昔話
★
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-0751.html
2013年12月16日 (月)「国際学力調査の問題を見ていて」
↑ここで「私の場合、2ケタの数の自乗は暗算できるんです。」と書いたのですが。
その続き。
実は暗算というよりも、簡易計算法というべきかもしれません。
例:34の自乗を計算したい
(34+4)×(34-4)=38×30=1140
1140+4×4=1156
あってるはずですが。
2ケタの数に、その1の位の数を足したものと引いたものを掛け合わせ、その1の位の数の自乗を足す。
という方法です。
暗算でもいいし、紙の端にメモ書きながらでもいいです。
簡単でしょ。
上に書いた通り式にしてみました。
aとbは一ケタの数です。
高校生くらいのときでしょうか、何かで読んで覚えました。
一度覚えればそう忘れるものでもなし。たまに利用することはあります。
★この計算法を集中的に使った思い出があります。
大学の教養学部の化学実験だったと思います。毎週一回、午後全部を使ってやるんですが、即日、基本的なまとめをしてレポートを出さなければならないのでした。
核乾板を用いてα線の飛跡を測定し、飛跡の長さからα線のエネルギーを求め、そのα線を出した放射性核種を同定する、という実習です。
顕微鏡の低倍率で乾板に残された飛跡を観察します。
飛跡は空間的に斜めです。
そこで、視野内の長さはマイクロメーターで測り、焦点を手前の端から奥の端まで移動させて深さを測ります。
このデータから飛跡の長さをピタゴラスの定理を用いて計算するわけですね。
計測は有効数字2桁ですので、2ケタの数の自乗と開平ができればいいわけです。
各自が何百本か測定し計算し、グループでまとめて統計的に処理するわけです。
さて、ここが昔話の昔話たる所以。
電卓が存在しない。
信じられないかもしれませんが、その当時、電卓は存在しなかった。
{化学科に進んだ頃、工学部に1台50万円もする「電子式卓上計算機」がありましたが、四則演算だけだったかな。理学部では買ってもらえなかったな。タイガー式手回し計算機なんて使ったっけ。}
実験室に常備の、「丸善 対数表 七桁」というのを学生は借り出して、計算するわけです。
この対数表の本には、1~1000までの数の平方根や自乗も載っていましたから、有効数字2桁なら表を引けばわかるのです。
私は自乗は暗算で、開平は平方根表で。
算盤のできる奴は、頭の中のそろばんで自乗し、開平は平方根表。
自乗も平方根も表で、という人も。
で、ぶつぶつ唱えたり、大声出したりしながら必死に計算していましたら、助手の先生がやってきて、「お前ら、馬鹿だなぁ」と馬鹿にされました。
計算は有効数字2桁だぞ。グラフ用紙使って、直角をはさむ辺に2桁の数をそれぞれプロットして、斜辺を物差しで測れば十分だろうが。
とね。マイッタァ~。
きっと毎年の学生がみんな馬鹿にされたんでしょうね。
ピタゴラスの定理は物差しで測れるんです。
なるほどねぇ。
賢くなったよなぁ、オレたち、と自嘲したものでした。
↓下のpdfファイルに私たちがやったような核乾板の話が載っています。関心がおありでしたらどうぞ。
http://gakusyu.shizuoka-c.ed.jp/science/ronnbunshu/113021.pdf
α線検出による天然放射性核種の同定
★オマケ
化学科に進んでから、確かニトロベンゼンの双極子モーメントの実験だったと思うんですが、結果をまとめるのにやたらと計算の必要な実験があった。私は、七桁対数表を使って大学ノートほぼ一冊を消費して計算した。全部算盤でやったやつもいた。全部タイガー式計算機でやったやつもいた。で、それぞれがレポートを出しにに行ったら、教官に大笑いで馬鹿にされましたっけ。お前ら同じ測定結果を共有して、そこから出発したんだろ。それで、こんなにばっらばらな結果を出してきやがって。というわけで。
私ら、とっても馬鹿にされ慣れているのであります。
★手元の丸善「七桁 対数表」の奥付を見たら
昭和45年9月20日 第15版第6刷発行 ¥380
となっていまして、化学科の学生番号と私の署名が書き込んでありました。
時代を感じさせる値段ですね。
化学科に行って個人で持つ必要が生じたんですね。
古っ。
« ツマグロヒョウモン | トップページ | ガの繭 »
「理科おじさん」カテゴリの記事
- 化学の日(2022.10.26)
- 秒速→時速(2022.09.01)
- 風速75メートル(2022.08.31)
- 「ウクライナで生まれた科学者たち」(2022.05.31)
- 反射光(2022.05.09)
« ツマグロヒョウモン | トップページ | ガの繭 »
コメント