星・冥王星は死んだ」「ある人々にとっては合理性が感傷に勝利した結果だが、他の人々に大きな失望をもたらした」と書いた。
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AP通信によると、1930年に米ローウェル天文台で冥王星を発見したクライド・トンボー(97年没)の妻パトリシアさんは、「私は傷ついてはいないが、動揺しています」と語った。
トンボーは生前、冥王星を「降格」させる動きには反対していた。しかし、「彼は科学者だから、近くに同じような天体が見つかってきたことが問題だと、理解したでしょう。もちろん、落胆するに決まっていますが、今回は受け入れたに違いない」と話した。
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私の個人データベースから引っ張り出してみました。
トンボ―の妻の話がここに載っていて↑
今回、息子の話が載った。探査機にはトンボ―の遺灰が載っていた↓
また、1930年に冥王星を発見したアメリカの天文学者・クライド・トンボーの息子のアル・トンボ-さんも会場に駆けつけ「父はよく冥王星について、説明してくれた。この瞬間に立ち会えて、とてもうれしいし、家族にとって大きな宝だ」と話していました。また、トンボーさんは「ニューホライズンズ」に父の遺灰が載っていることを誇りに思っているということで「父が、みずから発見した冥王星を訪れ、さらにその先の宇宙まで旅を続けるなんて、こんなに喜ばしいことはない」と話していました。
ちょっと「エモーショナルに過ぎる」という気もします。
「心を揺さぶられるのは気持ちはいいけれど、警戒すべきだ、心を揺さぶられたら、私は一歩退く」
というのが私の生き方の基本でして、ちょっと引っかかるものがあるのも事実です。
★いろいろと、そんな騒ぎの中を、ひたむきに飛行を続けたニューホライズンズが今、冥王星のそばを通過しつつあるのです。それはそれで感慨深いものがあります。
つくづくねぇ、私いい時代に生きましたことよ。
小学生の時ですか、スプートニクが初めての人工衛星として打ち上げられて。
以来、犬が飛び、人が飛び。
月の裏側を見、人が月面に立ち、惑星探査機からの精細な画像を見ました。
土星の輪も見たもんなぁ。
ボイジャーは太陽系を出たし。
振り返って、太陽系を眺めた写真も見たし。
今回のニューホライズンズも、直前に不調をきたしていましたよね。それを復活させて運用を続ける。
火星表面の探査機も設計寿命を大きく上回って活動。
アメリカの宇宙技術の「懐の深さ」に打たれます。
★個人的な思い出。
中学校の頃の英語の教科書がNEW HORIZONだったような気がする。
あいまいな記憶です。
「Jack and Betty」も使ったという記憶もありますが・・・。
不鮮明な記憶です。
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