ストロンチウムの吸着剤
今朝のNHKのニュースで、下のような内容が聞こえてきました。
NHK(1月31日 5時15分)
ストロンチウム吸着剤試験へ東京電力福島第一原子力発電所で、タンクから漏れた汚染水が広がるのを防ぐ追加対策として、東京電力は、ストロンチウムという放射性物質を取り除く吸着剤の有効性を調べる試験を今月から始めることになりました。
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試験では、大量の汚染水が漏れた「H4エリア」のタンクの下流に当たる東側50メートルほどの場所に、直径1.5メートル、深さ20メートルの穴を掘って、吸着剤を埋めるのに適しているか調べます。
この吸着剤はストロンチウムと結合する化学物質を利用するもので、アメリカでは核施設の汚染水対策で効果を上げていますが、福島第一原発の汚染水のように塩分が多く含まれていると効果が落ちるという課題があり、どの程度の有効性があるか確かめます。
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化学をやってきた者としての直感では、この「吸着剤」は「陽イオン交換樹脂」ではないだろうか、と推測します。
(高校以上の)化学実験室なら必ずあります。
水道水を通して「純水」を作る装置として設置されていると思います。
陽イオン交換樹脂は、水道水の中の、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの陽イオンを「水素イオン」と置換します。陰イオン交換樹脂は、対イオンである塩化物イオンなのど陰イオンを「水酸化物イオン」と置換します。
結果として、塩化マグネシウムや塩化カルシウムなどが樹脂に吸着され、純水が出てきます。
陽イオン交換樹脂は他の陽イオンでも同じように水素イオンと置換しますから、当然ストロンチウムイオンも吸着するはずです。ですが他の陽イオンも一緒に置換されますから、ストロンチウムイオンだけを取り除こうという目的のためには、ナトリウムイオンは妨害イオンとなります。
「福島第一原発の汚染水のように塩分が多く含まれていると効果が落ちる」というのが、陽イオン交換樹脂だろうな、という推測を強めます。
なにせ、海水を注入して冷却しましたからね。
緊急避難としてやむをえませんが、後を引くことになっています。
「埋める」という話らしいのですが、回収して、濃い塩酸ででも洗えば、吸着していたSrを濃厚な状態で回収して処分できると思うのですが。その後の樹脂は再利用するとか。
ただ埋めてしまうのだったらゼオライトなどでもいいのでしょうけれど。
その辺の詳細がわかりません。
★「陽イオン交換樹脂 Sr」で検索しましたら
↓メーカーである三菱化学のHPです。
http://www.diaion.com/products/ion_01_01.html
わかりやすいですよ。
http://www.jaie.gr.jp/linkfile/project/arai.pdf
無機-有機複合型陽イオン交換体によるCs及びSrの吸着除去技術開発
こんなところがお勧めのreadingsです。
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