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2014年3月18日 (火)

魔鏡

★平等院の鳳凰の話から、青銅鏡の話と続けました。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-15d7.html
2014年3月13日 (木)「平等院の鳳凰について」
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-2f33.html
2014年3月13日 (木)「青銅鏡」

★そうしたら今度は魔鏡の報道がありました。

「卑弥呼の鏡」は「魔鏡」 3Dプリンターで復元(日経 2014/1/29)
 3次元(3D)プリンターを使って「卑弥呼の鏡」との説がある古代の青銅鏡「三角縁神獣鏡」の精巧な金属製レプリカを製作したところ、壁に投影した反射光の中に鏡の背面に刻んだ文様が浮かび上がる「魔鏡」と呼ばれる現象が起きることが分かり、調査した京都国立博物館の村上学芸部長が29日発表した。
 鏡は古代の祭祀(さいし)で用いたと考えられているが、具体的役割は不明だった。この現象は太陽光線など平行光で特に顕著で、人心を掌握するのに用いた可能性や、太陽信仰との関連を指摘する意見もあり、古代鏡の研究に新局面をもたらしそうだ。
 こうした現象を起こす鏡は古代中国の漢代に登場。日本では江戸時代に隠れキリシタンが用いたものなどが知られるが、国内の古代鏡で確認されたのは初めてという。
 レプリカは、愛知県犬山市の東之宮古墳から完全な形で出土した鏡2面(直径はそれぞれ約24センチ、約21センチ)を復元したもの。三角縁神獣鏡の平均的な組成と同じ比率の銅、スズ、鉛の金属粉を材料にレーザー積層造形法で製作した。
 この現象は背面に凹凸があり、厚みが不均一な鏡を研磨する際、鏡本体にひずみが生じて厚い部分がかすかに凹面に、薄い部分が凸面になって反射光にムラが出ることが原因。全体が薄く、背面に彫りが深い突出した文様があるなど厚みに幅がある鏡だと現れるという。
 復元した三角縁神獣鏡は背面の中央や三角形の縁部、神獣像などが厚く、中央の最厚部は約2センチあるのに対し最も薄い部分は1ミリ以下。
 村上部長は「他の古代鏡でも同じ現象が起きる可能性はあるが、この三角縁神獣鏡は特に条件がそろっている。なぜこんなに薄く仕上げたのか謎だったが、現象が起きるまで研磨した可能性もある」と指摘。「古代鏡の役割を考え直す手掛かりになれば」と話している。

もちろん三角縁神獣鏡は青銅鏡です。
毎日新聞では組成が書いてありました。

京都国立博物館:「卑弥呼の鏡は魔鏡」再現実験で仮説(毎日新聞 2014年01月29日)
・・・
 3世紀ごろ築造の東之宮古墳(愛知県犬山市)から出土した三角縁神獣鏡(直径23.8〜21.4センチ、重要文化財)のレプリカを使って実験した。本物をレーザー測定したデータを基に3Dプリンターで復元。材料も本物の組成に近い銅75%、スズ25%の合金(青銅)にした。
・・・
・・・鏡面を研磨する際、薄い部分には力がかかって本体がたわんで削りにくく、厚い部分は削りやすい。その結果、鏡面に、裏面の文様に対応する形で僅かな凹凸ができる。光を当てるとこれらがレンズの働きをして凹部は光を集約して明るく、凸部は散乱して暗くなり、文様が浮かび上がる。
・・・

★お読みいただければ、ほぼ十分な情報量があると思いますが。
蛇足を。
鏡の研磨という作業は、「なでる」というような作業ではありません。
鋳型から取り出した鏡はまるっきり鏡面じゃないですから、「研ぐ」わけですね。
全体重をかけてすごい力で、粗い棒やすりのようなもので、まずは削るんですね。
そのあと、研磨材を段階的に細かくしながら磨いていくわけです。
鏡面を上にして、磨きます、強い力で押しながら、です。
すると、裏に文様があって厚い部分はたわまないけれど、厚い部分の間は押されてたわみます。
たわんだ部分は削られにくい。厚い部分が削られる。
で、力を取り除くと、弾性によってたわみが回復します。
そうすると、相対的に厚い部分が削られてくぼみ、薄い部分が盛り上がります。
これが、魔鏡の原理です。
{毎日の記事で凹凸が「レンズの働き」というのは、いただけません。レンズというのは基本的に透明なもののことで、透過光を議論するものです。}

