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2014年4月16日 (水)

実験ノート

★STAP問題で「実験ノート」が話題になっています。
私も大学で有機化学反応論の研究室で卒論研究をした者ですので、実験ノートについては厳しい指導を頂きました。
島村修先生の教室の最後から2番目の卒業生です。

★まず、購入するノートが指定されます。
会計帳簿の「補助帳」です。
硬い表紙で、製本されていて、罫線だけがあるもの。
ページを切り取ったらすぐわかる。後からページの挿入はできない。
実験室で行った実験のすべての経過を時系列のままに記録することが大事なのです。
ルーズリーフなんてのは論外。

★使うペンも指定。
当時の黒ボールペンのインクは、経時変化で赤っぽく変色し褪色してしまうものでした。
ですから、煤を顔料とする細字のサインペンを使うことが指定されました。
経時変化がないのですね。
後に私が奉職した公立中学校でも、指導要録などの長期保存文書はボールペンで書いてはいけないことになっていました。
初任者には、ペンとインクが貸与されましたっけ。(ガリ版の鉄筆とやすりもね)
(最近、摩擦で消えるボールペンが出ていますが、そのコンセプトが全く理解できません。案の定、そのボールペンでトラブルが起きてるじゃないですか。)

★訂正は、抹消線を引いて書き加える。消された内容が読めなければなりません。
間違ったと思って抹消したけれど、深く追求したら実は新しい事実の発見につながっていた、というようなことだってあるのです。
追記などがあった場合は、必ずいつ追記したのかを明確にしなければなりません。

★直接指導していただいている助手の先生には毎日報告しました。
そこから、進捗状況が教授に伝えられて、時々教授に呼ばれて、今後の方針をどうするかなど、指導を頂きました。

卒論研究でしたが、そういう指導の下で行いました。
卒論そのものは、実験ノートから要所要所を書き出せば、ほぼ出来上がる。
理論的な考察などはもちろん付け加えるとして。
で、出来上がった卒業論文は、必ず製本して提出です。

実験ノートでも、卒業論文でも、時系列の完全保持は「生命線」です。

★40年以上も前の化学科学生の記憶でした。

★実は、理科おじさんの部屋というHPに書いた、U君との理科実験教室。
最初にU君に指導したのがノートの件。大学ノートを1冊あげて、これに書くときは必ずボールペンで書くんだよ、と教えました。
小学生は通常鉛筆を使っていることが多いので、不審そうでしたが、書いたことは消えちゃいけないんだ、やった順序にならんでなくちゃいけないんだ、と教えましたっけ。
自然科学に関わるものは、自分のやったことをきちんと記録して残す、ということが基本なのです。

★マイケル・ファラデーの「電気学実験研究」{岩波文庫で翻訳が出ましたが、古書なので入手できるかどうか}を思い出します。
「Experimental Researches in Electricity」というのが原題。
ファラデーの実験ノートのようなものですね。実験、観察、洞察などがきちんと記録されている。うまくいかなかったことまで記録されている。
ファラデーが何を行い、何を考えたのか、きちんとわかる本です。
ファラデー自身は、電気力線のようなすぐれた直感的な洞察をしましたが、数学的な表現はしていない。
マクスウェルはファラデーの直感に「数学的表現」を与えた。マクスウェルの方程式ですね。
そこから電磁波の存在を予言し、光が電磁波の一種であることを結論しました。
ヘルツは電磁波の存在を実験で証明したのでした。

実験って、すごいですね。それを数学的に表現することもまたものすごいですね。
「実験ノート」のことから、そんな科学史を思い出してしまいました。

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