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2014年1月30日 (木)

新しい万能細胞

朝刊を取ってきたら、一面が大騒ぎ。

新しい万能細胞作製に成功 iPS細胞より簡易 理研(朝日新聞 2014年1月29日21時17分)

刺激惹起性多能性獲得(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency)だそうです。
私は素人ですから、論評はしませんが、どの「刺激」が多能性獲得を惹き起こしているのか、完全にクリアになっているかどうか、わからないところがあります。
「弱酸性」の刺激が、そういう刺激の一つであることは確かでしょうが、刺激がどのように核に伝達されて、遺伝子の不活化のような状態を解除しているのか、よくわかりません。

★報道発表資料が読めます↓
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/
2014年1月29日
独立行政法人理化学研究所
体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見
-細胞外刺激による細胞ストレスが高効率に万能細胞を誘導-

この資料のダイジェストもあります↓
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/digest/
60秒でわかるプレスリリース
2014年1月29日
独立行政法人理化学研究所
体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見
-細胞外刺激による細胞ストレスが高効率に万能細胞を誘導-

新聞報道に物足りなさを感じられる方はどうぞ。
読み応えがあります。

★ところで、新聞記事で

朝日:この細胞をマウスの皮下に移植すると、神経や筋肉、腸の細胞になった。そのままでは胎児になれないよう操作した受精卵にSTAP細胞を注入して子宮に戻すと、全身がSTAP細胞から育った胎児になった。これらの結果からSTAP細胞は、どんな組織にでもなれる万能細胞であることが立証された。

毎日:これらを別のマウスの受精卵に移植すると、体のあらゆる部分にSTAP細胞からできた体細胞が交じったマウスが生まれ、STAP細胞がさまざまな細胞に変化することが証明されたとしている。

はぁ?受精卵に注入?移植?なんだそりゃ?
プレス発表を読んだらわかりました。

産生されたOct4陽性細胞は、多様な体細胞へ分化する能力も持っていました。分化培養やマウス生体への皮下移植により、外胚葉(神経細胞など)、中胚葉(筋肉細胞など)、内胚葉(腸管上皮など)の組織に分化することを確認しました(図4)。さらに、マウス胚盤胞(着床前胚)に注入してマウスの仮親の子宮に戻すと、全身に注入細胞が寄与したキメラマウス[13](YouTube:100%キメラマウス_STAP細胞)を作成でき、そのマウスからはOct4陽性細胞由来の遺伝子を持つ次世代の子どもが生まれました(図5)。これらの結果は、酸性溶液処理によってリンパ球から産生されたOct4陽性細胞が、生殖細胞を含む体のすべての細胞に分化する能力を持っていることを明確に示しています。小保方研究ユニットリーダーは、このような細胞外刺激による体細胞からの多能性細胞への初期化現象を刺激惹起性多能性獲得(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency; STAPと略する)、生じた多能性細胞をSTAP細胞と名付けました。

STAP細胞は胚盤胞に注入することで効率よくキメラマウスの体細胞へと分化します。この研究の過程で、STAP細胞はマウスの胎児の組織になるだけではなく、その胎児を保護し栄養を供給する胎盤や卵黄膜などの胚外組織にも分化していることを発見しました(図6)。STAP細胞をFGF4という増殖因子を加えて数日間培養することで、胎盤への分化能がさらに強くなることも発見しました。一方、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞[14]は、胚盤胞に注入してもキメラマウスの組織には分化しても、胎盤などの胚外組織にはほとんど分化しないことが知られています。このことは、STAP細胞が体細胞から初期化される際に、単にES細胞のような多能性細胞(胎児組織の形成能だけを有する)に脱分化するだけではなく、胎盤も形成できるさらに未分化な細胞になったことを示唆します。

キメラマウス:2種類以上の異系統のマウスの胚を融合させて作るマウスをキメラマウスと呼ぶ。今回の研究では、胚盤胞などの着床前胚に、Oct4陽性細胞を細いガラス針で微量注入し、胚に取り込ませた。そして、その胚を仮親のマウスの子宮に戻して着床させ、発生させた。細胞が多能性を持つ場合のみ、注入された細胞はマウス胎児の全身に取り込まれるので、多能性の検証に用いられる。

「胚盤胞」ですね。
胚盤胞というのは、細胞が袋状になり、その中に内部細胞塊がある状態です。
外側の袋は、着床後に胎盤や羊膜になり、内部細胞塊から胎児が成長します。
そういう袋状になったところへSTAP細胞を「注入」したのですね。
それならわかる。
受精卵という細胞に、STAP細胞を注入しちゃぁ、それは困るよなぁ。
報道に携わる方々の「科学力」が知れてしまいますよ。

そのうちまた、この研究の全貌や、はっきりした輪郭も見えてくるでしょう。
今日はとりあえずここまで。
よかったら報道資料をお読みください。

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