ホシホウジャク
2014.11.13
勝手口の脇でホシホウジャクがひっくり返っていました。
死んではいません。
寿命が近いのと、気温が低いので動けなくなったのでしょう。
起こしてみました。
左の翅の先が少し傷んでいますが、ものすごく傷んでいるというほどではありません。
もう寿命かな。
日の当たる落ち葉の上に移してやりました。
動けるなら動いてもいいし、命尽きるなら、なるべく早くちゃんと土に還れるように。
★昔、高校の先生が
「人間、死ぬる時には死ぬるものよ」というようなことを、授業中だったか、職員室に遊びに行っている時だったか、高校生の私たちに話してくれたんですよ。「死ぬる」という言葉が不思議で覚えています。
後にこれは良寛さんの言葉のバリエーションだったと知りましたが。
「死ぬる時節には死ぬがよく候」
戦地で一個のまんじゅうを半分にして食ったら、相手はアメーバ赤痢で亡くなってが自分は生き残った、というような体験談が授業などで聞けた世代です。
「死ぬる時節には死ぬがよく候」というのは心に深く響きますね。
日々、虫や植物や、生まれ育ち死ぬ、ということに立ち会い続けていますから、自分の死もまたかくありたい、ということは多いんですよ。虫に学ぶ死の心構えでしょうかね。
「理系アナ桝太一の 生物部な毎日」桝太一 著、岩波ジュニア新書780
たとえば今この瞬間、一匹のチョウが死んだとしても、まわりをとり囲む大自然はなにも変わらずに回り続けます。おそらく、そのチョウをアリが食べ、その栄養で新しいアリが育ち、そのアリを食べてトカゲが成長し……と、自然はそのサイクルにしたがって、淡々と回っていくはずです、そこに、意味や答えはありません。
同じように考えれば、もし僕が死んでも、きっと当たり前に世界は続いていくでしょう。火葬されるにせよ、ただ僕の体が、窒素や炭素といった物質に分解されていくだけです。それはいずれ他の生き物にとりこまれて、なにかの一部になるでしょう。
そして、それは、自分の意識とは関係なく勝手に起こっていくことですから、疑問をはさむ余地もない、と考えるのです。さっきのデカルトの言葉を借りるなら、『我思っても思わなくても、我はどっかにあり』みたいな考え方です。生きること・死ぬことの意味を考える、それ自体にも意味がないということです。
これは実際に山や海の中で生き物に囲まれて過ごすと、不思議とすっと納得してしまう考え方です。目の前で無数の命のサイクルが淡々と回っているのを目にしていると、自分は大きな大きな自然の中の、たった一つの命にすぎないんだ、とごく自然に思えます。かわりに、なにかに包まれたような安心感をおぼえるのです。
・・・
自分の人生に特に意味なんてない、と考えるのは少しさびしい気もしましたが、それ以上に、この世界そのものが魅力的だと、素直に思えました。
これはあくまでえ勝手な想像ですが、昆虫学者のファーブルは、死ぬことを恐れていなかったのではないかと思います。彼のまわりにはきっとたくさんのムシたちがいて、たくさんの生命の営みと、当たり前のような死があったはずです。自分の死も、その中のほんの一つとして、ごく自然に受け入れられたのではないでしょうか。
{注:太線は原著にあったものです。}
全くその通りだと私も思います。私は死んだら命の流れに還りたいだけです。墓なんてものに私を束縛しないでください。変な名前なんぞ付けないでください。記号などまとわぬ、「ただのもの」として近しい親族の記憶にしばらくとどまれば結構。私の墓標は地球です。
桝さんの本、いいですよ。文章が簡明ですっきり、とても読みやすい。他にも引用したい部分があるのですが、今回はこの部分だけにしておきます。
紅葉の季節。植物もまた「死を積み重ねて」生きていきます。死とは生の営みの一部です。
樹木を見てください。幹の中心部は死んだ部分、生きているのは表皮近くだけなんです。「死が生を支える」これが樹木の生き方なんですね。
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