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2014年1月28日 (火)

ミュー粒子で原子炉内部を探る

★1月24日に朝日、毎日、日経などに記事が載りました。

原発内部、宇宙線で透視 国内の研究グループ開発 福島第一の廃炉、活用も(朝日新聞 2014年1月24日05時00分)
 宇宙線を使って原発内で保管している核燃料の位置を外部から透視する手法を、高エネルギー加速器研究機構など国内の研究グループが開発した。この手法を使うと、東京電力福島第一原発の事故で溶け落ちて場所が特定できていない核燃料の位置を把握できる可能性があるという。
 ・・・
 装置は重さ800キロ(放射線遮蔽〈しゃへい〉用の鉄板を除く)で1セット2千万円ほど。高崎さんは「数台を1カ月ほど屋外に設置すれば、内部の構造がわかる。技術は確立しており、福島第一の廃炉作業に役立ててもらいたい」と話す。

日経では、↓こういうタイトルで。

原子炉の核燃料、宇宙線で位置特定 福島第1調査に応用も(日経 2014/1/23 11:00)

毎日では

原子炉:レントゲン、高エネ研成功 ミュー粒子用い、溶融燃料可視化に道(毎日新聞 2014年01月24日 東京朝刊)
 宇宙から降り注ぐ素粒子「ミュー粒子」を利用し、原子炉建屋の外から核燃料の場所などを可視化することに成功したと、高エネルギー加速器研究機構などのチームが23日、発表した。東京電力福島第1原発の溶融燃料の場所把握に役立つ可能性がある。
 ミュー粒子はエックス線などが透過できない巨大な岩盤を透過するが、核燃料のような密度の高い物質に当たると減衰する。チームはこの性質に着目し、2012年2月〜13年12月、日本原子力発電東海第2原発(茨城県)の原子炉建屋周辺3カ所に計測装置を設置し、建屋を透過するミュー粒子を観測。使用済み核燃料プールに貯蔵された核燃料の位置や大きさ、原子炉建屋の骨組みなどを把握することができた。
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★↓ミュー粒子というのは素粒子の一つですが、実は大量に降り注いでいまして、私たちの体も貫通しているものなのです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%BA%E6%B0%97%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AF%E3%83%BC
空気シャワー

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高エネルギーの宇宙線が大気に入射した際、大気中の原子核と相互作用し、高エネルギーの2次粒子が発生する。生じた2次粒子もエネルギーが高いため、さらに粒子を生成する。このような反応が連鎖的に生じ、大気中で大量の2次粒子が発生する現象を空気シャワーと呼ぶ。大気を進むにつれて空気シャワーは発達し、シャワー中の粒子数が増加するが、それに伴って、1粒子当たりのエネルギーは低くなっていく。やがて、エネルギーの低くなった粒子は新たに粒子を生成出来なくなり、空気シャワーは減衰する。 生成された粒子のうち、寿命の短いものは崩壊し、残ったガンマ線、電子、ミュー粒子、核子などの粒子が地表に複数同時に到来する

★朝日の記事に「技術は確立しており」とありましたが、いつどこで?聞いたことないぞ、という方が多いと思います。
実は、火山を「透視」して、内部のマグマの様子を探る、という形で開発・発展してきたと記憶しています。
いくつかご紹介します。

★高エネルギー加速器機構のHP↓
http://legacy.kek.jp/newskek/2002/novdec/muon.html

素粒子で探る火山    2002.12.19
~ マグマの動向探査 ~
    KEKの物質構造科学研究所では加速器で生み出される光や中性子、ミュオン(ミュー粒子)を使って物質の構造を調べています。今日は加速器を使わずに自然界で生じた素粒子で見る、一風かわった物質構造の研究を紹介しましょう。
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火山中を通過した宇宙線中のミュオンの強さが通過経路でどのように変わるかを測ることができます。こうしてX線写真のように火山の透過像をつくることが出来ます
・・・

浅間山の透視図などもあります。ぜひご覧ください。

★東大地震研のニュースレター↓
http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/ul/NL_plus/eri_nlp_2.pdf