1:こういう風に裏に文様があり、鏡面に太陽光を当てると、裏の文様が壁面に現れる、というのが基本的な魔鏡。
2:魔鏡状態にしてから、裏面を蓋のようなもので覆ってしまい、裏には何も特別なものは見えない。なのに、太陽光を当てると裏面にも存在しない文様が現れる、というタイプの魔鏡もあります。

三角縁神獣鏡は1のタイプですね。
発掘時、錆びて緑青をふいていたものを、復元した、というのがうれしい。
私もそんな提案をしました。

★日経の記事で
「他の古代鏡でも同じ現象が起きる可能性はあるが、この三角縁神獣鏡は特に条件がそろっている。なぜこんなに薄く仕上げたのか謎だったが、現象が起きるまで研磨した可能性もある」
という点について。

推測にすぎませんけど。
魔鏡というものは。青銅鏡を研磨して使っているうちに、だんだん薄くなり、魔鏡現象が現れることに、いつの時代かに気づいた。
で、それが研磨のせいだ、と気づいた人たちが、意図的に薄く研磨して、意図的に魔鏡現象を現わすことができるようになったのではないですかね。
あるいは、鋳造する時点から、かなり薄く鋳造しておくとかね。

今回魔鏡現象がわかった三角縁神獣鏡についてはどうだったのでしょう。
最初から魔鏡として作られたのか、使い続けているうちに魔鏡になったのか。
それは私には判断できません。

★ところで、私、科学史の大学院にいたんです、経歴上は。
そのときの指導教官が物理学史の渡辺正雄先生という方で、お世話になりました。
先生は、理科教育に科学史を導入しよう、という主張も強くなさっていました。
そして、魔鏡現象の研究でも先駆者でした。
弟子の私が教師になったころ、魔鏡の制作過程を映画にして公開なさったり、現代の鏡師が研ぎあげた魔鏡の実物を講演会で実演したりもしておられました。
私も、映画や魔鏡の実物を中学校の生徒に見せたことがありましたっけ。
というわけで、魔鏡とは40年も前から関わりがありました。
このかかしさんの窓でも、魔鏡を扱ったことがあります。↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_58be.html
2007年10月19日 (金)「魔鏡」
ぜひお読みください。
青銅鏡の記事で私が私費で買った青銅鏡を載せてありますが、あれ、実は魔鏡なんです。
上の2007年の記事にその写真があります。どうぞ。

★今回、再度写真を撮ってみました。
0317makyo1
下に鏡が置いてあります。そこに太陽光が当たって、立てた白い紙に像が写っています。
0317makyo2
こんな像です。
この鏡の裏面は
0317makyo3
像とは無関係。
ですから、上に書いた、2番目のタイプの魔鏡ですね。分解すれば中に像があるはずです。
0317makyo4
これが箱。複製品です。

★参考
http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/bitstream/2297/2162/1/AN10580469-5-1.pdf
金沢大学のページです。4ページほどのpdfファイルで、魔鏡を正確に知りたい方はぜひどうぞ。

http://www.shinise.ne.jp/receive/highgrade/yamamoto/
山本合金製作所のHP。
確か、渡辺先生がつくった魔鏡づくりの映画に登場する鏡師がこの山本合金製作所の三代目の山本真治氏だったはず。

1974年、その魔鏡の復元を発表したのが当・山本合金製作所の三代目である山本真治です。反射光によって初めて生まれる阿弥陀如来の姿。その神秘的な像をお楽しみください。

阿弥陀如来の像の写真もあります。
1974年というのは、ちょうど私が教師になったころですね。

http://www.rakuten.ne.jp/gold/kyoutodentousangyou/interview/vol-08/
山本晃久さんのお話。鏡の研磨にも詳しい。

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