« キバナルコウソウ | トップページ | ベッコウガガンボ »

2014年10月 3日 (金)

蒸気圧

★蒸気圧
単純化した思考実験をしましょう。
・丈夫な容器に圧力計をつけて、内部を真空にします。圧力計は「0気圧」を示しますね。
{注:大気圧を0気圧に取るゲージ圧ではありません、絶対圧力です。念のため。}
・温度は20℃としておきましょうか。
・容器内に水を適量入れます。容器内の空間の容積は減りますが、真空なのですから0気圧のままです。
・すぐに水の表面から水分子が空間内に飛び出し始めるでしょう。初めは飛び出すばかりでしょうが、空間内を飛び回る分子が増えると、また液体の水に戻ってくる分子も増えます。
・やがて。表面から飛び出す分子と、戻ってくる分子の数が等しくなると、見かけ上変化が無くなります。
 これを「平衡に達した」といいます。
・この時、圧力計はどうなっているでしょう。空間内に水蒸気という気体があって真空ではなくなりましたから、その気体の圧力を示します。
これが「20℃での水の蒸気圧」というものです。
・温度を上げると、水面から飛び出す分子が増えて、新たな平衡に達します。空間を飛び回る分子数が増えていますから、圧力も上がります。
・このように、温度が上がると蒸気圧も上がります。
・温度と蒸気圧の関係をグラフ化したものが「蒸気圧曲線」です。
Joukiatu
・グラフで、Aは1気圧、20℃のあたりです。
・温度を上げていくと80℃くらいで、約0.5気圧になることがわかります。
・さらに温度を上げ、100℃というBまで来ますと、どうなるでしょう?
・蒸気圧が1気圧になりました。
・密閉容器では単に、1気圧になったというだけですが。
 もしオープンな容器に水を入れて100℃まで熱すると「沸騰」しますね。
 水面を押す大気圧が1気圧。水の蒸気圧が1気圧。こうなると水の内部のいたるところで蒸気になることができるようになり、ぼこぼこと泡を立てて沸騰するわけです。加える熱は水が液体から気体に変わることに使われ、温度が上がらなくなります。これが「沸点」。
・水が無くなって全部気体の水になると、状態の変化が無くなりますので、加えた熱で水蒸気という気体の温度が上がりはじめます。Cでは110℃を超えた気体の水蒸気になるわけですね。
・水は100℃で沸騰する、ということがあまりに強烈に頭に沁みついて、水蒸気は100℃だと思い込んでおられる方がいます。でもそれは間違いでして、気体は熱すれば温度が上がる。水蒸気も熱すれば温度は上がるのです。

・さて、水を加熱して沸騰するという過程をグラフ上で見ましたが。
このグラフ、書き込んであるように、水の状態を示しているともいえるのです。
水という物質は1気圧、20℃では液体である。1気圧、110℃では気体である。
こういう読み方ができるんですね。
曲線より上では液体、下では気体なのです。
蒸気圧曲線はその境を示しているのです。

●では(本題)
「3気圧、130℃の水は液体です。」 Dのところです。
圧力鍋の中などはこういう状態ですね。1気圧以上を保って、100℃を超えた水で調理するわけです。
100℃を超えていますので「過熱水」といいますね。
このDを出発して、少しずつ圧力を下げたらどうなるでしょう。
2.7気圧くらいのところで曲線にぶつかりますから、この圧力で気化が始まります。
圧力の低下がおだやかなら、液体の水は穏やかに気化します。
圧力鍋の圧力逃し弁では、1気圧を超えた一定圧を保つように圧を逃しますので、100℃を超えた一定温度で沸騰が続きます。
ところが、突然2気圧とか、更に低い1気圧にさらしてしまったらどうなるでしょう?
圧力鍋でいえば「事故」です。
1気圧において130℃の液体の水は存在しえませんので、全部一瞬に気体になってしまいます。
これが「水蒸気爆発」なのです。

★9月27日の御嶽山で起こったことはこれに近い出来事だったと私は想像しています。
{もちろん温度や圧力のスケールは相当違うでしょう。出来事の「性質」をここでは考えています。}
山体の中に地下水が溜まっている。下からマグマがこれまでより上がってきて、地下水を加熱した。
周囲の岩盤はそれなりに丈夫で、水の温度が100℃を超えても蒸気圧に耐えられた。
加熱は続き、温度が100℃をはるかに超えた過熱水が溜まった。
周囲の岩盤の耐える力が限界にきて、マグマの動きによる振動などで岩盤破壊が起こり始めて、高い蒸気圧のために破壊は広がり、過熱水が急激に1気圧近い圧力まで減圧された。
そのため、液体でいられなくなった過熱水は爆発的に気化し、岩や土砂を吹き飛ばしながら噴出した。
おそらくこれに近いことが起こったものと考えます。
圧力が高まれば、いずれ岩盤の破壊が起こることは確かですが、それが「いつなのか」を予測することは非常に難しいことです。火山噴火予知の難しさとはこういうものです。

10月2日の朝日新聞の記事に

 28日には、産総研の別チームが採取した火山灰を現地で顕微鏡で観察した。熱水などで変質した岩石片がほぼ全てで、新たにマグマが冷えてできたガラス質の物質は確認されなかった。変質した岩石片は、古い岩石が爆発で噴き飛ばされたもので、結果は火山噴火予知連絡会が同日、「水蒸気噴火だった」との見解を示す根拠の一つになった。

こういう表現があります。
「ガラス質の物質」というのは。
溶岩がゆっくり冷えると結晶が成長しますが、急激に冷えると結晶化することができず、液体がそのまま固化したような「ガラス」状態になります。そういうものです。
それがなくて、「熱水で変質した」岩石だったということは水蒸気爆発の一種だったということですね。

詳しいことは火山学者が検証すると思います。
これはあくまで素人の推測ですから信用しないでください。
{まだ「考えて」います。続きは後で。}

« キバナルコウソウ | トップページ | ベッコウガガンボ »

理科おじさん」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« キバナルコウソウ | トップページ | ベッコウガガンボ »

2023年2月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28        
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
無料ブログはココログ