そして2007年4月、「浅間山を透かしてみれば......宇宙線で撮影成功」
「浅間山の内部パチリ 宇宙線使い撮影に成功」
といった見出しが新聞各紙を飾った。

★私の個人的データベースを、「浅間山」&「宇宙線」で検索てヒットした記事↓

宇宙線で火山透視:浅間山などに写真乾板(2006/11/22)
{↑これは見出ししか残っていませんでした}

火山のレントゲン写真、宇宙線で撮影成功 浅間山火口朝日新聞 (2007年04月26日12時56分)
 宇宙から降り注ぐ粒子線を写真乾板で捕らえ、火山の火口をX線写真のように透かして撮ることに、東京大学地震研究所と名古屋大学のグループが長野県の浅間山火口で成功した。噴火予知に結びつける試みで、大がかりな装置に比べて費用も安く、どこにでも設置できるのがメリットだ。
 地震研の田中特別研究員と名古屋大の中野助教らは、浅間山の火口東側に昨年8月から約3カ月、写真乾板を置いて、乾板が捕らえたミュー粒子という宇宙線の量を分析。ミュー粒子は1キロの岩盤でも突き抜けるが、岩盤が厚いほど通り抜ける量が少なくなることから、火口内部の密度がわかる。
 その結果、隆起した火口の底に密度の高いマグマが固まった部分があることや、そのマグマの下に空洞のあることなどがわかった。
 浅間山の噴火はブルカノ式といい、冷え固まったマグマでふさがれた火口がガスの圧力で開き、爆発的に噴き出す。火道を上ってきたマグマは、噴火が終わると地下に吸い込まれるように逆流し、空洞ができると考えられている。だが、実際にその様子を見る方法がなかった。
 田中さんは「マグマの上下動から噴火を予知したり、再噴火の危険がないか見積もったりできるのではないか」と話している。噴火のタイプが異なる北海道の昭和新山でも観測しており、その結果も分析中だ。

{かかしの記憶:この時は「写真乾板」を使っていました。その乾板を作ったのが確かFUJIフィルム。FUJIフィルム・スタッフの開発秘話のようなものを読んだ記憶があります。}

浅間山:マグマ噴出でなく水蒸気爆発と判明…2月の噴火(毎日新聞 2009年8月31日 19時03分)
 2月の浅間山(群馬・長野県境)噴火は、マグマの噴出ではなく水蒸気爆発だったことが、東京大地震研究所の田中特任助教(高エネルギー地球科学)らによる宇宙線ミュー粒子を使った火山内部のレントゲン写真の分析で判明した。
 ミュー粒子は、宇宙線が地球の大気と衝突する際に発生し、X線など他の粒子が通過できない巨大な岩盤でも透過が可能。岩盤の密度によって透過量が変わる性質を利用して、火山内部のマグマの状態などを撮影する技術を田中特任助教のグループが開発した。
 2月2日の噴火前後各1カ月間の内部画像を分析。地表付近へのマグマの上昇はなく、火口に堆積(たいせき)した古い岩石や土砂などが水蒸気爆発により吹き飛ばされたことが分かった。
 田中特任助教は「ミュー粒子の連続観測で、初めて火山内のマグマや岩石などの移動状況を見ることに成功した。噴火予測へ向けた大きな一歩」と話している。

ピラミッド:素粒子で「レントゲン」撮影計画 東大地震研(毎日新聞 2012年07月01日 10時51分)
 宇宙から飛来し巨大な岩も通り抜ける素粒子の性質を利用して、エジプトのピラミッドの「レントゲン写真」撮影を東京大地震研究所の田中宏幸准教授(高エネルギー地球科学)らが計画している。撮影で、これまで知られていなかったピラミッド内の空間や通路が見つかる可能性もあるという。
 撮影に使用するのは、地球に飛来する宇宙線が大気と衝突する際に発生する「ミュー粒子」。物質の密度によって粒子の透過量が変化する性質がある。田中准教授はこの性質を利用して、山や地面を「撮影」し、立体画像にする技術「ミューオトモグラフィー」を開発した。これまで活火山の浅間山(群馬、長野県境)の内部や日本を東西に分ける大断層線「糸魚川−静岡構造線」の立体画像化に成功している。
 撮影の対象は、エジプト・ギザにあるクフ王の大ピラミッド。フランスの建築家ジャンピエール・ウーダン氏が建造方法について、内部に上向きに傾斜がついたトンネルをらせん状に造りながら石を積み上げていったとする「内部トンネル説」を提唱しており、その真偽を確かめる。
 ピラミッドの建造方法ははっきり分かっておらず、現在は外側に巨大な傾斜路を建設して石を運ぶ「直線傾斜路説」が有力視されている。ウーダン氏はこの方法では大ピラミッドを造るのと同じ個数の300万個の石が必要になることなど非効率的な点を疑問視し、内部トンネル説を唱えた。
 田中准教授は昨年、この説の証明にミューオトモグラフィーを応用できると考え、ピラミッド内部の立体画像化を提案。「そのような技術があるのなら挑戦したい」と、ウーダン氏が快諾したという。
 米国の考古学者も計画に参加することになり、現在エジプトへ調査の申請を準備している。田中准教授は「ピラミッドの内部がどうなっているのかは誰もが知りたいこと。結果がどうなるのか好奇心を膨らませている」と話している。

{かかしの記憶:結果についての報道はあったのなかったのか、よくわかりません。}

★とまあ、こういうわけです。
この技術が、原子炉内部の密度の高い核燃料の状況を調べるのに使えるのではないか、ということになったのですね。
原子炉内部の観察のために新規に開発された技術ではなかったのです。
理科教師として収集していた情報の一部をお目にかけました。
{授業で使えるかどうかは別として、理科教師は好奇心を常に維持していなければなりません。それが使命です。好奇心が死んじゃったら、理科教師とは呼ぶことができません。教師なんて自分が習ったことを生徒に繰り返せば済むのだから楽な職業だ、という誤解がありますが、全然違う。授業で扱うことの、何十倍も何百倍ものバックグラウンドをもっていなければ、たったの1時間の授業でさえ不可能です。}

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