« フチベニベンケイ | トップページ | ホトケノザ »

2015年3月26日 (木)

ソメイヨシノ

★3月23日の朝日新聞・天声人語に「花」の話が載っていました。

(天声人語)相次ぎ届く花の便り(2015年3月23日05時00分)
 花を詠む歌は数あれど、この名高い作品の大胆な発想には舌を巻く。〈世中(よのなか)に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし〉在原業平(ありわらのなりひら)。この世に桜がまったくなかったら、春も穏やかな気持ちでいられるのに、と▼今か今かと咲くのを待つ。咲けば咲いたで散るのを惜しむ。桜はなにかと人の心をかき乱し、物思いに沈ませる。なかりせば、と現実には起こりえないことを仮想しながら、桜へのあふれる愛を逆説的に吐露する仕掛けである▼心穏やかではいられない季節が今年もやってきた。花の便りが各地から相次いでいる。
・・・(中略)・・・
▼伊勢物語では、先の業平の歌に続き別の人が詠む。〈散ればこそいとゞ桜はめでたけれうき世になにか久しかるべき〉。この世は無常、桜は散るからこそ素晴らしい、という称賛だ。古今、ほめ方も色々である。

★在原業平が見た桜はソメイヨシノではありませんでした。伊勢物語に載っている「桜」もソメイヨシノではありません。
在原業平は825年~880年とされる人物です。
ところがソメイヨシノは江戸時代の産物です。

(今さら聞けない+)サクラ 10野生種から多様な品種(デジタル朝日 2015年3月14日03時30分)
・・・
 広くみられるソメイヨシノですが、実は幕末から明治時代にかけて広まった新参のサクラです。遺伝子の解析から伊豆諸島周辺に分布するオオシマザクラを父親に、本州から九州にかけて広く分布するエドヒガンを母親に持つことが分かっています。
 同じ両親の種なら今後もソメイヨシノが生まれるわけではありません。森林総合研究所の解析の結果、基本的にすべて同じ遺伝子を持っていることが確認されました。元をただせばたった1本から広まったことを意味します
 同研究所多摩森林科学園の勝木俊雄主任研究員は「工業製品のように同じ規格のものが全国に流通した」。そのおかげで同じタイミングで並木全体が咲き誇り、見る者を圧倒してくれるのです。
 これを可能にしているのはクローン技術です。といっても大げさなものではありません。ほかのサクラを台木にソメイヨシノの枝を刺す「接ぎ木」などの方法です。植物の細胞は動物とは違って、さまざまな細胞をつくり出すことができる能力を比較的簡単に取り戻すことができるのです。
 なお同じ遺伝子のサクラ同士は種子をつくらないためソメイヨシノだけの並木ではサクランボはできません。違う遺伝子のサクラとは交配できますが、その種子はソメイヨシノとは別物です。
・・・

★つい最近こんな記事も出ましたね。
ソメイヨシノ元祖「上野に」 千葉大、遺伝子解析し推定(デジタル朝日 2015年3月13日00時44分)

 

ソメイヨシノは東京・上野公園にある1本が原木となり、全国に広まったと考えられる、とする遺伝子解析などによる研究成果を千葉大のチームがまとめた。接ぎ木で増やされ、全ての木がクローンであるソメイヨシノ。謎とされる起源の解明につながる可能性がある。
 原木の候補は、上野動物園の表門に近い「小松宮親王像」の北側にある。一帯は江戸時代から桜の名所で知られ、親王像の場所は寛永寺の鐘楼だった。コマツオトメという桜の原木と判明した木もあり、千葉大の中村郁郎教授(植物分子遺伝学)が以前から付近の木を調べていた。
 中村教授らは今回、親王像を囲むソメイヨシノとコマツオトメ各1本、エドヒガン系5本の計7本の遺伝子の型を調査。7本は同じ親木から生まれた「きょうだい」だと判明した。
 「きょうだい」が一定の間隔で並び植えられていることから、中村教授らは「品種改良で人為的な交配で生まれたソメイヨシノや他の桜を並べて植樹した可能性が高い」とみている。
 ソメイヨシノの起源は、エドヒガンとオオシマザクラが自然交配して生まれた、など諸説ある。中村教授は「人為的な交配の証しが見つかった以上、起源が自然交配とは考えにくくなった」と指摘。人工的に作られたと解析した上野公園のソメイヨシノが、最初の木だと推定している。
 研究成果は21日から東京都内で開かれる日本育種学会で発表される。

(今さら聞けない+)の最後にあった昔の天声人語の一文というのが、心に残ります。

 ■記者のひとこと
 昔の「天声人語」にこんな一文がありました。「ソメイヨシノに問うてみたい。自分が大勢いてうれしいか、どこを向いても自分だらけで、うんざりかと」。遺伝的多様性という観点からは危うさを抱えていますが、人の手にのみよってつながれるはかなさも魅力の一つかもしれません。

★梶井基次郎が見た「桜」はソメイヨシノでしょう。

桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!
 これは信じていいことなんだよ。何故つて、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことぢやないか。

高校時代に読みまして。心ふるえ、納得してしまった。
ソメイヨシノが生きている世界は、「この世を一歩踏み出した世界」なのかもしれませんね。
日本中を遺伝的に均一なクローン・ソメイヨシノが埋め尽くしている、なんて、これは正気じゃない気がする。

何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂え
  閑吟集

この歌を歌う主体を「ソメイヨシノ」にして読み直してみてください。
人間に作り出され、樹木としては寿命の短いソメイヨシノ。
ソメイヨシノにある種の「狂気」を感じる私です。

« フチベニベンケイ | トップページ | ホトケノザ »

人事」カテゴリの記事

植物」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« フチベニベンケイ | トップページ | ホトケノザ »

2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
無料ブログはココログ